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【01】七人の刑事 終着駅の女(1965民芸映画社/日活)監督;若杉光夫 →【02】
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TBSテレビの人気ドラマを、オリジナルキャストで映画化。
ヒロインに笹森礼子。
所轄のベテラン刑事・大滝秀治をはじめ、劇団民藝の役者たちが、日活俳優
陣とタッグを組む。
上野駅ホームで発生した殺人事件。東北出身者たちのエピソードを絡ませな
がら、捜査する刑事たちを、ドキュメンタリータッチで描く。
TV版の有名なテーマ曲を含め、効果音楽を一切使わず、環境音のみ。
隠し撮りで実際の駅構内ロケを敢行、長まわしとロングショットを多用した
画面は、抜群の臨場感とリアリティである。
緻密で骨太な傑作だが、華やかさは全くないので、製作当時、お蔵入りして
しまったのもうなずける。しかし、それが、東京の裏玄関、「上野駅」らし
さとマッチして、時代の空気を保存している。
季節は冬。東京オリンピックの活気も収まった頃。
東海道新幹線が開通してアカ抜けた東京駅に比べ、雪深い東北をバックにし
た上野駅は、雑多な人間の吹き溜りであった。
堀雄二…………捜査主任アカギ係長、「係長さん」。警視庁捜査一課
芦田伸介………刑事チョウさん。ハンチングにメガネ。ここぞという時に決め台詞
美川陽一郎……刑事ニシさん。人情味あふれる老刑事。
菅原謙二………刑事ヤマさん。男前担当。
城所英夫………刑事ナカジマ、ナカさん。錠前開けの名人。
佐藤英夫………刑事ミナミ。少し短気。
天田俊明………刑事クボタ。東北出身の若い刑事。
松下達夫………所轄「台東署」捜査課長、「課長さん」。
大滝秀治………所轄「台東署」のベテラン刑事。名前を呼ばれるシーンは無い。
[けちんぼ!ヘヘヘー!]
[オレ、仲間内じゃあ、正直ショウちゃんで名が通ってんすよ。]
[アタシからこんなこと言うのはナンだども、キミコはもうちょっと美人で、愛嬌
のあるオナゴだでや。]
[せっかく来たんだ、警察の冷えた茶でも飲んでけよ。]
[刑事さんさば、わからねえのす……。]
笹森礼子[東北訛り]…連込み宿の女中フサコ。東北出身。売春を強要されている。
平田大三郎[東北訛り]…大澤組若衆キジマシンキチ。同じ東北出身の笹森を慕う。
北林谷栄[東北訛り]…娘を捜す老婆タジマアヤ。盛岡の在から上京中。
梅野泰靖………大澤組ツカザキ。キジマ・平田の兄貴分。アメリカのギャング風。
杉山元…………大澤組リョウジ。梅野の弟分。壷振り。
吉田毅(沖田駿一郎)…大澤組ケン。梅野の弟分。食堂にいた笹森を発見する。
(宮坂)宮阪将嘉………大澤組幹部ヤマナ。 ※クレジット宮「阪」
大森義夫………大澤組オオサワ組長。
庄司永建………16番線ホーム駅員、第一発見者。被害者が死んでいると気づき気絶。
福田秀実………「13番線」の置引き。 プレスシートには玉村駿太郎とあるが違う。
草薙幸二郎……置引き「正直」ショウちゃん。
日野道夫………ガセネタでたかりに来る浮浪者。
稲垣隆史[東北訛り]…妻とはぐれた男シライジュンゾウ。横手から買付けに。
三崎千恵子……キジマ・平田の下宿のおばさん。
野村隆…………新聞記者
高野誠二郎……被害者が、家出した娘かもしれないと確かめに来た夫婦。
(若原)若山初子…高野とともに確かめに来た夫婦。 ※ポスターでは若「原」初子
英原譲二(穣二)………台東署の刑事
▼内容詳細にskip
東京の北のターミナル、国鉄(現JR)の上野駅。東北、常磐、上信越の各線への始発駅であり、
終着駅であった。
東北上越新幹線が東京へ伸び、上野東京ラインが開通して、終着駅らしさは、今ではすっかり薄
れている。
当時は、上野の山側に高架ホームが10番線まで。その東側に「地平ホーム」が11〜17番線まで。
地平ホームは、外国や私鉄のターミナルのように、行止りになっている。
設定の事件現場ホームは地平ホームだが、ロケは主に高架ホームで行われたので、行止りの様子
は、ほとんどわからない。
改札口の向うに、地上レベルの同じフロアで車止めの並ぶ駅は、東京の国鉄駅では、撮影当時も
2016年現在も上野だけだ。
板を肩にしたスキー客。人々は、コートやジャンパーを羽織っている。
地下道では、浮浪者が一斗缶で焚き火にあたっている。
しかし、東北から就職に上京する少女。コンコースに「水戸観梅号」を宣伝する横断幕。
春が近いことを思わせる。
冒頭、卒倒した駅員を介抱しながら聴取する詰所。その黒板の月間予定表には、「3月」とある。
笹森礼子がかつぎこまれた旅行者救護所のカレンダーも3月。
大鉄傘の下、コンコース雑踏のロケでは、12日(金)と14日(日)という、日付標示が映る。
2月も3月も曜日が同じなので、撮影日が特定できなくて残念だが、設定は3月であろう。
名物の、雪をかぶって上京して来る到着列車は映らないが、画面に重ねられる列車到着のアナウ
ンスは、「特急はつかり号は20分遅れて……」など、雪の影響をにおわせる。
東北出身のクボタ刑事・天田俊明は、被害者の目指した「北上(きたかみ)」に想いを馳せる。
「あのへんはまだ、雪でしょう……。」
【1日目】 →2日目
日活マーク(NKマーク浮彫り)/列車到着のブレーキ音
●上野駅中央改札コンコース
「うえのー、うえのー。」
到着アナウンスを背に、改札を出てくる天田と少女。
天田の手には、引出物らしき風呂敷包、
「この階段さ、おぢで(降りて)、地下道さ右に行ぐと」浅草方面の地下鉄乗場を
説明している。
車中で知り合った少女は、就職のため、山形から上京して来たのだ。
やって来る美川「式はどうだった?」
天田「ニシさん……、ヤマですか?」
16番線のホームで殺しだという。
