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【62】集金旅行(1957松竹大船)監督;中村登  →
【63】 →【61】

佐田啓二………………「旗良平」倒産寸前のゴシップ雑誌社長
岡田茉莉子(松竹専属第一回)…「小松千代」元キャバレー女給、某2号
五月女殊久(若草)…「勇太」死んだ望岳荘主人の幼い息子
 アカの他人の、佐田と岡田の二人が、残された五月女のために、それぞれ債権と
慰謝料取立ての、子連れ珍道中。
 途中、岡田のモーションを、かわし続ける佐田。
 季節は晩夏(位牌に八月十五日とある)。瓶ビールはキリン(明示はしない)。
 冒頭、「配役」として、全役名クレジットあり。


【競輪場】  
望岳荘
 是好大当り。上機嫌の是好は、露天商から、女性の下着を買わされるが嬉しそう。
中村是好……競輪で儲ける初老の男、アパート望岳荘主人「山本仙造」
佐田啓二……競輪で損する若い男、同 住人「旗(ハタ)良平」
田村保………競輪場の帰り道で女性下着を叩売りする男
 ●花月園競輪場(横浜・鶴見)

【東京某所】アパート「望岳荘」  ←
競輪場  東京駅
※外観は京王井の頭線の切通しの上(明大前駅北の、玉川上水との交差)
 是好と佐田が帰宅すると、是好の妻は、書置きと息子を残し、「三番さん」と駆
落ちしていた。是好の妻は、是好よりずいぶん若いらしい。人使いが荒くギャンブ
ル狂の是好に愛想をつかし、病気の若い男とデキていたのだ。
 夜、妻のためにと買ったシミーズを着てヤケ酒の是好、心臓マヒでポックリ、死
ぬ。
 葬儀が終わると、高利貸・十朱久雄が、死んだ是好の借金の利子の代りにと、家
財を運び出す。アパートも十朱のものになるという。しかし、十朱に借りた金を元
手に、是好も金貸しをしていた。全国に債務者が散らばってはいるが、回収すれば
42・3万になると住人・桂小金治
 残された幼い子供・五月女のために、アパートの住人から、佐田は、是好の債権
回収係に任命される。
佐田[僕がですか?]
小金治[幸い、旗さんの会社、ダメになったでしょ。]
 渋る佐田に、2号・岡田が、全国に散らばる元情夫への慰謝料集金のついでに債
権回収に同行すると言い出す。五月女の養育費に、慰謝料でアパートを買取るのだ
と。そんな卑しい金を子供にやれるか、と喧嘩腰の佐田。
 売言葉に買言葉で、結局、佐田は、自分がやると宣言。
五月女殊久…「勇太」望岳荘主人・中村是好の息子 学齢前か
草香田鶴子…「たき」洗濯婆さん 是好の扱いからも、住人ではなく使用人の模様
桂小金治……「五番さん」望岳荘住人
関千恵子……「八番さん」望岳荘住人 小金治とはイイ仲と思われる
岡田茉莉子…「小松千代」望岳荘住人、お妾さん
谷よしの……望岳荘住人
十朱久雄……「香蘭堂」高利貸し

【東京駅】  ←
望岳荘  岩国
 取立てに旅立つ佐田を、望岳荘総出で見送り。幟を立てて出征の様、BGMも
「日本陸軍」。
 車内で、五月女を連れた岡田に遭遇して驚く佐田。母親に会わせに行くという。
相変わらず、ぶっきらぼうな態度をとる佐田だが、五月女がなついているので、同
じボックスに収まるのであった。

【岩国】  ←
東京駅  山口
 C59 12を先頭に岩国駅進入する急行列車。
 取立てに降りる佐田。岡田も慰謝料のアテがあると下車。
 錦帯橋に着く、カラフルな(赤、クリーム、青)岩国市交のバス(リヤエンジン)。
バス停で宿の番頭につかまって一憩。佐田は、まず、旧知の松平・大泉滉に取立て
に。名門のバカ息子の滉は、なじみの料亭の女将・桜むつ子に、父親の不祥事をも
みけすためと無心をする。
 一方、岡田は、元情夫で土地の名士として通っている伊藤雄之助を宿に呼び、東
京時代の火遊びの口止め料として十万円を、首尾よく獲得する。
「人格者が人格者でなくなったら、メシの食い上げじゃからね。」
遠山文雄……宿の番頭
志賀真津子…宿の女中
山本多美……第二劇場前で、佐田に尋ねられるおばさん。
柴世津子……公夫の女中
大泉滉………「松平公夫」是好の債務者、名門のドラ息子 佐田の学校の先輩
伊藤雄之助…「松尾六造」岡田の元情夫、市の教育委員「謹厳実直な人格者」名士
桜むつ子……料亭の女将
●錦帯橋 ●第二劇場(看板に「侵略者」「恋愛時代」※ともにイタリア映画)

