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【136】警視庁物語 十五才の女(1961東映東京)監督;島津昇一
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→【121】警視庁物語 血液型の秘密(1960)
→【122】警視庁物語 聞き込み(1960)
【136】警視庁物語 十五才の女(1961)
→【89】警視庁物語 ウラ付け捜査(1963)
→【123】警視庁物語 全国縦断捜査(1963)
→【75】警視庁物語 行方不明(1964)
▼キャスト▼ ▼捜査日程ダイジェスト▼
東映東京撮影所の人気シリーズ、長谷川公之原作「警視庁物語」第16作。
監督は、前週公開の「不在証明」に続く島津昇一。
多摩川の旧・宿河原堰堤で写生をしていた女学生達が、水に浮かぶ少女の死体を
発見する。
死亡推定時刻は、前夜20時頃。絞殺。推定17歳、複数回の性交渉の形跡あり。
所持品はちり紙のみ。赤いセーターにチェックのスカート。ズック靴が片方。
靴の片方がないことから第一現場(ゲンジョウ)、つまり殺害現場は上流とみて、
まずは、靴の捜索と、目撃情報の聞込み。
所轄は調布署、「少女殺し事件捜査本部」。府中署も、捜査の途中に登場。持込
まれたトランクには「捜査一課4号室」とあるが、今回、警視庁のシーンは無し。
今回のトップクレジットは、4人。
「堀雄二、千葉眞一[新人]、新井茂子[新人]、今井俊二」
おなじみ主任は神田隆。
以下、堀雄二、花沢徳衛、山本麒一、須藤健、佐原廣二、千葉眞一。
事件発覚の翌日の解決。冬の物語。
「羅生門」(1950)的な、主観的な証言の食い違いが描かれる。
犯人の自首に付き、捕物シーン無し。
神田隆…………警視庁捜査一課、捜査主任。
堀雄二…………同、部長刑事ナガタ。
花沢徳衛………同、ベテラン刑事ハヤシ。被害者と苗字が一緒
須藤健…………同、刑事ワタナベ。ハンチング愛用。
山本麟一………同、刑事カネコ。火鉢に夢中
佐原廣二………同、刑事タカツ。
千葉眞一[新人]…同、刑事ナカガワ。
松本克平………同、課長。
石島房太郎……調布署、捜査課刑事。
岡野耕作………調布署、少年係刑事
植田貞光………府中署の刑事
片山滉…………法医、おなじみ。今回はメガネ無し
新井茂子[新人]………被害者、ハヤシミヨコ 「ソバパン」
今井俊二(健二)…三多摩福祉事務所、ムラカミジロウ
小泉静夫[プレスシート参考]…若井組若衆、カズオ「木下和夫」
菅井きん………ミヨコの母
増田順司………三多摩福祉事務所、係長ナカニシ 馬場大門のケヤキ並木?