美川「いいから、それ(荷物)早く派出所に放り込んでこい。」
※少女が降りて行く階段。本作ではたびたび登場するが現存せず。
上方にステンドグラスを配した、自動券売機コーナーの位置、その奥にあった。
さらにその下の食堂街・地下鉄に降りる階段は2016年現存。
●現場ホーム・夜[ロケは3・4番線ホーム、鴬谷寄り=北端]
チョークで縁取られた女性死体(頭は北向き)
検証する刑事達、画面右下に控え目なタイトル。
「“七人の刑事” 終着駅の女」
画面のバックに、汽笛が響き、続いて、ポイントを転線しつつ発車して行く列車の
音が流れる。
現場には、本庁の堀たちの他、所轄の松下達夫も立会っている。
線路からホームに上がる菅原「ハンドバッグが出ました。」
中から北上行のきっぷ。
堀「北上(きたかみ)?」
芦田「岩手です、盛岡の手前です。」
堀、菅原に、「科研にまわせ。」
美川から渡されたハイヒールと、ハンドバッグを携えて、菅原、公園口階段に向っ
て南側に走って行く。
入れ違いに駈けつけた天田に芦田、
「まずは、ホトケサマをよくオガんでおけ。」
まだ断定できないが、北上へ向おうとしていたと教えられ、
「北上ですか……。」東北人の天田は、心を揺らす。
第一発見者の駅員が意識を回復したとの知らせに、芦田、隣のホームの詰所に向う。
倒れていた女性を助け起こしたら死んでいたので、驚いて貧血で気絶したのだ。
※当時はまだ、3,4番線、5,6番線とも、北側の大連絡橋は無い。
●ホーム詰所[芦田が向った方角によると5・6番線北端]
城所、佐藤がいる。芦田が天田を連れて、やって来る。
横たわる庄司永建、心もとないが、気絶する前には足元に白いカバンがあったと証言。
信じられるかとの疑問に芦田、きっぱりと、
「信じられるね!」
城所「あたりましょう!」
まずは消えた白い旅行カバンを手がかりに、捜査の糸口を捜す刑事達。
●現場ホーム
大滝「ホーム助役が22時10分の急行を入れていいかどうかきいてますが。」
堀「仕方ないでしょう。」
遺体を、ホームから担架で運び出す。つきそう美川。
階段で地下へ運んで行く様子にスタッフ、キャスト。
テーマ曲はなく、階段を降りる足音が冷たく響く。
駅の地下道で、軽トラックの荷台に載せられる遺体。
「音響 渡辺宙明」
文字のバックに駅構内で駅員などに聞き込みをする刑事達。
夜も遅いが、スキー客や旅行客、家路を急ぐ客で混雑している。
ここでも、その雑踏の音や会話が、テーマ曲の代りに流れる。
警察署の地下、霊安室らしきところに安置される遺体。被害者のものと思しきコー
トをかけてやり、頭を垂れる美川。
「監督 若杉光夫」
※遺体を担架で運びおろす階段は、正面玄関左手の階段。
降りると、地下食堂街(後のEchikaFit、2016年6月現在は空き家。)に面して、右手に地上へのスロープ。
待機した軽トラックに、担架の遺体は載せられる。
搬送先のバックには、Columbia/DENONのネオンサイン。赤坂支所か赤坂署かの可能性あり。
●15,16番線ホーム売店
売子の女性・草間靖子に聞込みをする城所。
※「地平3号売店」。貼紙に「バナナ一袋200円」。
遠くからのショットで二人の会話は聞こえないが、売子の口が「あ、そういえば」と動く。
●警察署内会議室・捜査本部
本部設営風景。筆で書かれたばかりの「上野駅構内殺人事件捜査本部」。
制服姿の所轄課長・松下達夫、本庁の捜査主任・堀に向って親しげに、
「何年ぶりですかね、アカギさんの班がここに捜査本部を置くのは。」
「えーあれは確か……、36年の暮れですか、浮浪者殺しの件で……」
「そうそう、そうでしたね。」
電話かかる、署員「はい、『台東署』です。」
※台東警察署というのは架空の名称。実際には、駅から数分の上野署の管内で、モデルも同様だろう。
ただし、上野署でのロケ撮影はしていないと推測する。
●16番線ホームの改札近くの売店前から電話する城所、本部で受ける堀
売店女店員の目撃情報、白い旅行カバンを持ったそれらしい男。
グリーンのジャンパーに黒いスキー帽、30くらいの背の高い男、改札に向って走っ
て行ったという。
堀「おいちょっと待てよ、はっきり見すぎてるんじゃないか?」
城所「そのへんも突っ込んで聞いてみたんですが……。」
ホームでよく見かける顔だと言う。
堀の横で電話の様子を聞いていた美川、
美川「ショバ屋じゃないですか?」
※当時は、自由席主体の列車がまだ多かったので、待合せ場所に長い乗客の列ができた。
手下を早くから並ばせて、順番・席「場所」を売るのが「ショバ屋」。
マルスというシステムで、指定券のオンライン化が実現するのは、この作品撮影後の、同1965年9月。
●駅構内
聞込みに歩く刑事達に、呼出しアナウンスを装った指令。
「サクラダ商事のサワダさん、ミナミさん、クボタさん……。」
駅長事務室に招集。
●「駅長」室入口、続いて、駅長室の様子の外からのショット
城所が本部からの指示を伝えている。芦田、佐藤、天田、それに所轄の大滝と英原
が聞いている。
●本部前
科研から戻ってきた菅原をとりかこむ記者たち。野村隆ら。
「(ガイシャは)美人でしょ?美人だよね?」(某新聞記者)
「痴情の線に間違いないね、そう書くよ!」(某新聞記者)
「書いてもいいけど、後で恥をかいても知らないよ。」菅原
●本部
ハンドバッグと被害者の指紋が一致と報告する菅原、堀に。
被害者は北上を目指していたことがはっきりしたので、堀は美川に、岩手県警に照
会するよう頼む。
●駅コンコース
土産をぶらさげ、列車待ちの列にならぶ芦田。早速よってくる怪しい若い男。
「ダンナ、ここじゃとっても座れませんぜ。500円、安いもんだ。」
「お前、ショバ屋ってわけだな?仲間は何人ぐらいいるんだ?」
「ダンナ、警察の人?」
地下道へ逃げる男、追う天田、城所、取り逃がす
