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◆日活・事件記者 おぼえがき◆

  
▼SKIP  →日活事件記者 小事典

 1958年(昭和33年)4月から、8年に渡り放送された、NHKテレビの人気ドラマ
「事件記者」を、日活が映画化。
 テレビ放送開始翌年の1959年から、1時間前後のSP映画(2本立て興行のうち
の添え物映画)として10本が公開された。
 監督は山崎徳次郎。
 島田一男原作、警視庁の記者クラブ詰めの新聞記者たちの活躍を描く。永井智雄
演じる相沢キャップの「東京日報」を中心に物語が進むのは同じだが、当時、生放
送でスタジオ撮影のテレビドラマとは異なり、ロケを多用。また、出演者も、メイ
ンキャストに映画オリジナルの日活若手スター・沢本忠雄を起用し、テレビ版の主
要キャストの、アラさん・清村耕次や、シロさん・近藤洋介といった面々は出演し
ていない。三保敬太郎のハードなジャズの音楽効果もあって、テレビとはかなり異
なった印象である。
 後に製作された、東京映画版の「新・事件記者」シリーズは、出演者を含め、テ
レビ版に近い設定で、こちらの方がテレビの世界観をよく伝えていそうである。

 10本それぞれ、扱うテーマや事件の舞台を変え、演出方法も作品ごとに趣向を凝
らす。限られた時間の中で、テンポ良く話は進む。
 ある時は競争し、またある時は協力し、一喜一憂する各社記者たち。新米記者、
スガちゃん・沢本忠雄の成長。食いしん坊ガンさん・山田吾一のコメディリリーフ
ぶり。重鎮の八田老人・大森義夫や「バッキャロー」が口癖の浦瀬キャップなど、
個性あふれる出演者が追いかける、難事件、怪事件。
 舞台となるのは、オリンピックで変貌する前、人口900万の首都、東京各地。東
京タワーはすでにあるが、首都高速道路の建設もまだ始まらず、街中を縦横に都電
が走る。山崎監督は、鉄道好きなのか、必要以上に電車が映りこむ。
 そして、胃腸薬「ワカ末錠」(中村滝製薬)を始めとするタイアップ商品の登場
も楽しい。
 必要なときに、都合よく現れる電話ボックス、タクシー、拳銃、そういうことは
気にせずに、職人芸の映画造りを堪能しよう。

【参考資料】
「映画のポケット」Vol.48「日活野郎(と女たち) 〜戦後日活大部屋俳優傳〜」資料
【参考サイト】
 華麗なる日活映画の世界(京都電影電視公司)
 キネマ写真館
 事件記者非公式ファンサイト


 第1作 事件記者
 第2作 事件記者 真昼の恐怖
 第3作 事件記者 仮面の脅迫
 第4作 事件記者 姿なき狙撃者
 第5作 事件記者 影なき男
 第6作 事件記者 深夜の目撃者
 第7作 事件記者 時限爆弾
 第8作 事件記者 狙われた十代
 第9作 事件記者 拳銃貸します
第10作 事件記者 影なき侵入者


【23】2022年9月9日 7人のサムライ

 シリーズ10作中、日活オリジナルの東京日報レギュラーメンバー7人が、一堂に
会するカットは1回しかない。それが、7作目の「時限爆弾」。
 保険金目当ての爆破事件と目星がついたところで、判明した荷主のリストを基に、
日報の狭い小間内で7人が議論を交わす。
 6人までは揃うことが何度かあるのだが、全員集合はこの時限り。9作目からは、
ベーさん・原保美が出演しなくなるので、これが最初で最後なのである。


【22】2022年9月1日 「自首してー」

 主犯・野呂圭介が潜伏する、共犯・石丘伸吾のガレージ。修理工場の2階と思し
き粗末な部屋。「中野の近く」に住んでいるというのだが、窓の外には、2基の平
型ガスホルダー、……の写真パネルが写っていた。この後、野呂に刺された石丘が
かつぎこまれる病院が、セリフによれば「大久保のケイメイカイ病院」ということ
から察するに、場所の設定は、中野の新宿寄り、ということになろう。


【21】2018年4月3日 最終回/エピローグ

事件解決。
印旛沼の葦原、ぬかるみ。
転んだタイムスのオカちゃんと日日のガンさん。オカちゃんをイナちゃんと日報の
スガちゃんが助け起こす。
イナ「オカちゃん重てえなァ。」
ガンさん、ポケットの中に太ったウナギを見つけて驚く。

スガちゃんとイナちゃんに手をとられて、堀が土手の上に駆け上がってくる。
オカ「スガちゃん、今度の事件はいい役回りだったなァ。」
ガン「このお嬢さんに感謝されて、ロマンスが生まれる。こたえられませんねェ。」
スガ「(こちらは真面目な表情)イナさん、人間って哀しいもんですね。」
イナ「考えてみれば、カノウも哀れな男さ。カネという巨大な怪物に押しつぶされ
   たんだから。でも我々は考えていても仕方がない。この醜い現実をありのま
   まに報道するのが役目なんだ。」
スガ「(あくまで二枚目)そうですね。」
イナ「さあ行こう、明日のアサカン、久しぶりにハデだぜ!」
日報の自動車(OPEL)に乗込む5人。
トランペット高らかに、#9、10のテーマ曲。
画面奥に向かって車は走り去り、消えて行く。
「終」マーク○C1962


【20】2018年4月2日 参考 第10作「影なき侵入者」出演者クレジット

※「キネマ写真館 日本映画写真データベース」サイトより(現在消滅)

沢本忠雄、滝田裕介、永井智雄、
山田吾一、高城淳一、外野村晋、園井啓介、綾川香、宮阪将嘉、大森義夫、
森塚敏、相馬千恵子、堀恭子、相原巨典、河上信夫、雪丘恵介、松下達夫、
長弘、衣笠力矢、白河道子、堺美紀子、潮京以子、天野研、玉村駿太郎、
葵真木子、須田喜久代、八代康二、沢井杏介、緑川宏、阪井幸一朗、宮原徳平、
小柴隆、二木草之助、柴田新三、久遠利三、川村昌之、宮川敏彦、土田義雄、小沢直好


【19】2018年3月9日 「容赦なき観客」

 細かいことなので、揚げ足をとらなくてもいいのだけれど、おや、というミステ
イクがちょこちょこ。しかし、そのへんの詰めの甘さ、いい加減さが、時間をかけ
られないSP作品らしくて、愛おしくもある。
 ここでは、ストーリーや謎解きに関することではなく、単なるケアレスミスにつ
いて取上げる。

#1「事件記者」
 赴任翌日、ガンさんの早朝出社に感心したウラセキャップ。しかし、その理由は、
財布を落としたガンさん、心配で眠れなかったからだった。
 一緒に探す日報のアイザワキャップ、
「ガンさん、ラーメン食えなくなっちゃうもんな。」
 当時は、すでにTV版が好評を博していた頃だから、観客も違和感はなかったか
もしれないが……。映画の世界では、まだ2日目、ガンさんの食いしん坊をアイさ
んが茶化すには早い。
 永井智雄のアドリブかな。

#3「仮面の脅迫」
 謀殺された薬剤師・沢木杏介、そのフィアンセ、看護婦・中村万寿子。イナちゃ
んに連絡先を尋ねられた時に、「病院の住込みですから。」と答えていた。
 何度か訪ねた中村の部屋は、看護婦寮だと思って見ていたが、ラスト近く、留守
中の中村を三たび訪ねたイナちゃんに、管理人らしき女性が、
「サエキという男性に呼出されて──」と言っている。
 サエキというのは、病院の事務長・垂水悟郎のことなので、看護婦寮の人間が
「サエキという」などと、他人行儀な物言いをするのは、違和感がある。とすると、
病院の住込みではなくて、どこかのアパート住まいということになってしまう。

#4「姿なき狙撃者」
 アベック強盗の片割れ、トミー・杉幸彦。逮捕された相棒、デコ・葵真木子の釈
放を訴え、ピストルで交番を襲撃する。
 とばっちりを受けて、背後から撃たれた、大森山王派出所の警官。現場検証で、
捜査一課長・二本柳寛に、「手配電話を受けておりましたので」と、当時の状況を
説明する。
 しかし、襲撃シーンでは、なにか書類整理のようなことをしていて──電話に答
えるために何かを探していた、と解釈することもできるが──、どうやら、説明と
は食い違う。
 さて、翌朝、泊まり込んだ日報アイザワキャップ。届いた朝刊で記事をチェック。
新日本タイムスを広げて、スクープに驚く。
「えい、抜かれた抜かれたーい。」
 画面に目をこらすと、スクープ記事に目を留めた新聞の1面の紙名は、タイムス
ではなく、東京日報である。