五月藤江………土手の休憩所のおばさん
殿山泰司………河原の休憩所のオヤジ 「ふじや支店」
大東良…………「貴美乃湯」の三助 小田急線の土手下
戸田春子………製パン工場「清水屋」の女将
岡部正純………製パン工場「清水屋」の小僧マツキチ
関山耕司………バタ屋、タメさん
藤山竜一………バタ屋、ロクさん
清村耕次………バタ屋、センキチ
山口勇…………若井組親分「若井興業」 東京競馬場の裏
潮健児…………若井組若衆、オオヤマ
岩上瑛…………シンカワ建設人夫、サメジマ 腕に竜の刺青の男
光岡早苗………ムラカミの妻 多摩川競艇場の近く
沖野一夫………カズオの父
▲ページ冒頭▲ ▼ページ末尾▼
◆◆捜査の行方◆◆ ▲キャスト▲ ※捜査中、随時加筆 2019.7.7
[プロローグ]
多摩川右岸(神奈川県側)、旧宿河原堰堤の土手。セーラー服姿の女子生
徒たちが、写生の授業……、そっちのけで合唱している。
先生にとがめられて、舌を出すお調子者3人組、河岸をを変えようと、堰
堤に登る。そこで絶叫。あおむけに浮かぶ若い女性の死体を発見したのだ。
[タイトル/スタッフ/キャスト/監督]
橋を渡って、続々と駈けつける、パトカー、警察車両。
土手の上に群がる野次馬。現場検証する刑事たち。第一発見者の女子生徒
も聴取を受けている。
[1日目] ▼2日目(解決)▼ ※結末明記 ▲キャスト▲
●旧宿河原堰堤(登戸駅の近く、小田急鉄橋の500mほど下流)
神田、堀、徳衛、山麟、須藤、佐原、千葉
法医・片山滉の所見
・他殺、首を絞められている
・死亡推定時刻は昨夜8時頃
・17歳前後(歯の成長程度による)
・非処女、それも相当の性交渉あり
・殺害当夜の性交渉の有無は解剖しなければわからない。
・所持品はチリ紙10枚程度
・靴が片方行方不明
靴が片方不明ということから第一現場(殺害現場)は、上流と仮定し、ま
ずは、その場所の発見と、身元を探すための聞込みを開始する。
堀&佐原、所轄刑事2名を連れ、ボートで対岸(左岸・東京都側)へ。
山麟&須藤、所轄2名と、右岸を遡上。
徳衛&千葉は、被害者の目撃証言を探す。まずは、土手下の川魚料理屋へ。
●「調布警察署」 神田
所轄の部長刑事?・石島房太郎に案内され、捜査一課長・松本克平と捜査
主任・神田が、「少女殺し事件捜査本部」へ。
「こりゃ、本庁のお茶より上等じゃないか。」
●多摩川河川敷
左岸の堀、佐原、靴を見つけるが違った
右岸の山麟、須藤。山麟、下着を発見。しかし、男児の「サルマタ」。
「しかも、ウンコまでついてますワ!」
●調布署/捜査本部 神田
行方不明の届出に該当なし。
警察美術展入賞経験のある警官、現場の絵地図を描いて、神田に誉められ
る。
●土手下の街中、洋品店 徳衛&千葉
女店員に、被害者の衣服、容姿で聞込み。
通りがかりの、銭湯「貴美乃湯」の三助の証言
・顔見知り、まだハタチ前のパンパン。悪い病気のせいで、股に傷。
・昨夜8時頃、客を拾って、土手の方へ歩いて行った
※バックに、小田急線の築堤が映り、デキ1010型という電気機関車牽引の
貨物列車が走る。
●多摩水道橋(狛江・和泉多摩川と登戸の間)北詰=左岸、東京都側
休憩処「ぼたん」 堀&佐原、山麟&須藤
合流して小憩する刑事たち。
五月「なんて言いましたっけね、ホラ、アベカワだかベトツクだか。」
山麟「ああ、アベック!」
店の小母さん・五月藤江から、この辺りにはアベックがよく来る、ときく。
・さすがにこの時期は寒いので来ない。
●調布署/捜査本部 神田、徳衛&千葉
鑑識報告と被害者の手配写真が届いている。