そこにいた浮浪者2人、天田たちは、男の行方をきく。
「50円出しなよ、焚き火だってタダってわけにゃあいかねえんだ。」
一斗缶で焚き火をしている。
「払ってやると、上の交番が困るんじゃないかな。」
そう言い捨てて、刑事たちは、あきらめて帰る。
カメラ、パンダウン。2人の足元に座り込んでいた浮浪者・日野道夫、意味ありげ
な顔。
※日野の座り込んでいた丸柱は、2016年現在のアトレ地下、HOKUOの前。WiredCafeの向い。
●別室・記者会見
堀「ガイシャは30歳前後、人相、着衣はさっき言った通りです。」
乗客たちが「なだれをうって」席を争う真っ最中か、発車直前の出来事か、ヒト突
きで殺している。目撃者は無し。犯人の遺留品なし。
被害者は身元不明だが、所持品から、北上ゆきの切符。
手がかりが少ないので、報道によって、情報が集まることを期待する、と堀。
※被害者=「ガイシャ」の発音は、尻上がりの「外車」ではなく、「歯医者」と同じアクセント。
●本部 ※ちゃっかり浮浪者・日野道夫
芦田、ていねいに浮浪者・日野に尋問している。日野、のらりくらり。
佐藤「腹へってんじゃないか?なんかとってやろうか?」
会見から戻って来た大滝秀治が、日野を見つけるなり、
「ありゃ、オッサンまた来てんのか。」
大滝、丼物を取ろうとする佐藤の電話を切って、一喝する。
「一課のダンナ方をだまそうとするとは、どういうつもりだ!」
以前、面通しで御馳走したことに味をしめ、事件と知るとやってくるという。
追い立てる大滝。ぶつぶつ恨み言を言いながら出て行く日野、突然大声で、
「けちんぼ!へへへへー。」
「この野郎!」佐藤、ついカッとなって、他の刑事たちに笑われる。
菅原「このヤマも、難しくなりそうですねえ。」
早くも漂う手詰まり感。
城所「20時40分発の青森行でしたね……。」
その列車に乗って逃げたのではないか、と言う城所に、犯人の心理を代弁する芦田。
「列車という狭いハコの中より、東京という大きな袋の中に逃込みたくもなるだろ
う。」
いずれにしても「まずはガイシャの身元の割出しが先決だ。」
交代で寝てくれという堀の指示で、本部はいったん休憩となる。
机の上の花瓶を手に取り部屋を出る、東北出身の若い天田、それを見て続く老刑事・美川。
●地下室(霊安室)
遺体に花を手向けて
天田「この女は、クニへ帰ろうとしたんですかねえ?」
美川「いや、わからん。そうかもしれんし、全く別の目的かもしれん。」
被害者が向おうとした北上に想いを馳せる天田、
「あのへんはまだ雪でしょう。」
【2日目】 ←1日目
●早朝の15・16番線ホーム ※置引・福田秀実を逮捕
線路上で手がかりをさがす、菅原&天田。置引きを目撃、ホーム上で組み伏せる。
「出来心で……。」
「ウソつけ!常習犯だろう。」
●広小路口向いのカバン屋店先
佐藤&大滝。駅員・庄司を連れて、駅前のカバン屋へ。どんなカバンだったか、あ
たりをつけようとしている。
あいかわらず頼りない庄司。思い出すために、ちょっとそこに寝てみてくれと言う。
これも捜査のためと、死体の様子を再現する天晴デカ魂、大滝。
庄司「どーも、感じ出ないすね。」
大滝「ばかにするなよ!」
飛び起きる大滝のほほには、砂がついている。
※広小路口から電車通りをはさんだ、2016年現在の丸井側のガード下。
西側の山手線ガード下に、今もカバン屋はあるが、カメラ位置を考えると、東側の縦貫線ガード、ユニクロの位置である。
●駅近くの派出所
菅原&天田、置引き現行犯・福田を尋問。
福田「最近は、客もこすっからくなってますからね。」
たいしてもうからないとぼやく。
菅原「きのうの夜もホームに出てたろ!」
福田、晩は自分ではないという。担当はと問われ、「ショウさんでさ。」
福田は、その男の居場所を尋ねられるが、教えられないと、侠気を出す。
菅原「イキがる気か?」
福田「ええ、まあ、ね。」
※派出所の窓からは、上野駅駅舎、正面玄関が小さく映り、都電が通り過ぎる。
窓外の映像を信用すれば、2016年現在のキンコーズの辺の設定となる。
●本部 ※谷栄登場。そして稲垣、独壇場、ひっかきまわして去る
本庁から持ってきた家出人名簿の束のはいった風呂敷を広げる美川と城所。
「13番線」で置引きの男をつかまえたと、菅原たちからの電話報告。
続いて電話を受ける芦田、新聞読者からの照会だろう。遺体の現場写真を見ながら、
「前歯に金ははいってませんな、何かのお間違いでしょう、はい、どうも。」
署員に連れられ北林谷栄、入室。
入口近くの椅子にちょこんと腰掛け、弱々しく、ぽつりぽつりと事情を話し出す
谷栄。
音信不通になってしまった娘の消息を探しに、「盛岡の在」から上京中だという。
続いてけたたましくやって来る男、稲垣隆史。案内の署員をひきずるように部屋の
中央へ。追うカメラ。
ズーズー弁丸出し。
横手(秋田県)から、買付けに来て、ささいなケンカから妻とはぐれてしまい、一
晩過ぎてしまったという。被害者が妻ではないかと、心配して駆けつけたのだ。
城所「横手ね……。」
芦田は、遺体との実検をためらう稲垣に、被害者の現場写真を見せる。
「アタシからこんなこと言うのはナンだども、キミコはもうちょっと美人で、愛嬌
のあるオナゴだでや。」
「どうぞ、安心してお引取りください。」あきれる芦田。
人違いとわかるが、キミコはどうなる、と息巻く稲垣に、捜索願を出せと示唆する。
連れて来た署員に名前を問われ、「シライジュンゾウ、……白井権八のシライ!。」
その署員が、シライさんなら、北署から捜索願が出ているという。
芦田、署員に「早く思い出さんかい!」
城所が北署に電話すると、妻は、相手の電話のそばにいた。
稲垣、受話器をひったくってまくしたてる。
[あ、キミゴか?オレだ、ズンゾーだ。──そうバカバカバカバカ言うなてや。い
ま行ぐから、そこ動くんでねえぞ!]
