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2016年1月某日 一富士二鷹吉祥寺

 新年早々、寝ている間にも難儀な仕事。夢の中で仕事をしても気が休まらないし、
カネにもならない。
 しかも念の入ったことに、ノーギャラの仕事であった。
 ああ、夢でよかった。


2016年3月某日 ややよい三月

 三月朔日。
 快晴だが、まだ風が冷たい。しかし、例年通り、東京の花のさきどり、上野公園
の入口の桜が満開になっていた。
 春が来てしまう。

 早く暖かくなってもらいたいのはヤマヤマだが、春は待つから良いのであって、
迎えるにはそれなりの準備がいるのである。
 芽吹いたり、咲いたりしなければならないではないか。

 正月、出遅れ。節分、立春、うっかり過ぎて、カレンダー上の季節は、今、春に
ならんとす。嗚呼、やんぬるかな、やんなった、おどろいた。
 よし、4月には新しいスタートをきるべく、英気を養おう。というわけで、もう
一寝入り。
 古人曰く、春眠暁ヲ覚ヘズ。


2016年3月某日 皿鉢小鉢てんりしんり

 久しく会う機会のなかった、鈴木卓爾監督から試写会の案内状が届いたので観に
行く。

ジョギング渡り鳥」。

 タイトルからして素直ではない。ちょっと不安だ。
 上映開始からしばらくして、これは厄介な作品を観る破目になってしまった、と
いうのは正直な感想。果たして、笑顔で「良かった。」とほめられるだろうか、少
しゆううつになった。
 というのも、非常に凝った作り方をしているのである。

 ストーリーも、役者の使い方も、撮影手法も、奇天烈なのだ。
 一見、監督の実験台になっているような気がしてしまったのだ。しかし、それが
実験ではなくて、しっかり計算の上に成立っていることが、だんだん分かってくる。

 難解な構造を凌駕する、画面の美しさに、いつしか引込まれていたのであった。
美しくてアイディアにあふれて、面白い映像なのである。そのうちに、疑問符付き
の情報が、腑に落ちてくる。

 映像の面白さで、観客を引張ってゆくというのは、これ即ち、映画の原点である。
物語の筋を説明する手段の為に、映画があるわけではなかろう。

 つづられている物語は、監督御得意の、やるせなくてどうしようもなくて愛おし
い男女の営みだ。それを描くために、縦糸に横糸、加えて垂直方向の糸を使って、
映画ができている。
 伝わらないことを承知で説明すると、観客は観客でありつつ、映画の作り手の視
点をも背負うのである。その上、撮られる側にも置かれるから、観客であり、物語
の主人公でもある。どうだ、わからないだろう。
 自分を見つめているもう一人の自分がいる、夢の中で、そういうことがあるでしょ
う?

 映画に何を求めるかは、観客の自由だから、そんな面倒なことは、いらない、と
いう考えも道理である。
 全く楽しめない観客もいるだろう。
 だが、まじめに、「面白い映画」を作ろう、と考えたら、こういう作品になった
のだ。監督は、別に奇をてらったのではない。至極まっとうなサービスなのだ。
 そして、監督の意図するところを、スタッフもキャストも、面白がって作りあげ
たのだと察する。

 終映後、卓爾監督に「面白かった!」と興奮しながら私は言っていた。ただ、そ
の意味を、簡潔に伝える自信はなかった。
 でも、実にすがすがしくて気持ちよくて、「良かった良かった。」と、劇場を後
にしたのである。


2016年4月某日 神宮の森、あきれ烏のただ一羽

 スコアボード横に見える桜の木は、ずいぶん葉の割合は増えたとはいえ、まだ淡
いピンク色に染まっている。
 春の陽射しの中の神宮球場、東京六大学春季リーグ開幕戦。前季の覇者・早稲田
対、万年最下位・東京大学。そのカードで、もしかすると大金星が、という興奮が、
球場を薄くつつみつつあった。
 なにしろ、私が座っている3塁側は、2010年から15年にかけての94連敗こそ、
昨年の春季リーグで止まったものの、勝っただけでニュースになる東大である。
 その東大が、なんと0対0のまま、8回を終えた。