三助の証言を持って戻った徳衛と千葉に、鑑識の報告を教える神田。
・年齢15才
・前夜、支那ソバを食べている
●多摩川原橋(調布市の南西はずれ) ※第一現場発見
堀&佐原、山麟&須藤
左岸(北側=東京都側)で、堀が被害者の靴を発見
●調布署/捜査本部 ※被害者特定 神田、徳衛&千葉
少年係刑事から証言、被害者の身元が割れる。
・ハヤシミヨコ、1年前(当時14才)にパンを2個盗み、説諭
・母親はパンパン、粗末なバラック住まい
早速、被害者の家へ向かう徳衛と千葉。
直後、堀から、第一現場発見の電話報告。
●被害者ミヨコの家 徳衛&千葉
御休息所「ふじや支店」のオヤジ・殿山泰司に、ミヨコについて尋ねる。
母親は脳梅で、質問してもラチがあかない。
殿山に、ミヨコの客を知らないか、きく。
●多摩川原橋 堀、佐原、山麟、須藤
ミヨコの写真と地図が、ジープに乗った署員から届けられる。写真を頼り
に、刑事たちは聞込みを開始する。
●製パン工場「清水屋」 徳衛&千葉
小僧マツキチ・岡部正純、聴取される。
・岡部は、昨晩は、店番をしていてアリバイあり。
・ミヨコは、そば一杯で相手をしてくれるので「ソバパン」と呼ばれて
いる。
・洗濯屋の若い衆の紹介だが、バイクで事故死。
・他にタメさんという客がいる。
※府中市宮西町3-16に、清水屋パンという、小売りもする古い製パン所が
2019年現在もあるが、聞込みの結果、当地での営業は40年ほど前からだ
という。その前は、分倍河原だったということだ。
●砂利場 佐原
佐原、所轄刑事と聞込みするも、手がかりなし。
●中華そば店 山麟
山麟、所轄刑事と聞込みするも、手がかりなし。店を出たところで、佐原と
出くわし、嘆きあう。
山麟「いい聞込みがねえなァ。」
佐原[ぼくらの分担は、第一現場に近いんですがねェ。]
●バタ屋村(多摩川北岸) 徳衛&千葉
ぼちぼち夕餉の時分か、関山耕司、七輪にヤカンをかけている。
関山「ここらでタメさんと言やァ、俺のこった。」
関山のアリバイを確かめると、仲間の藤山竜一と将棋を指していたという。
さらに、仲間の清村耕次(風呂屋に向かう恰好)によれば、昨日、ミヨコ
を誘いに行ったが、出かけた後。
・他に、シンカワ建設の飯場にいる、竜のイレズミのある男が、ミヨコの
客。30歳くらい、中肉中背。
・ミヨコ行きつけの温泉マーク(連込み旅館)が、市内に1軒あるらしい。
清村「オレなんかはもっぱら、自家用車の中だけどね(ゴミを積む箱車を
指差す)。」
●シンカワ建設飯場 徳衛&千葉
久保一「そりゃァ、サメジマのことじゃねェか?」
・サメジマは、昨晩、一張羅の背広を着て出たきり、戻っていない。
●大衆食堂「佐野屋」 堀&須藤
小田急線の多摩川鉄橋(旧橋)のたもとの踏切の脇の食堂。
・食堂の女店員の証言。手配写真の女、つまりミヨコが、昨夜7時頃、
支那ソバを食べた。30歳くらいの、背広を着た中肉中背の男を連れて
いた。
(須藤と見比べて)「刑事さんより若くて色男よ!」
●調布署/捜査本部
・徳衛たちの聞込みと堀たちの聞込みに共通する、30歳くらい、背広を
着た中肉中背の男、に犯人のアタリをつける。
・現場主任の証言から、サメジマには前科があるというので、前科掌紋
をあたるよう、堀が指示。
[2日目] ※結末明記 ▲1日目▲ ▲キャスト▲
●府中警察署 堀
車で乗付ける堀。所轄の捜査課長に、サメジマ・岩上瑛を留置場より出す
ように依頼。
・サメジマは、一昨日の夜(当事件発生日)に、婦女暴行未遂で現行
犯逮捕
・ミヨコの死亡推定時刻は、呑み屋で焼酎を飲んでいた。