#5「影なき男」
 鑑識課の鑑定で、京橋裏・千賀堂で発見されたドル紙幣が、ニセ札だと判明する。
おなじみ鑑識課員・水谷謙之が、ニセの「20ドル紙幣」と言った後、実際に映るの
は10ドル紙幣。見ている方は混乱するが、その後も、何事も無かったかのように、
10ドル紙幣として話は進む。

#6「深夜の目撃者」
 目撃者、浮浪者・瀬山孝司に、毒入りケーキを置き忘れていった客の乗ったバスを
尋ねるミゾグチ刑事・木島一郎。
 木島は、そのバス停から発車するバスとして「豊島園行、宮園通り行、新井薬師
行」の3本を挙げる。この行先の設定も、実際の映像とは異なるのだが、それはさ
ておき、瀬山は、「新井薬師行」と答える。
 当該シーンを振返ると、市ヶ谷駅前のバス停(ロケ地は四ッ谷駅前)に、まず、
「新井薬師駅=東京駅」と後ろの方向幕を表示した関東バスが着く。車掌が「宮園
まわり新井薬師行でございまーす。」とアナウンス。
 「なんだ、宮園行か。」ケーキの持主・葵真木子は、1本見送る。
 続いて到着した「丸山=新橋駅」の表示を出す関東バスに、葵は乗込んだ。
 というわけで、新井薬師行に乗ったと言う証言は、間違いなのだ。
 ところが、実際のところは、葵の住み込む郵便局は上高田。新井薬師行は上高田
を通るが、丸山行は通らない。瀬山の言う通り、新井薬師行に乗らないと、本来は
いけないのだった。
 新井薬師行と丸山行の映像が逆だったら、ツジツマが合ったのだが……。
 ちなみに、新橋駅─豊島園、東京駅(宮園通り経由)新井薬師駅、新橋駅─
丸山(営業所)は実在した系統である。

#7「時限爆弾」
 爆破される「台山丸」。セリフでは「タイザンマル」と言っているが、浮き輪に
は、“TAI SAN MARU”と書いてある。


【18】2018年3月6日 影の記者たち

 その他大勢、を担当する、共盟通信と大都新報(#1〜8)。

 共盟のキャップ、その役名もニキさんの二木草之助は、1作目で、一応、紹介さ
れて、たまにセリフも言う。#3では、クマさんと将棋を指すシーンもある。
 #1〜6を検証したところ、通して出演している柴田新と山中大成は、共盟通信、
つまり二木の部下である。目をこらして見ていると、共盟の小間にそろって談笑し
ていたり、共盟の小間に出入りしている。
 柴田新は、セリフはなくても、クラブの応接セットに記者たちが揃うシーンでは、
目立つところに座っている。また、#3,4を見る限り、全ての事件現場の取材に来
ている。#7ではセリフがあるが、どうも新日本タイムスに引抜かれた模様。#8
の朝のシーン、洗面所から帰ってきた柴田、ミッちゃんに「朝飯たのむ」と言った
後、共盟ブースの前を素通りしてゆく。
 #3のラストでは、キャップの二木を含め、5人が共盟の小間に、はいって行った。

 さて、1作目冒頭の、主な記者紹介でも取上げてもらえなかった大都新報の記者。
 #1では、昼食の注文をミッちゃんにきかれて、「冷し中華」と、小間の中で
緑川宏が答える。
 この緑川宏が、クラブ内の員数合わせとして、実は大事な役どころ。#3では、
冒頭の談笑シーンで、メインのソファーに陣取る。#4,5,8には、キャストにクレジッ
トされているが、実際の出演には疑問が残る。
 #1,2では、太い黒縁メガネをかけて、取材シーンで、くらいつく東郷秀美。
#3〜8では、メガネをしていない。#1〜6を通じて、消去法で考えると、どうやら、
大都新報の記者のようである。
 大都新報は#7を最後に画面から消えて、#9,10では東都タイムスがクラブ入り
している。


【17】2018年3月1日 日日ウラセキャップ・高城淳一のクレジット表記

#1 「高城淳一」
#2 「高城◎一」 ◎……「淳」がサンズイでなく、なぜかニスイ
#3 「高城淳一」
#4 「高城淳一」
#5 「◎城淳一」 ◎……「高」がハシゴ高
#6 「高木◎一」 「城」が「木」に、◎……「淳」がサンズイでなく、ニスイ
#7 「高城◎一」 ◎……「淳」がサンズイでなく、ニスイ
#8 「高城◎一」 ◎……「淳」がサンズイでなく、ニスイ
#9 「高城淳一」
#10 「高城淳一」


【16】2016年6月3日 試し刷り

  →
日活事件記者 小事典

【15】2016年6月11日 日報ブースの壁

 東京日報の小間の造作を見ると、#1,2、#3,4、#5,6、#7,8、#9,10を
まとめて撮影、あるいは製作したことがうかがえる。
 奥の窓際の壁の掲示物に2作ずつ、共通性が見られるのだ。
#1,2 カレンダーの社名が同じ「日本郵船」
#3,4 カレンダーのあったところに、電話番号表らしき貼紙(#3,4共通)
#5,6 図柄と月は違うが、同じデザインのカレンダー
#7,8 両作共通の、雪の小径を歩く舞妓さんの1/2月のカレンダー
#9,10 両作共通、カレンダーの図柄が日本地図。#9は北海道、#10は東北。


【14】2016年5月12日 #2 真昼の恐怖  補逸

 ヤミ血液業者の太田・山田禅二。具体的な住所が明かされないが、夕刊を買って、
日報のスクープに驚くというシーンでは、直前に、駅前広場の俯瞰映像が映る。
 よく見ると、中央から、ツートンカラーの路面電車が発車して行く。どうやら、
川崎駅前だ。
 今は亡き、小美屋百貨店からの撮影と推測する。禅二が新聞を開いている後ろに
屋上遊園地の飛行塔らしきものが映り込むが、こちらは、閉店してしまった、さい
か屋であろうか。
 情婦の片倉春子・南風夕子のアパートが蒲田なので、多摩川を挟むけれど、禅二
が川崎在住でも、設定上の無理はない。

 作中、重要なアイテムとなる、「ドライブクラブ」の車。
 会員制のレンタカーで、「わ」ナンバーなのは現在と同様だが、当時は黒地に白
抜きのナンバープレートであった。ちなみに、タクシーは黄地に黒文字である。
 聞込みに行くドライブクラブ、店内からのショットでは、ガラスの向うに、これ
また御丁寧に、外堀沿いを走る、中央線の明るい電車が映る。画面の左端には、飯
田橋の文字。

※参考サイト 時計仕掛けの昭和館 http://fcm.blog.so-net.ne.jp/2008-10-31
       愛知県レンタカー協会 http://www.aichi-rentacar.gr.jp/history/

 買血をしていたバンガローは、江ノ島側から鵠沼橋を渡ってすぐの場所。

 雪の日や あれも人の子 樽拾ひ  安藤信友(冠里)



【13】電話

 まずは、東京日報の机の上に並んだ4台の電話機。
 1台は、本社直通の専用回線。横長の特徴あるスタイルで、脇のハンドルをガリ
ガリ回して発電する。デスクのサブちゃんが怒鳴る様をアイザワキャップが芝居す
るのはこれ。第4作のみ、ハンズフリーになるコブが、受話器についている。
 1台は、警視庁内の内線電話。専用線同様にダイヤルがない。[おたくの新人を
逮捕した]と、第1作ではムラチョウからの電話を受けた。
 他に2台、電電公社の回線。
 4台もあると、どのベルが鳴ったかわからず、キャップが受話器を探す芝居が一
つの名物で、受話器の取り方も、回が進むと段々に芸が細かくなる。最終第10作
では、発信時だが、頭越し受話器の秘技を披露。マニアの中では伝説となった。
 第1作では、左から(定番のアングルでは画面の向って右から)、専用線、内線、
外線2台の順だったが、作品によって、配置が異なる。

