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即席映画狂 第2部【101】〜【150】
※黄金時代の日本映画を、にわかマニアが2010年代からランダムに振返る。
時にお節介に、データの押売が鼻につくも、御容赦。
脚本、プレスシート、キネ旬等の資料を鵜呑みにせず、鑑賞による検分にて。
各作品を観ていない方に、梗概を説明する趣旨ではありません。
観終わった後で、思い出す助けにでもなれば。
→即席映画狂 トップページ[最新] ▼【101】新東京行進曲(1953)▼
【1〜100】第1部 【151〜】第3部
【00】シリーズ刑事物語(1960〜61) →【特集】
→後【151】 ▼前【150】 ▲ページ冒頭▲
【200】香港ノクターン(1967)
【199】赤ちゃん特急(1956)
【198】私はモスクワを歩く(1963)
【197】高校生芸者(1968)
【196】星の瞳を持つ男(1962)
【195】一心太助 天下の一大事(1958)
【194】大巨獣ガッパ(1967)
【193】東京マダムと大阪夫人(1953)
【192】ニコヨン物語(1956)
【191】花札渡世(1967)
【190】東京犯罪地図(1956)
【189】陸軍落語兵(1971)
【188】刑事物語 犯行七分前(1961)
【187】刑事物語 ジヤズは狂っちゃいねえ(1961)
【186】刑事物語 殺人者(ころし)を挙(あ)げろ(1960)
【185】素浪人罷通る(1947)
【184】狙われた男(1956)
【183】愛と希望の街(1959)
【182】泉へのみち(1955)
【181】明日の夢があふれてる(1964)
【180】うわきのすすめ 女の裏窓(1960)
【179】三羽烏三代記(1959)
【178】恋とのれん(1961)
【177】霧の旗(1965)
【176】風の視線(1963)
【175】点と線(1958)
【174】警視庁物語 108号車(1959)
【173】有りがたうさん(1936)
【172】喜劇急行列車(1967)
【171】カミカゼ野郎 真昼の決斗(1966)
【170】彼岸花(1958)
【169】日本のいちばん長い日(1967)
【168】風の中の子供(1937)
【167】太陽を抱く女(1964)
【166】七人の刑事 女を探がせ(1963)
【165】月給¥13,000._(1958)
【164】○秘 ハネムーン 暴行列車(1977)
【163】学校(1993)
【162】朝を呼ぶ口笛(1959)
【161】猫と庄造と二人のをんな(1956)
【160】暁の翼(1960)
【159】どろ犬(1964)
【158】幌馬車は行く(1960)
【157】ワニと鸚鵡とおっとせい(1977)
【156】虹をわたって(1972)
【155】当りや大将(1962)
【154】暖春(1965)
【153】軍国酒場(1958)
【152】独立愚連隊(1959)
【151】音楽喜劇 ほろよひ人生(1933)
【150】あした晴れるか(1960)
【149】反逆兒(1961)
【148】喜劇 男は愛嬌(1970)
【147】鏡の中の裸像(1963)
【146】わんぱく天使(1963)
【145】千羽鶴(1953)
【144】(あす)明日をつくる少女(1958)
【143】電話は夕方に鳴る(1959)
【142】はだかっ子(1961)
【141】野を駈ける少女(1958)
【140】若い恋人たち(1959)
【139】有頂天時代(1951)
【138】姉妹(1955)
【137】花嫁の抵抗(1958)
【136】警視庁物語 十五才の女(1961)
【135】白い閃光(1960)
【134】続ますらを派出夫会 お供は辛いネの巻(1956)
【133】冷飯とおさんとちゃん(1965)
【132】関の彌太ッぺ(1963)
【131】ゆうれい船 前篇/后篇(1957)
【130】三等重役(1952)
【129】芸者学校(1964)
【128】夕陽に赤い俺の顔(1961)
【127】ジャズ・オン・パレード ジャズ娘乾杯!(1955)
【126】カレーライス(1962)
【125】おヤエのママさん女中(1959)
【124】新幹線大爆破(1975)
【123】警視庁物語 全国縦断捜査(1963)
【122】警視庁物語 聞き込み(1960)
【121】警視庁物語 血液型の秘密(1960)
【120】警視庁物語 遺留品なし(1959)
【119】四畳半物語 娼婦しの(1966)
【118】雲がちぎれる時(1961)
【117】水溜り(1961)
【116】ある見習看護婦の記録 赤い制服(1969)
【115】男はつらいよ(1969)
【114】警視庁物語 顔のない女(1959)
【113】刑事物語 知り過ぎた奴は殺す(1960)
【112】刑事物語 前科なき拳銃(1960)
【111】吹けば飛ぶよな男だが(1968)
【110】刑事物語 銃声に浮かぶ顔(1960)
【109】名もなく貧しく美しく(1961)
【108】接吻泥棒(1960)
【107】一刀斎は背番号6(1959)
【106】やさぐれ姉御伝 総括リンチ(1973)
【105】女の暦(1954)
【104】刑事物語 東京の迷路(1960)
【103】警視庁物語 深夜便130列車(1960)
【102】東京のバスガール(1958)
【101】新東京行進曲(1953)
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【150】あした晴れるか(1960日活)監督;中平康 →後【151】[第3部] ▼【149】
「昨日風吹き 今日は雨降り 明日晴れるか」
江戸っ子気質、新進カメラマン・石原裕次郎。オテンバでキュート、芦川史上屈指
のかわいさ・芦川いづみ。ギャングの安倍徹と草薙幸二郎をからめた、日活らしい、
中平監督らしい、きびきびしたドタバタコメディ。1960年型、赤い二代目トヨペット
コロナで、都内各所を疾駆する。
宣伝部ものならではの、スポンサーとして公然タイアップ攻撃。さくらフイルム、
トヨタ、ワカ末、アサヒビール、オーシャンウヰスキー、森永乳業、加美乃素……。
ただし、おなじみ「ワカ末」や、加美乃素は、セリフだけで現物は出ない。裕次郎と
芦川が、居酒屋で重ねるのは、ガラスの一合徳利、菊正宗。
タイアップではなかろうが、渡辺美佐子、スワ、睡眠薬自殺か、と騒動になるのは、
例によって緑の小壜、ブロバリンの暗示。
芦川は、黒くて太くて四角いフレームのダテメガネをかけている。子供扱いされな
いようにするためだという。さくらフイルムの、新米宣伝部員、頭でっかちでギロン
好きのハリキリ娘。お酒を呑んだらデロデロ、ここがまた可愛らしい。一方、裕次郎
は青年写真家、いつも通り、世の中に迎合しない奔放な男。アルバイト先が、秋葉原
にあった神田青果市場、叔父・三島雅夫が市場の重役。というわけで、裕次郎は、野
菜を語りだすと止まらない。クライマックスは夜のヤッチャバ、安倍たちを相手に、
野菜を使った大乱闘。
裕次郎は、セリ人として、仲買人の前に立つ。
「ブリバン、ブリバン、ブリバン、ヤッコ、ヤッコ、ヤッコ、サンマル、サンマル、
サンマル……。」
ヤッチャバ(野菜市場)の符丁、ブリバンは25、ヤッコは28、サンマルは文字通り
30だそうである。
「いじってたら、開いちゃったワ。」渡辺美佐子
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【149】反逆兒(1961東映京都)監督;伊藤大輔 ▲【150】 ▼【148】
名作、圧巻。
悲運の若き武将、三郎信康・中村錦之助。父母を愛しつつも、ままならぬ運命。
女優対決、杉村春子と岩崎加根子。ともに、高眉、お歯黒。
悩める佐野周二、らしさ。そして一番かわいそうなのは、櫻町弘子。
今川の血を引き、信長の娘を妻とする、家康の嫡男、徳川三郎信康。徳川家の安
康のため、切腹を命じられる。悲しきさだめを包む、伊福部昭の哀しき調べ。
「わらわにとって、天にも地にもかえがたき……。」
(家康・佐野周二に嘆願も、是非もなき若御台・岩崎加根子)
「そなただけじゃ、そなただけじゃ、頼りになるのは……。」
(錦之助にすがりつく母・築山御前・杉村春子)
「小侍従、わらわ、きれいなかや?」(久々の錦之助の来訪に喜ぶ岩崎加根子)
「不憫じゃが、信康……、オレに似すぎる……。」
(錦之助の始末を佐野に迫る前に、信長・月形龍之介、
的場で弓を射ながら。傍らに秀吉・原健策)
「若い者には若い者の唄がござりまする。死なふは一定(いちじょう)――。」
大井川合戦勝利の宴で、颯爽と舞う錦之助。ワイドスクリーン狭しと移動、追うカ
メラ。
正室・岩崎加根子のもとへ、謝りに行く錦之助。感激する岩崎を抱上げ、御姫様抱っ
このまま、何度もキスをする錦之助。
「小金吾(河原崎長一郎)!」
「はっ!」
「徳姫(岩崎加根子)に伝えてくれ……。よしなき成行きであった、が、女のことゆ
え、とがめはせぬ、と。……愛していた、と。」(遺言を託す錦之助)
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【148】喜劇 男は愛嬌(1970松竹大船)監督;森崎東 →【149】 →【147】
倍賞「オレ、アタマ悪いからな。」
筆者、ウカツにもこれまで、森崎作品を1本も扱っていなかった。
「われ鍋にとじぶた。」森崎東監督が倍賞美津子で撮った、黒い「下町の太陽」。
裏「男はつらいよ」。
ドタバタ度は前年の「喜劇女は度胸」よりグレードアップ。ダンプカーが突っ込
んだままの貧乏長屋で大騒ぎ。
おなじみ真白き富士山に「松竹映画」、続いて満開の桜。窓を開けて作業着を脱
ぐ、白いブラジャー姿、サービス満開の美津子。主人公、「小川春子」が少年院を
退所するシーンから映画は始まる。私物を受けとり、残る「ギン子」沖山秀子たち
にあいさつを交わし、門を出る。手には、けん玉とマンガ本「えんとつ太郎」。無
骨なチョコレート色の国電に乗込んでタイトル。主要キャストは役名付。山本直純
の音楽は、口笛にアコーディオン、どこか寅さんチック。
保護司「曽我民夫」寺尾聡の兄、ケラゴロこと「オケラの五郎」渥美清。寺尾は、
倍賞がグレたのも兄・渥美のせいだと責任を感じている。折悪しく、倍賞の帰るの
と同時に、渥美の乗ったマグロ船が帰港。三崎からマグロ一頭さげて、渥美は帰っ
ていた。
この作品での渥美清は、やんちゃぶり極まる。
「悪霊退散!」うちわ太鼓を叩いて、不幸の来るのを防ごうとする、倍賞の父・く
ず屋の浜村純。必ず当たる浜村のカン。酔った佐藤蛾次郎の運転するダンプ、黄色
と黒のトラジマ、三菱ふそうのボンネットのダンプ、運転席には渥美と沖山。浜村
のいる倍賞の家に突っ込む。悪い予感、当たり。カリエスで寝ている、倍賞の弟の
手前で止まる。以降、ダンプはそのまま、ストーリーは進行する。
「どうしたんだい、灯りもつけないで。」
渥美の母・桜むつ子が、ダンプの鼻ヅラを蹴とばすと、ヘッドライトが点灯。
大家・田中邦衛と被害者・浜村、ダンプの持ち主・田武謙三、補償をめぐって大
ゲンカ。そこに渥美が加わって、ダンプの前で4人の豪華なキャストのケンカ。
渥美「こちとら、アタマが頑丈にできてんだ!」
その前で弟のシビンをさがす倍賞。弟は、クズの中から浜村の選んだ、トルスト
イを読んでいる。
♪むかし、むかし、ヘソの下ー、助けたカメのヘソの下ー
♪もしもしカメよ毛が生えたー、世界のうちで毛が生えたー
大杉侃二郎と谷よしの、御近所役で共演(クレジット有)。
田武謙三、中小企業のつらさを、太宰久雄の前で訴える。
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【147】鏡の中の裸像(1963松竹大船)監督;中村登 →【148】 →【146】
倍賞千恵子と桑野みゆきの下宿する杉山徳子の家。その近くまで池部良が倍賞
を自動車で送る、寺町の三叉路。古い木造家屋の前に、赤いベンツ、羽根ベンが
止まる。
その光景に筆者はのけぞる。今や谷中のランドマーク、化け物のようなヒマラ
ヤ杉で有名な、みかどパンの前。もちろん、まだ木は巨大ではない。パン屋でも
ないようだ。もっと昔は団子屋だったという。
というわけで、倍賞とダメ男・川津祐介の会う跨線橋は、その近所、日暮里駅
南側の芋坂跨線橋。カナリヤ色の山手線、茶色い常磐線国電、京浜東北。常磐線
と東北高崎線の急行電車、その間を縫って客車列車も。奥の坂を登る京成の青電。
バックの競演に気をとられて、二人のセリフが耳にはいらない。
主な舞台の沢村貞子の「クロカワ美容室」。外観の横に映る電柱に、中目黒3
丁目の住所。ドラ息子・神山繁が浴衣がけで、仕事帰りの桑野を誘いに来る駅前、
「祐天寺駅前」のバス停。ということはやはり、設定上もロケ地も、祐天寺駅近
くということになる。
倍賞の故郷「千葉の勝山」は、内房、浦賀水道に臨む鋸南町、源頼朝上陸の地、
竜島海岸。浮島、傾城島などの景勝地と、母と姉、浦辺粂子と市原悦子のサービ
ス。
桑野の実家は、千住のお化け煙突を見上げる西新井橋の北側の設定。西新井橋
は、木橋の旧橋と、現在使われている新橋が併存。こちらは、顔にも膏薬を貼り、
「リウマチが痛んで」とこづかいを暗にねだる、汚婆・高橋とよの大サービス。
同年公開の「下町の太陽」(監督;山田洋次)でも、倍賞の同僚を好演した
水科慶子。おなじみの屈折男・山本圭の彼女として、倍賞、桑野に続く3番手だ
が、健気にたくましく活躍。「下町の太陽」とともに彼女の代表作といって良い
か。
「このゲジゲジ!クソダルマー!」神山をののしる妻・千野赫子。
▲【148】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【146】わんぱく天使(1963東京映画)監督;久松静児 →【147】 →【145】
筆者が育った草加松原団地と、デザインが酷似している。冒頭と最後に映る空
撮映像や、建物の配置を検討した結果、同時期に造成された、公団三鷹台団地
(再開発前)をロケ地と断定。4階建と5階建の中層フラットハウスが混在、ボッ
クス型のポイントハウスもいくつか。
[一行抹消]作品中の地名も、ムサシノ台、とロケ地を意識していそうである。
「ムサシガオカ団地」、メインの実景は三鷹台だが、伴淳の写真店のある団地と、
木暮実千代がフラフラと踏切にさしかかった団地は別の団地。
木暮実千代の踏切、夜景でわかりにくいが、横切る電車はシルエットながら濃
緑色で京王電車のフォルム、その向うに給水塔と団地。それから導き出されるの
は、今は亡き、国領の都営金子町アパート?