堀 「キミは、その晩はミヨコに会わ『なかった』ってね?」
岩上「よォく知ってんなあ……。あの晩、ミヨコと話がついてりゃあ、あ
んなことにはならなかったんだ。」
・ミヨコには先口があると、断られた。
・しゃくにさわるので後をつけると、「橋のところで」福祉事務所
の小役人、ムラカミという男が待っていた。
・ミヨコとムラカミが一緒にいるところを、ちょくちょく目撃して
いる。
※捜査本部のある調布署に比べ、近代的な鉄筋コンクリート製庁舎。
●府中署捜査本部
神田「なるほど、福祉事務所の役人じゃ被疑者ってことにはならんだろう
からなあ。」
福祉事務所へ聞込みに、堀、徳衛、千葉が出て行く。
ミヨコ行きつけの温泉マークを探しに出る須藤と山麟
●「三多摩福祉事務所」 堀、徳衛、千葉
岩上の証言を基に、ムラカミに聴取に行くも、カンサツに外出中。
係長ナカニシ・増田順司に、ムラカミの素行を尋ねる。
・殺害されたミヨコの担当として、よく見ていた。マジメな男。
堀 「それだけですかな?」
増田「それだけ……、と申しますと……、どういった意味の事でございま
しょう。」
・事件当夜のムラカミは、定時(5時)に、増田と共に退勤。
ムラカミの現住所をきいて、千葉が聞込みに出て行く。
大変な仕事ですね、と水を向けると、ぼやき出す増田。
増田「ムラカミ君に会わせろと、おとといなんかもヤクザが怒鳴り込んで
きましてね。」
事件との関連の匂いを感じて、ヤクザの所在をきく。
●ムラカミの家 千葉 ※多摩競艇場前
洗濯物を干しているムラカミの妻・光岡早苗。縁側の歩行器には赤ん坊。
警察手帳を見せての夫の尋問に驚く光岡。千葉は、ムラカミにも疑いをも
たれていることを隠して、一昨日の行状を聞出す。
・一昨日、ムラカミは、宿直だと言って出勤したが、頭痛がすると言っ
て、11時頃帰宅
千葉は、いぶかしむ光岡を言いくるめて、ムラカミの写真を借りる。
●府中署玄関
警視庁と書かれたジープに乗込み、出て行く徳衛と、所轄刑事・植田貞光。
●(府中)東京競馬場
ゲート式発馬機からスタートする競馬馬。
●「若井興業事務所」
競馬場裏に構える邸宅。
勝手知ったる、といった風情ではいってゆく所轄の植田。
「あ、ダンナ、今日は何の御用で?」
「社長は、いるかな。」
「ヘイ、おりやす。どうぞ。」
応接間に、恰幅のいい「社長」山口勇がやってくる。徳衛も丁寧に挨拶す
る。
一昨日、福祉事務所でごねたという、ヤクザの若い衆オオヤマ・潮健児を
呼んで、聴取。
潮 「カズオのヤロウがあんまり可哀想だったもんで。」
・カズオというのは、ここで雑用で使っている少年。
・カズオは、同じ小学校だったミヨコに本気で惚れてしまい、売春を
やめさせようとした。
・しかし福祉事務所のムラカミが、補助金をタネに 「いいように願っ
ていたんすからね。」
・ムラカミに抗議に行くと、証拠があるのか、と突っぱねられた。
カズオが、一昨日から欠勤しているというので、徳衛は、カズオの実家の
住所を教えてもらう。
・カズオの父は、ダム工事現場で頭に石を受けた後遺症で目が見えな
くなった。母親は小料理屋勤めに。
●「三多摩福祉事務所」
堀がひとり、ムラカミの帰りを待つが、なかなか戻らない。
状況を知らせる電話を、本部にかける。
●府中署捜査本部
電話が鳴る。卓上には、千葉の持ち帰った、ムラカミの家族写真。うっすら
見える夫の顔は今井健二らしい。
神田「はい、本部。ああ、ナガタくんか。」
ムラカミ帰投しだいの連行を指示し、電話を切る。そこに須藤と山麟が、所
轄の刑事を連れて勢い込んで戻る。
・ミヨコの使う温泉マーク特定。