 当時、まだ遠距離の場合、ダイヤル即時通話ではなく、交換手扱いの申込制。相
手の番号を局に申込んで一旦切る。回線が空いたら連絡が来る。
 第5作で、イナちゃんが、新婚旅行先の信州上山田温泉からスクープを伝えよう
とするが、1時間待ちと言われ、30分で頼む、と泣きつく。繋がった時には、事件
は解決していたのだった。

 電話ボックスは窓の小さい懐かしい形。把手の丸穴がアクセント。電話機は青電
話だが、受話器の黒い「5号自動式」。硬貨投入口が10円、5円、100円の3つ。
 タバコ屋の店先でおなじみだった赤電話。電話ボックスと赤電話は、必要とあら
ば、小道具として、いつどこにでも設置されるのは、事件記者にかかわらず、映画
の常識である。この時代の公衆電話、市内通話は、いくらかけても10円均一。
 他には料金投入箱を横に置いた黒電話を、客に使わせる店も。ちょっと電話貸し
てね、というのも、当り前のサービス。最近では、喫茶店でも、かかって来た電話
を取次いでくれない店があるのは、隔世の感である。


【12】タイアップと推測される商品

◆第1作 事件記者
ワカ末糖衣錠(中滝薬品)、蝶矢(CHOYA・シャツ)
◆第2作 事件記者 真昼の恐怖
ワカ末糖衣錠、トライX(コダック)、亜細亜石油(フクロウマーク)
◆第3作 事件記者 仮面の脅迫
ワカ末糖衣錠
◆第4作 事件記者 姿なき狙撃者
ワカ末糖衣錠
◆第5作 事件記者 影なき男
ワカ末糖衣錠、ルピット(中滝薬品・風邪薬)
、コピア複写器(丸星機化工業)、高島屋(シャツ)
◆第6作 事件記者 深夜の目撃者
ワカ末糖衣錠、ルピット、コピア複写器
◆第7作 事件記者 時限爆弾
ワカ末糖衣錠、ルピット、コピア複写器、タツミガスストーブ4号バルカン
◆第8作 事件記者 狙われた十代
ワカ末糖衣錠、ルピット、コピア複写器、タツミガスストーブ、タツミガス炊飯器
、ガスデンエンジン(富士自動車)、センターオーバル石炭ストーブ
◆第9作 事件記者 拳銃貸します
ワカ末糖衣錠、ルピット、ヤマザキパンカリフォルニアレーズン入り
◆第10作 事件記者 影なき侵入者
ワカ末糖衣錠、ルピット、ヤマザキカリフォルニアレーズン入り、チキンラーメン
  ※冒頭の印旛沼の取材陣、カメラのアップ、3台ともアサヒペンタックス

【11】2014年3月26日 登場する場所、地名   2018.2.24修正

◆第1作 事件記者
品川駅 船十親分・深見泰三の遭難、カバン盗難。置引・近江大介を宍戸ら尋問
「品川区立病院」 深見泰三が入院。玄関の案内図に(大)森赤十字病院の文字
新宿 縄張り争い、船十と六方組(親分・伊丹慶治)
鮫洲 置引ヤス・高田保の殺されるアパート(外観、周辺の映像はなく室内のみ)
新橋 喫茶コルボウ……ヤスが彼女・水谷郷子にカバンを預ける、ラストの銃撃戦
品川浦 主犯の宍戸錠と野呂圭介が、カバンを盗んだ置引さがしの相談。背景に、
    21世紀にも面影を残す船溜り。遠く、品川駅の入換作業の汽笛が響く演出。
    2018.2.24追記
高輪橋架道橋 鮫洲で高田保を射殺した野呂を宍戸が叱責。拳銃にウットリの野呂。

◆第2作 事件記者 真昼の恐怖
江ノ島海岸(鵠沼) 若者の取材を任されたスガちゃん・沢本忠雄、
      ヤミ血液業者がバンガローで商売、女性・久木登喜子が失血死
六郷土手 ヤミ血液業者をゆすろうとした、おトキ・小園蓉子の死体が遺棄される
蒲田女塚 ヤミ血液業者の女・南風夕子のアパート
川崎駅前 山田禅二が、夕刊を買う新聞スタンド。俯瞰で駅前広場が映る。
(小田急沿線)日報アイザワキャップ・永井智雄の自宅
(京王沿線)刑事ムラチョウ・宮坂将嘉の自宅  ※東松原駅付近「羽根木町会」
(京急沿線)スイバレのおトキ・小園蓉子の木造アパート  ※穴守(空港)線か

◆第3作 事件記者 仮面の脅迫 ※上野署
向島 冒頭の狂言強盗、ただし、ロケは深川(現江東区木場、新田橋付近)
   及び業平橋(東京スカイツリー近辺)
タケマチ 事件の発端となる映画館、ただし、台東区の竹町は本来「タケチョウ」
     映画館「オデオン」の外観のカットは小田急沿線
上野 不忍池畔の旅館「桂荘」と売店、科学博物館エントランス
万世橋 向島に向う日報の車がエンコ
日暮里 薬剤師・沢井杏介のアパート、芋坂跨線橋、
    滝田と吾一が中村万寿子を誘う食堂(甘味屋?)
神田駅東口
「北沢四丁目派出所」
「駿河台ホテル」セットのみ
「恵明会病院」設定は上野付近、ロケ地不明

◆第4作 事件記者 姿なき狙撃者 ※大森署、(愛宕署)
大井 冒頭の時計店泥棒、ただしロケは武蔵小山商店街
大森 「大森スカイハウス」、襲撃される「山王派出所」
   大森スカイハウスは、麹町ダイヤモンドホテルの旧建物か?
蒲田 泥棒カップル・杉幸彦と葵真木子の泊まるベッドハウス「赤松荘」
   蒲田駅前、「蒲田銀座」
芝浦埠頭 外人殺し
新橋 深江章喜の三星商事
二子玉川園 犯人・杉を日報スガ・沢本が説得する飛行塔、ラストの銃撃戦
   セリフでは「多摩川園」と言っているが、ロケは二子玉川園(飛行塔に文字)
新宿歌舞伎町「狸小路」 杉をかくまう田中筆子の呑み屋「あさがお」
「東大久保派出所」

◆第5作 事件記者 影なき男 ※月島署
月島(現・豊海) 埋立地で死体発見、着衣から偽ドル紙幣
京橋裏 ドル札偽造団の集う古美術商「千賀堂」、店主・冬木京三殺害
上山田温泉 イナちゃん夫婦の新婚旅行、「圓山荘」、窃盗事件と、轢死
九段会館 イナちゃん夫婦の結婚披露宴
上野駅 イナちゃん夫婦を乗せたSL列車出てゆく(両大師跨線橋から撮影)
「立川」 月島で発見された、殺された印刷工の住所
大田区某所 元華族夫人・東恵美子の屋敷、電話番号メモに、大田72局とある。
   外観は映らないが、局番から推測するとおそらく田園調布辺りの設定か。
新常盤橋 宇都木・木浦佑三の事務所、窓の外に石造りの道路橋、奥に国鉄のアー
   チ高架、ゆっくり動く客車列車は東京駅の引上線だろう。2016.1.28追記

◆第6作 事件記者 深夜の目撃者 ※野方署(タクシー運転手殺しの所轄は不明)
市ヶ谷 タクシー運転手毒死事件の発端、ただしロケは四ッ谷駅前
四谷 タクシー運転手死亡現場、雙葉学園わき ※18.3.15訂正
中野区上高田 上高田「東天神郵便局」、強盗侵入
新宿 年末警戒の取材
関東バス丸山営業所(中野区江古田) 車掌・和田怜子に取材
上野 野呂、青森行急行に乗込む、「うえの」の行灯駅名標はセットの可能性も
赤羽 逃げる主犯オオキ・野呂圭介、蒸気機関車に轢断され死亡
   ホームへの列車進入は赤羽駅だが、線路を走るシーン、轢断シーンは茅ヶ
   崎か。
「中野駅近く」 共犯クドウタカシ・石丘伸吾の「アパート」(廃ガレージ)
「大久保のケイメイカイ病院」 共犯クドウ・石丘伸吾の担ぎ込まれる病院

