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2014年元日 謹賀亭馬正

 馬の耳に、ねんぶ……、ん。馬の二年分。

 昨年、年頭に立てた目標は、丁寧に生きること。大雑把な、非常に雑な性格なの
で、そう心がけてみたところ、全く自分に期待していなかったのだが、2割方は、
丁寧度がアップした。
 今年の目標は、じれない。気の短いのを、少しは直そうと思うのである。直らな
いから性格と云う、とは談志師匠の名言だが、短気は無駄が多くなるからね。


2014年1月某日 怪獣オマキ

 映画初めは、ラピュタ阿佐ヶ谷から。
 名作「如何なる星の下に」(1962/監督;豊田四郎)。
 満員の観客とともに、新年早々、救いのない物語を堪能。山本富士子主演だから
か、東京映画作品ながら、画面が大映特有の緑がかった色味に見える。
 元夫の詐欺師・森繁久弥との二回目のスターホテルでのシーン、あまりの驚きの
ためか、モリシゲの関西弁が移ったか、江戸っ子役のおふじさん、一瞬、生来の関
西イントネーションに戻ってしまうのを確認。
 そうそう、東宝系の怪獣で一番凶暴なのは、ゴジラでもキングギドラでもなく、
「おマキ」役の三益愛子だ。
 2本目は、初見の「大阪ど根性物語 どえらい奴」(1965/監督;鈴木則文)。
こちらは正月だというのに、舞台は葬儀屋。時代は大正。砂利場での喧嘩シーン、
藤田まことと谷晃が戦っても、東映らしくみえるから面白い。藤田の相棒役は、
長門裕之。好きな役者である。


2014年1月某日 馬鹿が映画とやってくる

 場末の商人宿。すり減った畳、すきま風、天井から降ってくる冷気。
 これを描かせたなら、やはり、松竹と東映。ただ、泊まっているのがテキ屋か、
やくざ者かの違い。……うまい!破れた座布団3枚!

 渥美清が、回想シーンで八百屋の親父で特別出演する、「学校」(1993/監督
;山田洋次)。舞台は夜間中学、先生役の西田敏行が主演。とても冷え込む晩の物
語。ロケ地は荒川九中。エピソードの並べ方に感服する。
 名場面の連続なので、この作品の話になると、競馬について語りだして熱くなる
イノさんこと田中邦衛のように、私は止まらなくなるので注意が必要だ。
 裕木奈江の名演でフィルムセンター館内にすすり泣きが響き、ラスト、中江有里
の笑顔のセリフでもう一山。雪の降り出した校門にエンドロール。
 夜半から雪の予報もあったので、もしや、と外へ出たが、さすがにそこまで劇的
にはならず、星がまたたく。ただただ寒い晩だった。町屋へ行ってみようか、とい
う衝動は、すぐにしぼむ。

 ラピュタ阿佐ヶ谷で上映中の「お笑い三人組」(1958/監督;吉村廉)。
 設定では、あまから横丁のあるのは「松並区」。冒頭に登場する重厚な造りの警
察署。ストーリーそっちのけで、ロケ地がまず、気になるのである。すぐ並びに、
手がかりとなる、番地を表示するホーロー板が映るのだが、いかんせん、不鮮明だ。
「×田町1丁目12」。
 その先に区役所云々の看板もあり、杉並署の辺りは、かつて東田町だったので、
これは杉並署旧庁舎だろうとアタリをつける。同署のウェブサイトによると、旧番
地は、案の定、東田町1丁目14番地。小さいが、当時の写真も載っている。まだ上
映が残っているので、確認に観に行ってみよう。もちろん当時の様子は偲ぶべくも
ないが、上映館のすぐ近くでロケをしているというのは愉快ではないか。
 あまから横丁じたいが、どこでロケされたかは、わからない。三人組がたむろす
る、稲垣美穂子の今川焼屋の暖簾には、笹塚名物とあるけれど……。それはアテに
はならない。


2014年1月某日 おぼえがき

 日活の「事件記者」シリーズ第3作「仮面の脅迫」(1959/監督;山崎徳次郎)。
毒婦・楠侑子の魅力にくらくらするのはさておき、冒頭で舞台になる狂言強盗。
 突貫小僧こと青木富夫の家。設定では向島だが、ロケは深川。それも、妻があわ
てて公衆電話へ急ぐ橋は、多分、成瀬巳喜男監督の「稲妻」(1952)の中北千枝子
の家の前にかかる、旧新田橋であろう。ちらりと映る標柱に「平久町会」とある。
ただし、新聞記者たちがかけつけるアパートの脇は、電車の車庫で、車両のスタイ
ルからすると、こちらは小田急沿線のロケと思われる。……と思っていたが、再度
観て車体の番号に目をこらすと、一瞬だが「5454」と読み取れた。茶色(白黒映
画だが、茶色に間違いない)の2扉。調べてみると東武の戦前の特急車、旧デハ10
系なのであった。とすると、1軒のアパートの裏表は、まったく別の場所というこ
とになる。
(※後日検証したところ、車庫はどうやら、スカイツリーの真下、業平橋である。)

 ラピュタ阿佐ヶ谷で、その「事件記者仮面の脅迫」と同日上映の「特別機動捜査
隊」(1963/監督;太田浩児)。
 ともに、日暮里付近の跨線橋が出てきて、下を、東京では珍しくなった常磐線の
SL列車が通り過ぎる。両者を同じとうっかり勘違いしていたが、現地で実況見分
の結果、前者は芋坂跨線橋、後者はその南の、御隠殿坂橋と判明。


2014年1月某日 事件記者マニア

 日活版「事件記者」。
 第1作と第2作、第3作と第4作は、それぞれ同じユニットと考えてよい。
 両者で桜田記者クラブの各社の配置が異なる。
 前者は、入り口から向って左から、
中央日日、新日本タイムス、毎朝新聞、共盟通信、大都新報、東京日報
 後者は、同じく左から、
中央日日、大都新報、毎朝新聞、新日本タイムス、共盟通信、東京日報

 6社あるうち、主役は相沢キャップ(永井智雄)の「日報」で、対抗が「バッキャ
ロー」でおなじみウラさん(高城淳一)の「日日」。日日には食いしん坊のガンさ
ん(山田吾一)というコメディリリーフ、蝶ネクタイの桑どん(相原巨典)、第2
作の江ノ島で、日報のスガちゃんを出し抜いたタガ(宮崎準)。
 3番手が哀愁の漂うキャップ・クマさん(外野村晋)のタイムスで、前2作には
クラさん(内田良平)、後2作には、サツまわりから転属してくる地獄耳のタケさ
ん(高原駿雄)。タケさんは、8作目あたりになると、ガンさんの漫才の相方のよ
うになってしまう。
 4番手の毎朝(まいちょう)になるとずいぶん影がうすくなって、桜井キャップ
(雪丘恵介)が、3作目でようやく気を吐き出す。3作目では、記者(花村典克)
が心ない一言をタケさんにたしなめられる。
 さて、スガちゃん、ガンさんの両新人が御目見得の時に、相沢キャップから、
「共盟のニキさん」と紹介されてうなずいたきり、画面の隅でちらちら映るだけの、
眼鏡をかけたヒゲの、アダチ龍光師を丸顔のようにした男(二木草之助)。ようや
く3作目で初セリフ、猛抗議に来た病院事務長(垂水悟郎、……江原達怡と根上淳
を足して2で割った感じ)の帰った後に「ああいう高圧的な云い方をしなくてもね
え!」と端っこで声を張る。これが4本中の唯一のセリフだが、キャップたちが主
役でもある3作目では、クラブの主、日報の八田老人(大森義夫)の将棋の相手を
するシーンがあった。
 いちばん影がうすい大都新報に至っては、私も、役者の名前を把握していない。
1・2作目では、まだ部屋が映って、お茶汲みのミッちゃん(森島富美子)に食事
の注文をきかれ「冷し中華」と答えるシーンがあるのだが、3・4作目では、部屋
が移動した結果、まったく存在感がない。
 さて今日25日からは、5・6作目の二本立てがはじまるラピュタ阿佐ヶ谷。
 くわしくは、私も見直さないと分からないが、5作目からは、お茶汲みのミッちゃ
んが、福田文子に交代。前作で、拳銃が盗まれる大森スカイハウスの南風夕子の部
屋の女中をやった女優だ。捜査1課も担当刑事はムラチョウ(宮坂将嘉)から、1
作目で「たいがいの刑事は泥棒より心得てるもんだよ」と、クリップでカバンの鍵
を開けてみせたウメチョウ(深水吉衛)に。折も折とて、胃腸薬も風邪薬に。悪役
には満を持して、土方弘登場。そしてミスター日活・榎木兵衛もどこかに。
 6作目のタクシー運転手(山田禅二)の殺害現場、市ヶ谷駅の設定だが、どうみ
ても四ッ谷駅でロケをしている。
 さて、この山崎徳次郎監督、明らかに相当の鉄道マニアだが、それはまたあらた
めて。