【山口】  ←
岩国  
 岡田は、元情夫で今は市議の藤村・市村俊幸に、五月女を連れて行き、市村の子
だとひと芝居うつ。市村は妻・沢村貞子には、東京で世話になったと嘘をつく。夫
はいないという岡田に、相手を世話して幕引きをはかろうとする。沢村も乗り気に。
しかし、事情を知るわけのない、まだ子供の五月女の言動から事こわし、芝居がバ
レそうになり、逃げるように帰ってくる岡田。
 佐田の方はというと、債務者は北海道に転勤していて、とりはぐれていた。
 次なる債務者と、岡田の見合相手の居所が一致して、三人はバスで萩へ向かう。
市村俊幸……「藤沢庫吉」岡田の元情夫、市会議員、敬虔なクリスチャン
沢村貞子……「藤沢歌子」市村の妻、敬虔なクリスチャン 丸メガネでおっとり
●山口駅 ●山口カトリック教会旧サビエル記念聖堂 ●瑠璃光寺五重塔 ●県庁前

【萩】 ※1泊目  ←
山口  松江
 萩市内に着く防長バスのオンボロボンネットバス、後ろに代燃装置用の台が残る。
岡田たちを出迎えた番頭曰く「(宿ではなく)ホテルでございます。」という「ホ
テル萩」は、売春禁止法施行を控えて、転業した売春宿であろう。階段のあるホー
ルに、でんと、布袋様が鎮座している。番頭は元「おとうさん」か。
 見た目は子連れ夫婦だが、部屋は2つ用意してもらう。
 さて、女中に五月女を預けて、岡田を連れて佐田が取立てに行った先では、当の
本人の盛大な葬式が行われていた。二人が東京から来たときいて、「しぇー!」と
驚く人々。
 御焼香をといわれ、借用証を香奠とともに置いてゆく佐田。
 岡田の見合相手は、趣味の悪い田舎者・トニー谷でがっかりする岡田。しかし、
トニーから、山口の市村に託された慰謝料を渡される。
 夜、佐田は、岡田に気を使って、街へ出る。「サロンモミヂ」という店でヘベレ
ケになって帰った佐田が、岡田の部屋に間違って入りかける。間違いに気づいてあ
わてて出て行く佐田。つまらない岡田は、五月女を抱きしめて寝る。
 佐田は目覚めると、トニーのベッドで寝ていた。
 朝食をとろうとすると、佐田を訪ねて、昨夜の店の女給・瞳麗子がやってくる。
酔って調子のいいことを言ったらしい。
 今後の予定をトニーにきかれた岡田は、松江へ行く、と出まかせをいう。すると、
「あまさぎ(わかさぎ)の照焼を食いましょいの」と、同行するというトニー。
 佐田、岡田とも、それぞれ乗り気でない相手に萩見物をつきあった後、萩駅で落
合う。まいたつもりのトニーも合流。佐田は、松江に用はないから別行動をとろう
というが、岡田は荷物を引ったくって、汽車に乗込む。結局、トニーを含めた4人
で、風光明媚な日本海岸を行く。
井上正彦……ホテル萩の番頭
水上令子……ホテル萩の女中
小林十九治…萩の老人 佐田と岡田を「ツルヤユウゾウ」の葬儀に案内する
トニー谷……「生田完二」岡田の見合相手、産婦人科医
瞳麗子………「愛ちゃん」サロンモミヂ女給 悪趣味なファッション(西部開拓風)
川端悠起子、空伸子、斉藤知子…サロンモミヂの女給
●東光寺(毛利家菩提寺) ●松下村塾 ●萩城跡(音痴な瞳の歌う「荒城の月」)
●萩駅  ♪男なら

【松江】  ←
  尾道
 宍道湖畔の料亭の座敷。トニーが風呂で民謡をうなるスキに、女中の手引きで、
手漕ぎボートに乗込み逃避行する佐田、岡田、五月女。
「ありゃ、逃げたかな?」
 残されたトニー、しょげてるかと思いきや、ヤケだろう、芸者を呼んで、どじょ
うすくいに興じていた。
水木涼子……料亭「臨水亭」の女中
 ●宍道湖 ●小泉八雲旧居 ●割り子そば  ♪関の五本松 ♪安来節