けたたましく帰って行く。
カメラが入口の方に戻る。
その間、じっと待っていた谷栄。彼女にも写真を見せる。
現場写真では判然としない谷栄を、霊安室に連れて行く美川。
※谷栄登場後、「岩手から?」と芦田が立上がって歩み寄る所から、稲垣の登退場をはさんで、谷栄退室までは、1カット。
●地下室(霊安室)
棺桶の顔のふたを開け確かめる谷栄。じっと見て、首を振る、出て行こうとして崩
れ落ちる。
●某古アパート「ショウちゃん」のヤサ
福田を連れて、菅原&天田、木造アパートの狭い内階段を昇る。ショウちゃんは不
在だったが、部屋の中央に、それらしき白い旅行カバン。
帰ってきたショウちゃん・草薙幸二郎、
「あ、お客さんね?紹介者がいいから安くしますよ。」
スキーなら極上から安物まで揃ってます……、草薙の口上に、カバンはあるか、と
菅原。
「ゆうべ、16番線ホームで持逃げしたヤツだよ。」
●署内裏口、階段室 ※笹森登場、交錯する関係者達
不安そうに立っている女、若山(若原)初子。
連行されてきた草薙、若原の横を通って、地下の取調室へ菅原と。天田は2階の本
部へ報告に。
すれ違いに、地下から上がってくる風采のあがらない中年男・高野誠二郎。城所に
付添われている。
妻・若原に首を振る高野。ほっとする妻。
城所「良かったですよ、娘さんじゃなくて。]
娘との確執と後悔を語る父・高野、香奠を差出す。ちゅうちょする城所に妻・若原、
「花でも買ってやってくださいまし。」
辞する夫婦。続いて、もう一つのドアが開き、表口からか、署員が笹森を連れてき
て、城所が2階へ案内する。
※笹森が通るドアには、開けると小さいが警報音が鳴るようになっていて、このあたりも芸が細かい。
●本部
出払って誰もいない本部。
「こちらで少しお待ちください、今、全員ちょっと忙しいんで。」ついたての向う
へ笹森を案内。
城所は、机の抽斗から封筒を取出し、高野夫婦から預かった千円札を入れて、表に
「御香奠」と書く。
●地下取調室 ※別件逮捕の草薙から、犯人らしき男の情報
草薙を尋問する芦田と菅原。
殺人を否認する草薙は、現場から、線路を横切って、道の方へ逃げる人がいたと
証言。しかし、姿は見てないからわからないという。
菅原「ふざけるな!」
草薙「音がきこえたんだよ!あらァ確か……、ゲタみたいな音だったな。」
出まかせだろうと相手にしない芦田と菅原に、信じてくれ、と草薙、
「オレ、仲間内じゃあ、正直ショウチャンって名が通ってんすよ。」
●本部 ※白いカバンから浮かぶ被害者像
芦田と菅原、草薙の尋問から戻ってくる。堀と美川、天田も一緒だ。
カバンを開けてくれといわれ、城所は、クリップかなにかで手際良く解錠。
芦田「商売替えした方がいいんじゃないか?」
大滝と帰ってきた佐藤、
「無駄足だったなあ。カバン、出たそうですね、ほう、これすか?」
子供への土産とおぼしきプラモデル、雷おこし、水商売らしき衣類、そして子供か
らの手紙。菅原が読上げる。
「──母ちゃん、父ちゃん連れて早く帰ってきてくれやなあ。ノボル」
ついたての向うから、その様子をのぞき見ている笹森。
草薙の言う、「ゲタばきの男」のウラを取りに、菅原と佐藤、再び出て行く。
ついたての向うに、電話がかかり、出る大滝。
「送りますか?──ええ、大丈夫です。」
電話のある長机の端から、長机の先にある写真の束を集めようとして、机の上に乗
出して腕を伸ばす。
「大学に車が出るそうです。」と大滝が電話の内容を伝える。
堀「ナカジマ君、死体と一緒に行って、解剖結果を知らせてくれ。」
城所は、笹森のことは忘れて、部屋を出て行く。
空気が一段落して、所在なげな所轄刑事・大滝、
「あの、僕は?」しばらく一服してくれと言われる。
芦田「子供に土産物だけは、届けてやりたいですねえ。」
芦田、ようやく笹森に気づいて、「なにか?」
笹森は、人違いとわかったんでいいんです、と部屋を出る。追え、という芦田のサ
インで、食べかけたあんパンを飲みこんだ天田、後を追う。
●警察署裏口
棺桶を積込む自動車、立会う城所。脇を歩いて行く笹森。つける天田。
※警察署を出て来た笹森、画面右へ歩いて行く。「港区役所赤坂支所土木事務所」という看板の建物の前を通る。
ちらりと映る電柱の広告に「大畑眼科」。大畑歯科なら、当時から2016年現在まで続く医院が、赤坂署の間近にある。見間違えたか?