2014年1月某日 事件記者マニア2

 というわけで、第5作「影なき男」に登場する、偽ドル札を掴まされて怒り心頭
のブローカー、コマキを演じる土方弘。今回はトレードマークのロングコートは着
ているが、帽子はかぶっていなかった。誰かに似ていると、ずっとひっかかってい
たが(知り合いに1人いるがそれはさておき)、ようやくひらめいた。手塚治虫の
悪役、スカンク草井だ。……ということは、土方は、リチャード・ウィドマークを
模しているということか。
 日活脇役陣の「五木」と私が勝手に呼んで、スクリーンに目をこらすのが、
榎木兵衛、青木富夫、柳瀬志郎、木島一郎、水木京一(京二)。それに冬木京三も
加えて時に六本木と称している。木島一郎は、2作目から、デカ長の下で黙々と仕
事をこなしてきたが、5作目で初めて「溝口」という名前を呼んでもらっている。
 柳瀬はまず1作目で、ヤクザ六方組の血気盛んな若衆、白スーツの男。おでこちゃ
ん水木は、2作目、競輪の当り車券のおかげで、犯人の車のナンバーを覚えていた
ガソリンスタンド店員として。みんな大好きな、かつての突貫小僧・青木は3作目
に、狂言強盗を企てて、女房・福田トヨから怒られる情けないハマリ役。そして5
作目で、ようやく榎木、終わり近くに、信州上山田温泉の警官役、堂々クレジット
もあり。サービスカットという感じなので見てのお楽しみ。横をD51が走り抜ける。
同じく冬木は、京橋の骨董店主・千賀堂として初登場。6作目にも青木は、年末の
掛取りに来て、記者連中にあしらわれる、洋服屋として再びクレジット。月賦だけ
にクレジット。失礼、この頃は今ほど駄洒落は市民権を得ていないので、そういう
芸のないことを言う記者は、いない。
 ただ、言葉遊びは、みなさすがに御得意で、将棋や碁の勝負では、
「王手(逢うて)うれしや別れのつらさ」(2作目)
「切ってもまた出る芝居の幽霊」(3作目)
なんというフレーズが、すっと出てくる。
 共盟のニキさん(二木草之助)、5・6作目でも、あいかわらず空気のように存
在しているが、6作目で、捜査一課長・二本柳寛に、集められて抗議される各社の
キャップ、5人の中に含まれていて嬉しい。そして、新たな雑用係のミッちゃん
(福田文子)が、食事の注文をとる時に、共盟の区画から、幻の2人目の声が。影
になって姿は見えないが、二木は画面の隅にいるので、彼ではない。
 ……などといらぬことを考えているうちに、肝心のセリフを聞きもらしたりする
のであった。


2014年1月某日 事件記者マニア3

 大阪に、出張。上方落語定席・繁昌亭は連日、入りもよく、寒空はだかは、初日
は固かったものの、無難な仕上がり。
 1週間、東京を空けているうちに、ラピュタ阿佐ヶ谷のレイトショー「事件記者」
特集は4週目。
 8作目「狙われた十代」では、ガンさん(山田吾一)のコメディリリーフ度が上
昇。タケさん(高原駿雄)とのコンビもますます笑いを誘う。シリーズとしては、
少々危険な展開ではある。設定では、杉並区の「城西線ひばりが丘駅」が出てくる
けれど、ロケ地は南武線か?
 前作「時限爆弾」で登場した「帝国生命」のカレンダーが、記者クラブに掛かっ
ているあたり、芸が細かい。

※注 インチキに加担するのは昭和海上火災。冒頭、勢揃いの記者クラブで、女外
交員が勧誘しているのが、帝国生命。


2014年2月某日 事件記者マニア4 ◆4期目の中間報告

 7作目。
 女スリ・楠侑子が監禁されている「谷中清水町」というのは、今の台東区池之端
4丁目あたりだが、部屋の中だけで、残念ながら街並は出てこない。楠の証言で、
のこのこ爆破犯・岩下浩が出かけてゆく世田谷区「廻沢(めぐりさわ)」。お約束
で、京王線の緑色の電車(白黒画面だが)が通り過ぎると「八幡山駅」。そして今
もそびえるランドマーク、丸いガスタンクが映る。
 ちなみに岩下の乾分の須藤孝、2作目では江ノ島取材のスガちゃんの相棒として
カメラマンを。8作目では、外苑のカミナリ族の一員。同じくカミナリ族の中には、
1作目の喫茶店のレジ係で麻薬入りのカバンを預かる水谷郷子、2作目の江ノ島で
血を売って倒れる久木登紀子、そして、たびたび警視庁で110番通報を受ける係と
して後ろ頭だけ映る上野山功一が正面から映っている。
 7作目に話を戻すと、荷主の敷島商事の社長、どこかで見た顔と気になっている
貴方に教えよう、1作目で品川駅で野呂圭介に撃たれたヤクザの親分・船十こと、
深見泰三だ。
 共盟のニキキャップ・二木草之助、7・8作ともセリフあり。めでたし。

 8作目の、カミナリ族の1人で、人をはねてしまった杉山俊夫の豪邸。傍らの掲
示板の柱に「世田谷区砧第一出張所」の文字。冒頭から目につく、オートバイの
「ガスデン」は、エンジンのブランド名で、富士自動車の製品、……と調べたとこ
ろ判明。
 深夜、駅員・水木京二の襲われる「城西線・ひばりが丘駅」。「立川方面」の表
示と国電タイプの荷物電車。なかなか味のある駅舎なので、当時を知る人が見れば、
すぐわかるのだろうが、どこだろう。昼間の検証シーンで、走り去る電車が2連。
八千代信用金庫の広告看板。南武線よりも青梅線か。

 さて、2年のブランクを経た9作目からは、人気者のべーさん・原保美と、タケ
さん・高原駿雄、そして捜査一課長の二本柳寛、他の姿がなくなり寂しくなるから、
よく目に焼付けておくように。
 今まで登場しなかった池袋と五反田が舞台になるので、帯を巻いていた時代の東
武東上線と、ツートンカラーの東急池上線がちらり。
 また、実に巧妙なカメラワークでうならせた松橋梅夫から、撮影も萩原憲治にバ
トンタッチ。
 10作目の冒頭では全盛期の田町電車区を映して鉄道ファンに最後のサービスを
するも、ロケシーンが前の9作品に比べ少なくなる。9作目ではワンシーンのみの
出演で気をもむ八田老人・大森義夫は、無事、カムバック。日活版の事件記者、最
終の第10作は、千葉の印旛沼まで足を伸ばす。東京の各地を巡ったこのシリーズ、
意外にも、渋谷が登場することはないのであった。