【尾道】 ※2泊目  ←
松江 瀬戸田
 山陰から再び山陽へ。雨の中、汽車は尾道に。車内で駅弁を食べる三人。お茶は土
瓶。松江の脱走以来うち解けたか、初めて隣り合わせて座っている佐田と岡田。
 目的地は生口島の瀬戸田。五月女の母親に会いに行く。一緒に逃げた「三番さん」
の実家があるのだ。しかし、尾道から瀬戸田へ向かう船は荒天で欠航。
 足止めをくって、場末の宿で2日目の夜。部屋が一つしかない、というので、佐
田は窓際の椅子で寝るという。
[アンタとアタシはいったい何なの?]
 蚊帳の中に岡田が誘い、いいムードを作る。ニブいのか、紳士気取りを押通すの
か、乗って来ない佐田。

【瀬戸田】(生口島)  ←
尾道  徳島
 是好の妻を連れて逃げた「三番さん」は、佐田の取立てる二万円の債務者でもあ
る。船着場に岡田と五月女を残し、取立てに行く。その兄、気の荒い塩田作業の男
・西村晃が示す家は粗末なあばら屋。
 そこでようやく寝込む三番さん・北原隆と、看病する(五月女の母)浜子・小林
トシ子と再会する。
 驚くことに、岡田が慰謝料を求めようとした男は西村であった。相談の結果、生
活は苦しいが、五月女を引取ると決める西村ら「阿万」一家。
 五月女を岡田が連れて行くと、斜めになって駆出し、子供を抱きしめる小林。
 佐田は回収したばかりの貸金に加え、岩国で滉から受取った金もそっと置いて行
く。岡田も同調する。(実は、佐田が西村経由で受取った金の出所は、岡田である。)
 一件落着したものの、東京に帰る金も足りなくなってしまった佐田と岡田。徳島
にアテがある、と二人は改めて旅を続ける。
西村晃………「阿万築水」岡田の元情夫 以前は手広く塩田経営をしたが今は零落
北原隆………「克三」小林と駆落ちした「三番さん」、西村の弟 開放性の結核患者
小林トシ子…「浜子」是好の妻、五月女の母
●西日光耕三寺(→【52】はだしの花嫁

【徳島】 ※3泊目  ←
瀬戸田  鳴門
 徳島きっての大物、ツムジュンこと津村・アチャコの屋敷に、蝙蝠安よろしく乗
込む佐田。
「妹」岡田の貞操を奪ったオトシマエをつけろと、ゴシップ雑誌でならした強請
(ゆすり)を仕掛ける。そんなことではひるまぬアチャコ親分、丁重に、恐喝の嫌
疑で警察に引渡す。
 残された岡田に言寄る男ヤモメのアチャコを岡田はつっぱねるが、アチャコは、
丁度開催中の阿波踊りに岡田を誘う。のれんに腕押しの佐田に対し、欲しい女は腕
ずくでも、というアチャコの直接的な振舞いに、岡田の気持ちは動いて行く。狂乱
の阿波踊り、その最中、踊るアチャコと岡田の想いは一つになる。
 警察から解放された佐田は、宿で岡田を待つ。夜遅くやって来たアチャコの使い
の若い衆から、岡田から預かった手紙を受取る佐田。集金旅行はここで打切り、ア
チャコと所帯をもつという。悔しがる佐田だが自業自得、後の祭りだ。
(花菱)アチャコ…「津村順十郎」土建業を営む土地のボス 妻と死別
今井健太郎…刑事

【鳴門】  ←
徳島
 一夜明けて、小さな船着場。集金旅行の続きに出かける佐田を、岡田がサバサバ
した顔で見送りにくる。
[アタシ、アナタに悪いことしたみたい。]と、あっけらかんと言う岡田。
[でもアナタも悪いのよ、しっかりつかまえてくれなかったから。]
 続いて駆けつけるアチャコ、「名物の焼き餅だ。」と佐田に土産を持たせる。
「来年の阿波踊りにはまた来てや。」新郎新婦の踊るところを見てくれ、とのろけ
る。
 汽笛が鳴って、岸壁を離れる船上から佐田が叫ぶ。
「むちゃくちゃでござりまするよー。」
 もらった焼き餅の包みを開け、一口かじるが、「やきもち」という文字に、ばか
ばかしい 、と包みごと海へ放り投げる。
「ふーん!」(情けない叫び声)
 鳴門の渦に焼き餅は吸い込まれてゆく。そして船は行く。エンドマーク「終」