伴淳の「ベッテイ写真舘」、後ろに映り込む86、87号棟。三鷹台団地はそこま
で大規模ではないから、さて、どこだろう。
▲【147】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【145】千羽鶴(1953大映東京)監督;吉村公三郎 →【146】 →【144】
木暮実千代「アタシって、ダメなオンナなのよ。」
ダメ男二代と、ダメ女二人。 ドロドロのメロドラマ。ザ・森雅之、ザ・木暮
実千代、ザ・杉村春子。で、やはり最後に主役をさらってゆく、文学座・杉村。
鎌倉&スカ線(横須賀線)映画。りりしい木村三津子。娘役も演じる乙羽信子。
ああ、そして、ワンポイント、ザ・進藤英太郎。
▲【146】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【144】(あす)明日をつくる少女(1958松竹大船)監督;井上和男
→【145】 →【143】 →キャスト
桑野みゆき「下町……、この煙の下でアタシたち、一生、暮らしてゆくのね。」
山本豊三 「そうさ、ススだらけのふるさとさ。」
上の会話は、決して悲観的な暗い気持ちではない。桑野&豊三コンビで、井上
監督が、「野を駈ける少女」に続いて撮った、下町貧乏職工青春恋愛もの。原作
は早乙女勝元「ハモニカ工場」。
荒川放水路(現・荒川)と中川放水路(現・中川)の間の中堤にそそり立つ、
中世の王城のような「船堀閘門(こうもん)」の上で、潮の匂いを感じつつ、二
人は、将来の希望を語り合う。今は跡形もなく、上を高速道路が走る。江戸川区
北葛西の、新川西水門の向う岸にあたる。塔の頭の上の部分だけ、上流の岩淵水
門の資料館に保存されているという。
二人のバックには、今は亡き木桁の旧葛西橋、その向うに東京湾。反対側には
これも移築架替え前の旧船堀橋。荒川対岸、小名木川と旧中川の合流部にあった、
同じデザインの小松川閘門は、下2/3は埋もれているが、大島小松川公園・風の
広場に、令和の御代にも、ひっそりとたたずんでいる。
主人公・豊三、桑野たちが勤めるハーモニカ工場「小島楽器製造」。資料には
北千住の、とあるが、具体的には、地名が登場しない。荒川べりの、とある下町、
工場地帯が舞台だ。想起されるのは、足立区、荒川区、墨田区、そして江戸川区。
明示されるのは、悲恋担当、渡辺文雄と瞳麗子が早朝デートをする東武線「堀
切駅」。小津安二郎「東京物語」で場末として描かれて有名。今より下流にあっ
た、旧堀切橋下で、文雄は結婚について嬉しそうに語る。瞳の顔は、冴えない。
画面奥の鉄道橋を、京成電車がゆっくり渡る。
毒蝮三太夫こと石井伊吉が、父・左卜全と暮らすのは、お化け煙突を見上げる
西新井橋の土手下、千住桜木。いや、尾竹橋際か。
桑野の家、母・清川虹子が営む惣菜屋は、京成線の踏切の脇。押上線のロケと
推定される。同年公開の松竹映画「眼の壁」他、3本立てのポスターが貼ってあっ
て、下に「玉ノ井新劇場」とある。
渡辺文雄が、星空をバックにたたずむのは、旧中川と小名木川の合流部、うっ
すらと、小松川閘門も映り込む。
※21.5.30追記 工場周辺のシーンのロケは隅田川貨物駅の東方、荒川区南千住
8丁目と思われる。現在は全く面影もなく、高層マンションが林立する一角。再
開発でできた汐入小学校の辺り(画面に登場する小学校はセットだろう)。
“KOJIMA BAND”(トンボ楽器のミヤタバンドがモデル?)を支える工員は、
機械室4名、修正室3名、波動室4名、仕上室9名。それに検品係の伊藤雄之助と、
社長夫妻が殿山泰司と山本多美。波動室の仲良し4人組が、渡辺文雄、山本豊三、
石井伊吉、草薙幸二郎。ハモニカ吹き吹き、ヤスリで、音の微調整。4人それぞ
れ、役割をきっちり演じるが、なかでも草薙幸二郎が、ぴりっと締める。
桑野みゆきは、仕上室、という部門の模様。
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【143】電話は夕方に鳴る(1959大映東京)監督;吉村公三郎 →【144】 →【142】
大映専属俳優カタログ。東京撮影所所属の俳優大挙出演の、たいへん楽しい映
画。オープニングのキャストのクレジット量が膨大である。
舞台は、中国地方、瀬戸内の歴史ある中都市「広岡市(架空)」。言葉は広島
弁、自動車は「広」ナンバー。市内のロケ地は、主に岡山県の、倉敷のようだ。
神殿のような美術館の建物は、大原美術館。天文台もあるし、若者にとっては退
屈な古くさい街、という設定からも、倉敷が暗示されるが、冒頭、「凡て虚構」
であるという、丁寧なるフィクションの断り書きが出る。
ただし、「広岡駅」の駅舎と、駅頭は滋賀県、大津駅である。特徴ある旧大津
駅舎以外、駅前の建物は、軒並み「広岡」と書き換えられて、ほとんど手掛かり
がないのだが、店の中に「大津名物走り井餅」という表示がうっすら見えて、他
に「京阪旅行社」「京阪バス」「協和いすゞ滋賀営業所」の看板が、ほんのちら
りと映り込んでいた。
ホームのシーンは、また別の駅。蒸気機関車が走り、架線がないので、山陽本
線のどこかの駅であろうか。C58は伯備線かな。――見直したら、「くらしき」
の鳥居型駅名標が、C59「かもめ」進入のシーン、奥のホームにチラリ。
「山陽パルプ」と地図に書かれた海辺の4本煙突は、帝人の岩国工場か?
改選を控えた市長立花・千田是也のもとに脅迫状が届いて、物語の幕が開く。
フォックスフレームの眼鏡をかけた、推理小説狂いの秘書サカイに小野道子。
町の有力者たちに中村鴈次郎、見明凡太郎、花布辰男、大山健二、殿山泰司、
十朱久雄、富田仲次郎。
その子供たちに、仁木多鶴子、田中三津子、大川修、石井竜一、金沢義彦
(順不同)。
刑事が中村是好を筆頭に、夏木章、早川雄三、三角八郎、飛田喜佐雄、中條
静夫、婦警・三宅川和子。張込みの度に苦心の変装。
市長一家は、村瀬幸子、川崎敬三、大和七海路、毛利充宏、それに仁木。
助役・伊藤雄之助、妻・平井岐代子、浮気相手・市田ひろみ。
「広岡新報」伊東光一の下に、記者・守田学。
やくざ波千鳥、東宝より上田吉二郎。
事件のカギは、タクシー運転手・杉田康、目黒幸子夫婦に弟テイジ・野口啓二。
その他、高村栄一、星ひかる、村田扶実子、小川虎之助、えーい、もひとつおま
けにスペシャルサービス、船越英二だ!
▲【144】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【142】はだかっ子(1961ニュー東映東京)監督;田坂具隆 →【143】 →【141】
「わー、財閥だなあ!」
基地の町、狭山丘陵。今は亡き、ユネスコ村、バッテリーロコのおとぎ汽車。
西武園ゆうえんち。貧しいがワンパクで母思いのゲンタ少年。母、木暮実千代は、
ニコヨンでゲンタを育てる。スッピンメイクでたくましい木暮が良い。
「こりゃシャクだった。」(クレージーキャッツを真似るお茶目な先生、有馬稲子)
▲【143】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【141】野を駈ける少女(1958松竹大船)監督;井上和男 →【142】 →【140】
※2020.2.9〜15 ラピュタ阿佐ヶ谷モーニング →キャスト
豊三「本家と分家の関係が、こんなにひどいとは思わなかった。封建的だよ!」
卜全「でもなあ、このワラぶき屋根の重みは、そう簡単にとれるもんじゃあねえ。」
富士山に飛び出す「グランドスコープ」、松竹マーク。続いて山上からの俯瞰、
左手に諏訪湖、カメラは右手にパンして、なだらかに広がる傾斜地にタイトル。
林間を背板に荷を背負った桑野みゆきが、楽しそうに走ってゆく。スタッフに続
いて、「配役」、全役名付き。「監督 井上和男」。
桑野が汽笛に見上げると、トラス鉄橋の上を、蒸気機関車に牽かれた列車が駆
け抜ける。
信州・諏訪平の入口、高原の町・富士見。その更に奥の山里、“花生(はにゅう)”。
全てがイソザワ(五十沢)姓で、本家と分家のしがらみに縛られたムラ。ソバの
花が咲き乱れる夏、その本家に、東京から避暑にやって来た受験生、山本豊三。
分家から手伝いに来ている娘・桑野みゆき。古いしきたりに押しつぶされる悲恋
物語。桑野の母に望月優子、分家を家来扱いする本家の主に村瀬幸子。
本家の下男、左卜全が、ムラに波風を立てそうな豊三を、やんわり諭す、物語の
要となる。
当時16歳、瑞々しい桑野みゆき。はじける笑顔、はじけそうな胸。
桑野も豊三も、吹替なしで、霧ヶ峰高原に馬を駆る。
▲【142】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【140】若い恋人たち(1959東宝)監督;千葉泰樹 →【141】 →【139】
※2019.11.2訂正
「その女は、よほどの熟練工なんだな。」
宝田明、ミノルタ社長の息子の邸宅は、大田区田園調布4-131。
バー「イストワール」の女給、司葉子と、宝田が借りた愛の巣「若菜荘」は、
杉並区上高井戸2-561。
以上は、作中に登場するハガキに、住所が特定されている。
司葉子の実家、母・滝花久子と弟・久保(山内)賢が暮らす古めかしい木造の
二階家は佃島。ここは、場所の明示がされていないが、窓の外から聞こえてくる
特徴的な汽笛は、おなじみ都営佃渡船。佃を暗示しているといって間違いない。
さて、若菜荘最寄の駅として「上高井戸駅」という実景が登場する。うっすら
と映るホームの駅名標にまで御丁寧に「上高井戸」と書かれているが、架空の駅
である。進入してくる切妻の電車、ナンバーは1801。小田急ロケだ。電柱広告に
「狛江質庫」とあるところを見ると、狛江近辺か。狛江駅の旧駅舎とホームの位
置関係とは逆の配置なので、和泉多摩川か?