2014年2月某日 事件記者マニア5

 さて、全世界でも10人くらいが気にかけている、城西線・ひばりが丘駅(8作目)。
 どうやらやはり、ロケ地は南武線らしい。
 まず、駅に立てられた広告看板、八千代信用金庫は府中支店と判明。
 そして、昼間の、駅員の聴取シーン、走り去る電車の後ろの正面、行先を示す板
が丸に文字のデザイン。これは南武線特有のデザインで、青梅線なら菱形に文字な
のである。うっすらだが、文字自体「川崎」と読めた。まあ、府中市近辺の南武線
の駅、と特定できただけで満足である。あと手がかりとしては、駅舎が北側、立川
方面が2番線、等々の要素があるが、駅舎と、荷物電車が止まったホームが別の駅、
というウルトラC難度も考えられるので、このへんにしておく。

 そろそろ、事件記者、もしくは映画関連の、独立を考えては、いるのである。そ
の前に、夜鳴きそばで、腹ごしらえ。「バッキャロー。先に原稿を送ってからだ!」


2014年2月某日 サムゾラゴウチ

 佐村河内守氏の件が話題になっているけれど、寒空はだかが、実際にギターを弾
けないのは、本当である。


2014年2月某日 事件記者マニア6「無益な抵抗はやめろ!」

 2年のブランクの後の9作目。色々と変わった点があって、違和感を覚える皆様、
目に見えないところで、とんでもない変更があったことに、本紙記者は気づいたの
である。(目に見えないものどうやって見たんだ?……星セントルイスの漫才より)

 桜田記者クラブを構成する6社のうち、「大都新報」がついに消滅。代わって、
「東都タイムス」なる新聞社。
 よって、各社の小間、今様に云うとブースの並びは、入口から向って左の奥より、
中央日日、新日本タイムス、毎朝、共盟、東都タイムス、東京日報
となる。

【追伸】そうそう、本作で、映ることは映るのだった、渋谷。


2014年2月某日 少しまともな映画の話

 昭和30年代の映画を見ていると、当然ながら、今では消えた物が色々と。
 屋台。冬の夜の駅前に……、おでん、ラーメン。


2014年2月某日 よくない質問

 ウェブサイト上で、調べ物をする。
 商品や制度の扱い方について、当の会社のサイトで、調べてみる。
「よくある質問」というページがあって、想定問答集が載っている。はたして、私
の疑問は網羅されてはいない。「お前の疑問は、めったにないことで、そんなこと
を尋ねる者は、他にいないぞ。そんなことに、気をとめるんじゃない。」と云われ
ている様な気になる。
 膨大な情報から、顧客への親切心でピックアップした、というより、会社が広め
たい情報を押付けられている気がするのだ。
 何か知られたくないことを隠してるのではあるまいか、と勘ぐるのは、自分の器
の小さい証拠であるか。


2014年2月某日 日活 事件記者マニア

 さて、ソチオリンピックも終盤。
 そして、6週間に渡り楽しんできた、
ラピュタ阿佐ヶ谷の「事件記者」特集も、
日活版は、10作目の最終作をもって、いよいよ終了する。
 次週からは、東宝傍系・東京映画製作の「新・事件記者」シリーズの全2作が上
映される。こちらは未見だが、TV版に忠実なキャストなので、当時実際にNHK
の放送を見ていた人にとっては、こちらの方が親しみがあるのかもしれない。

 日活版の10作は、すべてSP・添え物映画、つまり、2本立のうち、メインで
はない作品なので、長さも1時間前後、スターは登場しない。そのかわり、おなじ
みの脇役陣が、とっかえひっかえ登場。短い時間に情報を詰込んで、テンポよく進
む。
 出てそうで出てないのが、弘松三郎、浜村純……。神戸瓢介あたりのコミカル系
は、お呼びでなかったらしい。
 そして全編を通して効果的に盛上げる、ミホケイこと三保敬太郎の劇伴音楽が素
晴らしかった。画面とセッションするように、ジャズの旋律が、高揚感をあおる。
白黒の硬質な画面と、小刻みなドラムの相性の良いこと!
 押売に近い、スポンサーのCMは御愛嬌。
 コンパクトで、バランスの良い娯楽作品は、現場のチームワークの良さを偲ばせ
る。(もっとも、そのへんは、想像にすぎないが。)
 当時の東京の街を縦横無尽に駆け回った、佳作10本。さすがに力尽きたか、ジ
・エンド。仕方ないから、勝手に11作目を、考えてみるか。
 ガンさんの母親・岡村文子が東京見物に上京。蒸気機関車に引かれて、両国駅に
到着しよう。浅草の軽演劇を見せに連れてゆくと、座長が行方不明。築地の地下鉄
工事現場で遺体が発見される。着衣のポケットからなぜか、太いウナギが……。


2014年2月某日 ひとりさびしき文化人

 文明とは創造力、文化とは想像力。
 なかなかうまいことを思いついたものだ、寒空はだか。

 文明が進めば便利になるけれど、ひとたびアクシデントに遭遇すると、復旧には、
かえって手間がかかる。何が嫌いといって、コンピューターのシステム上、「でき
ない」といわれることが、気に入らない。
 あきらめる、我慢する、でも平気だと強がってみせるのが文化人である。
 してみると、文明は野暮で、文化は粋なのだ。


2014年2月某日 事実をありのままに伝えるのが、日記の使命ではない

 名画座通いに血道をあげて、かれこれ4、5年にはなる。今まであまり触れてこ
なかったのは、「他人の創った物の素晴らしさを述べることによって、自己顕示す
る」ことになりはすまいか、というおそれを漠然といだいてたのと、私が熱く語れ
ば語るほど、読者の興味が冷めるのではないか、という危惧からである。
 おそらく。

 といいながら、舌の根の乾かぬうちにまた、日活の事件記者の話である。

 年頭から、私の時間のかなりを裂いて、つまり生活やら人間関係を犠牲にして、
作品の鑑賞、検証、そして当ウェブサイトへの記事作成──これがいちばん不毛で、
非効率に意味もなく時間をくったのである──を行ってきた。ということは、この
2ヶ月は、事件記者のためにあったのであるから、この日記もとい雑記が、その話
題で占められるのは、自然ではないか。

 1月には、信州の木崎湖畔にあるYショップニシという、食料品店でそば屋で集
会所でもある、よりどころの20周年記念に呼んでもらって、地元の人々が私の舞
台に喜ぶ、という、自分で言うのも恥ずかしいが、暖かくも祝祭的な宴に出演した。
……嬉しい記憶を臆面もなく書こうとすると長ったらしくて難解になるからイヤで
ある。昨年の秋には、好田タクトさんに連れられて、新潟県は十日町の、鉢なる村
で、やはり良い思い出に残る仕事をする機会をもらった。旅は楽しいし、せっかく
だから、この欄に書けば良いものを、そのうちゆっくり、と思っているうちに時は
過ぎてゆく。
 1月末から、大阪・繁昌亭に1週間。これまた、楽しくも、世話になりっぱなし
の日々だったが、感謝の気持ちお礼に代えるウェブ日記ではない。
 思いついたことを、あまり気にしないで記す、それで良いのだ。

 脱線したまま、キーボードを打つのに飽きてしまったので、事件記者の話はまた
いずれ。スターを使わずにすんだのが、日活版全10作の成功の、最大の要因と、
私は思いこんでいる。


2014年2月某日 おそるおそる東宝版事件記者を観る

 東京映画製作・東宝配給「新・事件記者 大都会の罠」(1966/監督;井上和男)