 東大のエース、3年生投手・宮台、王者・早稲田を相手に毎回の12奪三振、
8回まで2安打に押さえて、無失点の大健闘。早大応援団に、「紺碧の空」を演奏
させない。
 一方、攻撃の方は、ちょこちょこランナーは出すものの、決め手がない。応援し
ている側としても、点がとれそうな気がしない。早稲田、先発の大竹は制球に苦し
むが、鉄壁の守備陣は、ここまでノーエラー。

 さていよいよ9回表、東大の攻撃。応援団は、
「不死鳥の如く」から、「イント
ロビクトリーマーチ
」の演奏を続けている。ということは得点のチャンスを迎えて
いるのだ。早稲田の「コンバットマーチ」、慶応の「ダッシュKEIO」にあたるチャ
ンステーマだ。
 鉄腕アトムのテーマソングをアレンジした「イントロビクトリーマーチ」。高揚
感のあるこの曲は、ランナーが2塁に進まないと聞けないのである。
 これを生で聞きたくて、神宮球場に来ているのだ。
 先頭バッター、代打の下雅意(しもがい)がツーベース。
 ついにピッチャー交代。小島投手から、バッター宮台、フォアボールを選んで、
1塁2塁。
 続く桐生は、内野ゴロ、宮台、2塁フォースアウトで、1アウト1塁3塁。
 その1塁ランナー桐生、バッター宇佐見の偽装スクイズで盗塁成功。2塁3塁。
 惜しい哉、バッターは、三振で2アウト。
 それでも、今まで気弱に見守ってきた我らが一般客も、ひょっとして、という期
待が高まっている。1点でもとれば、好調の宮台がなんとか押さえてくれそうだ。
 早稲田から勝利という快挙にリーチがかかっている。
 打席には、今日1安打の2番「ヤマカツ」山本克。
 セットポジションから小島投手の何球目か、ひっかかった打球は当たりそこない、
サード前進、つかんでファーストへ。あぶなげなくミットに吸い込まれて、スリー
アウトチェンジ。

 絶好のチャンスを逃がして、くやしさひとしおだが、まだわからない。94連敗
から脱出した時も、延長10回に勝越したのである。

 9回ウラ。
 いぜん力強い・宮台、トップバッターをファールフライ、続いて13個目の三振
で2アウト。
 ところが、続くバッター、いい当たりが左中間へ、ぐんぐんのびてゆく、嗚呼、
サヨナラホームランか。あっけない幕切れかと思われたが、スタンドには一歩届か
ずツーベース。まだ流れは東大に味方している気がする。

 このままゲームセットでは、かえって出来過ぎだ、と思った時だった。
 宮台の139球目、ちょこんとバットに当たった打球は、ふらふらっと上がって、
すとんと落ちた。
 ふらふらっとだ。ポテンヒットで、ランナー、ホームイン。
 声にならない溜息、すーっと力の抜ける3塁側スタンド。
 そうそう勝てそうな日は無いだけに、残念である。東大、勝ち損ねた、というよ
り、早稲田は負けなかった、というところだろう。
 しかし、宮台、13奪三振は御見事である。次回登板が楽しみだ。

 というわけで、この春は、──にわかファンだが──東京六大学に注目しようと決
めている。
 私をつかまえたければ、阿佐ヶ谷か神宮球場に張込んでくれたまえ。


2016年4月某日 新函館北斗の女

 どうも客足が伸び悩んでいると言われている、北海道新幹線。
 暫定終着駅とはいえ、「新函館北斗」駅から、函館市内まで在来線で15分かかる。
東京駅から函館駅まで、一番早くて4時間29分。
 羽田から函館空港へのフライトは80分。チェックインに余裕を30分みたとして、
品川駅起点だと、羽田へ京急で14分、身軽な人ならば、函館市内まで約2時間半。
函館は空港が近いのだ。
 バーゲン運賃を使うと、空港アクセスを含めても、新幹線より、飛行機の方が安
い。

