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【154】暖春(1965松竹大船)監督;中村登
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▼キャスト▼ ▼背景▼

 秋の京都東山。ウェブ情報によれば所は南禅寺。小料理屋「小笹」の前に停められた、白
いオープンカー、ルノーカラベル。群がる子供たち、店の中から暖簾を出しに来た長門裕之
が追い払う。ねじり鉢巻きの長門は、灰皿をテーブルに置いたり、真面目そうに開店の準備
をしている。そこへ、重そうなコートを羽織った恰幅の良い山形勲が、首をすくめるように、
狭い店に這入ってくる。いわくありげに店を見回しつつ、
「まだ早かったかな?」
「いえ、かまいまへん。」
 腰掛ける山形に長門がおしぼりを出す。
「京都はやっぱり寒いねえ。」
「お客さん、東京の方?」
「ああ。チヅちゃんは元気かね?」
「今、錦の方に買い物に行ってま。お知り合いの方ですか?」
 長門が相好を崩す。長門は燗酒をつけながら、チヅのことをほめ、自分が婿候補のような
こと語り出す。長門の話に相槌をうちながら、ようやく山形は、店の女将について尋ねる。
「女将さんやったら、裏で掃除してはります。」
「なんだ!おせいさんいるの?」
 勝手知ったる様子で、店の奥に踏入る山形、裏の方に声をかける。出てくる和装の森光子
「いやあ、ヤマグチセンセ!」
 なつかしそうに声をはずませる森は、奥の座敷に山形を招き入れる……。
 セリフはうろ覚えで恐縮だが、この冒頭のシーンから、色調といい、カメラワークといい、
穏やかで流麗に、いかにも松竹映画という優美さが横溢している。山形の芝居が絶品、それ
を、生粋の京育ちの長門と森が、きれいな京言葉で受ける。

 主演の岩下志麻は吉祥寺育ちとはいえ銀座生まれ。東京っ子の志麻が、京言葉をこなして、
御転婆な京娘を演じる。当時25歳、容姿端麗、志麻の魅力が爆発。特に、酔っぱらった志麻
のキュートさたるや。脚本の狙い通りに演技する達者さも光る。
 映画のストーリーは、現代の価値観・規範で測ると、人によっては眉をひそめるような人
間関係だが、情感を楽しみ岩下志麻を愛でる、小津系の古き良き松竹上流階級映画である。

「行きまひょー。」

紅萌ゆる岡の花 早緑匂う岸の色――

◆キャスト◆  ▲ページ冒頭▲

岩下志麻………ササキチヅ、24歳 明朗快活な京女、東京に憧れる
森光子[東宝]…志麻の母、「小笹」の女将、おセイさん 元、祇園の芸妓ヒナギク
山形勲…………森の祇園時代からの馴染、ヤマグチ先生 大学教授 京大出身
有島一郎………森の祇園時代からの馴染、オガタ専務 自動車会社勤務 京大出身
長門裕之………西陣織元ウメガキのボン(若旦那) 志麻にオカボレ
三宅邦子………山形の妻 おなじみ、上品な奥様
乙羽信子[東宝]…有島の妻 メガネをかけて、ちょっときつそうな奥様
川崎敬三[大映]…有島の秘書、ハセガワ 京都・二条堀川出身
三ツ矢歌子……赤坂・旅館「春久」の女将 有島の浮気相手
桑野みゆき……志麻の高校同級生 新婚、晴海の団地住まい
倍賞千恵子……志麻の高校同級生セツコ 一回り年上のボーイフレンドのいる「不良BG」
太田博之………山形の息子、高校生ヨシオ エレキギター狂い
早川保…………桑野の夫カネコ 会社員、麻雀で(本人申告)帰らないことも
宗方奈美………川崎の同棲相手
呉恵美子………太田の彼女ケイちゃん 姉(20歳)が子を成した男から捨てられた

志賀真津子……西銀座・バー「リラ」のマダム
山本多美………京都・旅館「岩波」の女将 山形の逗留先、森ともなじみ
谷よしの………三ツ矢の旅館の女中

岸洋子…………銀座のクラブの歌手  ※協力クレジット「ニューラテンクオーター」


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