◆第7作 事件記者 時限爆弾 ※水上(すいじょう)署、(四谷署)
雪山から帰る列車 スガちゃん、タケさん妹・稲垣美穂子と出会う
   谷川岳の麓、上越国境と推測。まだ新清水トンネルはなく、上下線で単線を
   共用している。
   タイトルに続くトンネルは、松川ループを越後中里方面に登る(つまり下り
   線)方向に撮影しているのではないか。つまり、本来、帰京する方向とは逆
   だが、良い絵になることを優先してそうしているのではあるまいか。
   2人が気まずく別れる場所が地下鉄の新宿駅なので、上越線だとつじつまが
   合わない気もするが、これも演出優先か。
「ナルミ(鳴海)埠頭」 貨物船爆発沈没
地下鉄新宿駅 楠、岩下のシガレットケースをスる。後で岩下を逮捕失敗
東銀座? ミカサ油脂取材後の電話ボックス、バックに「木挽館別館」「ミノルタ」
台東区「谷中清水町」 スリ・楠侑子が軟禁される(室内のみ・縄抜け)
「谷中有島町派出所」 脱出したスリ・楠が警視庁に電話する ※真島町ではない
世田谷区廻沢町 八幡山駅、楠にだまされた岩下浩やってくる、(ガスタンク映る)
「東雲(しののめ)の23号地」 東京港内、犯人たち逃亡の船

◆第8作 事件記者 狙われた十代
神宮外苑 外周道路でカミナリ族の賭けバイクレース
(世田谷) タダオ・杉山俊夫の屋敷、父の隠匿拳銃盗難 場所の特定はないが、
   成城あたりをロケ地と推定(砧支所第一出張所管内)
「杉並区城西線ひばりヶ丘駅」 駅強盗警官射殺 
      ただし、ロケはおそらく国電南武線、府中市近辺
      ※実在のひばりヶ丘駅は西武池袋線、旧保谷町内 2018.2.27訂正

◆第9作 事件記者 拳銃貸します ※大崎署
「丸ノ内2丁目カントー銀行」 銀行ギャングの襲撃と墜死(ロケ地は内幸町)
池袋・北口の東武東上線わき 白タク一斉検挙
五反田・東急池上線高架の下 拳銃貸しする新井麗子と山田禅二のおでん屋台
江東区カナメチョウ」 1件目の質屋強盗 ※カナメチョウは架空
「五反田近辺」 2件目の質屋強盗、学生と刑事遭難
「信濃町」 撃たれた学生ハシモトのアルバイト先タイムス販売店
「小岩」 撃たれた学生の母親(千葉・五井在住)を、千葉県警から警視庁に中継
   するセリフに「小岩霊園」、実景で「小岩霊園入口」という看板もあるが、
   実在したかは疑問。
「三輪病院」 強盗に撃たれた学生が入院。効果音によると線路の近く。
   セリフによると、おでん屋台から近い。だとすれば、五反田駅近辺の設定。
大崎(現大崎1丁目・山手線と品鶴線分岐部あたり) おでん屋母子の家
   長く細い電車のガード下を抜けて左折すると新井麗子母子のボロ家。線路端
   で、国電の茶色い電車がひっきりなしに通る。窓の外の線路の様子から推定
   すると、このへんになる。
※「八丈島」新米刑事エンちゃんの前任地。

◆第10作 事件記者 影なき侵入者
印旛沼 ガンさん、スガちゃん、オカさん、鴨撃ちに行って変死体発見
神田青果市場 変死体の身元とあてこんで取材にゆく「丸勝」
「大福金融青山出張所」 脅迫状が届き、所長殺害。真犯人の勤める会社。
「自由が丘」 容疑者のスリ新吉の姉・須田喜久代の営む洋品店
「原宿」 所長愛人コガトモエ・白河道子のマンション
※電話で、「仙台支局」と話すシーンあり、スリ新吉の資料を電送してもらう。


【10】2014年3月20日 助演女優賞

 主演が記者クラブ連中、筆頭看板はスガちゃん・沢本忠雄。したがって、主演女
優が存在し得ないので、印象に残る助演女優を選ぶ。あくまで私の独断である。

 9作目「拳銃貸します」より、おでん屋台の女将・新井麗子。
 疲れっぷりといい、情にもろいところといい、絶妙な配役だ。本作が10本中で
も人気が高いのは、彼女の功績が大きい。
 五反田駅前の屋台で、元亭主・山田禅二の拳銃貸しの片棒を担がされている新井。
[お願いだから他でやっとくれよ。ねえ?]この、「ねえ?」の情けなさがたま
らない。
 いやなら、娘にバラすといわれ、下を向いてしまう。
 そして、ダメ亭主に愛想を尽かしたはずが、最後の最後に、逃がそうとするのだ。

 新井の登場までは、3作目の狂言痴漢と、7作目のスリと2回登場する、楠侑子
だったのだが、まあこのへんは、好みの問題である。3作目のスタイルとファッショ
ンの格好良さ。7作目では、「あたいはさァ」と少し頭の悪そうなスリ役だが、案
外正義感が強い。軟禁されて、見張り役の須藤孝からコントまがいの手口で脱出す
るのは、楽しい場面。それより私が好きなのは、ウメチョウ・深水吉衛におだてら
れて、得意になっている楠。「ふうん、そうかァ。」鼻を膨らませる、満面の笑み
が可愛い。
 南風夕子は、2作目と4作目に登場。2作目のヤミ血液業者(ここにも山田禅二)
の情婦役、そのクールビューティぶりが印象的だ。不敵な表情を崩さず、大きな注
射器で血液を抜取るのである。


【09】2014年3月18日 ワカ末

 10作を通して、タイアップの胃腸薬・ワカ末の広告看板、ワカ末糖衣錠500錠入
の瓶が随所に登場。同じ中滝薬品の風邪薬・ルピット錠が、冬場には活躍する。

1. 2日目の朝。船十の家の前に張込み、夜明かしになった、日報イナちゃん・滝田
 裕介、日日クワどん・相原巨典、タイムスクラさん・内田良平。牛乳配達から、
 牛乳を買って飲む。冷え込んで腹の調子が、というクラさんにワカ末をくれと言
 われ、クワどん、500錠入りの大瓶を渡す。病院前にはワカ末の車。
2. 2日目の朝、記者クラブ。日日の小間。前の晩、飲み過ぎて頭が痛いというウラ
 さん・高城淳一に、タガ・宮崎準「二日酔の特効薬、ワカ末。」と言って、瓶を
 渡す。
3. 職員の痴漢記事(誤報)の抗議に来た病院事務長・垂水悟郎。対応する日日デス
 ク・高城淳一とのやりとりを小間で聞きながら、誤報の張本人、日日ガンさん、
 タガに、「心臓の強くなる薬ありませんか。」タガ、すかさず、胃腸の強くなる
 薬なら、とワカ末の瓶を見せる。
4. 1日目の夜。大井の時計店強盗の取材が無駄骨に終わり、帰りがけに、ラーメン
 の屋台に寄る、日報スガちゃん・沢本忠雄と、日日ガンさん。大食いのガンさん
 につきあうスガちゃん、ポケットからワカ末の大瓶を出し飲む、ガンさんにも分
 ける。
5. 2日目の朝。イナちゃんと妻・丘野美子、新婚旅行先、旅館の朝。新婦にかまわ
 ず、一晩中、怪しい男を見張っていたイナちゃん、くしゃみを連発。[ほったら
 かしにした罰よ。]といいながらも、新婦は、風邪薬「ルピット」を渡す。朝食
 のお膳の上には、さりげなくワカ末の瓶が乗っている。
6. 年末警戒の取材で、ぞろぞろと新宿の街を歩く刑事達と記者連中。日日タガ、ル
 ピットをアピール。タイムスタケさん・高原駿雄、バスの車庫で、取材に協力し
 てくれた女車掌に、唐突ながら礼代わりにか、ワカ末を手渡す。
7. 1日目の朝。記者クラブ、猛烈な生命保険の勧誘を受けている記者連中。ストー
 ブ交換の業者がきて、勧誘の気がそがれる。そこで、日日タガ、「ミッちゃん、
 水」と、ワカ末の壜を出す。
8. ティーンの入水心中の取材を終え、クラブに戻った日日ガンさん、早速、出前の
 ラーメンを食う。タイムスタケさんから、死体引上げるのを手伝ったのに、手も
 洗わずに大丈夫?と訊かれ、[これ飲んでますから]とワカ末の瓶を出す。
9. ワカ末。お約束の大食いガンさんの場、ポケットから500錠入りの箱。
 日報スガちゃん風邪気味につき、日報アイザワ、ルピットを渡す。現場からの電
 話に「風邪ひいてるとき、無理すんじゃないぞ。」と優しい一言も。
 出し抜いたおわびに、と毎朝シマヅ、スガちゃんにルピットをプレゼント。
10. 風邪をひいたタイムスオカちゃん・相原巨典に、日報アイザワ・永井智雄、ル
 ピットを渡す。後日、盗み聞きの口実に、返しておいてとアサノ・綾川香に渡す
 のはワカ末20錠入り。「なんだ、胃腸薬じゃないか……、あ、チックショウ。」
 日報の小間の電話機の横には、ワカ末500錠入りの箱が常備されて、ちょくちょ
 く映る。