 ちなみに、東京8:20発の新幹線から特急に乗継いで、札幌着は16:04である。

 そもそも、東北地方からの需要は別として、東京から道内各地へは、空の便が主
流の時代に、今までより時間もお金もかかる交通機関を造ってしまったわけだ。客
が呼べないのは道理である。

 ただでさえ苦しい経営状況のJR北海道、やっかいなお荷物を背負いこんで、同
情を禁じ得ない。札幌まで伸びたところで、道外への足として機能するかは疑問で
ある。

 よほど魅力的な付加価値をつけなければ、首都圏の人間が乗るとは思えない。だ
いたい、「新函館」ならまだしも「新函館北斗」などという、得体の知れない名前
の所に魅力を感じまい。函館市と、駅所在地の北斗市という、自治体同士の利権争
いの結果だが、そのような重たいものを、一介の旅行者は抱えたくない。
 まず、この駅名から変えた方がいいのだが、それを考えているうちに、駅を函館
市内に作れなかった欠点を生かす、妙案を思いついた。
 さて……。

 この続きは舞台で!

■後日記 新函館北斗駅、起死回生の改名案、その答えは、「南札幌」。
北札幌じゃウソになるけど、札幌の南方にあるのは事実なのだ。もっとも、札幌市
内まで、3時間20分かかるけれど……。  2019.3.3


2016年4月某日 闘魂は今ぞ極まる

 半旗の掲げられた神宮球場、東京六大学春季リーグ、第2週2日目。今季、3戦
してまだ無得点、3連敗中の東京大学。対するは、一昨日、0対1でサヨナラ負け
を喫した明治大学。
 雨天順延で、月曜日の開催となったため、あいにくスタンドはガラガラだ。
 後攻めの東大。先発投手は、昨年春季、94連敗を止めた、3年生・柴田。
 立上がり、フォアボール2つ出して、ツーアウト1・2塁になるも、明治の5番
・小林恵をファーストゴロに打ち取って、2者残塁。さあ、東大の攻撃である。
 1回ウラ、今日は1番、俊足・桐生。明治の星投手の4球目をライト前ヒット。
いきなりランナーを出して、喜ぶ応援席。
 続く主将・山本克、手堅くバントを決めて1アウト2塁。
 ここで3番山田、サード前への強いゴロが、グラブをはじく。もたつくものの、
球は3塁に送られて、ランナー桐生、アウトかと思いきや、これが暴投。桐生、そ
のまま、ホームを駈け抜けて、ついに初得点。スタンドは、まるで勝ったような騒
ぎ。
♪ただひとーつー
 4試合目にして初めて見る、肩を組んで歌う応援席。
 なおも、楠田、フォアボール、田口、センター前ヒットで、1アウトフルベース。
「イントロビクトリーマーチ」をバックに、6番・喜入(きいれ)、ライナー性の当
たりがセンターへ。野手、これを捕れず、4本目のヒットで2点目。
 後続がキャッチャーゴロにセカンドゴロで、3者残塁は、いつもの東大らしいが、
今日はなんだか、行けそうな気がする……。