終盤のサービス、ナイトクラブでの乱闘シーン。スタンドマイクを持ったまま、
うろうろ逃げまわる歌い手が楽しい。プレスシートよれば、布地由起江。宝田の
上司、宮田羊容との漫才コンビであり、後の「ふじゆきえはなこ」のゆきえ師匠、
確かにその人だ。歌うは、二葉あき子往年の名曲、「巴里の夜」。
宝田、司の新婚旅行、駒ケ岳山頂で記念撮影するカメラは、ミノルタSR-2。
オンボロアパート若菜荘のシーンでは、ちらりと一万慈鶴恵がバックを横切る。
▲【141】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【139】有頂天時代(1951新東宝)監督;毛利正樹 →【140】 →【138】
小林桂樹演じる新人アナウンサーの奮闘記。テレビジョン放送開始の2年前。
原作は、「警視庁物語 深夜便130列車」(1960)の冒頭のナレーションを担当
したNHKの名アナウンサー、藤倉修一。
NHKをもじった、NRK(日本ラジオ協会)なるラジオ放送局。スタジオ風
景の中に、演芸2本。たいていの映画作品の挿入シーンの演芸は、ホンのサワリ
が多い中、本作では、たっぷり上演されている。
1本は、「あきれたぼういず」。坊屋三郎、益田喜頓、山茶花究、カントリー
バンドを従えて、非常に軽妙なコントを演じている。解散前年。もう1本は珍し
い、一路突破の並木一路が、宮田洋容と組んでいた時代の貴重な漫才。こちらも
テンポよく演じていて、良い記録となった。
▲【140】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【138】姉妹(1955中央映画)監督;家城巳代治 →【139】 →【137】
「なあんだ、冷ゃっこいね。ヘビみてえだな。」
現在、寄席のマジシャンでおなじみ、アサダ二世先生、中原ひとみの裕福な級
友・トシエの家(造り酒屋)の小僧役で、1シーン出演。
▲【139】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【137】花嫁の抵抗(1958松竹大船)監督;番匠義彰 →【138】 →【136】
→キャスト・舞台
→●番匠義彰花嫁シリーズ早見表
→【05】抱かれた花嫁(1957)
→【47】花嫁のおのろけ(1957/野村芳太郎)
→【50】ふりむいた花嫁(1961)
→【51】のれんと花嫁(1961)
→【52】はだしの花嫁(1962)
→【53】泣いて笑った花嫁(1962)
松竹大船の花嫁シリーズ、第3作は、前作の野村芳太郎を挟んで、第1作以来
のエース、番匠義彰登板。ヒロインには、期待の小山明子起用も、白黒作品。他
の配役も他作品と異なり、コメディ要素も少なく、シリーズ中でも毛色の違う、
地味な1本。横恋慕する芸者・有沢正子が印象的。
原作が、池田忠雄、脚本は、池田忠雄と富田義朗。主役が小山明子と田村高広、
スマートで固い2人を、助演の役者が盛り立てる。
さて今回の主な舞台は、市ヶ谷・四ッ谷界隈。
小山明子の両親、清川虹子と殿山泰司が営む「秋山結婚相談所」は、外堀通り。
向いが外濠公園。奥に中央・総武線、土手の上に中華学校というのは、60年後の
令和の御代にも同じシチュエイション。旧本塩町、現新宿区市谷本村町2番辺り。
一方、田村高広の下宿する碁会所は、すぐ近くの三業地(花街)という設定な
ので、荒木町が比定される。ただし、終盤、路地で線香花火をしているシーン、
坂下に京王線の電車が映ることを考えると、ロケは、井の頭線の神泉駅の上、つ
まり、渋谷円山町である。円山町、花街の風情はほぼ壊滅したが、神泉駅踏切上
の細い階段は、その頃の雰囲気を残している。
田村高広の研究室があり、小山の妹・九條映子が通う大学は「城西大学」、
ロケはおなじみ、壮大な、東大の白金校舎。
ロケシーンの白眉は、なんと言っても、麹町。信州から出てきた、おなじみ嫌
味な役をする永井達郎を、小山が東京案内するシーン。まず連れて行くのが、麹
町に本社があった頃の日本テレビ。その放送鉄塔の展望台に昇るのである。
エレベーターで昇った先には、組まれた足場を金網で囲った程度の、なんとも
開放的な展望スペースがあったのだ。東京タワーの竣工は、この年の暮れ。本稿
筆者、NTVのテレビ塔「日本テレビ塔」が昇れたことを、初めて知った。
下記の方のサイトによると、55メートルと、74メートルの高さに展望台があっ
たそうである。
※参考 https://blog.ap.teacup.com/kntk123/399.html
※神楽坂を荒木町に訂正 2019.7.24
▲【138】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【136】警視庁物語 十五才の女(1961東映東京)監督;島津昇一
→【137】 →【135】
→【114】警視庁物語 顔のない女(1959)
→【120】警視庁物語 遺留品なし(1959)
→【103】警視庁物語 深夜便130列車(1960)
→【121】警視庁物語 血液型の秘密(1960)
→【122】警視庁物語 聞き込み(1960)
【136】警視庁物語 十五才の女(1961)
→【89】警視庁物語 ウラ付け捜査(1963)
→【123】警視庁物語 全国縦断捜査(1963)
→【75】警視庁物語 行方不明(1964)
→キャスト
東映東京撮影所の人気シリーズ、長谷川公之原作「警視庁物語」第16作。
監督は、前週公開の「不在証明」に続く島津昇一。
多摩川の旧・宿河原堰堤で写生をしていた女学生達が、水に浮かぶ少女の死体を
発見する。
死亡推定時刻は、前夜20時頃。絞殺。推定17歳、複数回の性交渉の形跡あり。
所持品はちり紙のみ。赤いセーターにチェックのスカート。ズック靴が片方。
靴の片方がないことから第一現場(ゲンジョウ)、つまり殺害現場は上流とみて、
まずは、靴の捜索と、目撃情報の聞込み。
所轄は調布署、「少女殺し事件捜査本部」。府中署も、捜査の途中に登場。持込
まれたトランクには「捜査一課4号室」とあるが、今回、警視庁のシーンは無し。
今回のトップクレジットは、4人。
「堀雄二、千葉眞一[新人]、新井茂子[新人]、今井俊二」
おなじみ主任は神田隆。
以下、堀雄二、花沢徳衛、山本麒一、須藤健、佐原廣二、千葉眞一。
事件発覚の翌日の解決。冬の物語。
「羅生門」(1950)的な、主観的な証言の食い違いが描かれる。
発生場所を考えると、神奈川県警(川崎市)の管轄のような気もするが……。
事件発生(遺体発見)……多摩川、旧宿河原堰堤
第一現場(殺人現場)……多摩川原橋下(旧橋)
所轄・捜査本部……調布警察署「少女殺し事件捜査本部」
※木造、捜査本部の部屋は畳敷き、主任・神田の後ろにふすま
0日目 事件発生
1日目 事件発覚
2日目 事件解決
ちらりと映った容疑者の写真に、おなじみの顔。
季節は冬。冷たい水の中にはいる役目は若い刑事。タカツ・佐原廣二、ナカガワ
・千葉眞一[新人]
本庁捜査一課の使用車は、おなじみ、プリムス・サヴォイ“Plymouth Savoy”。
ナンバープレートは、シーンによってバラバラ。「ミヨコ」の家に乗り付けるシーン
に至っては、同じカット内で、前と後ろのナンバーが食い違っている。
今回、警視庁デカ部屋シーンはないが、持出したトランクによれば、一課4号室。
途中、登場する清水屋製パン。2019年現在、府中市宮西町3-16に清水屋という
古めかしいベーカリーが実在するが、店の人にきくと、40年ほど前まで、分倍河原
で営んでいたという。
五月藤江の、土手上のお休み処(多分「ぼたん」)に貼られたポスター「俺から
行くぞ」(1960)、「水戸黄門漫遊記 怪猫乱舞」(1956)。前者は、神田隆が
警察の主任、とネット上の資料にあり。
▲【137】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【135】白い閃光(1960日活)監督;古川卓巳 →【136】 →【134】
日活製作の事件記者シリーズが、この年2月公開の第8作「狙われた十代」でし
ばらくお休み。2ヶ月後に公開された本作は、同じ警視庁がベースでも、白バイに
スポットを当てたSP映画(添え物・中編)。
「警視庁機動自動車警ら隊」、隊長役に、事件記者では捜査第一課長の二本柳寛
(階級章は警部)。副官が河野弘(警部補)。
事件記者では記者役の長弘、キック一発、実際に白バイで走り出す。クライマッ
クスで、逃走する木浦佑三のダンプカーを追う丸いサングラスの警官マツモトが長、
際どい走行シーン。ラストシーンのデモ走行で、真中にいる丸いメガネの警官の面
影とも似ているので、彼が代役か。
2年後の、事件記者シリーズ再開作「拳銃貸します」で、情けないチンピラコン
ビを演じる、市村博と須藤孝(野村隆)が、八百長未遂で追われる、オートレース
選手で、タッグを組んでいた。
音楽、撮影とも、それまでの事件記者シリーズに同じく、三保敬太郎、松橋梅夫。
おなじみミホケイサウンドの中に、事件記者では聴かなかった、ミュージカルソー
を使うなど、違う味を出している。事件記者と似た要素が多い作品だが、小高雄二
が主演なので、監督の違いもあろうが、テイストはずいぶん異なる。
さて、この作品の事件の発端。白バイ警官アサミ(小高雄二の兄)が、トラック
の急ブレーキで事故を起こして重傷を負う現場。
昭島市の南西端、多摩川を渡った、拝島橋の南方の坂だ。この地点、多摩川に架
かる旧橋の長いコンクリート橋(ゲルバー式)と、橋のたもとから、S字カーブを
切って登って行く坂道が絵になるので、この頃の映画の撮影名所である。
本作では、重要な場所なので、色々な角度から、映る回数、時間も長いので良く
判る。橋のたもとでは、砂利の採掘をやっている。
現在は、車線が倍になり、道路脇の樹木が繁茂してしまって、当時のような広々
とした眺めは、道路上からは難しくなってしまった。交通量は多いが、拝島橋を渡
る路線バスが1日2〜3本と少ないので、筆者は探訪の折、苦労した。
というわけで、日活サイトの、ロケ地「多摩川採掘場=現・多摩川競艇場」は誤
りであろう。劇中、「タマガワバシ」というセリフは出て来るが……。多摩川競艇
場の開設は、1954年とある。
東京のバスガール(1958日活)監督;春原政久 →【102】
単車で飛ばそう(1959日活)監督;井田探
●西東京バス[ひ06]京王八王子駅〜拝島駅
▲【136】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【134】続ますらを派出夫会 お供は辛いネの巻(1956東京映画)監督;小田基義 →【135】 →【133】
前作・正編で、無一文になった、亀山寅造役の柳家金語楼。派出夫会に就職して、
派遣されたのが、もっと貧乏な自称作家の北見・三木のり平の家。作品を売込みに
行くから、服を貸してくれと言われ、身ぐるみはがれて、サルマタ一丁。悄然と蒲
団で寝ていたが、空腹でたまらない。帰ろうにも、はだか同然では、どうしようも
ない。
その時、目に留まった新聞、マラソンの記事。
「カルヴォーネン優勝」
調べてみると、1955年12月11日に福岡で開催された朝日国際マラソン。それは、
どうでもよい。
写真に写った、選手のランニング、短パン姿に、キンゴローは、ひらめいた。
上半身に、筆で墨黒々と、ランニングを描きだすのであった。
ちょっと見、ランニングに短パンだが、金語楼の走る姿に、通行人は驚いて振り
返る。遠くにニッポンビール、大日本ビール工場(現・ガーデンプレイス)の五本
煙突を望んで、渡る跨線橋。特徴ある構造が映っていなくて残念ながら、恵比寿と
目黒の間、上大崎二丁目、アメリカ橋ではなくて、東京映画目黒撮影所からほど近
い、「白金桟道橋」。1926年(昭和元年)竣工の由緒正しき、人道橋。
金語楼がサルマタ一丁で渡ったその橋、35年後に、リカ・鈴木保奈美が、カンチ・
織田裕二に「ねえ、セックスしよう」と言う場所である。
▲【135】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【133】冷飯とおさんとちゃん(1965東映京都)監督;田坂具隆 →【134】 →【132】
「おカネならないよー!