【08】2014年3月17日 事件汽車

 山崎徳次郎監督は、あきらかに鉄道マニアである。執拗に、不必要なまでに、画
面に電車が映り込むのだ。線路端でロケをするなら、走ってくる電車を入れたいの
は人情である。しかし、カットごとに必ず映るというのは尋常ではない。ロケには
天気待ちが付き物だが、このシリーズにおいては、電車待ちの方が多かったとして
も、不思議ではない。

 5作目、ドル札偽造団の首魁・木浦佑三の金融会社の窓の外。9作目の、おでん
屋の女将・新井麗子のボロ家の窓の外。線路があるから電車は走る。カットごとに
走る。いったいどこだろうなどと考え出すと、大事なセリフをききもらす。
 2作目、「抜かれたよー。」と息子が日報の相沢キャップ・永井智雄を起こすマ
イホームは、小田急。イナちゃん・滝田裕介が朝駆けする、ムラチョウ・宮坂将嘉
の家は、京王。スイバレのオトキ・小園蓉子のアパートは京浜急行。御丁寧に、そ
れぞれ電車が通り過ぎるカットに続いて、家が映る。
 9作目の白タク検挙の場面は、池袋の東武東上線の線路脇。カットごとに、帯塗
装時代の東武の無骨な電車(78系)。駅が近いから、ゆっくり通り過ぎる。須藤孝
の白タクを映しているカットでも、窓ガラスに電車が映る。

 線路が映りながら、電車が映らないのは、2作目の江ノ電と、7作目の都港湾局
の臨港線くらいのものだ。
 2作目、日日のタガ記者・宮崎準が、江ノ島の海水浴場から救急搬送された若い
女性(久木登紀子)の入院した「鈴木診療所」から、デスク・高城淳一に電話をか
ける。電話室の窓からは、海岸沿いを走る江ノ島電鉄の線路が見下ろせる。バック
の江ノ島の映り方からみて、鎌倉高校前の近所である。当然、電車が走ってくる場
面だが、なぜか、線路が映るだけだ。
 7作目の臨港線は、廃止された今もトラス橋が残る春海橋が、クライマックスの
東雲埠頭へ急ぐ車のバックに映る。そのまま右折して臨港線の踏切を渡る。夜間の
設定で、臨港線の列車の本数もあまり多くはなかろうから、ここはいたしかたある
まい。

 呆れたのは、3作目。待機していたパトカーが、無線の指令で走り出すシーン。
車の上半分がアップになっていて、金属製のバックミラーの「裏側」に、カメラ側
を走りすぎる都電が、きれいに映る。都電がミラーの裏から消えるのを待って、パ
トカーが動き出すのである。
 はじめは偶然かと思ったが──観客もほとんど気づくまい──、これは明らかに
故意であろう。


【07】2014年3月15日 事件一覧

1. ペー(ヘロイン、麻薬)の略奪未遂、置引き、ヤクザの対立
2. ヤミ血液業者、死体遺棄
3. 誤報と自殺(実は他殺)、裏に病院事務長の悪企み
4. アベック泥棒、捕まった相棒の釈放を要求する脅迫と交番銃撃、芝浦外人殺し
5. 埋立地で発見された死体、ドル札偽造団、イナちゃん新婚旅行先の不審者
6. クリスマス前のタクシー運転手怪死(毒殺)、郵便局強盗
7. 貨物船爆発沈没、保険金詐欺
8. 愚連隊の資金源になるカミナリ族の賭けレース、隠匿拳銃、駅強盗の警官射殺
9. 銀行ギャング墜死、白タク、ヤミ拳銃貸し、質屋強盗に学生の重傷と刑事射殺
10. 印旛沼の変死体、金融業者への脅迫と殺人、裏に横領隠蔽をめざす金融社員


【Intermission】2014年2月24日 おそるおそる東宝版事件記者を観る

 東京映画製作・東宝配給「新・事件記者 大都会の罠」(1966/監督;井上和男)

 偉そうな云い方になるが、これはこれでありだ。

 後は好きずきの問題である。意外にも、古き良き時代のテイストの画面であった。
日活版を見慣れた人でも、尺が(上演時間が)5割増になって、カラー作品になっ
た本作に、あのシャープでタイトな緊張感と疾走感は期待しますまい。
 言い換えると、日活版の事件記者シリーズは、テレビの企画と、一部の役者を借
りてはいるが、全く独自の作品と考えてよいことが、本作からわかる。
 音楽は渡辺岳夫なので、そう思って聴くと、どことなく巨人の星を重ねてしまう。

 東京映画製作ながら、三上真一郎が落下傘主演している以外、忠実にNHKのキャ
スティングをなぞっているので、東宝らしい脇役・端役も出てこない。
 ヒロインの大空真弓と、容疑者・平田昭彦が、東宝代表。
 テレビオリジナルの事件記者の雰囲気を伝える作品としても、貴重である。地味で
はあるが、8年間続いたテレビシリーズの蓄積が、作品を支えている。
 次回作では、再び大空真弓が、別人として使い回されているのが、不安なところ。
そこは浜美枝とか、酒井和歌子とか。なんだか手抜きの予感。


 【06】2014.2.21(2.23修正) 第10作 おぼえがき2

 日活版最終作は、ミステリー・スリラー仕立て。よく見ていないと見逃すが、丁
寧に、手がかりを映しながら進めてゆくので、犯人の意外性というのはないが、如
何せん、テンポが速すぎて、1回観ただけでは、折角の伏線がわかりにくい。
 今回のラピュタ阿佐ヶ谷の特集で、結局、謎のまま検証できなかった、どうでも
良い疑問の数々。ビデオでも出れば、逐一調べられるのだろうが、私のしているこ
とはゲームのようなものなので、映画館で通して観て分からなかった事は、それま
での事である。
 もう1回ずつでいいから、1作目からおさらいできると、かなりの発見が、ある
だろうが……。NHKのBSで、放送したことがあるようなので、あるところには
あるのだろう。
 さて話を第10作の内容に戻す。
 印旛沼の事件を振出しに、舞台となるのは、神田青果市場、青山、自由が丘、原
宿あたり。この5ヶ所は、具体的に地名が呼ばれるのだが、ロケ地として、確信で
きる所は、秋葉原の青果市場のみだった。他に、脅迫される女事務員「江島」・堀
恭子の家は、まわりの風景以外、手がかりが無い。もちろんこれに、警視庁が、舞
台に加わる。
 警察と記者連中が、当初、犯人と目していた、スリの新吉。その姉が洋裁店を営
む、自由が丘。例によって、線路端にあって、夜のシーンだが、駅に進入する電車
が映る。高架ではないので、東急大井町線だと思い込んでいたが、上映最終日に見
直したところ、京王線ではあるまいか、という推理におちつく。電車の顔が、東急
っぽくはないのだ。京王特有の丸味をおびた妻面、3枚窓で、一色塗りで……。こ
れ以上の説明は、誰も望んでいないだろうから、省略するが、ロケ地は、自由が丘
ではないことになる。
 脅迫を受けた上、所長が殺される、「大福金融青山出張所」。これも、看板に青
山とある以外、周囲があまり映らないので、どこで撮ってもわからない。
 今回は、捜査本部の置かれた所轄も、明示されなかった。警視庁本庁舎内かとも
思ったが、やってきた記者たちが、みなコートを羽織っている。