 ああ、じれったい。もう書いてしまおう。

 東大、勝った。それも47連敗していた明治を相手に、11年半ぶりの白星。

 途中、雨粒が落ちてきて、あわやノーゲームかとの予感がよぎる。6回表には、
同点に追いつかれる。しかし、7回から代わった東大の有坂投手は調子良く、9回
も2アウトからヒットを2本打たれたが、無得点に抑えた。
 いよいよ2対2で迎えた9回ウラ、東大の攻撃。
 一昨日までは、どんなにチャンスの場面でも、全く点が取れる気がしなかったが、
今日は違う。
 明治のピッチャーは、8回に続いて、3人目の齋藤。
 まずは9番・山本修が内野安打で出塁。代走・岩熊。
 打順はトップに戻って、桐生、サード前へ送りバント、1アウト2塁。
 期待の山本克、ライトフライで2アウト。いつもなら、うすうすあきらめる場面
だが、高まる期待。
♪おーおー、おーおーおーおーおおー、かっせヤマダ![応援歌・不死鳥の如く]
 3番・山田。第1球、ファール。2球目、ボール。
 3球目を、バットは見事にとらえて、右中間を破る。2塁から岩熊、ホームイン!
 1塁側内野席、応援席ではない一般席も立上がって拍手を送る。
 目頭がじんと熱くなった。


2016年4月某日 愛敬の高い野球

 東大対明治、勝ち点をかけた第3戦、快晴の神宮球場。
 前日の試合で力尽きたか、3対12の大差で東大の負け。

 中2日で先発登板した宮台投手。行ける所まで行って、昨日、好調に締めた有坂
にスイッチというのは、予定通りだったのだろうが、初回から点を取られて、3回
3失点で交代。
 明治も初戦同様、柳の先発で、両エース同士の投げ合いで始まった。
 2回表、東大の攻撃は、先頭がデッドボール。続いて送りバントを1塁がエラー
して、ノーアウト1・3塁という絶好のチャンス。
 ところが、次の打者の初球、見送りストライクに1塁ランナー飛出して、塁間に
はさまれた。ああ、これは、今日はダメかなと思われたとき、1塁への送球が暴投、
ランナー、幸運にもセーフ。
 引続き、好機に戻ったのであるが、どうも、点がとれそうな気がしない。
 平日とはいえ、久しぶりの勝ち点のかかったこの試合、昨日の倍以上の観客が3
塁側に詰めかけて、応援席も熱気にあふれるが、結局、空振り三振、センターライ
ナー、サードゴロで、0点に終わる。
 一方、明治は6回に大量5点を取るなど、15安打で12得点。力の差を見せた。

 東大の見せ場は、0対10で迎えた8回表。明大のピッチャーは、3番手・川口。
 打順1番に戻って、桐生からの攻撃は、フルカウントから、選んでフォアボール。
続く山本克に代わった代打・岩田がデッドボール。代走、岩熊。昨日、決勝のホー
ムを踏んだ男。とはいえ、ここで点をとっても、勝ち目はあるまいと、高をくくっ
ていた時であった。
 3番・山田の振り抜いた打球は、ライナーで左中間、柵すれすれにスタンドに飛
込んだ。
 一瞬、何が起こったのかわからなかったが、ホームランのジャッジに、3人はダ
イヤモンドを疾走して、応援団は、肩を組んで、「ただ一つ」を3回歌ったのあっ
た。


2016年5月某日 人情紙風船

 人情とか下町情緒とか、そんなキーワードで語られる通称「谷中・根津・千駄木」。
銭湯は、そのイメージの最たるものだろう。
 もし、その銭湯の湯船で倒れたらどうなるのか。

 千駄木3丁目在住の、私の行きつけの銭湯は、今は区境を2つ越えた──といっ
ても歩いて7、8分くらいだ──、荒川区の富来(とぎ)浴場。引越前に最寄だっ
た銭湯が、今の家から近い銭湯が次々閉店した結果、最寄に戻った。よって、一時
期は足が遠のいたが、つきあいは24年になる。
 この「富来」は、「ゼロの焦点」に登場する、能登半島の富来に由来するのだが、
それは余談。

