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[ものぐさ枕2008]
  2004年より、ジオシティーズ内に開設した、寒空はだかサイトの日記コーナー「ものぐさ枕」
  「ものぐさ」+「草枕」、無精者の旅日記が、名づけの由来である。
  日付が飛び飛びなのは、移転時に整理・削除したのではなく、
  もともとズボラなことに、気が向いた時にしか書かなかったからである。


 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

◆2008年1月

2008年1月1日 (火) 「Kitaguchiはだか祭り2008 ただいま爆笑チュー」

 生放送中、8階にあるラジオのスタジオを飛び出し、急かされつつエレベ
ーターから車に乗せられて、交通規制を許可証かざして中継先の武田神社へ。
という、疑似売れっ子気分を元日早々、山梨・YBSラジオの仕事をもらっ
て体験。
 数時間前、夜明かしの横浜を後に、暖房の効きの悪い中央東線のボックス
シートにうずくまりながら、小仏トンネルを抜ける。とてもこの後、メイン
パーソナリティの1人に抜擢されて正月特番を勤める男、とは思えない。山
峡なので初日はちらりちらり、富士山の頂きのまわりだけ雲が集まっている。
トイレに立つと、隣の車両は暖かいと知って移動するが、すでに笹子トンネ
ルを過ぎていた。8時過ぎに甲府駅に着いて、喫茶で放送用の漫談をまとめ
る。小一時間、頭をひねって、所定の特急の到着時刻に合わせて局に入る。
 11時、私の漫談とともに番組スタート。テーブルをはさんだ櫻井和明アナ
ウンサーのテンションの高さと、隣に座った入社1年目・原香緒里アナウン
サーのはつらつさに助けられて、徹夜を忘れて3時間、電波をもてあそぶ。
一年の計を、私のような鼠の骨に託した山梨放送の豪放さと、番組に携わっ
た皆さんの繊細さに感謝。この栄誉のきっかけを作り、番組にもゲスト出演
してくれたざぶとん亭氏に迎えられて石和泊り。
 今年は東京タワー竣工50周年、そして私のJeanJeanの初舞台から20年。
正念場、読者各位、どうぞよろしくお願い申し上げる。


2008年1月2日 (水) 初春早々、振り返る。

 昨日の放送で、スポンサーに配慮してやらなかった小咄と、後で思いつい
た小咄を一つずつ。
 「おめえ、これ、ネズミの肉じゃねーのか。」「チュートロです。」
 「この凧、よく揚がるねえ。」「油塗ってありますから。」


2008年1月4日 (金) 業務用過失致死

 近所に「プロの為の店」という看板を掲げた、「業務用」の食品を扱うス
ーパーマーケットがある。我々シロウトでも、時折、安い旅館の食堂や、社
食などの卓上で、馬鹿でかい「業務用」ドレッシングや、隅に積まれた「業
務用」ラーメンスープの素の缶などを見かけることはある。レトルトカレー
などもその類だ。
 店の棚に、「プロ仕様」と書かれたインスタントコーヒーの壜があって、
しばし考える。プロが使うインスタントコーヒーとはなんぞや。明らかに間
違っている。が、思い出したエピソードに、とある喫茶店かなんかで、こわ
もてのおじさんが運んできたホットコーヒー、カップの中で褐色の液体がく
るくる渦を巻いていた、という。客に出す前に、ふつう、コーヒーはかきま
ぜない。「インスタントじゃないの?」と言いそうになったが、間一髪、小
指の長さに気づいたという。
 プロ仕様と書かれたインスタントラーメンもあったが、コーヒー以上に謎
である。


2008年1月11日 (金) 「慢性(万世)の馬鹿だね」「その先が須田町」

 朝、ちりとてちんを観てから神田橋の運転免許センターへ行って更新手続。
免許といっても原付で、10年以上乗ってないからゴールド免許。講習も、
ゴールド対象のコースなので、参加者も善良そうだし、ビデオの内容もたい
したことはない。どうせなら札付きの集まる、違反常習組の講習をのぞいて
みたいものだ。
 講習の教官は、白髪をパーマできちんとなでつけた年配の男性。元NHK
の金子辰雄アナウンサーそっくりのソフトで通る話し方。気持ち悪いくらい
低姿勢。伝え聞く、先代柳家つばめ師匠の「世辞警察」のようだ。
 新しい免許証はICチップ搭載の新型、データに収められているため本籍
欄が空欄。将来は住所に生年月日も記載されなくなるという。身分証代わり
の役を果さなくなるではないか。レンタルビデオ屋などにまで、データを開
ける機器が普及するとは思えない。
 更新が無事すんで、ようやく昨年が終わった気分だ。[外堀通り]の標識
が、反対方向を向いたまま10年以上放置されている鎌倉橋交叉点から龍閑橋、
レンガアーチの古いJRのガードをくぐって今川橋の山梨中央銀行東京支店へ。
 おそらく戦前の作であろう石造りのずんぐりした銀行建築。ほれこんで、
是非、ここの口座を作りたいと申し出て、断られたのは5年くらい前か。確
かに、職場が神田にあるわけでなし、実家が甲州にあるわけでなし。転売目
的と勘ぐられても仕方ないが、憮然とした思いは今日まで続いていた。
 この度、山梨放送からギャラの振込を受けるという大義名分を手に入れ、
新たに口座開設を申請。私の顔写真入り、元日のラジオの新聞広告を見せて
説明すると、敵も納得して、めでたく通帳を受取る。
 まだお午少し前、須田町の交通博物館跡は、屋外展示車両が消えてがらん
としているが、半円筒形のガラス張りの階段室は健在。あの空間が好きだっ
た。その先の「まつや」でもりそば、つゆの変わらぬ味に満足。
 穏やかな冬の陽射しの中、散歩しながら千駄木へ帰る。