 偉そうな云い方になるが、これはこれでありだ。

 後は好きずきの問題である。意外にも、古き良き時代のテイストの画面であった。
日活版を見慣れた人でも、尺が(上演時間が)5割増になって、カラー作品になっ
た本作に、あのシャープでタイトな緊張感と疾走感は期待しますまい。
 言い換えると、日活版の事件記者シリーズは、テレビの企画と、一部の役者を借
りてはいるが、全く独自の作品と考えてよいことが、本作からわかる。
 音楽は渡辺岳夫なので、そう思って聴くと、どことなく巨人の星を重ねてしまう。

 東京映画製作ながら、三上真一郎が落下傘主演している以外、忠実にNHKのキャ
スティングをなぞっているので、東宝らしい脇役・端役も出てこない。
 ヒロインの大空真弓と、容疑者・平田昭彦が、東宝代表。
 テレビオリジナルの事件記者の雰囲気を伝える作品としても、貴重である。地味で
はあるが、8年間続いたテレビシリーズの蓄積が、作品を支えている。
 次回作では、再び大空真弓が、別人として使い回されているのが、不安なところ。
そこは浜美枝とか、酒井和歌子とか。なんだか手抜きの予感。

 余談ながら、TBSの「ザ・ガードマン」の映画版。2作目の弓削太郎作品は面
白い。1作目を観てしまった人は、観ないかもしれないけれど。


2014年2月某日 より早く、より安く、より旨く

 ソチ五輪終わって、パラリンピックが始まる。
 今やどちらが主で、どちらが従という時代ではない。6年後には東京で開催だ。
ただ、オリンピックパラリンピック東京大会と云うのはいかにも長いし、やはり、
パラリンピックがおまけ、というように感じる。
 いっそ二つ合わせて、「東京オパラリン」と略しては如何?


2014年3月某日 胸がつまる、鼻もつまる

「春だねえ、桜井さァん。」
 建築業、ボウシン・田中邦衛(佐藤太郎役・30歳手前)、正月に、上役にあたる
井川比佐志(桜井)の家、ほろ酔いの宴。井川の妹、小川真由美が台所に行ったす
きに、妹を嫁にどうだ、ときかれた邦衛。涙目である。
「春だねえ、もうじき。俺ァ春が好きなんだ……、気温が高ェからさァ。」
──「若者たち」(1968俳優座/新星映画 監督;森川時久)より
 普段はヘルメットに作業着の邦衛が、年始の挨拶なのでネクタイをしめて背広を
着ている、それだけで不似合いなのに、「暖かいから」ではなく「気温が高いから」
と言わせるところがうまい。切ない。そして、気温が高い、ということが、極貧だっ
た邦衛の少年時代に、いかにありがたく、幸せだったか、と云うことが、続いて語
られる。唐突に小川を嫁に、と言われて、嬉しさのあまり、頓珍漢な受け答えだが、
家族への愛が語られて、井川も、映画館の観客も、ぐっとくる場面である。
 その家族愛が暴走して、自分の家では、星一徹家以上に、お膳がひっくりかえる
わけだが……。

 さて、私も春を感じて涙目である。気温が高いから、杉花粉が飛ぶのである。ど
うもここ数日、頭もぼーっとしているわけだ。例年の事ながら、ようやく花粉が峠
を越えた頃には、今度は暑さで参るのである。だのになぜ、歯をくいしばり……。
決して歯をくいしばってはいないけれど、「春だねえ。」


2014年3月某日 傑作 七人の刑事 終着駅の女

 JR東日本と云う会社は、上野駅が嫌いなのだと思う。

七人の刑事 終着駅の女(観た人だけ見ると良い)


2014年3月某日 氷が溶けると水になるのか、春になるのか

 理系と文系とどちらがロマンチストかと云えば、それは理系だろう。
 1+1が2に成る、そう簡単に物事が運ぶものか、と考えるのが現実的と云うも
のである。


2014年3月某日 池袋・新文芸坐

 大作「黒部の太陽」。
 今回も行こうと思っていたが、おそらく行かれない。
 どうでも良い見どころは、「男は黙ってサッポロビール」の三船敏郎と、「喜び
の酒、松竹梅」の石原裕次郎が、サントリーウィスキーを酌みかわすところ。
 替わってこれも嬉しい有馬稲子特集。番匠義彰監督作品が2本かかるのはありが
たい。花嫁シリーズの、「抱かれた花嫁」と「空かける花嫁」。番匠監督は、非常
に私好みのコメディを撮っているのだが、映画史上ではあまり顧みられていないよ
うで、残念なのだ。
「抱かれた花嫁」、主人公の望月優子がとても良い。舞台は浅草で、彼女は寿司屋
の女将。その寿司屋、もちろんセットだろうが、今の紀文寿司の場所、と云う設定
なので、前を通りがかるとニヤリとなる。「空かける花嫁」は日本橋大伝馬町と、
やはり浅草が舞台になって、松屋屋上のスカイクルーザー(回転展望廊下とでも云
おうか)も登場する。


2014年3月某日 新・事件記者 「失」意の丘

 全世界で、200人くらいの人類が、ラピュタ阿佐ヶ谷での、事件記者シリーズ完
結にそれぞれの感慨を抱いていることだろう。

「新・事件記者 殺意の丘」(1966東京映画/監督;井上和男 脚本;高橋二三)

 中2日おいて2回観て、腑に落ちない。私は木を見て森を見ないタイプだし、思
い込みの激しい方なので、非常に重要な情報を見落としていないか確かめるために、
また2日おいて、千秋楽に都合3度目の客となった。
 やはり、無理がある。巧妙に(複雑に)作ろうとあれもこれも放り込みすぎ、し
かもじっくり煮込まれていない。あざとさが鼻につく。説明の仕方が素人くさい。

 もっと単純な話で、丁寧に作ればよいと思うのだが、そう単純に商品は完成しな
い、それが映画の難しいところなのだろう。「事件記者」の世界は完成度が高いの
で、オリジナリティを出すのが難しいのは、分かる気もする。せっかく、地方記者
「サムライ」芦田伸介と云う異物を出したのに、世界の外で動いて、乱していない
のがもったいない。

 以上、他人の作品を安易にくさしてしまったが、結局は私がひねくれているせい
だ。
 つまり、私は手品の仕掛けには興味がないので(わかったところで自分にはでき
ない)、下手なトリックと種明かしなら、無い方が良いのである。仕掛けに興味の
ある方は、この作品、楽しめるのではあるまいか。


 自分への戒めのために、次のセリフを。
「胸より胸に」(1955にんじんくらぶ/監督;家城巳代治)で水戸光子が、大木実
と富田浩太郎に叫ぶ。
「あんたたち、シーちゃんよりも好きな人がいるんでしょ!」
「?」
「自分よ!」


2014年3月某日 とはいうもののおまえではなし

 やんわりと皮肉を書いたつもりが、激励と思われたのか、御礼の返事が届く。
 無礼者には、きちんと無礼だと云ってやらないと、分からないのだ。なぜならば、
無礼者だから。

 こちらこそ無礼で、皮肉に御礼を書かれた可能性もあるのだが……。


2014年3月某日 存在の耐えられない軽さ

 銀行の待ち時間、両替機で、1円玉の棒金1本を両替してみる。
 50枚だから50円。セロハンに包まれた、天下の通用金、手に取ってみて、軽さ
に驚く。
 50枚だから50グラム。それは軽いはずだ。溶かした方が価値がある。
 お菓子のようなお金の束が、なんだか愛おしい。

※セロハンではないと思うが、ここは情緒優先で御勘弁。


2014年3月某日 

 JR御徒町駅。値上げの2週間も前から新しい運賃表に交換して、上に「調整中」
と貼り紙がしてある。
 経費の節減は分かるけれど、あんまり客を馬鹿にしすぎだ。破壊されて急場しの
ぎ、であればまだ分かるが、2週間、計画的に御粗末なまま、それで平気という感
覚は、恥知らずこの上ない。金をかけたくなければ、はじめからチャチなものをつ
くれば良い。なんでも外注にするから、こういうことになるのだ。
 路線図とか運賃表というのは、鉄道会社の大事な顔の一つだと思うのだが。
 そんなケチな真似をするわりには、切符を買った場合、明らかに増税分より値上
げなのは腹立たしいので、なるべく駅員を、こき使わせてもらおう。でも肝心なと
きに見当たらないのだ、駅員は。