 定休日や営業時間外には、別の店に行くことになるが、これは、その準・本拠地
銭湯での話。

 GW中の、ある休日の夜11時頃。
 80代半ばの老人が、酔っていたためか、湯船に水没したらしい。
 幸い、直後にそれを発見した若者によって、洗い場のタイル上に寝かされた。意
識はあるが、呼吸が苦しそうだ。
 救急車を呼んでくれた人があるらしく、ほどなくやってくるという。
 その時、筆者は、まさに洗い場から脱衣所に出ようとしていた時であった。文字
通り、はだかである。これも余談。

 さて読者の皆様。人情エリア谷根千、それも倒れた場所が銭湯ならば、一安心と
思われるであろう。
 ところが、私は、コミュニティの崩壊した都会の断片を見てしまったのである。
──おおげさで申訳ない。
 倒れた老人は徒歩圏内に住んでいるようだが、当時、店に顔見知りはいなかった。
 救急車の要請は、脱衣所にいた別のお客の携帯電話からの発信だったようだ。
 かつてのような、脱衣所を向いた番台ではなく、入口を向いたフロントには、バ
イトらしい青年が座っていた。

 結論を言うと、店の人間が立会わないところで、お客の見守る中、救急隊員が救
護活動をして、そのまま、救急車に乗せられて搬送されたのである。
 それでは下町の人情の街の銭湯でも、歌舞伎町の路上でも同じではないか。

 脱衣所に移されてからは、ある程度、元気になった様子で、特に救命活動を行う
こともなく、しばらくして、老人は歩いて店外のストレッチャーへ移動した。
 本人は、もう平気だからと病院への搬送を拒もうとしたが、独り暮らしで、近所
に連絡できる人もいないというのでは、救急隊員も、置いては行けない。身元につ
いての応答もあやふやだ。受入先の病院は、すぐ見つかったので、サイレンの音を
残して、老人は消えた。
 詮無いことだが、40年前のこの界隈だったら、客の住む地域はごく近所に限ら
れるだろうし、番台を含め、誰も顔なじみがいないということはなかったであろう。
 場合によっては、救急搬送の必要なし、という結末もあったかもしれない。

 私はてっきり、客が店の人間に危急を伝え、店の電話から119番に通報したもの
と考えていたが、どうもそうではなかったらしい。
 店の対応がどうのこうのというつもりはないのだ。なるべくしてそうなっただけ
なのだ。老人は搬送後、適切に診察を受け、適当な処置を受けたことだろう。何の
問題もない。
 ただ、世の中の仕組みが、そうなってしまっていることに、嘆いているのである。
 携帯電話を持つ客の機転のおかげで、店員を経由するより、救急隊員の到着は早
まったであろう。見知らぬ客同士の連係プレー、これぞ人情である。

 でも、老人と救急隊員を玄関で見送ることになった私には、何か心にひっかかる
のである。
 やたらに、うちの近所を、やれ人情だなんだと持ち上げてくれるな、と偏屈な初
老は言いたいようである。


2016年5月某日 見よや十字の旗かざす

 立教、逆転勝ちで慶応に連勝、まさかの首位浮上。暫定首位とはいえ、初戦は、
法政に勝ち点をとられて、5位からのスタートだから見事なものである。
 翌日の自分の会の準備ために、神宮球場へ行くのはあきらめて、自宅で、悶々と
インターネットの途中経過とにらめっことなった。
 第二試合の明治対早稲田もしびれる展開。
 今日行かなければ、なんのために毎週通いつめたのかという結果となったが、ま
あいたしかたない。
 というわけで、優勝は明治か立教にしぼられたが、明日の早明3回戦の結果がど
うあっても、来週の立教・明治の一騎打ちに優勝旗がかかるという、終盤さらに面
白い春の東京六大学リーグである。


2016年5月某日 おーいらみーさきのー

 オフィスねこにゃ主催のソロライブでも、たっぷり30分以上、東京六大学野球に
ついて語らせてもらった。
 中には、六大学どころか、野球だけでも、ちんぷんかんぷんな観客もいたかもし
れないが、わかるわからないの問題ではないのである。
 六大学野球を語るのは、エンタツアチャコ師、トップライト師の系譜に繋がる王
道なのである。