2008年1月27日 (日) 楽しい雰囲気は主催の「ざぶとん亭」日記で

 演芸と演奏を対等に1つの舞台にあげて、うまくまとまった企画はなかな
かない。双方の観客の求める快感のズレがうめられないのだ。ところが、毎
回、それに成功している稀有な会が、寒空はだかカラフルロスタイムショー
である。私に対しては好き嫌いもあろうから仕方ないが、ショー全体では、
観客も演者も喜んでいる様子である。主催するざぶとん亭氏のセンス故だ。
 私自身も、数ある舞台のうちで最も輝いて映っているはずだ。確かに調子
に乗っている。ところが、楽しんではいないのである。そう見えないかもし
れないけれど、冷めている、だから良いのである。我を忘れて観客と一体に
なれるほどの才能はないのだ。その苦しみの結果、楽しい思い出が残る。
 そんな私が、8回目にして、身を削る思いからようやく解放された。
 まずは、落語への愛を歌っているのだが馬鹿にしているようにも聞こえる
「落研ハイスクールロックンロール登校編」を、無礼にもゲストの柳家三三
師匠の前に歌う。
 古今亭志ん生師匠のものまねがいつの間にか高田渡さんのものまねになっ
ている、という極めて難易度が高い割には共感されにくい荒技を披露。それ
ももう1人のゲスト、ワタルさんの御子息、高田漣さんの前で。「仕事さが
し」を歌う暴挙。
 引き続いて、難物の、闘牛士のエピソードが満点で着地をきめる。「カヤ
バコーヒーのうた」を気持ちよく歌い上げて、ゲストにバトンタッチ。お二
人それぞれ、満場の観衆を気持ち良くふるわせて、大団円。
 フィナーレでは、大概失敗する、落語家に音楽家の即興演奏をぶつける試
みにも成功をおさめ、またも奇跡の夜になってしまった。感無量。
 余談。
 高田渡さんの歌真似は以前からしていたのだが、今回、声色には無理があ
るとしても、息づかいはかなり近づけようと、あらためて聴きこんだ。やっ
てみると分かる。緩急のつけ方がとても強いのである。力が抜けているよう
にみえて、渾身の力がこめられていたのだった。


2008年1月31日 (木) ディライト

 北京オリンピック、メダルをとってもかじらないように。
 JTフーズの自主回収は次の通り。→JTF
 なかなかネットで調べようとしても、すぐにはこういう一覧が見つからな
い。この日記、そのあたりに気がきいていて、とってもディライト!

●加ト吉・自主回収
 業務用 豚ロース串カツ/豚ロース玉ねぎ串カツ黄色
  /アスパラベーコン串/ウィンナー串
  /デリカ豚ロース玉ねぎ串カツ/NEW豚ロース玉ねぎ串カツ
●味の素冷凍食品・自主回収
 家庭用 ピリ辛カルビ炒飯(450グラム入り) 
 業務用 カルビクッパ
●江崎グリコ・自主回収 
  DONBURI亭かつとじ丼
 (→読売新聞


2008年1月32日 (本) 本屋のことをいうと

 谷中銀座は今や観光地。週末には、コロッケなんかを嬉しそうにほおばる
人々であふれる。喫茶店ができ、本郷のかりんとう屋の支店ができ、トルコ
料理の支店もできた。その反面、米屋がなくなり、荒物屋がタバコの窓口を
残して店を閉め、文具屋も撤退した。商店街としての機能はかげりを見せて
いる。
 そんな中、今や珍しくなった、いかにも商店街らしい、ハタキの似合う本
屋で、老店主に、初老の女性が相談している。最近、漢字が「出て来ない」
し、計算の力も不安を覚える。そこで、今はやりの脳トレの本以外に、小学
校低学年向けのドリルにいいものがないか、という内容だ。
 ここになにかビジネスの鍵があるような気がするが、生来めんどうくさが
りの私は、その先の思考をする気力がない。出版関係、書店関係の方、なん
か役にたちませんかな。


2008年1月忘日 1月の巻頭言特集

カレイの手紙、NHKが張替えとの噂
ガソリンの一笛は痴の一笛
水割り行政
米民主党、黒人女性に候補を一本化
オバマ対オババ
新春降霊隠し芸大会
これネズミの肉だろ?/チュートロです。



 
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

◆2008年2月

2008年2月12日 (火) ♪劇場に身を焦がして 劇場に流されて

 劇場にいるのが好きだ。
 舞台裏、ロビー、楽屋、もちろん舞台。舞台は仕事場なので、少しニュア
ンスが変わってくるのであるが、劇場のそこここが愛おしい。上演作品はも
とより、空間自体を楽しんでいる。「人になついているのではなくて、家の
居心地の良さに居ついている猫」のようなものだ。ひょっとすると、観客の
喝采を浴びたいのではなくて、ただ劇場にいたいからこの稼業についている
のかもしれない。
 春風亭昇太師匠プロデュース・下北沢演芸祭に私の出演がラインナップさ
れているおかげで、毎日、本多劇場に出入りすることができる。出番はない
が、現場にいたほうがいろいろイメージもわくので、初日から欠かさず顔を
出している。素晴らしい時間が作られてゆく状況に立会っているというのは、
このうえない贅沢だ。ビデオカメラの簡単な操作、を引き受けて、スタート
・ストップのスイッチング以外は、客席に腰かけて舞台を拝見する機会があっ
た。良いものを聴くことができて幸せだったが、やはり客席にいるのはなん
だか落ち着かなかった。
 本多劇場の舞台に立つ日が近づいている。
 ゲストは立川志の輔師匠と細野晴臣さん。開演してしまえば終わってしま 
うので、なるべく当日が来ないことを祈っている。


2008年2月14日 (木) カラフルロスタイムショーデラックス

 キャスティングが決まった時点で、会の成功は、ある程度想像がつく。それ
を想像以上にするのは、携わる人々みなさんの気持ちである。
 メインゲストに細野晴臣さんと、立川志の輔師匠。それを私の名前でくくり
つけている。私自身、ひょっとすると、もうひとりのわたしがいるのではない
か、と錯覚するような事態。場所は下北沢・本多劇場。
 主催者、ざぶとん亭が、力づくで実現した企画を、その意気とすごさを感じ
た人々が、喜んで手をさしのべて、なんとも洒落た時間ができあがった。
 ハーミヨン・ジンゴールドが映画「gigi/恋の手ほどき」出演にあたり、
製作のアーサー・フリードに対してだか、監督のヴィンセント・ミネリについ
てだったか、「どこがそんなにすごいのかわからない」と言った時、モーリス・
シュバリエかなんかが、「このメンバーがここに揃うこと自体がすごいのだ。」
と言ったとか言わなかったとか。書くなら調べて書けばいいのだが、申し訳な
い。とにかく、寒空はだかが、あの中にいる、ということが、説明しにくい寒
空はだかの、なかなかエライところなのである。


2008年2月15日 (金) ♪下北沢でモーニング(フラワーズ

 昨日に引き続き、すみきった青空に家並が胸を張っている。眠らずに迎え
た目にはいささかまぶしすぎるのであるが、とにかく、空がまっさおという
だけで、幸福である、いつまでもこの平穏が続きますように。昨夜の祝祭空
間は、一言でいえば「しあわせ」。なんだかみんな幸せそうだったのでなに
よりだ。すでに遠い昔のことのように思える。
 下北沢のまんが喫茶から早暁の電車で帰宅。アンケート用紙のデータをパ
ソコンに打込む。「ちりとてちん」を見て再び家を後に。
 歯医者に行ったり銀行で手続きしていったん帰宅。明後日の京都公演の案
内状の印刷と宛名書き、たぶん、間に合わないのだけれども。
 午後、昨夜、先行発売した3月のソロライブの前売券の残りを吉祥寺のス
ターパインズカフェに返却。本多劇場へ、楽屋に残した荷物をひきとり、今
宵の主役・林家たい平師匠に挨拶。開場前の高座では、ゲストのテリー伊藤
さんが落語の稽古中。郵便ポスト、金曜日の最終便の収集を繰り上げる、と
いうよりとりやめたポストが多いことに気づき立腹。集配局の新宿郵便局に
差出しに行く。
 夜、来月発売のCDのブックレットのチェック。カラフルロスタイムショ
ーDeluxe、素敵な思い出に浸るより、この実績を明日につなげなければな
らないのだ。