2014年3月某日
  「世界の平和とは 人類の平和とは こんなものであろうと」
            (東京オリンピック 1964 監督;市川崑)



 ももいろクローバーZの国立競技場公演2日目(千秋楽)を観る。
 大スタジアムで飛び跳ねる5人の豆粒大の少女達に合わせて、演奏を含めた演出
効果や観衆という会場全体が演技するのは、まさに圧巻。
 なにより、彼女達が、憧れの国立競技場と、セッションしている姿勢が素晴らし
かった。

 余談ながら、お別れに、ケーブルカー状の乗り物で、聖火台に昇ってゆく5人の
真上には、煌々と春の満月が輝いていた。あくまで私の席から見た様子だが、これ
も演出の一つだったら驚異。偶然ならなお驚愕。


2014年3月某日

「人間蒸発」という題名だから、本多猪四郎×円谷英二の特撮ものかと思ったら、
今村昌平の、ドキュメンタリー仕掛けの作品であった。それはそうだ、今はATG
特集だもの。「セット飛ばせ!」
 そんなわけで、ラピュタ阿佐ヶ谷に、通う頻度が減っているのは、どうかと思う
が、26日〜4月1日には、若き桂福団治師匠が主演の、
「鬼の詩」(1975鐵プロダクション×ATG/監督 村野鐵太郎)
が上映されるので、行かねばならぬ。

 3月26〜29日 18:30〜
 30〜4月1日 15:30〜


2014年3月某日 番組改編

「笑っていとも!」には、いつのころからか出るという発想がなくなっていたけれ
ど、上柳昌彦さんの「ごごばん!」(ニッポン放送)には出たかったな。


2014年4月某日 おせっかい

映画版「事件記者」関西上映情報

●大阪九条 シネ・ヌーヴォ 5/3〜23
●宝塚 シネ・ピピア 5/17〜6/6


2014年4月某日 言獣モンゴン

 近頃、やたらにテレビやラジオで「文言」という言い方を聞くけれど、なんだか
堅苦しくて耳障りだ。
 政治家が好んで使い始めた気がする。もともと、「言葉」とか「文句」、あるい
は「フレーズ」などと言っていたことだと思う。
 契約書だのを交わす人々にはなじみがあったろうが、私など、「ナニワ金融道」
を読むまで知らなかった。
 電車内やラジオで、法律事務所の広告が増えるにつけ、日本も訴訟社会になって
ゆくのか、と暗い気持ちになるが、そのあたりにも普及の原因ありや。
「ことば」を大事にしたいので、「モンゴン」なんて言い方はしないようにせねば。


2014年4月某日 税金の上がりし春は八(%)重桜

 西日暮里から上野まで、きっぷを買うと140円、スイカなら133円。
 11枚分の回数券が1400円。スイカで11回乗ると、1463円。
 その差、たった、63円。
 紙のきっぷを購入した時、ICカードより割高な理由が、1円玉対応の券売機を
作りたくないからという、全く利用客無視の考え方なのはさておき、回数券なら
133円の10回分で1330円でしかるべきではあるまいか。
 そもそも、スイカにしても、千円単位で、豪儀な人は一万円を先払いで積立てな
がら、少しも割引しないことに甘んじてきた時点で、鉄道会社の良いカモなのだが。
 エイブ宰相の、なんのひねりもないくだらない俳句に、腹を立てている場合では
ないのである。

■後日注 「給料の 上がりし春は 八重桜」安倍晋三


2014年4月某日 もっとうまい言い訳を

 駅のホームの電光発車案内に、だらだらと意味不明の文字列が流れる。
「××線は、××駅で、安全確認を行ったため、ダイヤが乱れております。」
 ふだんは、安全の確認をしてないということか。


2014年5月某日 謹慎

 他人の発見を安易に利用して、自己顕示の手段とする、というのは実に恥ずべき
行為である。それを私、寒空はだかがやった。
 ある人が、苦心して見つけた大事な泉を、教えてもらった。それを勝手に言いふ
らすのは、厚かましく、失礼だ。ましてや自分の手柄のようにである。あげく、親
切の押売だ、配慮に欠けていた。
 抽象的な書きようでは、読者の皆さんはもやもやしてかなわないであろうが、書
かない、御容赦願う。
 また、書くことによって、ざんげやみそぎのようになってもいけないのである。


2014年5月某日 まんずまんずわーるど

 白崎映美姐御の公演に出してくれと直訴して、青山円形劇場の舞台に立つ。
 酒田出身の姐御が、東北への愛を豪快に、繊細に歌う2日間。千秋楽は、酒田に
未だ残るグランドキャバレー「白ばら」で、昨年行われた舞台の再現である。
 東北、北海道で唯一、営業を続ける「白ばら」。本間支配人が勤めたオープニン
グMC役。青山公演ではたまたま、その役が空席だったところへ、寒空はだかが志
願したわけである。
 普段、あまり自分から売込みをしない怠け者が、無理をしたのは、正直をいうと、
いささかの下心もあった。
 渋谷のラママで、4バンド、対バン形式のライブに、白崎ソロ(+伏見蛍/向島
ゆり子)という、目を疑うプログラムが4月にあった。そこへ出かけて、終演後に
酒席を囲む(元来、姐御と知り合うきっかけ自体が、別のバンドの打上である)。
現代的なまはげルックで(顔は出している)訴える、まつろわぬ民、白崎映美さん
の姿に感銘を受けた勢いで、来る青山公演へ、何か関わらせてほしいと願い出た。
 下心というのは、青山円形劇場が来年、姿を消す前に、スタッフでもいいので、
関わりたかった、ということである。司会役が決まっていなかったのは、たまたま
であった。
 当日のバックバンド「白ばらボーイズ」は、自由劇場出身の方々が中心だから、
私などより芸達者ぞろいだ。司会がいなければいないで、誰かができるのだ。引き
請けた後で気づいて、冷や汗である。おかげで、個人的な劇場への思いは早々に忘
れ、謙虚に司会役のパーツを勤める。
 公演前日(初日)の「東北六県ロールショー」の素晴らしさを目の当たりにして、
姐御のショーに関われる興奮とともに、当日を迎える。

 さて、そういうわけで、個人的な因縁は書き出すと、なお長くなるのでここでは
省略するが、アオヤマエンケイの舞台上に、二十数年ぶりに、寒空はだかが立って
いる。仕込み中に、天井を見ていたら、色々なことを思い出して、くらくらしてし
まったが、本番では全くそんなことは忘れていた。
 山田晃士さん、高泉淳子さん、それにダンサー・木野村温子さんをゲストに、実
に愉快で、力のみなぎる一夜となった。その祝祭の中で一役を買い、幕開きを勤め
られたのは光栄で嬉しいことである。劇場への感傷に浸る暇は、なかった。

 惚れ惚れするような名調子で、司会が口上を述べる。一つ間をとって、盛大な拍
手。タイトルコールで、仕事は終わる。
「……オープニングナンバーは、セントルイスブルース。シラシェ、キエミ……、
アンド白ばらボーイズ、オンステージ!」
 看板の名前を「かむ」という、信じられないオープニング。しかし、演出上、言
い直す余地はない。何事もなかったかのように得意げに、舞台を後にする。そして
大らかな、甘美なキャバレーが出現したのである。