使っちゃってないよー。」
「関の彌太ッぺ」は、中村錦之助の後ろ姿で終わるが、こちらは、錦ちゃんの後ろ
姿から始まる、3話オムニバス。名優ぶりを再認識。
武家の妻らしい貫禄と気品と慈悲の、木暮実千代。美しき魔性の女、三田佳子。
ムードメーカーのおチビちゃん、藤山直子、……達者なはずだ、後の藤山直美だと
いう。
▲【134】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【132】関の彌太ッぺ(1963東映京都)監督;山下耕作 →【133】 →【131】
中村錦之助「この娑婆にゃあ、かなしいこと、つれえことが、たくさんある。だが
忘れるこった。忘れて日が暮れりゃあ、明日ンなる。
ああ、あしたも天気か……。」
十朱幸代 「あの人です!」
白いむくげの花の垣根越し、錦之助と十朱の再会と別れ。
撮影当時20歳、若き愛くるしき十朱幸代、らしさ全開。ただし、時折オーバー
ラップする、父、久雄の顔。
約束の場所で、弥太郎・錦之助を待ち構える飯岡一家。中央に腰かける助五郎
親分・安部徹。まわりに並んだ乾分たち。
ゴーン……、暮れ六ツの鐘が鳴る。
やってくる錦之助。
背後からのロングショット、単身、敵陣に歩いて行く錦之助、三度笠を投げ捨て
る。画面の端に赤い彼岸花。暗転。
♪まわりのまわりの小仏様は、なぜ背いが低いなー
▲【133】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【131】ゆうれい船 前篇/后篇(1957東映京都)監督;松田定次 →【132】 →【130】
斜光に輝く、東映△マーク。
続いて、タイトルに流れる流麗ななテーマ曲。壮大な海洋ロマンへの誘い。どこ
かで聞いたことがあるな、と思い出してみるに、以前、日本テレビの放送開始に流
れていたステーションコール、「鳩の休日」の流用だ。音楽は深井史朗。
主役は中村錦之助。他には、東映悪役の常連大物が数多く登場するので、半分は
錦之助側に付く。つまり、前篇の山形勲、後篇の薄田研二は善玉だ。中でも目を引
くのが、未来少年コナンの、ジムシイのような「若者」三島雅夫である。
▲【132】
【130】三等重役(1952東宝)監督;春原政久 →【131】 →【129】
三大社長南海の決戦、ならぬ競演。社長役者夢の共演作なのだ。
日本三大社長とは、河村黎吉、小川虎之助、進藤英太郎。本稿筆者が勝手にそう
呼んでいる。河村の死後、森繁久彌が、入替わる。
本作では、元祖三大社長役者に、キングギドラよろしく、人事課長・森繁が絡む。
主な舞台が「南海産業株式会社」。なんのことやらわからないだろうが、まあよろ
しい。
河村黎吉………南海産業現社長
森繁久彌………同 人事課長
小林桂樹………同 秘書
島秋子…………同 秘書
進藤英太郎……ウミヤマ商事社長 東京出張に愛人・藤間紫同伴
小川虎之助……南海産業前社長 公職追放解除、社長返り咲きかの矢先、倒れる。
関千恵子………虎之助の一人娘、美容室経営
▲【131】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【129】芸者学校(1964大映東京)監督;木村恵吾 →【130】 →【128】
「芸者学校」というタイトルで、有島一郎主演とくれば、これはもうドタバタ喜劇
かと思いきや……、原作・花登筺で木村恵吾作品、人情ものであった。
大映グリーンの中で、引きの画面で長回し、木村演出に、有島は誠実に、演技派
として応える。温泉場の芸者置屋の「お父さん」、元は、浅草の売れっ子太鼓持ち。
落語に出てくるような野太鼓ではない、気位の高い、オツな幇間である。洒落たセ
リフまわし、芸達者・有島、「蛸の釜ゆで」を披露。
ファンとしては、演技で魅せる有島の活躍が嬉しくもあるが、泣き顔のアップは、
少々くどい。軽妙な有島の方が、本当は好みだけれど、御本人も冥利に尽きよう。
2号さんと、有島一郎、中村伸郎コンビというと、設定は違うが、同じ木村恵吾
監督のオムニバス「女のつり橋」(1961大映東京)にドタバタシーンがあって、
こちらは楽しい。
舞台は、「湯の沢温泉」なる山峡の温泉場。作品では具体的に示されないが、プ
レスシートによれば、設定は伊豆。クライマックス、駅のシーン、駅名のホーロー
板は「ゆのさわ」と掛け替えてあったが、やって来た電車は西武カラーの伊豆箱根
鉄道。ホームで斜めに映り込む駅名標やホーロー板に目をこらすと、「おおひと」
の文字が見える。西伊豆、三島と修善寺の間の、大仁駅ロケだ。
この作品で芸が細かいのは……。画面に登場するビールである。★印のおなじみ
のラベル、現代のシーンでは、タテ長ラベルのサッポロビール。ところが、10年前
の回想シーンでは、わざわざ、当時の「ニッポンビール」、★印の横長ラベルを使っ
ていた。
▲【130】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【128】夕陽に赤い俺の顔(1961松竹大船)監督;篠田正浩 →【129】 →【127】
♪つーき(月)が出たなら オマエを殺す
真っ暗闇ならキス、キス ドゥンドゥンドゥンドゥンドゥンドゥドゥン……
俺はオマエの墓場だぜ さみしがり屋の墓場だぜ
波止場にいるなら オマエを殺す
沖に出たならキス、キス ドゥンドゥンドゥンドゥンドゥンドゥドゥン……
俺はオマエの墓場だぜ カモメも知らない墓場だぜ
酒樽けっとばせ 手を挙げろ
殺し屋たちのパーティだ
ハラがへったら オマエを殺す
気分がいいならキス、キス ドゥンドゥンドゥンドゥンドゥンドゥドゥン……
俺はオマエの墓場だぜ やさしいやさしい墓場だぜ
▲【129】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【127】ジャズ・オン・パレード ジャズ娘乾杯!(1955宝塚)監督;井上梅次 →【128】 →【126】
「母さん、見えるだろう、あなたとわたしの子供だよ。
やっぱり、カエルの子は、カエルだね……。」
娯楽映画を撮り続けた梅次監督のライフワーク、バックステージもの・音楽映画
の初期の傑作。
その系譜は、後に、踊りたい夜(1963)で結実するが、老芸人のワンマン親父と、
芸達者な三人娘という設定で共通している。
タイトルロール、宝塚大劇場の舞台実演、それを3階席の最前列から身を乗り出
して観ている壽美花代、朝丘雪路、雪村いづみ、という場面から物語は始まる。
本作のシンボル曲「黄色いマフラー」。
同年1月の宝塚大劇場・月組公演が舞踏劇「雪物語」とミュージカルプレイ「黄
色いマフラー」。
その劇場公演「黄色いマフラー」の「監督」が、本作脚本の高木史郎(史朗)。
井上梅次も、演出スタッフに名を連ねている。劇場公演を焼きなおしたのが映画
「ジャズ娘乾杯!」かと推測したが、逆であった。舞台脚本によると、映画を翻案
したのが、舞台の方である。
宝塚公演での、舞台はフランス。映画で伴淳三郎演じる曲芸師タニマンは、老手
品師ジョルジュ、大路三千緒。
三人娘はそれぞれ、ジャクリーヌ、ビィビィアンヌ、クロディーヌであった。
ジャクリーヌ………朝倉道子
ビィビィアンヌ……新珠三千代
クロディーヌ………朝丘雪路
撮影所に行くのは、下の姉妹、新珠と朝丘。「ジャズ娘乾杯!」で映画スタア役
の浦島歌女が、舞台版でも映画スタア役。中山昭二演じる助監督(後に監督昇進)
役に、春日野八千代。
♪黄色いマフラー 小粋に巻いて 行こうよ恋を 探しにさ
破れズボンに 汚れたベレー 名誉もお金も ないけれど
わたしが歩けば娘はみんな きっと一目で恋をする
あなたもわたしも 素敵に似合う 黄色いマフラー 春の色
黄色いマフラー かわいく結ぶ わたしは恋の 手品師よ
歌を歌って 歩いていれば 誰でもわたしが 好きになり
マフラー広げたちょうちょの陰で みんなキッスをしたがるの
あなたと私の 心をつなぐ 黄色いマフラー 恋の色
「じゃあ助監督さん、僕は出ますから、頼みます。」
自らミュージカルシーンにも出演する、ヤマナカ監督役の中山昭二、のちのキリ
ヤマ隊長。ダンサー出身だから、二枚目として華麗に踊る。「頼みます」とバトン
を渡された、クレーンカメラ上の助監督役が、誰あろう井上梅次監督本人、丸メガ
ネの優男。
江利チエミ歌う「陽気なバイヨン」のシーン、撮り終えて、
梅次「(後ろを向いてスタッフに)クレーン戻した。」
中山「どうだった?」
梅次「ええ、オーケーです。」
▲【128】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【126】カレーライス(1962東映東京)監督;渡辺祐介 →【127】 →【125】
「もはや、お仕舞いですかな?」
忘れた頃に左卜全、天使のように現れる。
▲【127】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【125】おヤエのママさん女中(1959日活)監督;春原政久 →【126】 →【124】
「ウスラバカじゃな。」森川信
柳家金語楼のおトラさんシリーズから、人気キャラクター、隣の女中おヤエ・
若水ヤエ子、スピンアウト。日活おヤエシリーズ第1作。おトラさんレギュラー、
焼き芋屋の長さんを演じた柳沢真一が花を添える。
柳沢の他の主な出演者、高友子に、森川信と武智豊子コンビも、次作「おヤエの
家つき女中」に再び登場。スタッフも共通な上、舞台になる家まで同じものを使用。
低予算のSP作品らしく2本まとめて撮ったのであろう。
設定では、世田谷区東沢町18(「家つき女中」は、同区高木町521)。2両編
成の京王井の頭線が映るのは、駒場野公園あたりか。
タイトル明け、福島から出てきた若水を乗せたSL列車が、上野駅に向けてくぐ
り抜けるのは、おなじみ日暮里・芋坂跨線橋。蒸気機関車牽引ということは、映画
をそのまま信用すると、福島といっても常磐線沿線、浜通りから上京したことにな
る。上野駅で若水を呼びとめるポン引き風の男(実は若水の住込先の嫁の弟)に、
刑事物語シリーズで目立った関口悦郎。
はとバスで訪れる浅草。雷門が映るが、完成は翌年のはずなのだが、既に建って
いる。ストリップを観に行こうとせがむ森川に、妻・武智は映画館を勧める。
「ほらこっち、『信頼ある日活映画』って。」
▲【126】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【124】新幹線大爆破(1975東映東京)監督;佐藤純弥 →【125】 →【123】
特別出演 丹波哲郎。
▲【125】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【123】警視庁物語 全国縦断捜査(1963東映東京)監督;飯塚増一
→【124】 →【122】 →キャストと経過早見表
→【75】警視庁物語 行方不明(1964)
→【89】警視庁物語 ウラ付け捜査(1963)
→【103】警視庁物語 深夜便130列車(1960)
→【114】警視庁物語 顔のない女(1959)
→【120】警視庁物語 遺留品なし(1959)
→【121】警視庁物語 血液型の秘密(1960)
→【122】警視庁物語 聞き込み(1960)
東映東京撮影所の人気シリーズ、長谷川公之原作「警視庁物語」第21作。
監督は、1960年公開の「深夜便130列車」「血液型の秘密」「聞き込み」以来の
飯塚増一。
奥多摩で発見された焼死体。手がかりの「ぶっそうげ(ハイビスカス)」のバッ
クルと、タバコ「うるま」から沖縄との関連がうかがわれて、ナガタ部長刑事・
堀雄二がアメリカ占領下の沖縄へ飛ぶ。その他、犯人の影を追って、捜査は四日
市、秋田にも及ぶ。沖縄では半袖だが、秋田ではコートを羽織っている。
所轄は青梅署、「奥多摩焼死体事件捜査本部」。
今回は、トップクレジットに、7人の刑事がズラリと並ぶ。
おなじみ主任の神田隆。
以下、堀雄二、花沢徳衛、山本麒一、須藤健、南廣、大木史朗。
事件発生は6月2日、翌3日発見、7日に解決。
クライマックスは上野駅大屋根下コンコース。
フマキラー・ベープの宣伝入り。
神田隆…………警視庁捜査一課、捜査主任。
堀雄二…………同、部長刑事ナガタ。沖縄へ出張。
花沢徳衛………同、ベテラン刑事ハヤシ。ラーメンを豪快に食う。
須藤健…………同、刑事ワタナベ。ハンチング愛用。
山本麟一………同、刑事カネコ。おなじみソフト帽。
南廣……………同、刑事キタガワ。
大木史朗………同、刑事オオタ。
松本克平………同、課長。
清水元…………沖縄、警察本部の刑事、南風原(はえばる)。
河合弦司………秋田県警、部長刑事ミヤハラ ズーズー弁 ハンチング
織本順吉………秋田県警、捜査主任 ズーズー弁 戦前の警官を思わせるヒゲ
浜田寅彦………四日市の担当刑事 山麟を案内
片山滉…………法医医師
八名信夫………指名手配犯・中北金造
中原ひとみ【特別出演】…妊婦、城間光代
五月藤江………息子が狙われている、と青梅署捜査本部に訴えて来た老女
今井健二………バックルの持主、今帰仁 ただし、2年前に基地の飯場で紛失
岸輝子…………バックルの持主の老女、牧志 摩文仁で死亡した息子の帰りを待つ
室田日出男……バックルの持主、宜保 水泳のコーチ、男前
岩崎加根子……[秋田]「中北」の元妻
星美智子………[鮫洲]場末の居酒屋「千鳥」の泥酔女
潮健児…………被害者「佐山久」の元窃盗仲間、工事現場の人夫・ナカイセイタ
小林裕子………ソメ子 被害者「佐山久」の情婦
谷本小代子……被害者「佐山久」の義妹
川田公子………バックル持主城間のいとこ、城間(ぐすくま)サユリ 琉球舞踊