2008年2月16日 (土) 幸せのおすそわけ

 昨晩は、ようやくゆっくり眠りに落ちるが、寝坊はしていられない。NH
K連続ドラマ「ちりとてちん」、徒然亭草若師匠の臨終の回、滂沱の涙。人
の死のシーンで簡単に泣くなどできるものか、しかし納得して涙できる作り
である。冥土へ旅立つ師匠、その道中の陽気なこと。
 通い慣れたる本多劇場、下北沢演芸祭。明日の千秋楽は、顔を出せないか
ら、私には最終日。昼公演は桂雀三郎師匠のカントリーバンド、まんぷくブ
ラザースのワンマンライブ。夜のポカスカジャンと東京ボーイズの師匠方ま
での空き時間に、演芸祭の肝煎、春風亭昇太師匠から食事に誘われ、小さな
巨人からサシで寿司を御馳走になる。細野晴臣さんと立川志の輔師匠を招い
て会を無事終えたことは、もちろん望外の喜びであるが、その結果のご褒美
だかどうだかは知らねども、こうして黙ってねぎらってもらってとても幸せ。
 その戦う昇太師匠、にこにこと舞台袖から、ポカスカジャン+東京ボーイ
ズのセッションを見守っていたところ、ふいに呼び込まれて、なぞかけ小唄
をやるハメに。突然の席題「倖田來未」に悶絶しながらも、抜群の瞬発力で
名回答。胸を張って舞台を後に。幕が下りて仲入り。出演者が楽屋に戻った
舞台袖、ひとり、上がってしまったテンションをもてあまし、意味のないで
まかせの替え歌をくちづさむ、なんでもできちゃう師匠であった。歌の内容
はばかばかしすぎて書けない。


2008年2月17日 (日) 週末ドン行

 朝5時20分に東京駅を出発する鈍行列車は、静岡行。ドン行ながら、ちょっ
といいシートなので貧乏旅行には重宝である。早川を過ぎると、海上の朝日
が車内につきささる。居眠りからさめると青空に富士の山。
 静岡から乗った列車で、西日暮里から160円の切符を目的地まで精算、
7820円也。浜松、大垣と乗継いで、濃尾平野の先には暗雲がたれこめ、
関ヶ原は雪。ホームの窓の下まで雪が積もっている。
 米原からアンカーは新快速、能登川をすぎると嘘のように積雪がなくなる
のはいつものことで、旅の目的を忘れかけた頃、曇天の京都駅に14時前に
無事到着。
 磔磔でライブ。対バンはイナヅマホーンズ、本来は10人からいるバンド
だそうだが、今夜はその中から2人が漫才。告知を怠り淋しい客席になって
しまった。
 磔磔の水島さん達と、ハンバートハンバート終了後の「拾得」へ流れる。
翌日の35周年パーティにも顔を出すことになる。
 雪の舞う京の夜、ほろ酔いながらしばらく街を歩き出すも、降り方が荒く
なってきたのでタクシーを拾って宿へ向かう。


2008年2月18日 (月) 京も京とて

 珍しく、わざわざ朝食券を買って、ホテルの食堂で優雅に茶粥をすする。
快楽亭ブラック師匠がここからの眺めを絶賛していたからだ。朝焼けのかわ
りに、小雪舞う東山が広がる。清水寺の屋根が、八坂の塔が、白くなってい
る。
 夜、拾得へ行くことを約束してしまったから、1日フリータイムであるが、
CDの入稿が今日なので、メールのやりとりをしなければならない。宿に荷
物を預け、雪もあがった昼過ぎ、河原町三条の広大なまんが喫茶へ。メール
はできるようになったが、公衆電話が店内にないので至って不便。
 夕刻、冷えきった盆地の底を右往左往、知らない路地を歩くだけで楽しい
私ではあるが、こう寒くてはたまらない。地下鉄に乗って、琵琶湖のほとり、
浜大津へ行ってみる。車内はやけに明るい、こじんまりとした電車は芋虫の
ように、トンネルを出ると暗い山道、最後には道路上を悠然と進む。
 夜、頃は良し、うろ覚えで、しんとした街を探りながら、二条城の北にあ
る、ライブハウスの草分け・拾得(じっとく)へ。分厚いドアを開けると、
中の明かりと喧噪、人いきれが外に押し出されてくる。ほとんどは知らない
人ばかりだが、35周年の御祝儀にネタをやる、時間まで酒を酌む。
 余命わずかな急行〔銀河〕で帰りたいところ、すでに赤字のこのツアー、
23時40分、JRの高速バス・ドリーム号で京の夢、大坂の夢。


2008年2月22日 (金) その上、私を視察に来ているお客もいる

 仲入あとのプログラムが、東京ボーイズ、寒空はだか、大空なんだかんだ、
立川左談次と進んでトリが灘康次とモダンカンカン。普段の浅い出番を別に
冷遇だとは思わないし、後半の出演というのは光栄であるが、この順番は過
酷である。落語の左談次師匠以外、音モノなので、バリエーションには限り
がある。パロディもので重なるものは諸先輩方に失礼だから封印、平日の東
洋館のお客は時事ネタに弱い。私、何か悪い事したかしら。抜擢するにして
も、仲後=クイツキ、つまり幕開きがいいところである。
 満場の観衆は、力技を使わない二人東京ボーイズの師匠方に沸いている。
中の島ブルースできれいにしめて、笑い転げる200人の老男女(若なし)。
出囃子が鳴る間、のしかかる使命感は先日の本多カラフルDXの比ではない。
おアトにはベテランのなんだかんだ師匠が控えている。
 ぎりぎりまで笑い待ちをしながら──それでも間(ま)は若干早い──持
ち時間の前半を漫談中心にうろうろ進行、姉歯ネタに未だに頼るのは苦し紛
れだが、客層を考えれば親切というもの。ざわついていた客席と、いつのま
にか呼吸をぴたりと合わせるあたり、寒空はだか、捨てたものではない。後
半、安全牌の坂本九に逃げ込む。小林旭への展開は、この後の、カンカンの
小山師匠が本家だから当然カット。やっぱり強い中島みゆきのひょうたん島。
 ラスト、東京タワーの歌の導入部までくればしめたもの。無事20分の責任
を果す。終始爆笑の渦というわけにはゆかないが、多少のダレ場も番組には
必要である。