 さて、東京六大学リーグの醍醐味を、一言でいうと、古典芸能である、というこ
とだ。
 90年に渡り、6チームで固定され、今や、野球界のガラパゴスである。
 商業ベースに依存せず、神宮球場を最優先に使用できるという優雅な環境。たと
え、全敗しても、その権利を手放すことはないという余裕は、大らかな試合運びを
生む。
 そして、最も重要なのは、応援団という、切っても切れない文化があってこその
芸能だということだ。私のようなミーハーな観客の眼から見ると、応援団のために、
野球が行われているとしか、思えないくらいだ。
 応援団とは、応援部(学ラン連中の他に、チアリーダーと吹奏楽団を含む)と、
応援する学生達(実際には、OB・OGやファンが大半なのだが)の集団である。
フィールドで戦う選手達を声援するために、鼓舞するのが、目的なのは、もちろん
である。
 ところが、しばしば、応援席に陣取った、各校の応援団同士の儀式の前に、選手
達のプレイは、放っておかれるのである。
 本末転倒なのだが、それこそが、六大学リーグの良さであり、古典芸能と形容す
る所以なのである。
 青空の下で閉鎖された、幻のような前時代的空間、それが、神宮球場の東京六大
学リーグなのである。

 さて、リーグ戦終盤。いよいよ、各校とも、対戦相手が1校を残すのみとなった。
 東大・法政戦、立教・明治戦、それに伝統の早慶戦である。
 優勝は、明治と立教にしぼられたが、直接対決の結果で決まるという、劇的な展
開になった。最終週に残された早慶戦は、優勝に絡まないけれど、現時点では、ちょっ
と面白い可能性を秘めている。
 というのは……。
 今季、好調とはいえ、東大は、その指定席、最下位が既に確定した。しかしなが
ら、6位脱出の可能性が残っているのだ。
 確率は限りなく低いが、もし、東大が、対法政戦を無傷の2勝0敗で勝ち点を取
り、翌週、早稲田が慶応に1勝もできずに0勝2敗で負け越すと、東大と早稲田が、
仲良く5位でならぶのである。
 平成9年秋に単独5位を記録して以来、ずっと6位の東大が、ひょっとすると、
最下位ながら、5位を記録するかもしれないのだ。法政に1敗でもすれば、その時
点で、6位は確定してしまうが……。


2016年5月某日 なんかぐじゃぐじゃっとした模様

 たまにテレビを見たら、CMの隅に、パラリンピックとオリンピックのエンブレ
ムが映っていた。あんなデザインで、本当にやる気が出るのか。
 もともと、歓迎をしていないから、私の感情は割引くとしても、もうちょっと高
揚感がないとまずいのではないか。と、あらためて心配である。


2016年5月某日 

 休日の朝。神宮球場へ向かうため、いつもの通り、地下鉄千代田線に乗る。大き
なバッグを抱えた、中学生かなと思われるポニーテール娘が、隣のシートに座った。
本を開いたままうとうとしている。そうっとページをのぞきこむと、なにやらむず
かしい、遺伝子についての文や、図表がならんでいる。
 表参道駅で、同じく銀座線に急ぐ少女、改めてバッグを見たら、KRANTSと書かれ
ていた。
 東大のチアリーダーなのだった。

 春の六大学リーグ、東大の最終カード、対法政戦。宮台先発の1回戦は、1点リー
ドされるものの、6回に連打で逆転。今季3勝目をあげて、勝ち点に望みをつなげ
る。
 残念ながら、後の2試合は、法政の必死の反撃で勝ち点ならず。6位確定。それ
でも、3試合とも東大は4得点と頑張った。
 かくて、春の東大戦は13試合すべてを観戦。大いに楽しませてもらった。自分の
顔が浅黒くなったのはタマに傷。