※一部資料にある戸田春子は出演なし、おそらく、その役は五月藤江
※同じく、プレスシート「今皈仁(なきじん)」とある今井の役名、清水元の持つ
メモには「今帰仁」と書かれている。
※同じく、城間(ぐすくま)さゆり役は、川田礼子とあるが、クレジットは「川田
公子」。2人とも、冠船流の琉球舞踊家である。
▲【124】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【122】警視庁物語 聞き込み(1960東映東京)監督;飯塚増一
→【123】 →【121】 →詳細解説
→【75】警視庁物語 行方不明(1964)
→【89】警視庁物語 ウラ付け捜査(1963)
→【103】警視庁物語 深夜便130列車(1960)
→【114】警視庁物語 顔のない女(1959)
→【120】警視庁物語 遺留品なし(1959)
→【121】警視庁物語 血液型の秘密(1960)
→【123】警視庁物語 全国縦断捜査(1963)
東映東京撮影所の人気シリーズ、長谷川公之原作「警視庁物語」第14作。
緑濃い初夏の候、桜田門は警視庁に、老婆・五月藤江がやってくる。
どこへ行けばよいかわからぬ五月、たまたま声をかけたのが、捜査一課6号室主
任の神田隆であった。
五月の弟の靴屋が消息不明、刑事部屋に呼び入れて事情をきくうち、どうやら殺
人事件の疑いがでてきた。失踪しただけでなく、存在しない、靴屋の息子が、土地
を勝手に売買してしまったという。
靴屋の特徴で、変死体を鑑識に手配すると、多摩川河川敷で発見されていた溺死
体が、五月の弟であった。
息子を名乗った謎の人物が事件の鍵、と、おなじみ刑事達の捜査が始まる。
前々作「深夜便130列車」以来のメンバー、警視庁捜査一課の主任警部・神田隆。
以下、堀雄二、花沢徳衛、須藤健、山本麟一、佐原広二、中山昭二。
今回は、捜査一課長と、片山滉の法医医師の出演は、なし。
捜査本部は置かず、極秘捜査。「パーカーフェイスで」。狭いデカ部屋6号室、
神田の大きな頭が、画面で強調されて、より窮屈そうである。
部屋の棚の上には、以前の捜査資料が積み上がる。「バラバラ殺人事件」「交換
手殺人事件」など、シリーズの内容とちゃんと関連しているのも細かい。
沼袋、新井薬師といった、中野市の北部、西武新宿線沿線が、主な舞台。
地面師、誇大広告が踊る郊外の建売住宅などという世相をからめ、不動産業界が
モチーフになる。
六本木・鳥居坂の「トラ箱」・泥酔者保護所は、本作公開の1960年に開設、
2007年12月に閉鎖。
クライマックスは、銀座並木通り、ロケ敢行。
捜査が進むうち、前作「血液型の秘密」にリンク。今井俊二(健二)、山東昭子、
それに民謡酒場のミチコ(前作では設定のみ)、加えて、ゲストのこまどり姉妹が、
引き続き登場。
五月が来庁した、翌々日の解決。
「血液型の秘密」とセットのショートプログラム、52分。
神田隆…………警視庁捜査一課(6号室)、捜査主任。狭いデカ部屋に窮屈な大頭。
堀雄二…………同、部長刑事ナガタ。ポーカーフェイス。
花沢徳衛………同、ベテラン刑事ハヤシ。「パーカーフェイス」
須藤健…………同、刑事ワタナベ。ハンチング愛用。「パーカーじゃなかろかね」
山本麟一………同、刑事(カネコ)。おなじみソフト帽。今回は堀とコンビ
佐原廣二………同、刑事タカツ。
中山昭二………同、刑事ヤマガタ。
五月藤江………依頼主の老婆、被害者の姉
沖野一夫………被害者、靴屋店主、石川平作 数え56歳、独身、土地持ち
大村文武………不動産ブローカー・オノ 沖野の土地の売買を実行した男
今井俊二(健二)…吉本ノブヒコ 元・東郊不動産社員、前作の重要参考人。
山村聰…………近隣の不動産業界のボス、マルヤマ 沖野の表通りの土地を購入
八代万智子……今井俊二の情婦・ミチコ 民謡酒場おけさ店員
柳谷寛…………泉不動産・イズミ
山東昭子…………民謡酒場おけさ店員・ミツコ 山村聰の情婦
こまどり姉妹…民謡酒場で歌う店員 歌っているのは「花笠音頭」
→詳細解説
▲【123】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【121】警視庁物語 血液型の秘密(1960東映東京)監督;飯塚増一 →【122】 →【120】
→詳細解説(前編)
※2019.6.5〜8 , 12〜15 ラピュタ阿佐ヶ谷
→【75】警視庁物語 行方不明(1964)
→【89】警視庁物語 ウラ付け捜査(1963)
→【103】警視庁物語 深夜便130列車(1960)
→【114】警視庁物語 顔のない女(1959)
→【120】警視庁物語 遺留品なし(1959)
→【122】警視庁物語 聞き込み(1960)
→【123】警視庁物語 全国縦断捜査(1963)
東映東京撮影所の人気シリーズ、長谷川公之原作「警視庁物語」第13作。
5月の朝、中野区内の雑木林で、野犬狩りの職員が、赤ちゃんの死体を発見する。
2月末頃の出産と思われる嬰児、死後約3日、死因は薬物による中毒死、左肩には
10円玉大のアザ。
近くで発見されたおむつと思われる手ぬぐいには、文京区の酒屋の名前がはいっ
ていた。
警察犬による匂いの鑑定で、嬰児のもと認められ、その酒屋が配ったというお得
意さんから、身元の割出捜査を開始。
同時に、現場付近の産科をあたって、2月末出産の妊婦と嬰児を探すのであった。
警視庁捜査一課の主任警部・神田隆。以下6名の刑事たち。
堀雄二、花沢徳衛、須藤健、山本麟一、佐原広二、中山昭二。
捜査本部は、野方署。「嬰児殺し事件捜査本部」。
後半、轢死事件の担当は、下谷北署。この警察署は偶然にも、3年後、吉展ちゃ
ん事件の舞台となる。
前作「深夜便130列車」で、大阪の素直な新米刑事を演じた今井俊二(健二)が、
女グセの悪い憎たらしい役。
保健所の野犬狩り、警察犬「物品選別」、MN式血液鑑定、民謡酒場。浩宮徳仁
親王誕生。雨中の張込み。
朝の発見から、まる2日の解決。56分のショートプログラムだが、例によって情
報量が多い。次作「聞き込み」への伏線を含んでいる。
松本克平………捜査一課長。冒頭、現場検証と警察犬の物品選別のみ。
神田隆…………警視庁捜査一課(号室不明)、捜査主任。髪を切り立てか?
堀雄二…………同、部長刑事ナガタ。ポーカーフェイス。
花沢徳衛………同、ベテラン刑事ハヤシ。「警察のお茶だって満更じゃないよ。」
須藤健…………同、刑事ワタナベ。ハンチング愛用。
山本麟一………同、刑事カネコ。おなじみソフト帽。犬好きか?
佐原廣二………同、刑事タカツ。地味だが、顔に正義感が宿る。
中山昭二………同、刑事ヤマガタ。小林裕子にあんみつを御馳走。
今井俊二(健二)…嬰児の母親ヤスコの夫・吉本ノブヒコ
東野英治郎……嬰児の母親ヤスコを、一時2号にしていた、旅行案内所社長ノザキ
小林裕子………嬰児の母親ヤスコの同僚・旅行案内所勤務[上野駅前]
星美智子………今井の元内妻、小料理「浮世」のママ[高田馬場]
沢村貞子………嬰児の母親ヤスコのアパート「ひかり荘」、向いの部屋 お喋り
織田政雄………嬰児の母親ヤスコの父 “練馬”
利根はる恵……嬰児の母親ヤスコの父の妻
片山滉…………法医医師 今回は現場検証以外に、血液型鑑定で捜査本部に出張
松村達雄………産科医 堀と中山の聞き込み先 “相沢医院”[大曲〜伝通院]
曽根秀介………嬰児の母親ヤスコのアパート「ひかり荘」管理人
谷本小夜子……今井の勤める“東郊不動産”社員
三戸部スエ……嬰児の母親ヤスコと東野が上がった連れ込み宿の女中
山東昭子………民謡酒場の女中・ミツコ [新井薬師・薬師横丁]
打越正八………嬰児のおむつに使われた“伊勢浪酒店”の主人 [文京区関口]
大東良…………嬰児の身元捜しで聞込みに来た徳衛と山麟に子供の自慢をする父親
こまどり姉妹…民謡酒場で歌う店員 歌っているのは「八丈恋歌」
▲【122】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【120】警視庁物語 遺留品なし(1959東映東京)監督;村山新治
→詳細解説 →【121】 →【119】
→【75】警視庁物語 行方不明(1964)
→【89】警視庁物語 ウラ付け捜査(1963)
→【103】警視庁物語 深夜便130列車(1960)
→【114】警視庁物語 顔のない女(1959)
→【121】警視庁物語 血液型の秘密(1960)
→【122】警視庁物語 聞き込み(1960)
→【123】警視庁物語 全国縦断捜査(1963)
東映東京撮影所の人気シリーズ、長谷川公之原作「警視庁物語」第11作。
夏の朝、上目黒(代官山界隈)のアパートで、住人の女性(電話交換手)が絞殺
されていた。遺留品はないが、犯人は親しい関係と推測される。
現場の聞込みによれば、前夜、アパートに停電があり、被害者殺害に際して、電
気スタンドを破損したのが原因と見られる。同時刻、怪しい人影を見た、と寿司屋
の出前持ちが証言。
一方、被害者の親しかった同僚の電話交換手に、被害者の男関係を尋ねると、煮
え切らない応えをするのであった……。
警視庁捜査一課の主任警部・神田隆。以下6名の刑事たち。
堀雄二、花沢徳衛、須藤健、山本麟一、南広、佐原広二。
捜査本部は、目黒署。「交換手殺人事件特別捜査本部」。
木村功が、女グセの悪そうな、嫌味な役で登場。
アラサーOLの株式投資に結婚相談所。貸出し電話と私書箱を用意した「待合喫
茶」。
オフィスビルの屋上風景、この頃おなじみのコーラスの練習、ロシア歌曲。1日
目は「行商人(コロブチカ)」、2日目は、「泉のほとり」。
結婚相談所の聞込みで、徳衛と佐原は、東京中を尋ね歩く。ラストの捕り物は、
渋谷の桜丘。
朝の発見(前夜の犯行)から、まる2日、夕方解決。ぬぐう汗、セミの声、盛夏
8月の物語。
神田隆…………警視庁捜査一課(号室不明)、主任。冷静沈着なボス。
堀雄二…………同、部長刑事ナガタ。ポーカーフェイス。
花沢徳衛………同、刑事ハヤシ。温和なベテラン。キャラメルメモ。
須藤健…………同、刑事ワタナベ。
山本麟一………同、刑事カネコ。腕時計の革ベルトの下に汗対策のガーゼ。
南廣……………同、刑事ヤマムラ。
佐原広二………同、刑事タカツ。
松本克平………捜査一課長。冒頭、現場検証のみ。
東恵美子………被害者の親しかった同僚、電話交換手オカヤマミツエ
谷本小夜子……被害者の同僚、電話交換手イグチ おしゃべり
長谷部健………被害者が、結婚相談所で紹介された男・池原キヨシ
成瀬昌彦………被害者と同じビルに勤める丸宏証券会社員・コヤナギ
木村功…………被害者と同じビルに勤める太陽建設社員・スガイ
八代万智子……被害者と同じビルに勤めるエレベーターガール・シノハラセツコ
藤里まゆみ……事件の第一発見者、被害者と親しい、同じアパートの主婦
殿山泰司………結婚相談所「のぞみ社」のおやじ、マッサージ師
星美智子………被害者アパート3号室の住人、2号
八名信夫………やくざ風スーツの男、星美智子の浮気相手
杉山徳子………待合喫茶「パロマ」で、イケハラ・長谷部健と待合せだという女
古賀京子………東都医大生理学研究室の美人助手
山本緑…………丸の内ソシャルクラブのパーティで人気の活発な独身女性
※杉義一、戸田春子はお休み。警視庁シーンなし、発砲なし。
→詳細解説
▲【121】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【119】四畳半物語 娼婦しの(1966東映京都)監督;成澤昌茂 →【120】 →【118】
「また来てくださいね。」
この作品の、おしげ(本名しの)・三田佳子にそう言われたら、また行く。
というわけで、上映されれば、こちらもまた足を運ぶ。その度に、惜しいなと思
うのが、夏のシーンの、セミの鳴き声だ。
シャシャシャシャシャシャシャシャ……。
明治の東京で、クマゼミを鳴かしちゃいけませんゼ。まあ、このへんは、京都撮
影所製作らしくて、ほくそ笑むのである。
全篇にあふれる情感。時代考証のクレジットに、鴨下晁湖。ふてぶてしい木暮実
千代。
▲【120】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【118】雲がちぎれる時(1961松竹大船)監督;五所平之助 →【119】 →【117】
ゴショヘイメロドラマ。薄幸のヒロイン、有馬稲子の表情は常に暗い。久々の帰
郷、難所・伊豆田峠に臨むボンネットバスに乗込む有馬は、サングラスに硬い表情。
それはさながら、七色仮面のようであった。
▲【119】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【117】水溜り(1961松竹大船)監督;井上和男 →【118】 →【116】
松竹を支えた寅さんシリーズ、第一作、山田洋次監督の「男はつらいよ」公開は
1969年。
その8年前だ、情けない役ながら、渥美清の松竹初出演作(公開日基準)にして、
倍賞千恵子と初共演、芝居で絡むのが本作。SKD(松竹歌劇団)のホープ、映画
に呼ばれてスター候補の倍賞と、まだ軽い扱いの渥美。映画公開日は4月9日。その
前日に「若い季節」、当日に「夢であいましょう」という、渥美出演の人気テレビ
番組(ともにNHK)が放映開始になる。
資料によっては、倍賞演じる村子が、
「マッチの光で下半身を見せる商売を始めた。が、酔客に犯され、」
という記述が有るのだが、そこまで衝撃的な描写では無い。
鉄道マニア的に目を見張るのが、オープニング。スタッフ、キャストのバックに、
おもちゃのような可愛らしい電気機関車が、貨車をひいて、ゆっくり走る。
EB10という、国鉄の小型の凸型電機。
1971年の廃止まで、東京・王子から別れて、須賀貨物駅までのほんの短い区間を