2008年2月23日 (土) このジェロじじい

 いつもの出番に浅草東洋館を終える。
 演歌を柱に、その他雑多な面白CDの品揃えが自慢のヨーロー堂に寄って、
3月発売の新譜のサンプルを届ける。目の前で、話題の「海雪」、黒人演歌
歌手・ジェロのCDが売れてゆく。一緒に古今亭志ん生師匠の落語をレジに
差出していたのがこの店の客らしい。
 岬の崖の上、って情景なら、寒空はだか「俺様と私」収録の名曲、「ボー
イ・ミーツ・ガール」の方が良くできている。
 夜。NHK「笑謝和」の再構成版放送。認知度が上がるのは嬉しいことだ
が、寒空はだかというものを初めて見た人に、面白さが伝わるか、というと
ころが問題なのである。ここ一番に弱いのは困ったものだ。その点、のびの
び才能をさらけだしている新CD「いつも能天気」は3月19日発売。各レコ
ード店にて予約受付中。


2008年2月24日 (日) ♪自分を守る警備隊、名付けて棚上自衛隊〜

「よけてくれると思った。」という乗組員の本音がようやく出てきたイージ
ス艦「あたご」。浅草の人込みに分け入ってくるベンツと同じようなものな
のである。これ、思いついていたのに言い忘れた東洋館、2月の出番は本日
で終了。強風の中、御来場の少数精鋭の観客。私は精一杯のおもてなし。迎
える側の演者にはいろんな人もいるから……。よけきれず、討ち死にしてゆ
くお客もある。


2008年2月28日 (木) IN THE NAVY ≒ ピンフレディ(もっと元気良く)

 イージス艦「あたご」の艦長、ようやく姿をあらわし、被害者家族に謝罪。
たとえどんなひどいことをしたとしても、軍人たるもの、公衆の面前で涙す
るとは何ごとか。今まで私は自衛隊を軍隊だと思っていたのだが、間違いで
あった。悲しみだか悔しさだかは知らねども、悪いと思うなら我慢すべきで
ある。そんなことで平和の役にたてるのか。
 ないたら、平和(ピンフ)は役にならないのだ。


2008年2月忘日 2月の巻頭言特集

♪自分を衛る警備隊名付けて、……自衛隊
防衛省、イージス艦の外出を禁止
551の豚まんにあやかって、731のギョーザに銘柄変更
コソボ電話相談室



 
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◆2008年3月

2008年3月4日 (火) 刷り合うも他生の縁

 不燃ゴミの日、ゴミ出しに行くと、プリントゴッコPG-10SUPERを発見。
現在、自分で使っているモデルは「質より量」指向の性能だが、こちらは多
色刷り機能のついた機種である。10年前のものと思われるが、ほとんど使わ
れてない模様。ありがたく回収。


2008年3月10日 (月) ダンスはヘタだよ でもけんめいに踊るよ(ハーメルン)

 レピッシュの名盤「Flower」。
 2曲目の「水溶性」を聴いた時の衝撃。ああ、こういう歌を作りたいと思っ
たのだ。もう十何年前だ。
 訃報に驚く。上田現さん。無情なり。

水溶性 https://www.youtube.com/watch?v=H5ciNBO1MOk


2008年3月13日 (木) さくらさくら

 発売前のCDが届いている。吉祥寺・Star Pine's Cafe。
 中味に傷をつけないように段ボールを開けると、タイトルの入ったCDの
背が、ずらりと並んでいる。公式の発売日までは今少しあるけれど、間に合
ったので先行発売である。シングル盤の「東京タワーの歌」と、アルバム
「俺様と私」と、三役そろいぶみ、となるはずが、俺様と私を家に忘れてき
たことに気づいて、くらっとする。おまけに次回のカラフルロスタイムショ
ーのチラシまで見当たらない。チラシは来場するざぶとん亭氏になんとかし
てもらうとして、CDはあきらめる。あきらめるのはお客なのだが。
 なんだかねじがとんでいる。
 さて肝心のライブはというと、これが立ち上がり大乱調。言葉が出てこな
い。脳味噌がほどけている。ゲストの上野茂都さん、さすがの好リリーフ。
三味線片手に乙な舞台。絶妙のコントロールでコーナーをつく。受け止める
観客もレベルが高い。上野さんにしか作れない宇宙がそこにある。
 後半、なにごともなかったかのように持ち直した寒空はだか、別人のよう
にいきいきと好投。ただとばしすぎて途中で声が枯れる。のど飴とはちみつ
レモンの差入れでなんとか喉も回復。スペクタクルあふれるライブの醍醐味。
 終演後、もうしばらくやりたくないと思っていたのに、会場の人から次は
いつにします、と聞かれて予定を組んでしまう。やれるうちが花なのだ。
 荷物を整理していると、トランクの底から、置いてきたと思っていたチラ
シ発見。……今のうち、寒空はだかを見ておいたほうがいいかもしれない。


2008年3月31日 (月) ♪チャコチコピー

 マイウェイ昌彦さん急逝。私よりは年齢もキャリアも上なので失礼ながら、
若くして芸の世界に殉ず。レッドスネークカモンのショパン猪狩門下と云う
から、名門の出である。
 マジシャンの世界は大変で、建物を消すような人に対して真っ向勝負して
たら身が持たないし、仕事にならないから、各々センスで戦うのだ。マイウェ
イさんは、技術をあえて封印して、ぎりぎりまで「すごくない」舞台に特化
させようとした人であった。しかしコミックマジックは茨の道である。哀し
いかな、素人に毛の生えたようなできあいの三文マジックの方が、時にお客
は喜んだりすることすらあるのだ。
 本日、お別れの会があったのだが、顔を出せなかった。東洋館で歌い踊る
姿はずっと忘れられない。合掌。


2008年3月忘日 3月の巻頭言特集

アッコにあしかせ!
「あたご」にシーシェパードを沈めてもらおう
ならぬ地上げスルガコーポレーション
もうこれ以上、桜の歌はいらない



 
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

◆2008年4月

2008年4月1日 (火) だいじょうぶマイブレンド

「間に合っているからいらない」時、使わないようにしようと思いつつ、うっ
かり私の口を出てしまう言い回しに、「大丈夫」がある。
「コーヒーのおかわりはいかがですか。」
「だいじょうぶ。」
やはり変である。この場合なら、「またあとで。」というのがカドも立たず
にきれいなところだ。
 新年度も暫定的表現の撤廃に尽力するのだ。