冒頭のコロムビアのネオンの位置関係から見ても、警察署撮影に使った建物は、
実際の署内かどうかはさておき、赤坂4丁目と推定。
●上野駅広小路口前、地下道スロープ入口
「サツに何しに行ってたんだい?」
ギャング風の梅野泰靖が、笹森を呼び止める。「来な!」とあごで指図する。
●地下道(京成連絡通路) ※犯人につながるシッポをつかむ
小さな酒場へ梅野が笹森を連込む。乱暴する様子に、天田、ドアを開けると、別の中
年男・宮坂将嘉が出てくる。つくり笑顔で言う、
「すいません、まだなんですが。」天田が中の様子をただそうとすると、聞くな、
という表情で、「ひどい痴話げんかでねェ。へへへ。」
そこへ笹森、飛出してくる、天田追う。
※地下鉄銀座線改札の近く、隣(京成寄り)に「だるま寿司」。
●地上
「人違いだって言ったでしょう!」
天田を振り切ろうと笹森、路上に飛出て、自動車に接触。
●宿直室 ※谷栄の話を聞く美川
宿直室の布団で、休む谷栄。美川が、話を聞いている。
娘の送金に頼りきっていたこちらも悪かったのだが、患っていた夫(娘の父)も昨
年亡くなった。だから、もう心配はいらない、無理するなと伝えてやりたいという。
谷栄の見せる最後の手紙に住所は書かれていないが、同封の写真には、職場の喫茶
店の前で撮られた娘が写っている。
「赤坂あたりだな。」
谷栄が訪ねて行けるよう、美川は管轄の警察署に、手はずをつけるための電話をか
ける。
●地下、旅行者援護所(医務室) ※15〜16時頃
ベッドに横になって手当を受けている笹森。軽傷で済んだようだ。
警戒しているのか、訛りがない。
天田は、笹森のコートのポケットから、被害者の写った現場写真を見つける。被害
者のとの関係をきかれても、シラをきる笹森。「うるさいわねえ!」
本部へ連絡しようとすると、所内の電話は使用中。
天田、笹森を残し、階段を昇って公衆電話から本部に連絡。
援護所に戻る途中の階段で、昨夜の上京少女と偶然再会。チッキで送った荷物を取
りに来たという。天田、エールを送る。
少女、胸を張って東京弁で「はい、がんばります!」
戻るとベッドは空。所員に尋ねても行先はわからない。
しまった、という表情の天田、あたりを捜すが、後の祭り。
やってきた芦田、あきれる。「バカ。」
※無料の救護所。2016年現在、アトレ地下、カルディコーヒーファームのあたり。
天田の昇り降りする階段は撤去されて、現存せず。
※「チッキ」……受託手荷物。乗車券の範囲内を、荷物車で別送してくれる。
駅留めの荷物を取りに来たのだ。
●「陸橋」両大師橋スロープ
16番線の外側に17番線の線路。その外側はもう構外、上野公園に通じる両大師跨
線橋に続くスロープの上がり口だ。
そこで捜査を続ける菅原&佐藤。
草薙のいう、ゲタばきの男が本当ならば、目撃していそうな、屋台が置いてあるの
を見つける。
佐藤「あの屋台はこのへんに店を出すのかなあ。」
菅原「いいセンだ。」
※スロープ脇の16番線に、入換中のディーゼル機関車DD13。
ホーム奥の13番線に進入して来る、急行電車455系。
※後の新幹線工事で、当時の15ー17番線は撤去され、両大師橋のスロープも、取付け位置が変わった。
バイク屋街として賑わうことになる、旧・下車坂町。鉄道学校として名高い岩倉高校の向いあたり。
●本部
芦田と天田が、宮坂を参考人に、連れてくる。「殺人事件」の看板に怒る宮坂。
署長や課長とも顔なじみだ、とご立腹。居合わせた大滝にも、あんたも知ってるだ
ろうと言うと、大滝の口から「大澤組の大幹部さんですから。」
「大澤興業だ!」
大滝は、過去の銃砲等不法所持や、賭博開帳の件を列挙する。口調が皮肉っぽい。
宮坂「ダンナ、あれはもう2年も前のことで。」
大滝「待ってくださいよ、半年ほど前でしたかな、サクラ旅館での賭博の開帳では
……、アンタいい顔だったじゃないですか。」
天田は、宮坂の店にはいった笹森と梅野について問いただすが、シラをきる。
そこへ電話、城所から、検死結果の報告である。
「凶器は洋丸片刃、刃渡りは12センチから15センチ。刺し傷は深さ約10センチ。」
傷は心臓付近にまで達し、他に外傷はなし。死因はそれによる出血死。
宮坂も聞き耳をたてる。
堀「深さ10センチ?」
美川「玄人ですな。」
さらに、菅原と佐藤から、手がかりをつかめそうだとの電話報告。
「もう店を開けなくちゃならないんですがねえ」という宮坂を、ひとまず帰す。
すかさずコートを手に取り、尾行する美川。
●アメ横を通って国電(回送線、現・上野東京ライン)高架下
宮坂は、店へ向わず、高架下の「大澤興業」事務所へ。プレートに上野六丁目12番。
※高架下、2016年6月現在、中華「珍々軒」の裏。DVDショップ。
●本部
美川、本部に戻り、報告。
堀「ヤマナが大澤組へ?」
芦田「これで、シリが割れそうだな。」
堀は、課長を呼んでくるように大滝に言いつける。
「出ました!とうとう。」
菅原と佐藤、線路を渡って逃げた男の目撃者がいたと報告に戻ってくる。おでん屋
台の親爺によれば、鉄道関係者ではなく、サンダルばきの、「ヤーさま」風。
芦田「正直ショウちゃん、正直だったってわけか!」
美川「土地モノですかね?」
やってきた課長・松下に、大澤組の資料の提出を求める。
そこへ、「オオサワ」と名乗る男から、犯人を自首させるという電話。その名前は
「キジマシンキチ」。
刑事達、先手を打って、事務所へ駈けつける。
●大澤興業前
菅原、佐藤、天田、大滝。
自動車で乗付け、表口、裏口に別れて戸を叩く刑事たち。しかし、反応がない。
※住居表示のプレート「12-17」、つまり上野6丁目12-17となる。
●鶯谷連込み旅館街 ※容疑者キジマ・平田登場、笹森と逃亡を約す
寛永寺陸橋から階段を降りてくる若い男・平田大三郎。彼こそキジマシンキチ。