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【100】君も出世ができる(1964)
【99】父子草(1967)
【98】地方記者(1962)
【97】花のお江戸の法界坊(1965)
【96】童貞先生行状記(1957)
【95】駅 STATION(1981)
【94】大いなる驀進(1960)
【93】三十六人の乗客(1957)
【92】高度7000米 恐怖の四時間(1959)
【91】キングコング対ゴジラ(1962)
【90】かも(1965)
【89】警視庁物語 ウラ付け捜査(1963)
【88】拳銃0号(1959)
【87】希望の乙女(1958)
【86】旅情(1959)
【85】人間に賭けるな(1964)
【84】日本暴力列島 京阪神殺しの軍団(1975)
【83】東京湾(1962)
【82】野獣狩り(1973)
【81】ひとりぼっちの二人だが(1962)
【80】ギャング同盟(1963)
【79】明日は月給日(1952)
【78】もぐら横丁(1953)
【77】好人物の夫婦(1956)
【76】愛情の都(1958)
【75】警視庁物語 行方不明(1964)
【74】喜劇 男の泣きどころ(1973)
【73】橋(1959)
【72】東京の恋人(1952)
【71】特急三百哩(1928)
【70】アリバイ(1963)
【69】私は負けない(1966)
【68】月曜日のユカ(1964)
【67】おんなの細道 濡れた海峡(1980)
【66】続・酔いどれ博士(1966)
【65】ダニ(1965)
【64】硝子のジョニー 野獣のように見えて(1962日活)
【63】誘惑(1957)
【62】集金旅行(1957)
【61】ゴジラ(1954)
【60】閉店時間(1962)
【59】山鳩(1957)
【58】次郎長社長と石松社員(1961)
【57】サザエさんの青春(1957)
【56】背後の人(1965)
【55】重役の椅子(1958)
【54】川のある下町の話(1955)
【53】泣いて笑った花嫁(1962)
【52】はだしの花嫁(1962)
【51】のれんと花嫁(1961)
【50】ふりむいた花嫁(1961)
【49】わたしの凡てを(1954)
【48】愛人(1953)
【47】花嫁のおのろけ(1957)
【46】恋人(1951)
【45】33号車応答なし(1955)
【44】真田風雲録(1963)
【43】嵐を呼ぶ楽団(1960)
【42】サラリーマン目白三平 うちの女房(1957)
【41】人形佐七捕物帖 めくら狼(1955)
【40】流れる(1956)
【39】結婚のすべて(1958)
【38】踊りたい夜(1963)
【37】風流温泉日記(1958)
【36】喧嘩鴛鴦(1956)
【35】早射ち野郎(1961)
【34】香華(こうげ 1964)
【33】その壁を砕け(1959)
【32】おかあさん(1952)
【31】愛染かつら 総集篇(1938・39)
【30】赤い鷹(1965)
【29】人間狩り(1962)
【28】[シリーズ]事件記者(1959〜1962)
【27】地図のない町(1960)
【26】黒い画集 あるサラリーマンの証言(1960)
【25】吹けよ春風(1953)
【24】彼奴を逃がすな(きゃつをにがすな 1956)
【23】我が家は楽し(1951)
【22】花ひらく娘たち(1969)
【21】麦秋(1951)
【20】浮草(1959)
【19】鉄砲玉の美学(1973)
【18】最後の切札(1960)
【17】黄色いさくらんぼ(1960)
【16】空の大怪獣 ラドン(1956)
【15】涙を、獅子のたて髪に(1962)
【14】特急にっぽん(1961)
【13】時をかける少女(1983)
【12】幸福の黄色いハンカチ(1977)
【11】お国と五平(1952東宝)
【10】可愛いめんどりが歌った(1961)/夢でありたい(1962)
【09】充たされた生活(1962)
【08】人間蒸発(1967)
【07】若い樹(1956)
【06】こだまは呼んでいる(1959)
【05】抱かれた花嫁(1957)
【04】新・事件記者 殺意の丘(1966)
【03】空かける花嫁(1959)
【02】現代っ子(1963)
【01】七人の刑事 終着駅の女(1965)




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