須藤、ムラカミの写真を持って再びその温泉マークへ首実検に急ぐ。
●カズオの家 徳衛
土手下の粗末な木造家屋に、徳衛の乗った車が着く。
「痛い、痛い!アンタそんなんじゃ、いつまでたってもアンマになんかな
れやしないよ!」
目の不自由な、カズオの父・沖野一夫が、妻を相手に、マッサージの練
習をしている。
・息子カズオは、一昨日(事件当夜)、家を出たきり戻っていない。
・カズオの行きそうなところ、に心当たりはない。
・しかし、事件の夜、10時過ぎ、ムラカミがカズオを訪ねてきた。
・カズオの母の働く店にも、11時前、ムラカミが訪ねてきた。
※家のカットの前に、「東京都北多摩地方事務所 福島橋監視所」とい
う建物が映る。
福島橋というのは、事件の舞台のエリアよりかなり上流の、昭島市と八
王子市の市境の多摩大橋の旧称だが、当時は架橋前。少し下流に、貧弱な
橋が存在したようなので、それが福島橋か。
参考;https://ameblo.jp/camumiya/entry-10642205213.html
●府中署捜査本部
徳衛、署に戻り、報告。ムラカミは、ミヨコを殺害した後、カズオも殺
したのではないか、と推理する。
神田、卓上のメモ用紙に関係者の名前を鉛筆で書き付けながら頭をひね
る。おなじみ。
●府中署玄関前
堀が車で、ムラカミ・今井健二を連行してくる。
●府中署捜査本部
徳衛「さァ、もっと火のそばへ。」
神田「さっそくですが村上さん、あなたは事件の晩、林美代子と会ってらっ
しゃいますね。」
今井「いいえ、会ってません。」
夕方6時頃、岩上の、橋での目撃証言をただすと、発言をひるがえす。
千葉「いい加減に、本当のことを言ったどうです!」
山麟「時間がたてば、全部わかっちゃうんだよ。」
今井「実は……、カネを少しやろうと思いまして。」
神田「ほォ、カネを。」
今井「どうせ飲んじゃうカネですから。それなら少しでも彼女の役に立て
ようと……。」
・ミヨコとは、歩きながら話して、別れた。
・今井は、ミヨコとの性的関係については否定する。
電話が鳴り、千葉がとろうとするのを制して、神田が出る。
神田[──そうか。わかった。(受話器を置いて)ムラカミさん、アンタ、
林美代子と温泉マークに行ってるそうじゃないか。]
今井「ミヨコの方から誘ってきたんですよ、それでつい……。でも、こん
なこと、やっちゃいけないと思いました。それであの日も、なんとか(売
春なんか)やめさせようと──。」
須藤、佐原たちの情報を待つ刑事たちは、うさんくさそうに今井を見つめ
ている。
●府中署玄関前
後ろ姿の下半身が画面に映る。汚れたズボンに痛んだ靴を履いた少年。た
めらいながらも、警察署のドアを押してはいってゆく。
●府中署捜査本部/ムラカミの回想
電話が鳴る。大衆食堂に聞込みに行った佐原から。女店員が、ミヨコと来
た男は今井だと、写真を見て証言したのだ。
神田「あの晩、電車で4つばかり先の駅から川岸に向かった踏切のそばの
大衆食堂でミヨコとラーメンを食べてますね。」
須藤「ネタはあがってんだぞ!」
山麟「だんだんバレてきちゃう、まずいなあ。」
・今井曰く、大衆食堂でもやめるように説得したが、聞かない。
「いや、あたい、このままがいいわ。」
「キミには分からないかもしれないけど、これはいけないことなんだ。」
・母親の面倒は、施設を紹介するから安心して仕事を探すよう勧める
今井は、終始、紳士的な態度。
「そんなことより、ねえ……、行きましょうよ……。
ねえ、ねえったらァ。今日が初めてってわけじゃないでしょ。」
小泉「見たぞ!証拠をつかんだぞ!」