「フジヤ旅館」に「ネエさん」笹森を訪ねる。
上野駅で女性を殺害した、壷振りのリョウジの代りに自首して、服役する「代人
(だいにん)」を強要された平田。助けてくれと泣きつく。
平田「オラやんだ、そっただつもりで組さ、へえったんでねえ。」
笹森「もう手遅れだよ……。」
一緒に逃げてくれと、平田は笹森に請う。
笹森、力なく「逃げるったって、行くとこなんてねえよ。」
平田の郷里に逃げようという。覚悟を感じ取る笹森。
平田「ネエさんのためだったらなんだってやる──」
笹森「シンちゃん、おめはん、本気すか?」
上野駅地下食堂で、夜、落合う約束をする。
そこへ、逃げた平田を追って、梅野がやって来る。
「来ると思ったよ。おめえ、フサコに惚れてるらしいからな。」
逃げたら承知しないと平田に因果を含める梅野、平田は振り払って逃げる。残され
た笹森をはたいた梅野は、ツレの女に言う。
「組へ電話して、リョウジとケンを呼びな。」
※「フジヤ旅館」現存せず……2016年6月現在はラブホテル、位置は現在の台東区根岸1-8-13
バックに流れる(おそらくラジオから)のは、ザ・ピーナッツ「青空の笑顔」(1964)
●本部 ※黒幕・大森義夫登場
オオサワ組長・大森義夫がやって来る。犯人キジマを逃がした言い訳と、事件の背
景を語る。応対する堀。
「キジマというのは偽名でしてね、本名はミウラカズオ……。」
平田は、板橋で傷害事件を起こして手配中の身で、被害者とは愛憎のもつれだろう
と、私見を述べる。
「若いうちにはよくあるこった。」
被害者の身元が割れていないときき、顔には出さないが安堵の大森。平田の住所を
教えようと紙片を渡すが、堀は、もう家宅捜索に行っていると告げる。
※大森は、杖をつき、サングラス、和服の上に、えり巻のついたちゃんちゃんこ、ねじりマフラー。特異な出立ち。
●「キジマシンキチ」下宿の雑貨屋 すでに外は暗い
家宅捜索する、菅原、佐藤、天田。
さしたる手がかり無し。キジマはサンダルを持ってるかの問いに、下宿のおばさん、
三崎千恵子「サンダルぐらいは持ってたでしょう?」
昨夜は、麻雀から10時半頃に帰った証言。
クニへ帰ると言い残して出て行ったという。
※ロケ地不明、隣は、はり・灸、青木マッサージ、電話871-2221の行灯看板。
●西郷像前広場(西郷像は映らない)
上野の夜景(聚楽ビル)を背に、たたずむ平田。
●鶯谷旅館街
旅支度でこっそり抜出す笹森。
※「万上旅館」前を左に曲がり、寛永寺陸橋(写らないが)の下に出る。画面左に酒屋。
万上旅館は2019年2月廃業。酒屋は改築したと思われるが、2019年も同地に現存。
●本部 ※笹森から、被害者の情報、そして、平田との高飛びの気配
「キジマ、シロですねえ!」麻雀屋のアリバイをとって、佐藤たちが戻ってくる。
キジマは、殺人の代人だろうという読みが強まる。
所轄の大滝、大澤組には、管理売春の疑いがあるので、それを口実に一斉検挙した
らどうかと提案する。
そこに、笹森からの電話。被害者の名前と、平田が犯人じゃないとだけ告げて切れ
る。
「殺されたのはマツムラユキエ、北上の人です。それからもうひとつ、キジマさん
は犯人でねえす。」
話をした天田、バックに常磐線のアナウンスが聞こえたという。
鍵を握る平田が笹森と逃げるのでは、と予測した刑事たちは、上野駅へ急行する。
※笹森の電話をとった美川が「きのう援護所であった刑事」宛の電話というように聞こえるのだが、
昨日ではおかしいので、「ェき(駅)のォ援護所で」と言っているのではないかと、本稿筆者は解釈する。
●上野駅地下への階段上
階段を降りようとした平田は、梅野たちに気づいて引返す。
※平田の後ろに「喫茶ライオン」と映る。
●地下食堂街の某食堂 /挿入●地上、公衆電話の平田
待つ笹森に、電話の呼び出し。
「スドウさん、お電話です。」
追手の目があるのでホームで待合せることに。
笹森「今からだと、8時20分の急行がある。」
と、赤電話の横に貼られた時刻表を見て言う。
食堂のガラス越しに、笹森の姿を見つける、梅野の手下ケン・吉田毅。
※笹森への電話を呼出すウェイトレス。日活研究家・蟹氏の発表した、日色ともえであるという目撃情報。
それを元に、観直してみると、画面中央で小さく、一瞬だが正面を向いた顔は、たしかに日色ともえである。
※「男はつらいよ」でもおなじみの食堂街。JR東日本の逞しい商魂の下、2002年を最後に消えた。
しのばず口下、銀座線改札脇の食堂後は、ファミレスになったりしたものの、そのCASAも長くは続かなかった。
「上野駅らしさ」というのは、好き嫌いの、はっきり別れるものなのである。
別の踊り場には、のれんに「若尾文子より」と書かれた食堂があったものだ。
[参考]「ザ大衆食/上野駅食堂街の消滅」
http://homepage2.nifty.com/entetsu/syoumetsu4.htm
●地下食堂街上の階段
地下食堂街から、階段を上がり、出札口へ向う笹森。
おさわがせ稲垣も、妻と一緒に上がってくる。「しるこか、ラーメンか?よしよし。」
嬉しそうだ。
●中央出札口(切符売場) ※真犯人・杉山登場
切符を買おうとする笹森を見つける、芦田、菅原、天田。同時に、笹森に近づこう
とする梅野たち3人組を目撃。
菅原「あのサンダルばきが気に入らねえな。」
梅野の一味の杉山元の足もとが目に留まる。
梅野たちに捕まる笹森。
梅野は、手下の吉田に笹森を任せて、杉山とホームへ。平田を探しに行く。
※単体で立つ、準急行券の自動券売機が映る。
●列車ホーム(設定不明、ロケはおそらく14番線)
直江津行のサボ(行先札)を提げた列車のわき。平田を探す梅野と杉山。それをつ
ける芦田と菅原。
中央改札側つまり後尾から先頭(尾久方)へ、画面右から左へ歩いて行く。