行ったり来たりしていた珍車。終点の貨物駅のあった日産化学の跡地が、今の豊島
五丁目団地である。
▲【118】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【116】ある見習看護婦の記録 赤い制服(1969大映東京)監督;臼坂礼次郎
→【117】 →【115】
南美川洋子、渥美マリ、八代順子、津山由起子、水木正子。
大映ハレンチ路線と呼ばれる、倒産前夜に活躍した5人娘。ポルノ映画ではない
けれど、健康的なお色気コメディ。言ってしまえば、キワモノ作品群の1本なのだ
が、どうしてどうして。ベテラン4人の活躍もあって、傑作である。
カラフルなナース服に身を包んだ「看護婦サン」の見習い生たちの巻き起こすハ
レンチな騒動をメインに、中年のベテラン看護婦・若水ヤエ子と中年コック・
藤村有弘のロマンス、これにホロリとしてしまう。
音楽は、前田憲男。パヤパヤ調に軍歌調、それにエレキ調。
♪火筒(ほづつ)の響き遠ざかる あとには虫も声立てず
満州事変に従軍したのが自慢の総婦長・岡村文子、愛聴曲「婦人従軍歌」を、エ
レキ調にアレンジした曲に乗って、整列した1年生(見習)看護婦たちがいっせい
に踊るシーンはかっこいい。
舞台は世田谷区深沢、「セントラル綜合病院」なる大病院。配属されたナースの
卵たちは、さながら軍隊のように厳しく育てられる。
1年生は胸に赤いハートマーク1つ。2年生は2つ。3年生は3つ。晴れて、看
護婦になれると、銀の星(200人)。主任になれば金の星(20人)。
その上に婦長クラスが10人。
勇退する総婦長「オババの方」岡村文子。次期総婦長総選挙をめぐって、「オヒ
スの局」丹下キヨ子と「オゲルの局」若水ヤエ子の、病院中を巻込んだ集票合戦。
キャスティングボードを握るのは、規則違反常習のミニスカ5人組。そんな権力
争いなどはどこ吹く風。日々それぞれの興味で精一杯。とはいえ心配御無用、最後
にはきちんと仁愛に目覚めるのだ。
とびきりキュートな南美川洋子(なみかわようこ)。チラリと松坂慶子。
▲【117】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【115】男はつらいよ(1969松竹大船)監督;山田洋次 →【116】 →【114】
僕の部屋から……、さくらさんの部屋の窓が見えるんだ。
朝、目を覚まして見てるとね、
あなたがカーテンを開けてあくびをしたり、蒲団をかたづけたり。
日曜日なんか、楽しそうに歌を歌ったり。
ふ、冬の夜、本を読みながら泣いてたり……。
あのう、工場に来てから、さ、三年間、毎朝、あなたに会えるのが楽しみで。
考えてみれば、それだけが楽しみでこの三年間を……。
僕は出て行きますけど、さくらさん、幸せになってください。
さよなら……。
♪こ〜ろ〜し〜たい〜ほォど〜 惚〜れてはい〜た〜が〜 とくらァ(「喧嘩辰」)
▲【116】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【114】警視庁物語 顔のない女(1959東映東京)監督;村山新治 →【115】 →【113】
→キャストと捜査情報
→【75】警視庁物語 行方不明(1964)
→【89】警視庁物語 ウラ付け捜査(1963)
→【103】警視庁物語 深夜便130列車(1960)
→【120】警視庁物語 遺留品なし(1959)
→【121】警視庁物語 血液型の秘密(1960)
→【122】警視庁物語 聞き込み(1960)
→【123】警視庁物語 全国縦断捜査(1963)
東映東京撮影所の人気シリーズ、長谷川公之原作「警視庁物語」第9作。
季節は冬、土曜の午後、荒川河川敷(西新井橋)で発見された、新聞紙にくるま
れた胴体だけの女性死体。追って、切断された両足、両手、首がそろう。犯行推定
日に、新荒川大橋上から、何かを投げ捨てた黒いセダンの男、が捜査の本命。
警視庁捜査一課7号室の主任警部・神田隆。以下6名の刑事たち。
堀雄二、花沢徳衛、須藤健、山本麟一、南広、佐原広二。
「バラバラ殺人事件特別捜査本部」(冒頭駆けつけるジープは西新井署)
主な舞台(ロケ地)は、西新井橋、新荒川大橋、箱崎のダルマ船酒場など。他に
実景はあまり楽しめないが、浅草・押上あたりも拠点となる。
クライマックスは豊洲の石炭埠頭。
人気上昇中の佐久間良子が、ワンポイント、客寄せパンダ的に出演。
世相を反映するアイテムに、整形外科・隆鼻術の象牙、サンプラ冠の歯のブリッ
ジ、化粧品の訪問販売、ハンカチタクシー(白タク)、ダルマ船の水上生活者、盛
り場のエロ写真売り、野犬狩り、闇ドル。そして今や懐かし、土曜日の半ドン。
メートル法完全実施がこの年、1959年1月に行なわれたばかり。しかし、身長
155センチと言われるより、5尺1、2寸と言う方がピンとくる。
犯行(殺人)推定日(後に確定)が某月15日。発見が18日(土)。解決は25日朝。
かなり寒そうな印象だが、途中に登場する新聞の日付は11月。
●被害者の手掛り
女性、30歳前後、身長155センチ程度 ※5尺1、2寸と南が換算する
死亡推定日は3日前(15日)、絞殺後に切断、胃の残留物は食後3時間
卵巣に手術痕
手足の指に、マニキュア、ペディキュア、水商売の女と推定
鼻に隆鼻術の象牙[プロテーゼ]
歯にサンプラ冠のブリッジ
ヘアピン ※被害者特定に結びつかず
●犯人の手掛り
読売新聞江東版(死体を包装)……配布区域は足立、葛飾、墨田、江東、江戸川
麻ひも(包装に使用) ※小売店多くて特定に結びつかず(2、300件)
ナンバー「5す 21××」の黒い国産のセダン(70数台該当)
神田隆…………警視庁捜査一課、7号室主任。温厚なボス。
堀雄二…………部長刑事ナガタ。ポーカーフェイス。
花沢徳衛………刑事ハヤシ。4人目にして初めての男児を授かる。
須藤健…………今回よりレギュラー。渡辺刑事のようだが、呼ばれない。
山本麟一………刑事カネコ。ネコさんとも。
南広(クレジット「広」)…刑事ヤマムラ。クライマックスで乞食に変装。
佐原広二………刑事。役名は高津刑事のようだが、呼ばれるシーンなし。
松本克平………捜査一課長。冒頭、現場検証と初日の夜のみ。
今井俊二………学生バーテン・ナリタ 被害者とかつて肉体関係
杉義一…………ハンカチタクシー運転手・ヨシオカタダシ「吉岡正」
潮健児…………西銀座のエロ写真売人・ヨネクラセンゾウ、センちゃん
佐久間良子……令嬢・レイコ ナリタ(今井俊二)が片想い
小宮光江………ストリッパー・サリー 被害者の愛人を略奪した女
星美智子………センちゃん(潮健児)の彼女 箱崎のダルマ船酒場
冒頭、ある冬晴れの土曜日午後の刑事たちが、ナレーションにのって紹介される。
プライベートを楽しんでいるが、在庁番の彼らは、事件に備えて、本庁への電話連
絡は欠かさない。
若い刑事・南広(廣)は渋谷駅前でデートの待合せ。主任・神田隆は動物園で家
族サービス。ベテラン・花沢徳衛は、病院の廊下、間もなく生まれる第四子を、3
人の可愛い娘たちと待っている。7号取調べ室の留守番は、部長刑事・堀雄二と、
須藤健、佐原広二の3名。
残る1人、温和な刑事・山本麟一はどこへ行くのか、荒川土手を走るボンネット
バスに、のんびり揺られていた。
バスの車窓からは河川敷で、草野球をしている子供たちが見える。ボールを追っ
て少年2人が川べりへたどり着くと、そこに、新聞紙でくるまれた、人の胴体らし
きものが流れ着いていた。
驚く2人、にタイトル「警視庁物語 顔のない女」
遺体が漂着したのは、荒川放水路(現・荒川)の西新井橋。「東京湾」(1962)
の舞台ともなる。「お化け煙突」が、1本の太い塊に見える。駆けつけた神田隆の
肩には、水筒がそのまま掛かっていた。
その上流、新荒川大橋(旧橋)。犯行推定日に、怪しい自動車と男。何かを川に
投げる。
なお、捜査本部に貼られた模造紙の地図に、首と両腕の発見日が「19日」と書込
まれるが、「20日」の誤りである。 →キャストと捜査情報
▲【115】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【113】刑事物語 知り過ぎた奴は殺す(1960日活)監督;小杉勇,,
→【114】 →【112】
シリーズ第7作。1作目で印象に残る、ハジキのムラニシを演じた土方弘が、今
回は事件の鍵を握る、靴磨きとして登場、提供はジュエル靴クリーム。幼い息子役
に、前作で健気な名演を残した松岡高史。
さて、序盤の1シーン。土方が、600万円強奪犯の上野山功一に、口止め料をも
らいに行くシーン。
屋上に、シチズン、東海汽船といったネオンが並ぶビル。「キバビル」と聞こえ
たが、ロケは新宿西口の模様。現・スバルビルの場所、その屋上だと思われる。
参考【昭和毎日】http://showa.mainichi.jp/ikeda1960/2008/05/ik005740.html?
実はこのビル、一瞬だが、前作「小さな目撃者」でも映るのだ。事件の解決後、
遺児ヒロ坊・松岡高史を、田舎のお婆ちゃんが迎えに来る。その時、松岡は、警察
署を抜け出して、かつて、両親で暮らした工場の宿舎へ向かっていた。白鬚橋を渡
る前、黄昏の街角を歩く暗示、西武バスが映る駅前、アオリ気味に撮られたバック
に、シチズン、東海汽船、小涌園と屋上のネオンが光る。
なぜ、「向島署」から白鬚橋へ向かうシーンの間に、新宿西口が映るのかはわか
らない。
発端の「東和銀行青山支店」は、表参道口。当時は富士銀行、今はみずほ銀行。
そして、本作のクライマックスはなんと、5作目「前科なき拳銃」の、荒川河川
敷にたどりつくのであった……。
追い詰められた森塚敏は、築地市場わきの築地川でモーターボートを盗み、海幸
橋をくぐって大川(隅田川)へ出る。永代橋、清洲橋を仰ぎ見て遡上、追う水上署
の巡視艇に青山、喜頓。ボートチェイスはさらに続いて、最後に堀切・隅田水門の
ゲートの下を抜け、荒川放水路に出るのである。
▲【114】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【112】刑事物語 前科なき拳銃(1960日活)監督;小杉勇,, 2017.5.5.修正
→【113】 →【111】
クライマックスは、広大な河川敷の葦原。2作目「殺人者(ころし)を挙げろ」
に引続き登場の、日活悪役スター・深江章喜が、日活悪女・南風夕子と、泥だらけ
になって、刑事達から逃げる。
さあ、気になるのは、ロケ地がどこかということである。
トラックで逃走した2人は、おそらく、隅田川を渡って、東へ向ったという設定
だ。隅田川には、画面のような場所はないので、荒川(放水路)か、江戸川が予想
される。それも、河口からはちょっと離れている印象だ。
ちらちら映り込む鉄橋が、どうやら鉄道の橋らしいので、これがヒントになるな
と思いつつ、2人と刑事達の行方を見守る。
物語は終焉を迎え、主人公、益田喜頓と青山恭二の親子デカが、現場を後にする、
そのシーン、バックに3連アーチのトラス橋。「パーン」という警笛と走行音に固
唾をのむ。なかなかやってこない電車。音だけか、と落胆しかけた時、ツートンカ
ラーの電車が鉄橋を渡って「終」マーク。
これでなんとか糸口がつかめた。不鮮明だが、電車はどうやら京成電鉄。となる
と、本線か押上線の荒川橋梁、または本線の江戸川橋梁の近く、と的が絞れる。
インターネット上で、写真を検索してみると、当時の押上線荒川橋梁は、トラス
のないガーター橋、江戸川橋梁も先代、古くは鉄道連隊が架設したと言う11連ト
ラス橋。
残る本線の荒川橋梁が、まさに映画と同じスタイルである。
鉄道橋の向うに見える自動車の行き来は堀切橋(旧橋)と思われる。
実地踏査してみなければ断定はできないが、おそらく、京成関屋駅と堀切菖蒲園
駅の間、その下流右岸の荒川河川敷、と推測するしだいである。
東武堀切駅の近く、
「イサムちゃんが大きうなるまで、おばあちゃん生きとるかのう……。」
と、東山千栄子が毛利充弘につぶやく、あの、東京物語(1953)の土手の下だ。
▲【113】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【111】吹けば飛ぶよな男だが(1968松竹)監督;山田洋次 →【112】 →【110】
佐山俊二(看守)「あんたらな、面会時間は3分や。もういくらもない。話あった
ら、早うしなさい。」
緑魔子(ハナコ)「ハイ……、あのう、サブちゃん、パンツなんかはどげんしとる
と?」
なべおさみ(サブ)「あんまり汚れたさかい、捨ててしもて、今、はいてへんねや。」
魔子「ホント?」
なべ「うん。」
佐山「そんなことより、もっと大事な話はないのかい……。」
かくて、新しき希望をめざして、若者は船出せんとするのである。再び帰る日は
いつの日か。
さらば祖国よ、懐かしの人々よ。いざゆけ若者よ、万里の波濤を乗越えて。恐る
るなかれ若者よ、万国の労働者は君が同胞なり。
さらば若者よ、いざ、さらば……。
▲【112】 →▲▲ページ冒頭▲▲
【110】刑事物語 銃声に浮かぶ顔(1960日活)監督;小杉勇,, →【111】 →【109】
益田喜頓と青山恭二の親子刑事シリーズの第4作。
永年勤続表彰の前日、喜頓は、うっかり拳銃を紛失する。
喜頓の所属する“隅田署”……架空、台東区辺りの設定
発端のひき逃げ事件が起きた“サツキ橋”……ロケは南高橋(中央区、新川と湊の間)
嵯峨善兵の経営する“トルコ風呂アリババ”……外観はおそらく山手線沿い
レンガアーチ橋と、その向うに「ソニーテープレコーダー」らしきネオン
が映る。有楽町近辺でロケか?