2014年5月某日 「さあ、張込みだ!」

 クウキなど読まなくていいので、ケハイを感じてほしい。

 それはさておき、渋谷の
シネマヴェーラは野村芳太郎監督の特集。日替わりだが、
今日は「張込み」と「角帽三羽烏」の2本立て、大木実大会。
「角帽三羽烏」(1956)は、嗚呼、映画黄金時代万歳!と叫びたくなる楽しい映画。
 この魅惑の組合せ、27日(火)にも。


2014年5月某日 「まだはじまってもいねえよ」

 京浜精密工業(KSK)という会社の皆さんが、先の大地震の被害にあった方々
を応援する手作りのイベントを続けていて、ラジオカフェのOさんの紹介で出番を
もらった。
 場所は、宮城県の七ヶ浜町(しちがはままち)。実をいうと、どこにあるのか、
よく知らなかった。多賀城、塩竈から突出た半島部で、津波の甚大な被害を受けた
町である。
 寒空はだかは、被災した地域に慰問するのは初めてだ。仕事としてではなく、訪
問したことはある。いわき、新地、石巻、陸前高田、田野畑……。荒野と化した街
を目の当たりにした時は、ただ呆然として帰ってきた。
 打ちのめされた心をいやすような芸風ではないので、当初から、自分の仕事で役
に立つことは考えなかった。
 今回は、立川志ら乃さんと立川こはるさんという2人の落語家とのツアーである。
KSKの栃木工場から、社員の皆さんがトラックで乗付け、公民館に宇都宮名物の
餃子の屋台を設営、集会室では、落語会の会場を作る。スピーカーなどの機材も持
込みだ。
 餃子は、以前は無料でふるまっていたそうだが、今回は1パック100円也。これ
は、町側のたっての希望だそうである。欲しい物にお金を出せる、これも幸せの一
つなのだろう。落語会は入場無料。我々の給料は、KSK持ちである。
 地震や津波を想起する言葉はなるべく使わないように配慮はしたが、ふだん演芸
場でやる内容と変わらずに舞台を勤める。公民館の脇にはプレハブの商店街があり、
仮設住宅からのお客もいる。しかしながら、寒空はだかの他愛ないネタで笑える日
常、自分でいうのは何だが、それは多少なりとも、心に余裕ができた結果だろう。

 楽屋に、突然、私を訪ねるお客が2人。1人は、たまたま、塩竈への帰省と重なっ
た、東京の常連さん。情報を聞きつけて来てくれた。それだけでも十分、驚くとい
うのに、もう1人。公民館の前にはためく幟、「寒空はだか」の名前を、通りがか
りに偶然見つけた、子連れのお母さん。20年近く前に、荻窪グッドマンなどに来て
くれていた方。こちらに嫁いできたそうなのだ。もう1人の子供が家で待っている
ので(時分どきである)と、わずかな再会であったが、たまげた御縁である。

 さて、七ヶ浜の会は午前中の開演だった。そのため、前夜の宿を、仙台に用意し
てくれた。そこで、会の前日、地震の前に行ったことのある、女川町(おながわちょ
う)の様子を見に行くことにした。
 JR石巻線は、終点の女川駅の1つ手前、浦宿駅までは開通したが、その先は依
然として不通のままである。カキの殻が大量に転がる海岸線を走るディーゼルカー、
それは以前とさして変わらなくみえた。
 空模様が怪しくなってきたが、浦宿駅で、代行バスに乗換え、漁業基地・女川町
の中心へ向う。

 旧市街地には何もなかった。津波から3年。そこが駅の跡だと気づいて驚いた。

 バスが峠を越えて、港町の方へ降りてゆくと、一面の造成地である。1つだけ残
されたサイコロ状のビル、非常階段の付き方がおかしい。良く見ると90度転んでい
た。駅のある市街地はまだ先だろうと思っていると、バスは坂を登りだして、丘の
上の運動公園が唐突に終点であった。町営の集合住宅や、仮設のプレハブが並ぶ。
曇天の昼下がり、ひと気はない。
 数人の乗客が散って、バスが車庫に回送されてゆくと、ここが町のどこだかを知
る手がかりがなかった。もと来た道を下り、ダンプがほこりを巻き上げる造成地を
さまよって、ようやく気づく。何もないここが、駅のあった中心市街なのだ。町役
場は、さっき降りてきた坂の途中に仮庁舎があった。
 それでも、港には仮設の魚市場が再開され、加工工場も操業している模様だ。
 何もない交叉点に、観光協会のプレハブがぽつんと建っている。まだまだ、復興
など先の見えない話だろうが、造成地をうろつく不審な男の訪問にも、2人の女
性店員は、明るい笑顔で迎えてくれたのであった。


2014年6月某日 「相沢ゴエモン、ない袖は振れない」

 あまり大声では言えないが、夜行バスで朝の大阪駅に降り立つ。宝塚は売布神社
駅前のシネピピアで「事件記者影なき男(第5作)」と「事件記者深夜の目撃者
(第6作)」を観る。
 何度観ても、背景が気になってセリフを聞き逃す場面では、やはりセリフを聞き
逃す。
 資料整理などしているうちに夕刻、難波で用足しの後、喫茶アメリカンでオムラ
イスを食べ、歓楽街で偶然見つけた銭湯「あかし湯」で汗を流す。
 ムジカジャポニカに表敬訪問、春一番の主、フータさんと初めて話をする。
 大阪駅23:30、案の定、往きと同様にガラガラのJR高速バスドリーム号で帰京。
 ……というようなことは、内緒である。他にやらねばならないことがあるはずだ。


2014年6月某日 安全への言い訳

 本人達に全く罪はないのだが、近頃、駅のホームが、警備員によって守られてい
る、というのが、私にはどうにも不快なのである。
 あの制服は、乗客の安全に気をつかうより、電鉄会社側の事故防止のために仕事
をしているようにしか見えない。駅員という、サービス業の人間のいでたちではな
い。
 たとえ事故防止に専念するにしても、駅務の代行者ならば、下請け業者だろうと、
駅員の制服を着せるべきだ。ないしは、もっと親しみの持てる服装にしてほしい。
だいたい、ある程度の接客と案内をする能力と自覚のない係員を、人件費が安くす
むからといって、ホームに配置するのは、客に失礼というものだ。
 やる気も緊張感もない人か、必要以上に懸命すぎるか、どちらかにしか、なかな
か出会わない。
 尻押しの学生アルバイトが学ランを着て仕事をするのとは、違う気がする。説明
はつかないのだが、違うのだ。


2014年6月某日 169枚

 パンケーキと呼ぶより、ホットケーキと言った方が、断然、おいしそうだし、幸
せそうである。


2014年6月某日 すでに映画館で冷房負けしつつあり

「今、あんな役者はもういないねえ。」と名画座のロビーに交わされる会話。老人
達の繰り言と言う勿れ。
 冷房がどこでも過剰に効いている平成の世に、「張込み」の大木実の眼差しは、
必要ない。
 サスペンス映画を盛上げる玉のような汗、名作を再び産み出すために、原発再稼
働反対。


2014年6月某日 そりゃ優勝するとは誰も思ってはいないだろうが

 ポジティブシンキングいう、御都合主義の言いかえは気に入らない。しかしだ。
 松江フォーゲルパークのペンギンが(なんの因果かはさておき)ワールドカップ
開幕に合わせて、サッカー日本代表のユニフォームを着せられているというニュー
ス。通信記事でもラジオでも、「日本代表が敗退するまで」と報じているのだが、
これは「日本代表が試合を続ける限り」とか、もっと前向きな表現でよかろう。


2014年6月某日 それでも twitter でつながりたくはない

 この御時世、進歩に遅れをとると、淘汰されるのは必定。しかし、シーラカンス
のように、全く進化を拒否して生残るという道もあるにはあるのである。
 ただ、それには、よほどしっかりした骨格とヨロイが必要だ。