 そしてなにより大事件。見終わって気づいた。本作、大喰らいのガンさん・山田
吾一、はじめに鴨焼を食べかけて以来、食事シーンが、ない。チキンラーメンを食
べようとした所に、大福金融社員「加納」森塚敏が抗議にやって来て食べそこなう。
そのうえ、備蓄していたチキンラーメンを高城に略奪されてしまう。9作目のおに
ぎりの一件といい、実は日日は、食に対して貪欲な一派であるらしい。


 【05】2014.2.19 第9作 おぼえがき4

 9作目冒頭に、久々に東京日報本社が映る。当時の毎日新聞社屋だ。左手奥に有
楽町駅、カナリヤ色(白黒画面だが)の山手線が止まっている。山村聰監督・主演
の「黒い潮」(日活1954)では、毎朝新聞として、モデルの、この毎日新聞社屋
が登場する。
 ちなみに、東京日報自体は、東京新聞がモデルとのこと。大友涼介氏のサイト、
「激動の日々(55)」2012.12.23付で、詳しい資料が出てくる。
 このへんのところを、滝田裕介さんのトークショーでききそこなったのは、失策
であった。
 話はそれるが、1962年、9作目と10作目に続いて日活は、石原裕次郎主演で、
「雲に向って起つ」(監督;滝沢英輔)と云う作品を、封切っている。東日新聞の
政治部の新米記者・裕次郎、デスクがなんと、永井智雄。裕次郎のこととて、セオ
リーを無視した派手な取材活動。苦言を呈する他社のベテラン記者、旧弊な存在の
象徴に、大森義夫の起用は、事件記者ファンからすると少しくやしい。木浦佑三が
同じく国会記者クラブの一員として、山田吾一は、記者志望の学生役で出ていたよ
うだが、私のメモからは落ちている。他に、櫻田記者クラブの仲間では、川村昌之、
小柴隆がここでも記者役を演じている、とのこと。
 その木浦佑三が9作目だけで10作目に出ていないのは、5作目でドル札偽造団
の一味だったのがバレたか。
 ヤマさん・園井啓介は、松竹で1964年公開の「男の影」(監督;大槻義一)に、
毎朝新聞の記者役で主演。夏の横浜を駆け回る。その後については、記者諸君、そっ
としておくように。
 割合に有名なところでは、事件記者のTV放送が始まった年、1958年、「つづり
方兄妹」(東京映画・監督;久松静児)で、関西日報の記者として滝田裕介。ここ
では、心ないマスコミの代表のように描かれている。


 【04】2014.2.17 第10作 おぼえがき

 われらが共盟の二木キャップ、できあがったチキンラーメンをすすって、
「こらァいけるわい!」
最終作の、最初で最後のセリフである。
 9作目から登場の無名の共盟記者・川村昌之、今回もセリフをもらって、
「そういえばオカさんが書いたんだっけ!」
と、言っている。さて、その共盟のバッジ、前作では、タテ長に見えた気がするの
だが、今回は横に長い。
(※川村昌之に関するこの段落、訂正。 2016.6.7/2018.4.11)
 バッジの話を続けると、本作では、記者たちが、コートを着たままのシーンが多
く、確認が難しい。なぜか、アサノのダンナ・綾川香と、ヤマさん・園井啓介は、
どうやらバッジを付けていない。長弘は、はっきりと、丸Cに央の、日日のバッジ
を付けていた。
(※9作目でも綾川、園井はバッジを付けていなかった。 2016.6.7)
 そして、今まで気づかなかったが、イナちゃん・滝田裕介の左手薬指には、きち
んと指輪が光っていたのである。

 【03】2014.2.15 第9作 おぼえがき3

 さて、東都タイムス。銀行ギャングのニュースをそろって広げる記者たち、例に
よってバッキャロー、とどなられるガンさん・山田吾一の横にいる記者。大崎署の
シーンで、セリフあり。ナカちゃんと呼ばれる記者が東都タイムスだった。誰だか
引き続き取材中。

 日活版・事件記者シリーズの出演者クレジット。網羅した上で正しいと思われる
のが、ウェブサイト「キネマ写真館 日本映画写真データベース」。ちなみに肝心
のスチールは1枚もないのだが、これによると、クレジットされた出演者は次の通
り。(クレジット順)

沢本忠雄、滝田裕介、永井智雄、大森義夫、園井啓介、高城淳一、山田吾一、綾川香、
外野村晋、宮阪将嘉、相馬千恵子、新井麗子、木浦佑三、山田禅二、伊藤寿章、
相原巨典、松下達夫、雪丘恵介、市村博、野村隆、玉村駿太郎、長弘、鴨田喜由、
小泉郁之助、葵真木子、紀原土耕、高野誠二郎、神山勝、緑川宏、天野研、久松洪介、
二木草之助、小林亘、柴田新三、伊豆見雄、久遠利三、小柴隆、英原穣二、早川名美、
金井克予、森みどり、鈴木俊子、小幡真樹子、山田順江、白井鋭、川村昌之、
玉井謙介、渡辺高光、守屋徹、立川博、高山雅行、三浜元

 今回は、新聞社どうしの、抜きつ抜かれつが見所の一つになっているので、今ま
でよりいっそう、記者たちの数が増えたようで、誰が誰やらなのだが、日活脇役に
詳しい蟹女史と、「華麗なる日活映画の世界」サイトのおかげで、ずいぶん、判明
した。
 柴田新あらため新三の演じる新日本タイムスの3番手。今回はイソベちゃんと、
役名で呼ばれている。
 小柴隆は、毎朝の小間にいるのを発見。輸血してスクープに成功する天野研とと
もに、桜井キャップ・雪丘恵介の部下。
 共盟は、キャップ・二木草之助の下に、緑川宏と川村昌之。どうやら共盟のバッ
ジをつけている。プレスシートからの引用だろうからアテにはならないが、緑川、
川村とも、KINE NOTEでも役名が「共盟の記者」とある。
 長弘は、日日の丸バッジを、つけていたような気がするのだが……。
 以下、続く。


 【02】2014.2.14 第9作 おぼえがき2

 NとKを重ねて丸で囲んだ、おなじみ日活マーク。白黒用の浮き彫りタイプを、
私は個人的に、レリーフとか彫刻刀とか呼んでいる。
 三保敬太郎の印象的なテーマ曲(今回からまた別バージョン)に、第1作のオー
プニングに使われた、画面いっぱいに広がる「事件記者」の4文字。白地に黒字が
反転するところまでは同じだが、そこに「拳銃貸します」とオーバーラップすると、
曲はカットアウト、画面替って、いきなりドラマが始まる。
 非常階段に追いつめられた銀行ギャング1名、警官隊との銃撃戦の上、墜落死。
墜落中の人形から、地上に叩き付けられる生身の役者へのつなぎが上手。
 現場になだれうとうとする記者たちを止めようとする、見慣れない刑事。憤慨す
る記者たち。部長刑事ムラチョウ(宮阪将嘉)、通してやれと新米刑事・エンドウ
(玉村駿太郎)に促す。怪訝そうな新米に[警視庁詰めの記者たちだ]と説明する
と「事件記者ってわけですね。」
 このセリフをキッカケに、再び高らかなトランペットのテーマ曲、急いで記者ク
ラブへ戻ろうとする記者たちの姿をバックに、スタッフの名前、ついでキャストが、
ひっかいたような書体で連なってゆく。
 
 毎回、趣向を凝らしたオープニングで、今回も高揚感あふれる滑り出し。しかも
2年間のブランクもあるので、丁寧に、事件記者の背景を描写してゆく。
 オープニングクレジットは続き、警視庁内「櫻田記者クラブ」を6つに区切った
各社の小間の前を移動するカメラ。いちばん端の、主役・東京日報で止まる。入口
から垣間見えるのが今回初登場の新メンバー、木浦佑三。「監督 山崎徳次郎」の
文字で、クレジット終わり。