カズオが、ナイフを持って、今井にとびかかろうとしている。
「何を思ったか、証拠をつかんだつかんだって、ボクはやめるように言っ
てただけなんですから。ホントですよ……。」
●府中署裏、本部から取調室に抜ける通路
取調室に向かう堀と徳衛。途中、温泉マークから、今井の目撃証言を持っ
て帰った須藤と出会う。
●府中署取調室/カズオの回想 堀、徳衛、所轄・石島
堀 「キミ、カズオ君だね?」
ゆっくりうなずき、事件当夜の状況を話し始めるジャンパー姿の少年カズ
オ・小泉静夫。
・事件当夜、ムラカミ・今井と会うというミヨコ・新井茂子を止めよ
うとしたが聞かなかった。食堂の前で30分ばかり待っていたが、出て
きた2人は、川の方へ降りて行った。その様子をうかがう小泉。
以下、カズオの回想映像●多摩川原橋下
・売春をやめたいという新井に、いじわるな口調で今井が反対する。
今井「やめてどうするの?」
新井「あたい、働くわ。」
今井「働くって……、中学もロクに出てないんだろう?」
新井「女中でもなんでもするもん。」
今井「お母さんはどうするの?」
・娘が働けば、生活保護の補助金は、他の人にまわすことになる。だ
からこのままで良いのだ、と今井はいい、温泉マークに誘おうとする。
いやがる新井。
今井「いいじゃないか、今日が初めてってわけじゃあるまいし。」
そこにナイフを持ったカズオ・小泉が現れる。
小泉「見たぞ!証拠をつかんだぞ!」
小泉が、ナイフを持って、今井にとびかかろうとしている。あわてて逃
げ出そうとする今井。
新井は、追いかけようとする小泉の足にしがみついて、止めようとする。
ひきづられる新井(この時点では、靴は脱げていない)。
今井は、土手を駆け上がって、姿を消す。
小泉は悔しそうにあきらめて、ナイフを川に放り投げる。
今みたいなことはやめてくれと小泉は懇願するが、どうすればいいのか分
からない、と新井は泣き叫ぶ。
新井「あたいもお母ァちゃんみたいになっちゃうんだ!あたいなんか生ま
れてこなきゃ良かったんだ!あたい死にたい!死にたい!」
すがりついて泣きじゃくる新井の首を、思わず絞めてしまう小泉。小泉の
体から力が抜けて水に落ちる。川岸には、脱げたズック靴が片方残ってい
た。
●府中署捜査本部
本部の戸の外で、堀の報告をきいている神田。
堀 「というわけで、信用できる自白だと思いますが。」
神田「よし、逮捕状をとろう。ウラを固めておいてくれ。」
神田「ムラカミさん、一つだけきいておきたいんですがね。」
・事件の夜、今井が小泉を探し歩いたのは、「証拠をつかんだ」と言っ
ていたのが気になって、会って誤解を解きたかったからだ、という。
[3日目/エピローグ1]
●多摩川原橋下
現場検証。カズオ・小泉の証言を基に、凶器のナイフを探す。ズボンをま
くり、冷たそうな水にはいる佐原と千葉。
千葉「ありましたー!」
[エピローグ2]
某精神病院、徳衛がミヨコの母・菅井きんを訪ねてきた。
医師の案内で、閉鎖病棟へ。きんは部屋の中で、端切を縫い合わせている。
医師「何をこしらえてるんだい?」
きん「娘ももう年ごろだからね、よそゆきを縫ってやってるんだ。」
徳衛「(医師に)娘さんを殺した犯人が捕まったって教えてあげたいんで
すがね。」
医師「もう、娘さんが死んだってことも、覚えちゃいませんよ。」
徳衛は、やるせない面持ちで病棟を辞する。
病院の前庭、クレーンアップ。車が門を出て行く。
[エンドマーク]「終」○C1960
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