2014年6月某日 こういう情報には twitter だと便利

 柳澤愼一さん、シンガー時代の貴重な映像が含まれる「ジャズ娘乾杯」上映。

 池袋・
新文芸坐「和田誠監督作品プラス4本」
 6月24日(火)「ジャズ娘乾杯」(1955/宝塚映画 監督;井上梅次 100分)
 9:45/13:50/18:40 ※併映 真夜中まで(1999 監督;和田誠)

 井上監督得意のバックステージもので、撮影所の新米連中が、ミュージカル映画
を自主制作する。メインの三人娘に、寿美花代、朝丘雪路、雪村いづみ。
 若き柳沢真一、まるまる1曲独唱。江利チエミやペギー葉山が、使用料の高い外
国曲を歌うのに配慮して、自作の曲を歌った、と柳澤さんから聞いたことあり。


2014年6月某日 集団的自衛権

 できることは、やりたくなるのが人情というものなのだ。私のような無精者は、
大概のことが面倒くさいので、なるべく何もせずに日々が過ぎれば幸せなのだが、
そんな考え方の人ばかりではないのである。
 かくいう私でさえ、領土は広い方が気持ちがいいし、気に入らない国があれば、
ぎゃふんと言わせてみたい。これは本音だ。だからこそ、歯止めは無くさない方が
ありがたい。
 副作用として戦いやすくはなるけれど、日本人は賢いから戦うことはない、など
というおめでたい思考には、頭をひねるばかりである。
 正義の為には、やはり血を流さなければならないのだ、と正面切って言われれば
考えようもあるが、日本だけ血を流さないのは恥ずかしいからなどという理由付け
は、困るのである。
 他人の痛みはわからないが、自分が痛いのはいやである。

 戦後70年。かつて我々は戦争を放棄したが、戦わずして国を守る具体的な方法
を、アメリカに頼る以外、具体的に考えてはこなかった。
 憲法第9条。はたして「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に
希求し」てきたか。私も人生50年、世界平和に心を砕いた記憶がない。
 第9条に第3項を付け加えて、紛争を事前に回避する為に、世辞愛嬌をあまねく
国民に義務づける。
 かくして、おくればせながら、国家的に太鼓持ちの養成を開始。外交官には頓知
とヨイショが必須となり(本来そうなのだが)、「まあ、なんだかんだいっても、
日本は可愛いところがあるから」と火の粉は飛んで来なくなる。
 これを、ホウカンガイコウ(幇間外交)という。


2014年7月某日 続・集団的自衛権について考えるのココロだー!

 たとえ話について。
 状況を解説するためのたとえ話には聞く耳を持つとしても、自説を正当化する為
にたとえ話を持出す人には、用心した方がよい。それは、悪徳商法のセールスマン
のやり口だ。


2014年7月某日 続々・集団的自衛権について考えるのココロ「たとえ話(与太話)」

 東映的見地からいうと、集団的自衛権反対派の方が保守であり、賛成派が革新で
ある。
 つまり、仁義で縄張りを守ると主張する昔気質、高倉健が前者。むやみにドスは
抜かない。監督は佐伯清。
 仁義じゃ守れないといっている戦後派の金子信雄達が後者。監督は深作欣二。な
りふりかまわぬボス、金子に文太アニィは翻弄される。
 ちなみに、関係ないが、東映で、かの大物組長役といえば、丹波哲郎。東宝では、
頼りになる総理大臣を演じる。「山本総理」は、大地震に襲われた東京で、避難民
の為に、皇居を開門させる。

 話を戻す。
 仁義で守るということは、味方の血は、ある程度覚悟する、ということだ。
 健サン、耐えに耐える。三遊亭円生の調停も空しく、その間に味方の松方弘樹も
梅宮辰夫も死んでゆく。
 こちらからは手を出さない、ということは、自衛隊が本来の任務につく時には、
大なり小なり、まず日本が傷ついていることが前提なのだ。場合によっては、いき
なり東京が火の海という発端だってありうるのである。
 でも、他人の縄張りで起きた争いに、名目をつけて関わるというのは、「おやめ
なせえ」、と止めるのが、古き良き、「美しい日本」の心ではあるまいか。ねえ、
安倍の親分さん。

 積極的平和主義という安倍首相の論理。
「国民を守るため」という言葉に、なにか胡散臭さを感じてしまうのだ。もっと間
近に、必ずやってくる大地震対策の方が急務だ。国民を思うのであれば。
 閣議決定による集団的自衛権容認、これは面倒くさいことを解決せずに容易に後
世に名を残せる。

 本章、東映を例に書出したものの、スケールに負けて娯楽大作にならず。次章
「宇宙からのメッセージ」に続く。


2014年7月某日 閑話休題 7月7日 ソロライブ 吉祥寺StarPine'sCafe

 遠峰あこさんをゲストに、おかげさまで無事終了。
 七夕の夜を一緒に過ごしてくださった皆様には感謝している。ただ、このウェブ
日記で謝意にかえるのは失礼なので、謝辞は打たない。

 全員が楽しんで帰ったとは思わないし、ゲストのあこさんは別にして、主役の寒
空はだかが、観客を楽しませることに懸命であったかは、いつも通り疑問である。
 とはいえ、少なからず喜んで帰ってくださった方々の胸中を、自分なりに考えて
結論が出た。

「寒空はだかソロライブとは、旅なのだ。」

 それも、イベント盛りだくさんのバスツアーではなく、道中を楽しむ各駅停車の
旅なのだ。
 そう考えると、途中のアクシデントにも合点が行くし、突然の目的地変更も旅の
醍醐味である。
 車窓を楽しむ汽車旅の好きな観客が、集まってくれているのだ。目をひく物は、
十人十色。
 つまり、面白かったと思った方は、寒空はだかが面白かったのではないのである。
 貴方自身が面白いのである。


2014年7月某日 「ハイ、ドウゾォ」(片桐夕子)

 久しぶりに外国映画も鑑賞。2日間3館で、邦画を含めて5本。
「日本の夜と霧」(1960/監督;大島渚)、「絞死刑」(1968/監督;大島渚)、
「死刑執行人もまた死す」(1943/監督;フリッツ・ラング)、「独裁者」
(1940/監督;チャールズ・チャップリン)、と観て、あやうくまた青くさくも
赤そうな日記を書きそうになるも、「濡れた欲情 特出し21人」(1973/監督;神代
辰巳)という桃色の作品をはさんで、精神的バランスをとる。
 こういう時節にこのラインナップが劇場にならぶというのは、なかなか意味深い。
それぞれずいぶん古い映画だが、今、観るべき作品であった。

 週は変わって、今年初めての洋画新作鑑賞。「ダラス・バイヤーズ・クラブ」
(2013/監督;ジャン=マルク・ヴァレ)。
 私は、開拓者に弱い。まして実話を基にした、死という結末へ秒読みの映画だ。
HIVカウボーイは、かっこうよく哀しい。
 説明の仕方が心ニクい。照明など、見せ方にかなり凝っている。
 主人公ウッドルーフを演じるマシュー・マコノヒー。ヤクの為、もとへ、役の為
に減量した精悍な顔立ちには、中野督夫さんがオーバーラップ。そのうち病弱王・
浜村純に見えてきた。
 舞台は1980年代後半が中心だが、壁に付いた、電灯のスイッチ。日本では東京
オリンピックを境に影をひそめる縦型だった。上下にぱちんぱちんと操作する型で
ある。不勉強にもアメリカの最近の映画と内装に暗いのだが、米人電気技師の方、
御教示乞う。


2014年8月某日 残暑御見舞申上候

 例年の通り、猛暑と過冷房のダブルパンチで情けない有り様である。
 ロッテのアイスクリーム、「爽」のソーダフロート味で、なんとか正気を保っ
ている。

 どうしても寝不足になるので、決死の思いでたどりついた映画館で、うとうと
しかける。
 いよいよ、ラピュタ阿佐ヶ谷では松竹大船コメディの珠玉のラインナップ。シ
ネマヴェーラ渋谷では、追いかけるように中村登監督特集。「あー、いやだ!」
 つんとすまして、こなすように演技する、コメディエンヌとしての岡田茉莉子
は実に巧い。coolでcuteでcuriousだ。
 本来、8月後半は、使い物にならなくて当然と自分をあきらめているのだが、
この夏は映画鑑賞の為に、万全の体調管理を誓うのであった。