近江大介の溜り場“浅草のジャズ喫茶テネシー”
上野駅……コンコース、14番線ホーム、改札上事務室
弘松三郎の“神崎金融”……ロケ地は昌平橋下(総武線の秋葉原・御茶ノ水間)
花村典克の“矢野不動産”……設定は上野アメ横界隈(でも、壁の地図は江戸川区)
横浜……ホテルニューグランド、他の外観
クライマックス……神宮球場スタンド下、聖徳絵画館前
▲【111】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【109】名もなく貧しく美しく(1961東京映画)監督;松山善三 →【110】 →【108】
私が脚本家なら、ラストは、成長した亀が身をていして高峰秀子を守る、……と
いう感動の結末にする。
▲【110】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【108】接吻泥棒(1960東宝)監督;川島雄三 →【109】 →【107】
「ラブしちゃったかな?」4人目の女、団令子
ごちゃごちゃ楽しいドタバタコメディ。
新珠三千代、草笛光子、北あけみ、団令子、入り乱れてパイ投げ、スパゲッティ
投げ。
村木忍の美しいセット。特に沢村いき雄のゲテモノ酒場「アトミック」、の舟溜り。
「ああ、オレにはオンナは書けねえ!」石原慎太郎
▲【109】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【107】一刀斎は背番号6(1959大映東京)監督;木村恵吾 →【108】 →【106】
武者修行のため、奈良山中から上京した伊藤一刀斎・菅原謙二。ひょんなことか
ら、大毎オリオンズのホームランバッターになる。天丼大好き。
かなり世間からズレた朴訥な男の役が、菅原にぴったり。
すがすがしいほどアッケラカンと天真爛漫で他愛なくファニーな作品、そろそろ
またラピュタ阿佐ヶ谷でやってくれないかしらん。
ペナントレース初日の後楽園球場、大毎オリオンズ対西鉄ライオンズ。試合前の
アトラクション、素人打撃大会。大毎の小野、西鉄の稲尾、両エースにキリキリ舞
いの参加者たち。9人目に登場した、ひげは伸び放題、袴に下駄の菅原、神妙に一
礼。場内アナウンスが、
「職業は……、職業は……、あのォ……、武者修行中……。」
笑いがスタンドに渦巻く中、鉄腕稲尾の投球を、ライナーでスタンドに打込んで、
賞金5万円。
スタンドで観戦していた叶順子。その家、上野の旅館に、武者修行のため探す対
戦相手の歌垣甚平なる人物が見つかるまで、菅原は逗留しているのだ。
ところが、ようやく探し当てた歌垣は旅に出たきり。仕方がないので、当座の滞
在費稼ぎに、歌垣が帰るまで、大毎オリオンズの助っ人として、試合に臨む菅原で
あった。
菅原謙二……伊藤一刀斎トシアキ
叶順子………「芳江」
仁木多鶴子…歌垣甚平の娘「まゆら」 菅原が探す相手の娘
小林勝彦……叶の彼氏ノブオ 銀行員
滝田裕介……東京スポーツ社記者「倉橋」
市田ひろみ…東京スポーツ社カメラマン
菅井一郎……叶の父、上野の旅館「但馬」館主人 菅原が逗留する。北稲荷町6番地
浦辺粂子……叶の母、「但馬館」女将「お縫」 絶妙の夫婦、油の乗った粂子。
潮万太郎……芝大門、天ぷら天留主人 べらんめえな江戸ッ子、お調子者を好演。
十朱久雄……オリオンズ監督
多々良純……オリオンズのスカウト「石井」
早川雄三……ライオンズのスカウト、イケガミ
清川玉枝……但馬館の向かいのすみれ美容室
春川ますみ…すみれ美容室「はるみ」 トラブルメーカー、ウブな菅原を挑発。
杉田康………春川を追ってくるヤクザ 菅原に手のリンゴを真っ二つにされる。
八波むと志…春川を追ってくるヤクザ、杉田康の乾分「ジェットの辰」
小笠原まり子…但馬館の女中
大川修…………多々良の部下・ヤマザキ
五味康祐……本人。(原作者)
小西得郎……本人。解説者 食堂でカレーを食べてるシーンがなんとも。
小野正一、荒巻淳、田宮謙次郎、榎本喜八、山内一弘、葛城隆雄、佐々木信也
……本人。大毎オリオンズ
稲尾和久、中西太、豊田泰光、三原脩……本人。西鉄ライオンズ
二出川延明…本人。審判
春川ますみ、ギター弾きながら歌う、マヒナスターズの「泣かないで」。
八波むと志、乗込んでくるヤクザの先頭、彫物を見せてすごんだりするが、軽妙
なコメディリリーフぶり。
▲【108】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【106】やさぐれ姉御伝 総括リンチ(1973東映)監督;石井輝男 →【107】 →【105】
「ハダカとハダカのおつきあい。」
「観音様が風邪ひいちまわァ。」
アングラ任侠ポルノ。
東映マークに続いて、池玲子。取り囲まれて名乗りを上げる。右胸に、牡丹と蝶
と花札の彫物の玲子、片肌、もろ肌、乳もあらわに大立回り。戦前とおぼしき神戸
が舞台。
裏町のワイザツな細い路地のセット、アングラな美術が素晴らしい。切った張っ
た脱いだ、あの手この手のやりたい放題。くせ者達が、こってり手間をかけて、荒
唐無稽に組んずほぐれつ、劇画の世界。
キリストのヨシミ・愛川まこと。半天ババア・根岸明美。五角形のサングラスを
かけた扇組ジョウジ・内田良平。
連込み宿「翡翠館」では、女性の秘部を最大限に利用した麻薬の運び屋、上前を
はねる名和広。
主人公、猪鹿のお蝶・池玲子。おなじみのねちこいワルモノ、神戸・扇組の二代
目ゴウダ・遠藤辰雄。二人のカラミが、非常にイヤラシイ。
菜の花畑の、池玲子と内田良平。
そして、御大、嵐寛寿郎が侠気で花を添える。
▲【107】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【105】女の暦(1954新東宝)監督;久松静児 →【106】 →【104】
「アタシを、トッテモ愛してくれてるンです!」
小豆島を舞台にした、原作・壺井栄のもうひとつの名作。
豚の親子に逢い引きを見守られる香川京子。
恥ずかしくて、ニワトリの羽根をむしる香川京子。
頭に右手をのせ、「テへ」ポーズで微笑む香川京子。
突如、結婚をしたいと、久々に集まった姉妹たちに切り出す香川京子、
「アタシを、トッテモ愛してくれてるンです!アタシも大好きなんです!」
あまりに唐突な香川の宣言。一瞬の沈黙の後、笑い出す、田中絹代、花井蘭子、
杉葉子。
末妹、杉葉子と香川京子のセットした法事。各地に嫁いだ姉達が、久しぶりに小
豆島に帰ってくる。
遅れてやってきた轟夕起子と、養子として兄弟同様に育てられた、富田仲次郎と
永井柳太郎を加えて、鳥鍋をつつきながら、両親を懐かしむ夕べ。
明るい春の日射しの中、束の間だが、再会の喜びに浸る姉妹達。
本作品、全編を通じて、天気は晴れである。
▲【106】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【104】刑事物語 東京の迷路(1960日活)監督;小杉勇,, →【105】 →【103】
益田喜頓と青山恭二の親子刑事シリーズの第1作、本作のみ、息子役が青山では
なく、待田京介が演じている。青山恭二は、犯人候補の1人として登場。
名優でもある小杉勇監督、1960年1月から翌年2月までに、全10作を公開。
ショートプログラムにしても、かなりのハイペースである。同時期に、日活では
事件記者シリーズが、東映では、警視庁物語が製作されて、オリンピック前の東京
の風俗を活写している。
さて本作の舞台は、東京の、とあるドヤ街だ。
「とある」と表現するのは、東京である以外、特定の場所が明示されていないので
ある。
捜査本部は、架空の城南署。
東京でドヤ街といえば、大阪の釜ヶ崎、横浜の寿町と並んで名の通った山谷(さ
んや)が思い浮かぶ。ここで暗示されるのは、その山谷と、今はほとんど消えてし
まった、江東区・高橋(たかばし)のドヤ街で、双方を足して2で割ったような、
「とある」場所だ。現在の森下3丁目の一角に、高橋ドヤ街は、名残を残している。
近くの盛り場が錦糸町、ドヤ街の背景は南千住汐入と隅田川貨物駅。
実際のドヤ街では、ロケ撮影をしていないと思われる。
冒頭、冬の夜の橋の上。客を引く、ちょっと美人な売春婦。
「200円でいいからさァ。」
ふらふらとやって来たコート姿の男に、女は抱きつくが、そのまま男はばったり
倒れて動かない。背中の血に気づいて悲鳴をあげる女。男の手には警察手帳。
ここで画面いっぱいにタイトル、「刑事物語 東京の迷路」。
この、事件の発端となる短い下路トラス橋が、ドヤ街の入口という設定である。
ロケ場所が特定できていないのだが、周囲の雰囲気からすると、江東区の運河のど
こかの橋のようだ。
物語の中心になる「簡易旅館・九竜館」、美人女将・広岡三栄子の切盛りする、
このドヤは汐入あたり。
所轄ベテラン刑事ヨシカワ・長尾敏之助(ハンフリー・ボガードを彷彿)
「ここは、法律の通用しないところですから。」
本庁エリート刑事サトウヤスオ・待田京介(蝶ネクタイ)
「なあに、悪党はしめあげるに限ります。」
容疑者、ハジキのムラニシ・土方弘を、2人が連行しようとすると、たちまちそ
の情報が広まって、ドヤ街連中に取囲まれる。あわや血の雨、というその時現れる、
待田の父、所轄のベテラン・益田喜頓。
松本染升「サトウのダンナ。」
浜村純 「ダンナの息子さんですかい?」
連中も一目置いている人情刑事に、その場は丸く収まる。
この場面、工場と貨物駅にはさまれた、空の広い、殺伐とした空間にかかるガー
ダー橋。全く面影は残っていないが、隅田川駅の東端と、大日本紡績(ニチボー、
後のユニチカ)の工場の間にかかっていた橋である。現・南千住3丁目、ガスタン
クの北。
東京の貨物の北の玄関、隅田川駅構内がクライマックスの舞台になるのだが、途
中からロケ地は、遠く離れた、新鶴見操車場に飛ぶ。
走る貨物列車の側面に飛びついて、浜村純と待田京介が撃合いを演じるハイライ
トシーンは、拳銃0号(1959日活/監督;山崎徳次郎)のラストシーンと同じ、
新鶴見(操)である。
▲【105】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【103】警視庁物語 深夜便130列車(1960東映東京)監督;飯塚増一 →【104】 →【102】
→【捜査報告簿】
→【75】警視庁物語 行方不明(1964)
→【89】警視庁物語 ウラ付け捜査(1963)
→【103】警視庁物語 深夜便130列車(1960)
→【114】警視庁物語 顔のない女(1959)
→【120】警視庁物語 遺留品なし(1959)
→【122】警視庁物語 聞き込み(1960)
→【123】警視庁物語 全国縦断捜査(1963)
長谷川公之原作のシリーズ第12作。
公開は1960年1月だが、クレジットは1959年。映込むカレンダーも59年だ。
街にはクリスマスソングが流れ、ボーナスの噂話。刑事達はコートの襟を立て、
張込みに焼き芋をほおばる。
捜査本部は愛宕署、窓の外に東京タワー。序盤の拠点になる「準本部」として大
阪府警本部、窓からは大阪城を望む。
桜田門の警視庁は、登場しない。
本作から監督が飯塚増一に。刑事役も、南廣は中山昭二にバトンタッチ。
ヒロインは小宮光子。
「東京の貨物の表玄関」、──今は廃止されてシオサイトの──汐留駅に駅止め
で届いたジュラルミンの大きなトランク。受取人が現れず、腐敗臭をいぶかしんで
開けてみたら、中身は、下着姿の女性の絞殺体であった……。
刑事ドラマであるのはもちろんだが、鉄道の描写にもずいぶんウェイトの置かれ
た映画で、鉄道についての考証はかなりしっかりしている。
130列車というのは、トランクを積んでいた貨物列車ではなくて、結末の舞台に
なる、東京行の上り夜行列車なのであった。東京駅着4:55というのも時刻表通り。