 今回の主な舞台は、五反田駅前、異様に高い池上線、のガードの下。おでん屋台
「おつる」。
 事件の起きる質屋は、「江東区カナメチョウ」電停付近と、もう1軒が五反田近
辺の設定。ただし、江東区には、当時も今も、カナメチョウという町名も、電停も
ない。
 白タク一斉検挙が行われる池袋。西口の東上線の線路端は、今とあまり雰囲気は
変わらない。床が板張りだった頃の東武電車が、駅が近いのでゆっくり通り過ぎる。
 その他、信濃町(ロケ自体が信濃町かは不明)、小岩。
 警視庁からの無線で走り出すパトロールカー、夜の街の俯瞰が映って、残念なが
らほとんど暗くてつぶれているが、画面右に、「渋谷東映」のネオンサイン。
 しつように茶色の国電が映り込む、おでん屋台の女将(新井麗子)の家が、どの
へんか特定できないのが残念。ロケ地は山手線か京浜東北線の線路端と思われるが、
五反田の近辺と考えると、大崎あたりの設定か。


 【01】2014.2.10(2016.6.7修正) 第9作 おぼえがき

 前作から2年のブランク。諸般の事情は知らねども、明白な相違点を挙げてみる。

 脚本名義;山口純一郎のみ←西島大、山口純一郎、若林一郎(1〜8)
     ※10作目では、山口純一郎、西島大の2名
 撮影;萩原憲治(9,10)←松橋梅夫(1〜8)
 テーマ曲;1〜4、5〜8作のものから別の曲に。
 東京日報記者 ワカヤマ・木浦佑三(9)←ベーさん・原保美
 東京日報社会部デスク・サブちゃん 久松洪介←清水将夫(1〜3)
     ※4〜8作目は出演なし。
 中央日日記者 クワどん・相原巨典、タガ・宮崎準が消え、伊藤寿章(9)が登場。
     ※伊藤寿章、セリフもあり、画面でも目立っているが、明確に日日記者
     と扱われるシーンはない。しかし、社章と、キャップのウラさん・高城
     淳一との関係からみて日日所属である。(あてにならないが、日活公式
     データベースでも、「中央日『報』記者・富原」、とある。)
 新日本タイムス記者 タケさん・高原駿雄が消え、なんと、相原巨典がオカさんとして。
 毎朝新聞記者 シマヅ 天野研(9,10)←花村典克
 所属不明記者 某社若手・山中大成、消える。
     ※クラブでも現場でもちらちら登場していた美男子。
 捜査1課長 松下達夫(9,10)←二本柳寛(1〜8)
 担当部長刑事 ムラチョウ・宮阪将嘉(1〜4,9,10)←ウメチョウ・深水吉衛(5〜8)
 溝口刑事 鴨田喜由←木島一郎(2〜8)
 溝口刑事・木島一郎の役ドコロに、新入り、エンちゃん・玉村俊太郎。

 そのような陰に隠れて、大きな変更あり。記者クラブ構成の6社のうち、もとも
と存在の薄かった「大都新報」が消え、「東都タイムス」が登場。
 9作目の冒頭、銀行ギャング墜死の現場から、警視庁に急いで戻る新聞社の車の
中に、見慣れない旗、丸に東、下にTOTO TIMES。キャストが列挙されるバックで、
映る記者クラブ。一番入口に近い東京日報の隣に、TOTO TIMESの小間が確か
に存在する。
 しかも、記者クラブのシーンで、ある記者の襟に、timesと読める横長の社章が
映る。新日本タイムスの社章はローマ字のNの形なので、クマさん・外野村晋の部
下ではない。
 不覚にも、襟の社章については、ラピュタ阿佐ヶ谷のレイトショー公開では、8
作目まで気にしていなかったので、それまでのことは分からない。俳優と所属社の
照合に役立ったろうにもったいない。
(※後の検証で、8作目以前にはバッジなしを確認。 2016.6)
 ちなみに日報こと東京日報のバッジは、横長の長方形に、デザイン化された大文
字のTと東日の2字。日日こと中央日日は丸形でCに央、毎朝は丸に毎。共盟は縦
長の長方形だ。
 今まで見かけなかったのに、クラブでやたら大きな顔をしているように見えるの
が、日日の伊藤寿章。どうやら、日報のハッタ老人・大森義夫のようなベテランら
しく、記者たちが現場に飛んでも、ソファーに落ち着いていることも。
 共盟の二木キャップ・二木草之助は、相変わらず、適当にセリフもあって、なん
となく「いる」。


─────────────────────────────────────

 【付録】2014.2.00  以下、雑記“TOWER GOD”より転載

2014年2月某日 事件記者マニア5

 さて、全世界でも10人くらいが気にかけている、城西線・ひばりが丘駅(8作目)。
 どうやらやはり、ロケ地は南武線らしい。
 まず、駅に立てられた広告看板、八千代信用金庫は府中支店と判明。
 そして、昼間の、駅員の聴取シーン、走り去る電車の後ろの正面、行先を示す板
が丸に文字のデザイン。これは南武線特有のデザインで、青梅線なら菱形に文字な
のである。うっすらだが、文字自体「川崎」と読めた。まあ、府中市近辺の南武線
の駅、と特定できただけで満足である。あと手がかりとしては、駅舎が北側、立川
方面が2番線、等々の要素があるが、駅舎と、荷物電車が止まったホームが別の駅、
というウルトラC難度も考えられるので、このへんにしておく。


2014年2月某日 事件記者マニア4 ◆4期目の中間報告

 7作目。
 女スリ・楠侑子が監禁されている「谷中清水町」というのは、今の台東区池之端
4丁目あたりだが、部屋の中だけで、残念ながら街並は出てこない。楠の証言で、
のこのこ爆破犯・岩下浩が出かけてゆく世田谷区「廻沢(めぐりさわ)」。お約束
で、京王線の緑色の電車(白黒画面だが)が通り過ぎると「八幡山駅」。そして今
もそびえるランドマーク、丸いガスタンクが映る。
 ちなみに岩下の乾分の須藤孝、2作目では江ノ島取材のスガちゃんの相棒として
カメラマンを。8作目では、外苑のカミナリ族の一員。同じくカミナリ族の中には、
1作目の喫茶店のレジ係で麻薬入りのカバンを預かる水谷郷子、2作目の江ノ島で
血を売って倒れる久木登紀子、そして、たびたび警視庁で110番通報を受ける係と
して後ろ頭だけ映る上野山功一が正面から映っている。
 7作目に話を戻すと、荷主の敷島商事の社長、どこかで見た顔と気になっている
貴方に教えよう、1作目で品川駅で野呂圭介に撃たれたヤクザの親分・船十こと、
深見泰三だ。
 共盟のニキキャップ・二木草之助、7・8作ともセリフあり。めでたし。

 8作目の、カミナリ族の1人で、人をはねてしまった杉山俊夫の豪邸。傍らの掲
示板の柱に「世田谷区砧第一出張所」の文字。冒頭から目につく、オートバイの
「ガスデン」は、エンジンのブランド名で、富士自動車の製品、……と調べたとこ
ろ判明。
 深夜、駅員・水木京二の襲われる「城西線・ひばりが丘駅」。「立川方面」の表
示と国電タイプの荷物電車。なかなか味のある駅舎なので、当時を知る人が見れば、
すぐわかるのだろうが、どこだろう。昼間の検証シーンで、走り去る電車が2連。
八千代信用金庫の広告看板。南武線よりも青梅線か。

 さて、2年のブランクを経た9作目からは、人気者のべーさん・原保美と、タケ
さん・高原駿雄、そして捜査一課長の二本柳寛、他の姿がなくなり寂しくなるから、
よく目に焼付けておくように。
 今まで登場しなかった池袋と五反田が舞台になるので、帯を巻いていた時代の東
武東上線と、ツートンカラーの東急池上線がちらり。
 また、実に巧妙なカメラワークでうならせた松橋梅夫から、撮影も萩原憲治にバ
トンタッチ。
 10作目の冒頭では全盛期の田町電車区を映して鉄道ファンに最後のサービスを
するも、ロケシーンが前の9作品に比べ少なくなる。9作目ではワンシーンのみの
出演で気をもむ八田老人・大森義夫は、無事、カムバック。日活版の事件記者、最
終の第10作は、千葉の印旛沼まで足を伸ばす。東京の各地を巡ったこのシリーズ、
意外にも、渋谷が登場することはないのであった。