2014年8月某日 おせっかい帝王

 現役の役者さんに対して、若い頃のファンであるというのは大変失礼なのだけ
れど、あらためて岡田茉莉子ファンであることを認識する。吉田喜重監督と組ん
で女の情念を前面に押出すようになると、苦手になるのだが。
 あの流れるようにスマートで無駄のない動きと表情の巧みさは、痛快無比だ。

 というわけで、ラピュタ阿佐ヶ谷では「花嫁のおのろけ」は終わってしまうが、
「今年の恋」と「バナナ」が待っている。「バナナ」は少しクセがあるものの、
私にとっては、何度でも観たい映画作品。未見の「悪女の季節」も面白そうであ
る。

 シネマヴェーラ渋谷では、だんだん面白さが湧き上がる壊れた山村聰の「河口」、
ガンコジジイ伊志井寛がキュートな「結婚式・結婚式」。「集金旅行」「斑女」
は楽しみ。「千客万来」は記憶があやふやだ。コメディではなくやるせないが、
「土砂降り」の岡田茉莉子も可憐。
 彼女ではなく、もう1人の松竹コメディエンヌ、有馬稲子主演の「危険旅行」
も観てほしい。
 そしてもう1本、シネマヴェーラでは「我が家は楽し」。フィルムが古い上に
16mmでの上映なので、画面の傷んだ白黒映画を見慣れていないと、観づらい
かも知れないけれど、それはもう、ほのぼのと、にこにこする作品。フランク・
キャプラ監督の「素晴らしき哉、人生」が好きな人はぜひ。

 それにつけても、松竹の乾いた喜劇を支えた、高橋貞二と佐田啓二の早逝は実
にもったいないことで、両名の喪失の大きさがわかる特集でもあるのだ。


2014年9月某日 御期限いかが

 5袋1パックの即席ラーメン。1袋だけ残っていたものを見てみたら、賞味期限
が2週間前に切れていた。無論、そのくらいなら気にすることもないので、作って
食べた。
 ふだん、乾麺の賞味期限など考えたことがなかったので、案外早いものだな、と
改めて思った次第である。
 もっとも、冷し中華であるから、たとえ製造日が近くても、もうお彼岸の今、とっ
くに食べ頃は過ぎているのであった。


2014年10月某日 ひきコモリのオジちゃま

 最初からそうするつもりではなかったのだが、気がつけば、朝の10時半から夜の
10時半まで、同じ映画館にいた。
 これでは、自宅から外出しているものの、「ひきこもり」と同じではないか。
 映画館に引き蘢っているのではない。
「あの頃」の日本に、現実逃避しているのだ。

「嘘つきは泥棒の始まりえ。」
「そうえ〜。」(狂った野獣 1976東映京都/監督;中島貞夫)


2014年10月某日 塔でとうとう20年

 1994年12月5日、荻窪のライブハウス、GOOD MAN。
 店のマスターと他の出演者を含めて、20名ほどの見守る中、初めて「東京タワー
の歌」が、寒空はだかによって歌われた。
 爾来20年。
 自他ともに認める代表曲として、明けても暮れても、タワータワー。
 北は旭川から南は別府まで。今年はついに、渋谷公会堂と秩父宮ラグビー場でも
歌う機会を得た。私が今、演芸会でメシが食えるのも、この曲のおかげである。
 満20周年、ということについ最近気づいて、記念ライブを東京と名古屋で開催す
ることを決定。
 12月5日 吉祥寺StarPine'sCafe
 12月12日 今池TOKUZO
 乞御来場。


2014年10月某日 つぶやくように歌う。

 ツイートコンサート。


2014年11月某日 悲しき文具

 行きつけの文具店。最近愛用の着脱式のメモ帖や、映画雑記用の40枚綴りのツバ
メノートなどをよく購入する。カウンターにいつものレジ嬢。今まで気づかなかっ
たが、名札に「下端」とある。
 早く上の仕事に就けますように。


2014年12月某日 字余り

 はや師走 気づけばそこも 磯丸水産     寒空


2014年12月11日 俺は待ってるぜ

 他に記すべきことは山ほどあれど、これだけは書いておかねば。

 私はペヤングを応援する。

※もうひとつ。池袋・
新文芸坐、12/12限りの二本立て。
 新幹線大爆破/太陽を盗んだ男


2014年12月某日 「ちょうど五十になりました」

 こういう商売をやっていると、ありがたいもので、誕生日ともなれば、なにがし
かのお祝いを、頂戴する。金品でなくとも、言葉だけでも嬉しいものである。
 同時に、祝ってくれる好事家諸氏の、幸福を祈らずにはいられない。
 私がこうして幸せに生きていられるのは、世の中が平穏無事という、非常にもろ
い奇跡の上になりたっているのである。

 富士通製、NTTドコモの、らくらくスマートフォン3のCMに出演。
 BSで放送中。

 あがた森魚さんの新譜「浦島64」に、うっすらと参加。発売中。

 特に年齢を隠すつもりもないけれど、五十というリアリティを無理に押出すメリッ
トもないから、──十年前には記念の会を今はなき銀座・ガスホールで開催したが──
今回は、やらない。かわりに、「東京タワーの歌」20周年の会を東京と名古屋で。
 例によって、宣伝がおろそかになってしまったので、知らなかった方には申訳な
い。関西での会を組めなかったのも面目ないが、御安心を。来年は、「京都タワー
の歌」の20周年である。


2014年12月某日 迷走する議論

 つまり、何が言いたいのかというと……。偉そうなことが言いたいだけなのだ。



2014年12月某日 年の瀬の瀬にゆられてゆれて

 クリスマスイブの午後、小室等さんと白神直子さんの、コミュニティFMだが全
国ネットの番組に出演。思えば、今年の初仕事が、元日のこの番組であった。
 学生時代に「音楽夜話」で聞きなれた、あの声で「バカの壁」とタイトルコール
されるのは感慨深い。サテライトスタジオのある三軒茶屋キャロットタワーの展望
ラウンジの窓には、見事な夕焼け。富士山がシルエットで浮かぶ。
 帰宅して、すぐ年賀状のデザインにとりかかる。今朝ようやくアイディアが固まっ
た。ここ数年では早い方である。直接のヒントは、先日、名古屋でゲスト出演して
もらった、スギテツの最新アルバム「走れ!夢の超特急楽団」。六角精児さんの歌
う、「いい日旅立ち」である。
 というわけで、世間がクリスマスに浮かれていたかどうかは知らない。下絵描き
から、久々の、プリントゴッコでの印刷。映画「33号車応答なし」を頭の中で反
芻しながら宛名を書いて、切手を貼っていると、日付は、26日。

 賀状作業は半ばだが、翌日は、マグナム小林さんの芸歴20周年記念パーティ。
 わけあって、落語家からバイオリン漫談に転向した彼が、ホテルの宴会場に多数
の御贔屓を集めて、1部演芸会、2部パーティ。そのパーティの司会を務める。
 1部、そして2部の余興とも、芸達者、大物を迎えた、たいへん豪華な出演者。
きっと、落語家としては叶えられなかった、彼にとっての真打昇進披露パーティな
のだろう。
 組織の力を借りずに、この規模の会を催すのは並大抵のことではない。亡くなっ
た、立川談志師匠がいたら、さぞ満足したであろう。私など、仕切る格ではないが、
光栄である。
 敬意を持って呼ばせてもらおう、マグナム師匠!



   
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