おまけ
 ♪春高騰の日本エン


2008年4月27日 (日) 9回の裏

 叙情派シンガー・原マスミさんと百戦錬磨の女性コント・だるま食堂の3
人を迎えて、寒空はだかカラフルロスタイムショー。まさにこの会ならでは、
の顔合わせ。放っておいても売り切れる組み合わせより、フタを明けてみな
いとわからない今回などのほうが、意義深い。せっかく素敵なプログラムな
のに、それを動員に生かし切れない、寒空はだかの甲斐性のなさに胸が傷む。
ちなみに、原さんの歌は胸にしみ入る、だるまさんのコントは胸が膨らむ。
 フィナーレでは、森雅之さんの漫画のスライド映写に、出演者が朗読をつ
けるという試み。森さんとは、MICABOXの三上敏視さんに紹介してもらっ
たことがある。高校時代に森さんの作品集「夜と薔薇」に出会って以来、ファ
ンだった旨を伝えると「お互い幸(さち)薄そうですね。」と言われた。
思い入れがあるので、私が不用意に朗読をするなどということは不遜な気が
して、複雑な気分。
 とはいえ、意外なゲストのカップリングが功を奏して素敵な会になった。
居合わせた今夜の観客の慧眼を讃える。


2008年4月忘日 4月の巻頭言特集

長野と思わせて中野で聖火リレーを検討中



 
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

◆2008年5月

2008年5月14日 (水) 「人類は4年ごとに夢を見る。」

 市川崑監督の映画「東京オリンピック」。新宿のTSUTAYAで見かけて、
つい借りてしまう。
 国立競技場の大時計のアップ、2時を指す絵が映るとともに、古関裕而作
曲のオリンピックマーチのイントロがどんとぶつかってくる。選手入場、何
度観て分かっていても、鳥肌がたって涙腺のコックが開くシーンだ。
 この時限装置に向けて、映画のオープニングから、わくわくする映像と音
楽とナレーションが構成されてゆく。世界各地を通って、日本の美しい国土
と歓喜の中を走る聖火。開会式、君が代が途中まで流れたところで、突然、
大時計の絵が飛び込んでくるので、心の準備なしに爆弾が破裂する。
 大会は、映画だから編集されているとはいえ、開会式のアトラクションも
現在のように盛り込みすぎず、競技もショーアップされずにシンプルに進ん
でゆく。中国本土や北朝鮮は参加していないが、東西とアフリカ諸国のボイ
コット騒ぎもない。テロもない。水着メーカーがどうのという体力以外の細
かい戦いもない。
 私は東京オリンピックの2ヶ月あとの生まれであるが、この幸せそうなオ
リンピックの事実さえあれば、もう北京も、8年後の東京招致も、どうでも
いい。これ以上の素敵な大会は想像できない。とはいえ、今度の北京も、始
まれば五輪漬けになるのだ。四川大地震で、オリンピックなんかやってる場
合ではなくなったが、傷ついた人々の希望にもなるはずである。国に利用さ
れすぎず、良い結末を望む。


2008年5月17日 (土) 守礼門

 1998年発売の「東京タワーの歌」のEPレコードがヤフーオークションに
出品されていた。
 私の手元にも2枚しか残っていない。その後発売されたCDとは全く異な
る内容で、B面には「漁り火〜海底人来襲」のライブ音源が収録されている。
回転数はA面45回転、B面33回転。
 東京タワーの歌は、ア・カペラのスタジオ録音だが、ボーナストラックに
栗コーダーカルテット(+本間ともこさん)の伴奏付きを1コーラスつけた。
某区設の地域センター、音楽室で録音。1トラック1テイク、2時間で録音
終了の早わざ。
 説明文から推察するに、出品者も聴いてない様子だが、なかなか強気な値
段である。買い手がつかずに延長されている。
 ずいぶん前に、ブックオフで100円で投げ売りされていた、東郷健のEP
を購入、カネに困った時に中古レコード専門店に持って行ったら案の定、
80倍で売れた。その後、なかなか2匹目のドジョウは見つからない。


2008年5月18日 (日) 空爆ところに住むところ

 調布は国領、京王線の線路端の不発弾撤去作業で、半径500メートルの住
民が避難。午まえには無事終了のニュース。
 60余年、忘れ去られながらも、地中で孤独に任務を抱いてきた爆弾は、
陽の目を見たのもつかの間、信管をはずされ、己の誇りを喪失。眠ったまま
あの世へ。
 もちろん、無事でなによりだが、地下で耐えていながら、本懐をとげられ
なかった爆弾に感情移入してしまう、裏街道に在る身の哀しい性である。関
係ないけれど、鉄腕アトムの恋した娘は、実はロボット爆弾だったという悲
しい物語があった。彼女は解体されて脚だけが残る。その脚をアトムは自分
の脚につけかえてもらうのだ。
 夜、エンターテインメント界の不発弾、寒空はだかは、代官山のライブハ
ウス「晴れたら空に豆まいて」に出演。「爆」笑は時節柄不謹慎だ、うふふ
と笑わせる。火薬も使い様で、爆弾にも花火にもなる。


2008年5月21日 (水) 「ここにいらっしゃらない方の不幸せをお祈りして」

 緋モウセンの上で頭を下げて、直前に下がっているドン帳が上がるのを待っ
ている。
 シャギリが入って、ドン帳が上がる、「トザイ、トーザイ」と袖で前座さ
んが叫ぶ。
「演芸半ばではございますが、新真打『立川笑志』改め『立川生志(しょう
し)』、真打昇進ならびに襲名披露口上を申上げます……。」と、朗々と声
を張り上げているのが、──なにを隠そう私なのである。
 客席も不思議だろうが、私もわけがわからない。タキシード姿で舞台いち
ばん下手の私から向って右へ、桂平治、立川生志、五明楼玉の輔、春風亭昇太、
の各師匠方が羽織袴で坐っている。内幸町ホールを5日間借り切っての生志師
の披露興行、日替わりプログラムの中日は、開口一番の立川志ららさん以外、
立川流の出演者はいない。5日間に私の出番はないが、初日に顔を出したら
気を使ってくれてか、昨日、「口上に並んでくんない?」という電話。身に
あまる光栄で恐縮するも謹んで引き受けたが、当日、司会と聞いて顔面蒼白。
 真打披露を見たことは何度もあるから段取りやセリフは一通り分かる。今
日の状況で、がちがちの儀式を求められていないのも理解できるが、調子に
乗るとぐだぐだになる。玉の輔師匠も、平治師匠も気さくだが初対面。おま
けに昇太師匠は、口上が終わり次第、国立演芸場の出番に飛び出すため車を
待たせているから、私があまりいらぬことを言って伸びてもいけない。
 変に色気を出そうとするより、タキシード姿の見慣れない眼鏡男が、「こ
こにおります立川生志、」などと不釣り合いなことを言っているだけでじゅ
うぶんおかしい。面白いことは他の師匠方にまかせておけばよい。淡々と、
儀式的なセリフを述べて、結果成功。
 3本締めを終えて、両手を差し上げ、深々と一礼、満場の拍手の中、幕が
下りる。これは気持ちが良い。