2016年9月某日 バンショウ繰り合わせねば

 ネット上でなんとなく情報を検索していたら、番匠義彰監督の特集を見つけた。
 しかも、日程はこれからである。狂喜乱舞しかけたが、よく見れば、シネヌーヴォ、
大阪ではないか。
 せまいニッポン、行って行けないことはないが……。
 未見の花嫁シリーズ、「クレージーの花嫁と七人の仲間」改め「乱気流野郎」、
これはなんとしても観ねば。
 面白いかどうかは、問題の外である。


2016年9月某日 どんなんや、そんなんですけどね、どんなんや

「面白おかしく」という言葉がある。
 芸人というものは、思いついた「面白いこと」を、人を笑わせたりうならせたり
するテクニックを使って「おかしく」みせて、観客を喜ばせる。
 中には、せっかくの面白い話を、つまらなく話す人もいる。……申訳ない。
「オレには出来ない。」とシロウトに思わせるのがクロウト。

 芸人としての資質は、おかしく伝える能力が大きく、面白い発想力だけでは、作
家になってしまうのだ。

 さて、敬愛する漫談家のテント師匠が、交通事故で亡くなってしまった。
 追悼記事など、書くのはつらいけれど、今日は、他のことをする気にもならない
し、巷間語られる、「奇妙な芸人」像が気になるので、少々書いてみる。

 テント師匠の漫談は、実に緻密に構築された方程式であった。
 aにbを足して、xを掛けたら、yになるかと思ったら、zになってしまったか
ら面白い。間違いなく面白い。
 全てに意味がある。意味に縛られているといってもいい。
 ただし、それを確実な笑いに持って行くために、極端に抑揚をつけた喋り方をす
るというような、観客思いのチューニングはしなかった。それでは、面白さの意味
が薄まってしまう。
 ネタの面白さを信頼しているから、演技力で笑いの量を増やすということには、
興味がないのだろう。

 ナンセンスを追求して、道化の部分を排除している。
 その上で、ネタの中には、ありとあらゆる笑いの切り口、独創的な方法論を、入
れていた。そのパターンの意外さで勝負しているのである。しかも、無駄なく刈込
まれている。
 あの「人間パチンコ」ですらそうなのだ。テクニックで笑いをとろうという気が
見えない。観客の目に写る奇天烈な面白さは、師の狙いとは別の副産物であると思
う。

 面白いことを見せたいのであって、笑わせることが目的ではなかった。
 もちろん結果的に笑わせたいのであるが、笑いをとるためだけの、不純物を混入
させたくない、潔しとしなかったのである。
 親しみやすい演じ方と、臨機応変なアドリブで笑いをとらず、ナンセンスな展開
だけで面白く思わせる。
 その辺りが、私にとって魅力なのであり、師の芸の真骨頂だ。決して、なんだか
奇妙な雰囲気が、大事なのではない。
 とはいえ、そのコッケイさを、観客が面白がるのも愛するのも勝手だし、それは
それで良い。

 目先の笑いをとろうとしないのが、テント師匠のプライドなのだ、でも、それは
きっとズボラと不器用の裏返しだとも思う。
 楽屋で、私とサシになっても、(ナンセンス「に」ではなく、)ナンセンス「な」
面白いことを話そうとする御方であった。


 私こと寒空はだか、舞台を勤めながら、「あ、このパターンはテント師の焼直し
だな。」と思うことがある。勝手ながら影響を受けてしまっている。師の志を継ぐ
気はないけれど、誠に失礼ながら、私の中でも生きていただくのだ。


2016年12月某日 ルパンを追っててとんでもないものを見つけてしまった!

 豊洲市場地下の謎の空間は、来るべき公営カジノ開設と絡んだ、ニセ札工場用地
だった、と解釈するのが、正しいようである。


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