当時の、大阪発16:22の東京行普通列車の列車番号が、130レである。
汐留駅を皮切りに、天王寺、梅田(貨物)、隅田川(貨物)に捜査が及び、各構
内が映る。東京駅は実際に列車の出入りするホームでのロケや、丸の内の公安室。
聞込み先、蒸気機関車79659、D51 189の映る機関区は、機関車から調べると
田端機関区ということになる。
刑事達は、東京各地の他、大阪、愛知に出張、観客に提示される情報量も膨大に
なれば、出演者も多くなる。それでも、常連の杉義一、戸田春子は、お休み。谷本
小夜子は、パン工場の女工で、聞込みに協力。岡部正純は、急行〔筑紫〕の乗客。
風間杜夫こと住田知仁、ナガタ部長刑事・堀雄二の息子役で、大阪出張のカバン
を届けに、急行〔月光〕の発車ホーム、東京駅15番線へとやって来る。
東海道新幹線は、59年4月に起工されたばかり。
刑事達は、窮屈なボックスシートの3等車、夜汽車で東京・大阪を往復する。
「特急にっぽん」(1961東宝/監督;川島雄三)の舞台、ビジネス特急〔こだま〕
号は、すでに走っているけれど、山本麟一の名古屋への緊急出張は、羽田から飛行
機で(飛行機は映らない)。
船橋ヘルスセンターのショー、伊勢湾台風の傷跡もなまなましい干拓地、サンダ
ル製造業者のベンゾール(ベンゼン)中毒。小宮の実家は、閉山した、九州の炭鉱
街。
荷主に使われた偽名、「長島一郎・宮本一郎」に、大阪の刑事ミズキ・今井俊二
──南海ホークスびいき──が「犯人は巨人ファンですね。」。後のミスタージャ
イアンツ・長嶋、ハワイ出身のエンディ宮本は、当時の2大スター選手。
冒頭の汐留貨物駅の解説シーン、コンテナの積卸しシーンが映る。後に、雑多な
貨車をつないだ貨物列車からとって代わるコンテナ専用列車。その第1号「たから」
号が運転を開始したのが、撮影直前の59年11月。
まだ普及前のコンタクトレンズが、重要なアイテムとして登場。名古屋にあると
いう「日本レンズ」という会社。現在の「メニコン」の前身が「日本コンタクトレ
ンズ」だ。
花沢徳衛「ああ、メガネの似合わない女の人が気取ってつける──。」
当時の風俗、事件も折込んで、実に濃密な80分である。
──どうでも良いが、大阪府警本部の主任警部・加藤嘉は午餐に、うな重らしき
ものを食べていた。大阪シーンの最後のカットは、みかんを食べる嘉。
→【詳細な捜査報告簿・前編】
▲【104】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【102】東京のバスガール(1958日活)監督;春原政久 →【103】 →【101】
「ツンダラシャンラ。」
「モケキョ、モケキョ。」
本作に出演もしている初代コロムビア・ローズが歌った「東京のバスガール」は、
路線バスの車掌がモチーフだけれど、この物語は観光バス会社で進行する。
そのためだろう、歌詞が一部変えてある。
♪昨日心にとめた方 今日はきれいな人つれて
→いつか心にとめた方 今はいずこの空の下
舞台になる「東京観光バス」は、鳩のマークでも、はとバスとは別の会社。当時
のはとバス(新日本観光バス)とすれ違うシーンもある。それなりの規模がある様
子なので、どこかに吸収合併されて現在に至ると思われるが、ネット上には、前田
郁という、衆議院運輸委員長、政務次官を務めた男が社長であった情報しか出てこ
ない。
「功・いさお」や「勇・いさみ」と、ニックネームのつけられた車体は、非常口が
最後部にある日野車なので、センターアンダーフロアエンジンの、日野ブルーリボ
ン。
有木山太(ありきさんた)、内海突破(うつみとっぱ)コンビの、体を張ったド
タバタギャグも楽しい、春原コメディ。2人が、自転車で河口湖に向う途中、鉄道
の鉄橋上(長いガーター橋)でレールを枕に休憩。そこへ蒸気機関車C58の牽く
貨物列車が通りがかるという、大胆なシーン。設定では中央本線ということになる
が、ロケ地は、八高線の鉄橋と推定。
非常にずるい演出だが、「ともしび学園」の生徒達と、主演の美多川光子が、今
はなき国立競技場で、同年5月に行われたばかりの、東京アジア大会に思いを馳せ
るシーンは、目頭が熱くなる。途上で大学のキャンパスめぐりをするシーン、明治、
東大、早稲田。それぞれBGMが、「白雲なびく…」「ただ一つ…」「都の西北…」
であった。
昭和33年ということで、建築途中の東京タワー、五千円札、皇太子妃などという
アイテムが登場する。
美多川のフィアンセ、学生アルバイト石丘伸吾、角帽のマークからすると、東大
生だ。
▲【103】 ▲▲ページ冒頭▲▲
【101】新東京行進曲(1953松竹大船)監督;川島雄三 →【102】 →【100】
「おふざけでないよ!」
高橋貞二………ニチニチ新聞社会部記者・マサゴ 泰明小同級生のタカちゃん
小林トシ子………同 社会部記者・イチノセフミコ 男まさり、貞二に気があるか
淡路恵子………都庁建設課職員・ミヨコ 貞二が思いを寄せる
三橋達也………泰明小同級生のカズちゃん・ニチニチ新聞発送係
大坂志郎………泰明小同級生のヨッちゃん・都電運転士
北上弥太朗……泰明小同級生のサブちゃん・都庁の建設技師 貞二の恋敵
桂小金治………泰明小同級生のキンちゃん・寿司屋 新婚3ヶ月
沼尾鈞………泰明小同級生のヒロちゃん・バンタム級プロボクサー
須賀不二夫………元泰明小教諭・スダ先生、中東建設渉外係、淡路の父
北原三枝………大坂の彼女・アキコ 上野百貨店(西郷会館)の売子
日守新一………警視庁捜査2課警部・オケ、北原の父
紅沢葉子………北原の母
諸角啓二郎……貞二のライバル紙「トーホー」の記者・モロイシ
久保幸江………小金治の妻 副主題歌「東京夜景」を歌う
望月優子………小金治の母
坂本武…………小金治の父(回想シーン)
長尾敏之助……建設局役人・ヨシダ
多々良純………ニチニチ新聞配送係長・タニグチ ボクシングの賭けを仕切る
小林十九二……新聞社員のたまり場・喫茶「のんき」のマスター
増田順二………ニチニチ新聞社員 冒頭、小型飛行機内で都知事にインタビュー
大杉陽一(莞児)………都電の車掌
草香田鶴子……貞二の「下宿のおばさん」
竹田法一………警視庁捜査2課長
手代木国男(朝海日出男)…日日新聞事業部・「ミス職場」担当
井上正彦………日日新聞社会部
稲川忠完(善一)…日日新聞社会部
高木信夫………学生・シンカイ、後にクラブマンダレー支配人
島村俊夫………小松川派出所の参考人
青木富夫………新聞記者
安井誠一郎……(本人役)都知事
藤山一郎・奈良光枝…(本人役)「ミス職場」コンテストで「新東京行進曲」を歌う
谷よしの………冒頭、取材を敢行するクラブ「マンダレー」の賭博場の客
タカちゃん・高橋貞二の少年時代を演じているのは、「吹けよ春風」(1953東宝
/監督;谷口千吉)の、刑務所帰りの山村聰の、息子役だと思われる。
貞二、トシ子の勤めるトーニチこと東京日日新聞は、当時実在した、毎日新聞傍
系の夕刊紙。
三橋の胸には毎日新聞の社章、新聞の積込み場には、毎日新聞と書かれた袋がこ
ろがる。冒頭、東京上空で都知事にインタビューするシーン、飛んでいるのは就役
したばかり、毎日新聞所有のデハビランドDH-104・ダブ「明星号」、JA5005。
進行スタッフのクレジットに山吉鴻作(松竹の重役役役者)。
「フラスコ様に、あやまりなさい。」
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【1〜100】第1部
【100】君も出世ができる(1964)
【99】父子草(1967)
【98】地方記者(1962)
【97】花のお江戸の法界坊(1965)
【96】童貞先生行状記(1957)
【95】駅 STATION(1981)
【94】大いなる驀進(1960)
【93】三十六人の乗客(1957)
【92】高度7000米 恐怖の四時間(1959)
【91】キングコング対ゴジラ(1962)
【90】かも(1965)
【89】警視庁物語 ウラ付け捜査(1963)
【88】拳銃0号(1959)
【87】希望の乙女(1958)
【86】旅情(1959)
【85】人間に賭けるな(1964)
【84】日本暴力列島 京阪神殺しの軍団(1975)
【83】東京湾(1962)
【82】野獣狩り(1973)
【81】ひとりぼっちの二人だが(1962)
【80】ギャング同盟(1963)
【79】明日は月給日(1952)
【78】もぐら横丁(1953)
【77】好人物の夫婦(1956)
【76】愛情の都(1958)
【75】警視庁物語 行方不明(1964)
【74】喜劇 男の泣きどころ(1973)
【73】橋(1959)
【72】東京の恋人(1952)
【71】特急三百哩(1928)
【70】アリバイ(1963)
【69】私は負けない(1966)
【68】月曜日のユカ(1964)
【67】おんなの細道 濡れた海峡(1980)
【66】続・酔いどれ博士(1966)
【65】ダニ(1965)
【64】硝子のジョニー 野獣のように見えて(1962日活)
【63】誘惑(1957)
【62】集金旅行(1957)
【61】ゴジラ(1954)
【60】閉店時間(1962)
【59】山鳩(1957)
【58】次郎長社長と石松社員(1961)
【57】サザエさんの青春(1957)
【56】背後の人(1965)
【55】重役の椅子(1958)
【54】川のある下町の話(1955)
【53】泣いて笑った花嫁(1962)
【52】はだしの花嫁(1962)
【51】のれんと花嫁(1961)
【50】ふりむいた花嫁(1961)
【49】わたしの凡てを(1954)
【48】愛人(1953)
【47】花嫁のおのろけ(1957)
【46】恋人(1951)
【45】33号車応答なし(1955)
【44】真田風雲録(1963)
【43】嵐を呼ぶ楽団(1960)
【42】サラリーマン目白三平 うちの女房(1957)
【41】人形佐七捕物帖 めくら狼(1955)
【40】流れる(1956)
【39】結婚のすべて(1958)
【38】踊りたい夜(1963)
【37】風流温泉日記(1958)
【36】喧嘩鴛鴦(1956)
【35】早射ち野郎(1961)
【34】香華(こうげ 1964)
【33】その壁を砕け(1959)
【32】おかあさん(1952)
【31】愛染かつら 総集篇(1938・39)
【30】赤い鷹(1965)
【29】人間狩り(1962)
【28】[シリーズ]事件記者(1959〜1962)
【27】地図のない町(1960)
【26】黒い画集 あるサラリーマンの証言(1960)
【25】吹けよ春風(1953)
【24】彼奴を逃すな(きゃつをにがすな 1956)
【23】我が家は楽し(1951)
【22】花ひらく娘たち(1969)
【21】麦秋(1951)
【20】浮草(1959)
【19】鉄砲玉の美学(1973)
【18】最後の切札(1960)
【17】黄色いさくらんぼ(1960)
【16】空の大怪獣 ラドン(1956)
【15】涙を、獅子のたて髪に(1962)
【14】特急にっぽん(1961)
【13】時をかける少女(1983)
【12】幸福の黄色いハンカチ(1977)
【11】お国と五平(1952東宝)
【10】可愛いめんどりが歌った(1961)/夢でありたい(1962)
【09】充たされた生活(1962)
【08】人間蒸発(1967)
【07】若い樹(1956)
【06】こだまは呼んでいる(1959)
【05】抱かれた花嫁(1957)
【04】新・事件記者 殺意の丘(1966)
【03】空かける花嫁(1959)
【02】現代っ子(1963)
【01】七人の刑事 終着駅の女(1965)
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寒空はだか窓口 紹介 予定 随記 日活版「事件記者」