2008年5月30日 (金) 刷れっからし

 ついにプリントゴッコ本体の生産終了、来月いっぱいで出荷停止。30年の
歴史に幕。テレビニュースには取り上げられなかったがYahooの速報で知る。
 私が使うようになったのは比較的遅く、この15年くらいのことで、ちょう
ど衰退を始めた頃からだ。以来、ダイレクトメールも年賀状も、1枚1枚、
がちゃんこがちゃんこ、プリントゴッコで刷り続けている。手間はかかるが、
プリンターの味気ない葉書は作りたくない。最盛期には、5軒に1軒は持っ
ていたというけれど、今年の正月、私に届いた賀状の中で、プリントゴッコ
で刷られたものはたった1通。全部で何通届いたか数えるのが面倒だが、
100枚に2本当る末等の切手シートが4枚もらえた、そのくらいの枚数のう
ちの1通である。
 現在、我が家には未使用の新品が1台、戴き物のほぼ新品1台、先月拾っ
た美品の中古が1台、それに満身創痍の本務機1台、合計4台もあるから、
当面困ることはない。問題は、スクリーン(版)と製版用ランプ、インクと
いった消耗品がいつまで生産されるか。スクリーンとランプは、昨年、倍近
くに値上がりした。インクは、買いだめても劣化してしまう。この先しばら
くは大丈夫だろうけれども、いつかなくなる日がやってくる。
 ちなみに、パソコンのプリンターは、未だに、アルプス電気のマイクロド
ライという、熱転写のインクリボンを使う年代物である。大型量販店の片隅
に、インクカセットが細々置かれている。水に流れるインクジェットの嫌い
な私はこれでよい。だいいち、以前購入した中古のインクジェットプリンタ
があることはあるのだが、使っているパソコンが古すぎて、作動しなかった。
でもこれでいいのである。インクジェットの中途半端なきれいさが、どうも
好きになれないのである。


2008年5月忘日 5月の巻頭言特集

放置国家



 
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

◆2008年6月

2008年6月1日 (日) 10回10色、10期10会

 イベントを続けるというもは大変な労力であって、主催者は楽しいことば
かりではない、むしろ苦しいことのみ大かりき、しかし、楽しくなければ続
かない。
 ざぶとん亭風流企画は弱小プロモーターだが、なみなみならぬ情熱で、寒
空はだかカラフルロスタイムショーを、10回目まで引っ張ってきた。ホスト
役の寒空はだかは、実際の値打を膨らませて強力なゲストを操るという、証
拠金取引のようなバクチを打ちながらも、おかげさまでここまで高配当。
 会場の六本木スーパーデラックス、観客は狭い空間にぎっしりつまっても
らっているから、楽しませなければ暴動になりかねない。
 まずはショーの定番、高遠彩子さんの、ファニーな緊張感あふれる歌。続
いて寒空はだか登場。さすがに10回目ともなれば、スター気取りでも良かろ
う。途中、盛上がる観衆にあてられたか、突然の貧血で意識が遠くなりかけ
たが、なんとか持ち直す。もう少し、喋りをそぎおとせばなお良し。
 今夜のゲストは、まず、柳家喬太郎師匠。柳家の遺伝子につかこうへいの
洗礼を受けた、赤塚不二夫育ち、──順番はばらばらだけれども──。決し
て落語をやるには向いていない環境と興奮が、エキセントリックな喬太郎魂
に火をつける。この空間を納得させるのは落語というスタイルではハンデが
ある中、実力を惜しみなく見せつけて観客をねじふせる。
 休憩の後、このショーの影の功労者、MICABOXの演奏に、再び会場が引
き締まる。三上敏視さんのセンスが、このイベントの針路を握っている。
 2組目のゲストが、鈴木慶一さん。主宰するムーンライダーズは、30年、
表立ってヒットチャート上を荒らしていないにもかかわらず、チャート上の
曲や歌手に影響を与え続けている、マフィアのようなバンドである。曲自体
も、ワイン片手に拳銃か美女をかかえているような様子だ。今夜はギター1
本、出たばかりのソロアルバム「ヘイト船長とラブ航海士」に合わせたか、
マドロススタイルの慶一船長は、骨太な歌声で会場をゆさぶる。
 フィナーレのオマケを含めて、終演時には客席もへとへとだと察するが、
それ以上に楽しさを与え続けられるうちは、この企画も続くだろう。おかげ
で私も鍛えられている。無事、打上を終えて、例によって、ざぶとん亭氏が
心地よく酔っている。


2008年6月6日 (金) 新タワーから仕事がきたら、当然削除

 今月10日に、業平橋の「新東京タワー」の名称が決まる。
 最終候補に残ったのは、東京EDOタワー、東京スカイツリー、みらいタワー、
ゆめみやぐら、ライジングイーストタワー、ライジングタワー。どれも気に
入らないが、しいて選ぶなら東京スカイツリー、というひねり方の工夫に1
票。♪ツリー、ツリー、……歌いにくいが仕方ない。
 後ろの二つは、博報堂主導の周辺再開発計画「ライジング・イースト・プ
ロジェクト」が由来。
 では、どうすればよいのか。
 東京タワーの名跡を譲ってもらって、二代目を名乗るべし。各地のタワー
が集まる襲名披露が目に浮かぶ。
 そもそも「東京タワー」というのは、当時、公募された候補の中で1%に
も満たなかった案であるが、選考委員の徳川夢声が推したとされている。投
票上位は、昭和塔、日本塔、平和塔……、で、それまで、タワーという言葉
は一般的ではなかったことがわかる。先輩の名古屋は「テレビ塔」であり、
パリの大先輩も、エッフェルタワーとは未だに呼ばれないのもその証明だ。
シンプルで古くならない「東京タワー」という名前はすばらしい。夢だの未
来だのを名前につけるセンスは大嫌いだ。
 ここまで書いて、新タワーにはあまり思い入れがないから、ケチをつける
こと自体が無駄である、と気づいた。なるべくへんな名前になるが良い。が
んばれ、元祖東京タワー。仕事くれないけどね。
 新タワーは、デザインも格好悪いのだ。東京タワーのあの形の美しさ、見
た目の安定感。今度建てるのは川沿いの地盤のゆるそうな所なので、建築途
中で傾いて、東京シャトーになる、というのを期待している。


2008年6月10日 (火) はだかで泳げ

 ドーピングはなぜ不可で、肉体改造水着は可なのか。
 技術の進歩は止められないとすれば、もはや好みの問題である。選手が、
自分の力以外の要素で負けるのが悔しいだろうことは理解できる。勝つため
に、記録のためにやっているのだ。しかし、ここで歯止めをかけなければ、
サイボーグ化も時間の問題だ。素手で殴るのではなく、石を持つようになっ
た時に、原爆だのクラスター爆弾だのへの道が開かれたのと、理屈は同じで
ある。誰かが故障しない限り、行き着くとこまでゆくのだ、これは仕方ない。
 世の中は、たいがい私の好みでない方向へ進む。正しくは、私が世間の好
みと逆を行っているだけなのだ。いやなら、見なければいいのだ。でも好き
なのだ、オリンピック。