※「直江津行」の10系客車が連なるシーンは地平ホームでの撮影の可能性が高い。寝台車を
連結しているので、2301レ急行〔丸池〕か。
●高架ホーム[ロケは10番線]
地平(1階)ホームから、階上に重なる高架10番線を見上げるカメラ。
その9,10番線ホームで、笹森を、今か今かと立って待っている平田。
※アナウンスでは、7番線、20時15分発の青森行が間もなく発車と言っている。
●中央改札前
平田は、様子を見に、改札近くに降りてくるが、またホームに戻る。
改札前で、平田を目視しした笹森は、吉田を振切って逃げようとする。改札口で、
その吉田を天田が取り押さえたので、笹森はホームへ駈けてゆく。
●ホーム先端 ※クライマックス
発車時刻が来て、ゆっくり動きだす列車。先頭はEF58。
その列車の横、梅野たちと鉢合わせた平田は、逃げようとして反対側の線路に飛降
りる。
そこに上りの到着列車が進入してくる。
両手を顔に、驚く笹森のアップ、絶叫を急ブレーキの音がかき消す。
目の前を通り過ぎて停車する無骨な電気機関車、EF57 15。
一方、発車して行く下り列車の脇で、梅野と杉山と格闘する、芦田と菅原。
菅原「ニイさんがた、ちょっと来てもらおうか。」
杉山「なんだなんだなんだ?」
菅原「鉄道事故の参考人だ!」
取り押えられる梅野。
逃げたリョウジ・杉山を中央改札前で組み伏せる、城所と佐藤。杉山のポケットか
らナイフが落ちる。
※梅野たちを芦田たちが取押えるシーンの撮影、高架ホームではなく、地平ホーム14番線。それに中央改札前。
●駅前(降車口車寄)
救急車に乗せられる平田。
芦田「キジマに間違いないね?」
力なくうなずく笹森。
●本部
ドアの前に群がる新聞記者達を押しのけて、美川が本部に戻って来る。
「飽きもせずにうるさいこった……。」
堀、佐藤、天田と笹森に杉山がいる。
「参考人ってのは、帰りたい時に帰っていいんだろ!」 虚勢を張る杉山。
「まあ待て、いま帰してやっから。」佐藤。
電話が鳴る。城所の、鑑識からの報告を受ける堀。
●取調室
梅野、不敵に応対する。犯人はキジマ・平田だと言い張る。
梅野「因果応報ってやつでサ。」
芦田「因果応報か……、いい言葉を知っているな。」
自首させようと、探していたという。
菅原「キジマは死んだわけじゃないんだぞ。」
じゃあキジマにきけばいい、オレは帰ってもかまわないだろうという梅野に、
芦田、せっかく来たんだからと、「警察の冷えた茶でも飲んで行けよ。」
佐藤がやって来て、芦田に耳打ち、それを菅原に伝える。
菅原「リョウジのナイフから、血液反応が出たそうだ。」
●宿直室 ※真犯人・杉山の自白
うってかわって冷汗をかいている杉山。堀の取調べを受けている。
「ガイシャの傷口とお前のナイフが一致したんだよ!」
入口に腰掛けている美川。
「そうだよ、オレがやったんだよ!」ヤケ気味に開き直る杉山。
面倒見てやったのに、逃げようとしたから殺したのだという。
美川、自白を聞き届けて部屋を出る。
●取調室
「リョウジが、吐きました。」
美川が、杉山の自白を告げに来る。梅野、バツ悪そうに横を向いている。
●裏階段
両手をポケットに、軽やかなステップで階段を昇って行く堀。後ろから芦田が問い
かける。
「ツカザキどうします?」
梅野の処遇を問う芦田に、堀は、どうせ再びガサ入れで引っ張ることになるが、ひ
とまず帰せとの指示。
●本部 ※笹森、被害者と自分の気持ちを語る
堀、平田の様子を聞く。天田、輸血中で意識不明のままだと答える。笹森、黙って
腰掛けている。
被害者を知っている笹森に、堀が尋ねる。
「女中さんかね?」
「表向きはね……。」
笹森、女中は表向きで、大澤組に客の相手をさせられたと供述。なぜ逃げないのか
と問われ、
「刑事さんさばわからねえのす……。」
堀、芦田、佐藤、天田の刑事達が見守る中、中央に腰掛けたまま、うつろに心境を
語りはじめる。
一度そういう暮らしに染まってしまうと慣れてしまうのだ、田舎のつらさに比べれ
ば、マシであると。
「それがあの連中のやり方なんだねえ……。
それでも、逃げようとした人いる!だども殺されたのす。
わたしも逃げる気になった……、でもわがんねがった……。」
電話が鳴る。芦田、そうか……、と受話器を置く。
「キジマが、亡くなったそうです。」
短い沈黙。部屋に戻ってきた美川、雰囲気に呑まれる。
「もうハァ、帰ってもいいんだね?」
立上がる笹森。明日の出頭を頼んで帰す刑事達。
旅館は営業停止でしょうね、仕事を探さねば、と部屋を出て行こうとする笹森。
「キミ!」
同じ東北出身の天田、呼止めて何かを言いかけるが、言葉が続かない。一瞬ふりむ
くが、ドアを出る笹森。
入替りに、城所が鑑識から戻る。
また電話がかかり、タケダアヤと名乗る。「昼間のお婆さん」谷栄だ。電話に出る
美川。
(駅前の派出所から電話をかける谷栄のカット、挿入される。)
結局、娘の消息はわからず。あらためてまた、金を貯めて東京に出てくるという。
美川「元気でいれば、そのうち必ず見つかるよ。気をつけて帰るんだよ。」
●中央改札 ※出演者たちの交錯
「ちょっと通してください。」
改札前の雑踏を割って、改札を這入る谷栄。学生服姿の実習生、切符に鋏を入れる。
よろよろと消える谷栄の姿。その手前に、改札の外を不安そうに見つめる、一人の
少女。コートの下はセーラー服のようだ。そこへ、
「よっちゃーん!」
コンコースから駈けてくる別の少女、天田が知り合った山形の少女だ。同じ工場に
勤める同級生を迎えにきた彼女は、一足先に東京に来た先輩として、自慢げに道を
案内する。
すれ違いに、やってきた笹森。改札の手前に立止り、ひっきりなしに人の行き交う、
──東北行の──列車ホームの方を見つめる。
●本部