2014年1月某日 事件記者マニア3

 1週間、東京を空けているうちに、ラピュタ阿佐ヶ谷のレイトショー「事件記者」
特集は4週目。
 8作目「狙われた十代」では、ガンさん(山田吾一)のコメディリリーフ度が上
昇。タケさん(高原駿雄)とのコンビもますます笑いを誘う。シリーズとしては、
少々危険な展開ではある。設定では、杉並区の「城西線ひばりが丘駅」が出てくる
けれど、ロケ地は南武線か?
 前作「時限爆弾」で登場した「帝国生命」のカレンダーが、記者クラブに掛かっ
ているあたり、芸が細かい。

※注 インチキに加担するのは昭和海上火災。冒頭、勢揃いの記者クラブで、女外
交員が勧誘しているのが、帝国生命。


2014年1月某日 事件記者マニア2

 というわけで、第5作「影なき男」に登場する、偽ドル札を掴まされて怒り心頭
のブローカー、コマキを演じる土方弘。今回はトレードマークのロングコートは着
ているが、帽子はかぶっていなかった。誰かに似ていると、ずっとひっかかってい
たが(知り合いに1人いるがそれはさておき)、ようやくひらめいた。手塚治虫の
悪役、スカンク草井だ。……ということは、土方は、リチャード・ウィドマークを
模しているということか。
 日活脇役陣の「五木」と私が勝手に呼んで、スクリーンに目をこらすのが、
榎木兵衛、青木富夫、柳瀬志郎、木島一郎、水木京一(京二)。それに二木草之助
も加えて、時に六本木と称している。木島一郎は、2作目から、デカ長の下で黙々
と仕事をこなしてきたが、5作目で初めて「溝口」という名前を呼んでもらってい
る。
 柳瀬はまず1作目で、ヤクザ六方組の血気盛んな若衆、白スーツの男。おでこちゃ
ん水木は、2作目、競輪の当り車券のおかげで、犯人の車のナンバーを覚えていた
ガソリンスタンド店員として。みんな大好きな、かつての突貫小僧・青木は3作目
に、狂言強盗を企てて、女房・福田トヨから怒られる情けないハマリ役。そして5
作目で、ようやく榎木、終わり近くに、信州上山田温泉の警官役、堂々クレジット
もあり。サービスカットという感じなので見てのお楽しみ。横をD51が走り抜ける。
 6作目にも青木は、年末の掛取りに来て、記者連中にあしらわれる、洋服屋とし
て再びクレジット。月賦だけにクレジット。
 失礼、この頃は今ほど駄洒落は市民権を得ていないので、そういう芸のないこと
を言う記者は、いない。
 ただ、言葉遊びは、みなさすがに御得意で、将棋や碁の勝負では、
「王手(逢うて)うれしや別れのつらさ」(2作目)
「切ってもまた出る芝居の幽霊」(3作目)
なんというフレーズが、すっと出てくる。
 共盟のニキさん(二木草之助)、5・6作目でも、あいかわらず空気のように存
在しているが、6作目で、捜査一課長・二本柳寛に、集められて抗議される各社の
キャップ、5人の中に含まれていて嬉しい。そして、新たな雑用係のミッちゃん
(福田文子)が、食事の注文をとる時に、共盟の区画から、幻の2人目の声が。影
になって姿は見えないが、二木は画面の隅にいるので、彼ではない。
 ……などといらぬことを考えているうちに、肝心のセリフを聞きもらしたりする
のであった。


2014年1月某日 事件記者マニア

 日活版「事件記者」。
 第1作と第2作、第3作と第4作は、それぞれ同じユニットと考えてよい。
 両者で桜田記者クラブの各社の配置が異なる。
 前者は、入り口から向って左から、
中央日日、新日本タイムス、毎朝新聞、共盟通信、大都新報、東京日報
 後者は、同じく左から、
中央日日、大都新報、毎朝新聞、新日本タイムス、共盟通信、東京日報

 6社あるうち、主役は相沢キャップ(永井智雄)の「日報」で、対抗が「バッキャ
ロー」でおなじみウラさん(高城淳一)の「日日」。日日には食いしん坊のガンさ
ん(山田吾一)というコメディリリーフ、蝶ネクタイの桑どん(相原巨典)、第2
作の江ノ島で、日報のスガちゃんを出し抜いたタガ(宮崎準)。
 3番手が哀愁の漂うキャップ・クマさん(外野村晋)のタイムスで、前2作には
クラさん(内田良平)、後2作には、サツまわりから転属してくる地獄耳のタケさ
ん(高原駿雄)。タケさんは、8作目あたりになると、ガンさんの漫才の相方のよ
うになってしまう。
 4番手の毎朝(まいちょう)になるとずいぶん影がうすくなって、桜井キャップ
(雪丘恵介)が、3作目でようやく気を吐き出す。3作目では、記者(花村典克)
が心ない一言をタケさんにたしなめられる。
 さて、スガちゃん、ガンさんの両新人が御目見得の時に、相沢キャップから、
「共盟のニキさん」と紹介されてうなずいたきり、画面の隅でちらちら映るだけの、
眼鏡をかけたヒゲの、アダチ龍光師を丸顔のようにした男(二木草之助)。ようや
く3作目で初セリフ、猛抗議に来た病院事務長(垂水悟郎、……江原達怡と根上淳
を足して2で割った感じ)の帰った後に「ああいう高圧的な云い方をしなくてもね
え!」と端っこで声を張る。これが4本中の唯一のセリフだが、キャップたちが主
役でもある3作目では、タイムスキャップのクマさん・外野村晋の将棋の相手をす
るシーンがあった。
 いちばん影がうすい大都新報に至っては、私も、役者の名前を把握していない。
1・2作目では、まだ部屋が映って、お茶汲みのミッちゃん(森島富美子)に食事
の注文をきかれ「冷し中華」と答えるシーンがあるのだが、3・4作目では、部屋
が移動した結果、まったく存在感がない。
 さて今日25日からは、5・6作目の二本立てがはじまるラピュタ阿佐ヶ谷。
 くわしくは、私も見直さないと分からないが、5作目からは、お茶汲みのミッちゃ
んが、福田文子に交代。前作で、拳銃が盗まれる大森スカイハウスの南風夕子の部
屋の女中をやった女優だ。捜査1課も担当刑事はムラチョウ(宮坂将嘉)から、1
作目で「たいがいの刑事は泥棒より心得てるもんだよ」と、クリップでカバンの鍵
を開けてみせたウメチョウ(深水吉衛)に。折も折とて、胃腸薬も風邪薬に。悪役
には満を持して、土方弘登場。そしてミスター日活・榎木兵衛もどこかに。
 6作目のタクシー運転手(山田禅二)の殺害現場、市ヶ谷駅の設定だが、どうみ
ても四ッ谷駅でロケをしている。
 さて、この山崎徳次郎監督、明らかに相当の鉄道マニアだが、それはまたあらた
めて。


2014年1月某日 おぼえがき

 日活の「事件記者」シリーズ第3作「仮面の脅迫」(1959/監督;山崎徳次郎)。
毒婦・楠侑子の魅力にくらくらするのはさておき、冒頭で舞台になる狂言強盗。
 突貫小僧こと青木富夫の家。設定では向島だが、ロケは深川。それも、妻があわ
てて公衆電話へ急ぐ橋は、多分、成瀬巳喜男監督の「稲妻」(1952)の中北千枝子
の家の前にかかる、旧新田橋であろう。ちらりと映る標柱に「平久町会」とある。
ただし、新聞記者たちがかけつけるアパートの脇は、電車の車庫で、車両のスタイ
ルからすると、こちらは小田急沿線のロケと思われる。……と思っていたが、再度
観て車体の番号に目をこらすと、一瞬だが「5454」と読み取れた。茶色(白黒映
画だが、茶色に間違いない)の2扉。調べてみると東武の戦前の特急車、旧デハ10
系なのであった。とすると、1軒のアパートの裏表は、まったく別の場所というこ
とになる。
(※後日検証したところ、車庫はどうやら、スカイツリーの真下、業平橋である。)

 ラピュタ阿佐ヶ谷で、その「事件記者仮面の脅迫」と同日上映の「特別機動捜査
隊」(1963/監督;太田浩児)。
 ともに、日暮里付近の跨線橋が出てきて、下を、東京では珍しくなった常磐線の
SL列車が通り過ぎる。両者を同じとうっかり勘違いしていたが、現地で実況見分
の結果、前者は芋坂跨線橋、後者はその南の、御隠殿坂橋と判明。

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日活事件記者 小事典

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