2008年6月11日 (水) ♪ツリーツリー、登ればいつでもお祭り〜

 業平橋の東武新タワーの名称は、結局、東京スカイツリーに落ち着く。
「スリーヒントコーナー、次の3つにつながる言葉は?」
「クリスマス、スカイ、……首。」
 さて、14日開業の東京地下鉄副都心線。以前、この日記で、例によって
ネーミングにケチをつけた。
 設計段階から呼ばれていた名前は地下鉄13号線。故に如何か、メトロ13。
語呂は良いけれど、なにやら不吉である。


2008年6月16日 (月) 地に働けば角が立つ

 開業3日目の東京地下鉄副都心線探訪。良いところはテレビが伝える、こ
こで伝える必要はない。便利になった人は多いだろう。
 とはいえ、まず、目玉の「地宙船」渋谷駅は面白かった。かつてプラネタ
リウムのあった東急文化会館の跡にあるので、他の線から乗換えて順路通り
進むと、話題のあの空間は通らずに改札を入ってしまうが、15番出口の真下
になる。地下コンコースから、換気用に開いた空と、思ったより小さい吹き
抜けからホームが見える。客を感知して動き出すエスカレーターを、東京で
は珍しく採用したのもよい。
 問題は、サイン看板を含めた駅内の案内状況である。きれいなデザインだ
がわかりにくい。例えば、幅の広いホームの両側から同じ方向に電車が発車
するのだが、次の発車がどちらからなのか、簡単にはわからない。しかもホ
ームの真ん中にくると案内放送が聞こえない。
 ラッシュ後の午まえという、いちばんのんびりとした時間帯だが、朝の混
雑の影響でダイヤが乱れていて時刻表があてにならず、うろうろしてしまう。
ラッシュ時の混乱が容易に想像できる。うつろな目で駅員が、人目をさける
ように立っていた。
 さて、今日は都内をあちこち移動していたので、銀座線、丸ノ内線、東西
線と千代田線に乗ったのであるが、どれも車内の地下鉄路線図に、未だに副
都心線が記されていなかった。他の会社の乗り入れ車両ならまだしも、自分
の会社の車両である。さすがに副都心線車内には新しいものが掲示してあっ
たが、なにか直前にミスが見つかったとか、よほどお粗末な理由があるのだ
ろう。私の乗った千代田線の車両は、中吊り広告の半分が「副都心線開通」
の広告にもかかわらず、路線図には乗っていないのである。情けない。
「副都心線」は語呂が悪いので、略して「副都線」と呼ぼう。「心」抜きだ。


2008年6月17日 (火) ♪声をあげて頭を使って(地下シュー)

 どうも、日記が長くなる傾向でよろしくない。昨日の日記も、核心の部分
は終わりの8行であり、本来なら地宙船云々の案内は、発表前にカットして
いるところだ。
 ついでだからいらないことを書くと、東急モデルでデザインされた渋谷駅
の案内表示は恰好良すぎて分かりにくい。日暮里駅工事で話題になったガム
テープ文字「修悦体」の良かったのは、なにより、現場発の情報であったと
ころだ。掲出場所によって文字の大きさなど、変わってしかるべきなのだ。
統一されてデザインが美しくなるほど、表示は、ただの模様になってゆく。
 それにしても、昨日書いた時点では、あれほど副都心線が混乱していたと
は知らなかった。開業前、みんな、理想通りにうまくゆくことしか考えてい
なかったのだ。ろくに実習もしないで、開腹した医者みたいなものである。


2008年6月21日 (土) 「死に神」だなんてひどい、「死神」が正しい

 通りすがりのラーメン屋、ガードレールにくくりつけられた幟に「冷やし
中華」の文字。「や」がよけいである。たしかに、正しい「冷」の送り仮名
は「やす」であるが、ヒヤシチュウカは「冷し中華」なのだ。
 試みにGoogleで「冷し中華」を検索してみたら
──もしかして: 冷やし中華──
と表示された。大きなお世話である。
 もっとけしからんのは、これまた最近見かける「丼ぶり」である。それで
は「どんぶりぶり」だ。


2008年6月23日 (月) ソロライブ「銀座ムード」 →添削前

 本拠地、吉祥寺スターパインズカフェでのソロライブ、終了。近来まれに
みる上首尾。
 満足できる結果の所以は、うまくあきらめることができたからである。実
力以上のことをやろうとするから無理が出て後悔するのであって、小浜の塗
箸と同様、仕込んだものしか現れない。
 さて、ゲストの最鋭輝(モトキ)さんは、1人きりでグループサウンズの
幻想を全ての観衆に共有させる。その魅力を余すところなく発揮して、興奮
のるつぼ。エンターテイナーここにあり。しかも、今回お願いした時間に5
秒と狂わなかった。
 80人足らずで独占するにはもったいない夜であった。ごめんなさい。


2008年6月忘日 6月の巻頭言特集

サミット、開催国柄に配慮して曖昧な結論
偽装うなぎ、丸明みたいに安く売れば喜ばれたのに
煮物も点滴も1日おくと良くしみこむんです<点滴作りおき事件>
♪ツリーツリー、スカイツリーで血祭り〜
♪ツリーツリー、気分はいつでもお祭り〜<新タワー名称決定>
チップをくれるタクシーがあるとは。<居酒屋タクシー>



 
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

◆2008年7月

2008年7月6日 (日) ウナギイヌ

 初めて降り立つ町のバス停で降りた途端に雨が降ってきた。愛知県幡豆郡
一色町午前8時20分。
 こんな田舎町に喫茶店も見当たらず、下調べなしでやってきたので途方に
暮れるが、公民館裏の公園のあずまやで雨宿り。途端に本降り。夜行明け、
雨にやつれた不審人物。公民館の開くのを待って、目的地の場所を尋ねるも、
のらりくらりとした説明でつかみ所がない。それもそのハズ、鰻の町だ。
 昼過ぎ、ところは変わって愛知県犬山市、犬山遊園駅。「電車・モノレー
ルのりば」というネオン文字が駅舎正面のひさしに乗って、夏の陽射しを浴
びている。「電」の字の雨かんむりが、「両」になっているところが古風。
 モノレールのりばに続く階段には動物のイラストが描かれていて、幸福感
があふれている。閑散としてはいるが、今年末で廃止になるうらぶれた感じ
はない。30分に1回の発車時刻が来ても本当に動くのか不安になるような、
ひとけのない夏の雨上がり、3両編成のモノレールが静かにたたずんでいる。
いつの間にか運転手が現れて、無造作に扉が閉まると、私1人の貸切で、急
カーブを登りながら、森の中へと吸い込まれていった。緑のトンネルに包ま
れて、前に伸びているコンクリートのレールの角は苔むしている。たった3
分、終点駅の改札は遊園地モンキーパークに直結していて、猿に用のない私
は仕方なく、今来た道を、再び貸切で引き返す。
 途中の「成田山駅」で降りてみると、駅員がわざわざいて、私は驚く。参
詣の後、歩いて戻ってもたいした距離ではないが、数えるほどもいないだろ
う利用客のために掃き掃除をしている初老の駅員を見て、胸を打たれる。
「犬山遊園まで1枚、……暑くなってきちゃいましたねえ。」
「ここんとこ涼しかったんだけどね。」
何時間ぶりの会話か知らねども、閑職にすねるでもなくだらけるでもなく、
好奇な客をいぶかしむでもなく、たった1人の駅員は、それなりに楽しげに、
小さな駅を守っていた。