机の上に並ぶ一升瓶とスルメ。捜査簿のヒモを締めたり、捜査本部解散の準備をす
る刑事たち。皆、無口で物憂気ない。
画面のバックには、東北出身者とおぼしき人々の、話す音声がコラージュされてい
る。
●別室・記者会見
新聞記者を前に話す捜査主任・堀の姿。現場の音声の代りに、
バックに電気機関車の汽笛が甲高く、「ピーッ」と響く。ゆっくりと動き出す列車
の音。
アップになる堀。
もう一度、汽笛が長く鳴り響く「ピーーーッ!」
オーバーラップするエンドマーク「終」、○C1965。
→ページ冒頭
【ストックヤード】
上へ連れてって3課へまわせ。(芦田)
クボタさんって、刑事なんだってなあ。びっくりしたけえ。(上京少女)
でも、板橋の方は間違いなかったです。/それはそれ、このヤマはこのヤマだよ。(美川・芦田)
片っ端からあげたらどうでしょう。(佐藤)
まあ待て、あわてるな。(菅原→天田/出札口前)
※被害者のハンドバッグの中にあったタバコは「いこい」。
老刑事ニシさん・美川も「いこい」、両切りなのでパイプに差して吸う。
【100】君も出世ができる(1964)
【99】父子草(1967)
【98】地方記者(1962)
【97】花のお江戸の法界坊(1965)
【96】童貞先生行状記(1957)
【95】駅 STATION(1981)
【94】大いなる驀進(1960)
【93】三十六人の乗客(1957)
【92】高度7000米 恐怖の四時間(1959)
【91】キングコング対ゴジラ(1962)
【90】かも(1965)
【89】警視庁物語 ウラ付け捜査(1963)
【88】拳銃0号(1959)
【87】希望の乙女(1958)
【86】旅情(1959)
【85】人間に賭けるな(1964)
【84】日本暴力列島 京阪神殺しの軍団(1975)
【83】東京湾(1962)
【82】野獣狩り(1973)
【81】ひとりぼっちの二人だが(1962)
【80】ギャング同盟(1963)
【79】明日は月給日(1952)
【78】もぐら横丁(1953)
【77】好人物の夫婦(1956)
【76】愛情の都(1958)
【75】警視庁物語 行方不明(1964)
【74】喜劇 男の泣きどころ(1973)
【73】橋(1959)
【72】東京の恋人(1952)
【71】特急三百哩(1928)
【70】アリバイ(1963)
【69】私は負けない(1966)
【68】月曜日のユカ(1964)
【67】おんなの細道 濡れた海峡(1980)
【66】続・酔いどれ博士(1966)
【65】ダニ(1965)
【64】硝子のジョニー 野獣のように見えて(1962日活)
【63】誘惑(1957)
【62】集金旅行(1957)
【61】ゴジラ(1954)
【60】閉店時間(1962)
【59】山鳩(1957)
【58】次郎長社長と石松社員(1961)
【57】サザエさんの青春(1957)
【56】背後の人(1965)
【55】重役の椅子(1958)
【54】川のある下町の話(1955)
【53】泣いて笑った花嫁(1962)
【52】はだしの花嫁(1962)
【51】のれんと花嫁(1961)
【50】ふりむいた花嫁(1961)
【49】わたしの凡てを(1954)
【48】愛人(1953)
【47】花嫁のおのろけ(1957)
【46】恋人(1951)
【45】33号車応答なし(1955)
【44】真田風雲録(1963)
【43】嵐を呼ぶ楽団(1960)
【42】サラリーマン目白三平 うちの女房(1957)
【41】人形佐七捕物帖 めくら狼(1955)
【40】流れる(1956)
【39】結婚のすべて(1958)
【38】踊りたい夜(1963)
【37】風流温泉日記(1958)
【36】喧嘩鴛鴦(1956)
【35】早射ち野郎(1961)
【34】香華(こうげ 1964)
【33】その壁を砕け(1959)
【32】おかあさん(1952)
【31】愛染かつら 総集篇(1938・39)
【30】赤い鷹(1965)
【29】人間狩り(1962)
【28】[シリーズ]事件記者(1959〜1962)
【27】地図のない町(1960)
【26】黒い画集 あるサラリーマンの証言(1960)
【25】吹けよ春風(1953)
【24】彼奴を逃がすな(きゃつをにがすな 1956)
【23】我が家は楽し(1951)
【22】花ひらく娘たち(1969)
【21】麦秋(1951)
【20】浮草(1959)
【19】鉄砲玉の美学(1973)
【18】最後の切札(1960)
【17】黄色いさくらんぼ(1960)
【16】空の大怪獣 ラドン(1956)
【15】涙を、獅子のたて髪に(1962)
【14】特急にっぽん(1961)
【13】時をかける少女(1983)
【12】幸福の黄色いハンカチ(1977)
【11】お国と五平(1952東宝)
【10】可愛いめんどりが歌った(1961)/夢でありたい(1962)
【09】充たされた生活(1962)
【08】人間蒸発(1967)
【07】若い樹(1956)
【06】こだまは呼んでいる(1959)
【05】抱かれた花嫁(1957)
【04】新・事件記者 殺意の丘(1966)
【03】空かける花嫁(1959)
【02】現代っ子(1963)
【01】七人の刑事 終着駅の女(1965)
※「福田秀実 民芸」
あほじらすの超高級クラシック専門ブログ 15.06.02
http://ameblo.jp/kimokenblog/
※捜査日 2014年3月3,4日/2016年2月10,13,15日/2019年1月25日 ラピュタ阿佐ヶ谷
2016年6月5日×2,8日×3,10日×2 シネマヴェーラ渋谷
→ページ冒頭
寒空はだか窓口 紹介 予定 随記 日活版「事件記者」 ジオシティーズ版・旧サイト