2008年7月27日 (日) 「痛いですか〜?」

「彼の前に道はない、彼の後ろに河ができる。」
清水宏さんを舞台に呼込む時に、そう言って紹介した。彼は、しばしば安易
に怪優と分類をされるタイプの優れた役者であるとともに、日本で「スタン
ダップコメディアン」という肩書を使ってきた草分けである。フロンティア
であるから四の五の言う前に引き金を引く。別にお客は殴りかかってはこな
いが、スキを見せれば撃たれると思っているのだ。抽象的な表現で、観たこ
とのない人には分からないことを書いてしまったが、とにかく、彼は不毛な
原野を、1人で力づくで切り開いてきた男なのだ。切り開く必要があったの
かどうかは置いておく。ただ人一倍汗をかくので、彼の後ろは道ではなくて
河なのである。観衆は濁流に呑まれてゆく。
 寒空はだかカラフルロスタイムショー、今宵のゲストの1人が、その
清水宏。そしてもう1人、音楽界で戦い続けてきた男、自ら純音楽家と名乗
る遠藤賢司。
 エンケンさんは還暦を過ぎているが、キャリアを積んでも、丸くならない。
妥協をしない。ケンカ腰である。お客の目を見すえ、真っ向から思いをぶつ
けてくる。捨て身の体当たりに、観衆の心が、はたかれるである。
 そんな2人の姿は漢らしいが、粋ではない。彼らの誠実さの前では、とり
つくろった上っ面のスマートさなど粉々に粉砕されてしまうのである。軽さ
と粋が身上の寒空はだか、両人を相手にしたがために、意外に骨太なところ
を暴かれてしまう。
 舞台が戦場になることが良いかどうかはわからない、ただ、たしかにこの
夜、六本木スーパーデラックスには、火花が散っていたのだった。


2008年7月31日 (木) 今夜で店じまい より「ペリーのお願い」

 竹島は歴史上、日本が権利を持つ領土である。これは科学的事実だが、悲
しいかな「歴史上」である。学問上のことであって、事実上は韓国領である。
もう長いこと、日本人が近づくと撃たれる場所だ。日本政府は放棄したと思
われても仕方がない。しかも、韓国民はみんな竹島を知っているが、日本国
民は、ほとんど竹島など知らない。
 戸籍上は妻だけれども、今はもう寝とられた誰かの女を、何もしないで、
いつか返ってくると思っているようなものである。世話焼きのおじさん(む
ろんアメリカ、レーガンだったら「霊岸島のおじさん」とうまくはまるのだ
が残念)からして、もう日本のものじゃないって言ってるのに、官房長官も
平然としているのだから、どうしようもない。その名も「町村」だが、「島」
には興味なし。
 悔しいが、実効支配されて、先方も譲る気のない竹島を本気で取り返そう
としたら、血を見るしかないではないか。私は心情的に竹島を返して欲しい
が、そのために銃をとる気はない。政府の外交はあてにならない。韓国首相
の設置した石碑に、岐阜の短大生に落書きさせるのが精一杯の抵抗か。
 こうなれば、もう、宮崎吐夢に特使で飛んでもらうしかないのである。
「タケシマ、カエシテクダサ〜イヨ。」


2008年7月忘日 7月の巻頭言特集

坂の上のポニョ



 
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

◆2008年8月

2008年8月9日 (土) 抜油中国

 草63番の都バスは、荒川区の星・金メダル候補の実家、「肉のきたじま」
の前を通って、元・宮地ロータリーから明治通りに入る。十年来の私の浅草
御成街道であるが、近頃は100円バスの「めぐりん」を使う機会も増えて、
以前ほどは通らなくなった。ほこりっぽい明治通り沿いに、白地に赤い筆文
字で「中華ハルピン」というノレンのはためいているのが印象的な、古い食
堂があって、今日は初めてそのノレンを裏側から見ている。
 昼下がりだがそこそこ客がいて、時間のこびりついたうす暗い店内は冷房
がきいている。メニューが色々書かれているが、カウンター席に腰掛けるな
り、つい冷し中華などというものを頼んでしまう。顧みるに、さほど美味し
い冷し中華というものを食べた記憶がないが、無性に食べたくなるのである。
 醤油ベースの私好みのつゆに、これまた教科書的な具が乗って出てきた。
思い描いた通りの皿である。申し分のない冷し中華に箸をつけるが、案の定、
途中で飽きてしまう。別に店は悪くない。
 天井からぶら下がったテレビでは、女子柔道48キロ級の谷亮子が戦って
いる。私も冷し中華を攻めあぐねながらも、ずるずる黙々と最後の1本を食
す。あやふやな気持ちで店を出る。考えてみれば、強火と油で力をこめるの
が中華料理なのに、力を抜いて抜いて出すのが冷し中華なのだ。
 しかしだ、冷し中華を食べて少し後悔をするのと、暑中見舞葉書を作りな
がら出し終わる前に立秋を過ぎる、というのが私の夏の風物詩なのである。


2008年8月14日 (木) 井の中の蛙、蛙王の気持ちを知らず

 哀しいかな、その偉業と労苦と裏腹に、なんだか有難味に欠けてしまった
北島康介の、アテネに続き、そして今大会2つめの金メダル。
 わが庵から歩いて5分、彼の母校、区立文林中学校の体育館で、私はそん
なひどいことを思っていたのであった。堪え難きを堪え、忍び難きを忍んで
きた末の勝利なのに。ライバルのハンセンが一緒に泳いで、せっていたら、
またちがっていたかも知れないのだが。
 帰り道、照りつける夏空の下、ハンセンへの思いを新たにする私であった。

 帰ってプレイバックを1人で観たら、けっこう心が湧いた。テレビカメラ
に取り囲まれたパブリックビューイングの空間に、なにか主役を出汁にして
いる雰囲気ができていたのだな。


2008年8月21日 (木) 急いで鼻で吸え

 いつも安物の湿気取器を買っていたのだが、少し奮発してブランド物、
「ぞうさん」ブランドに換えてみたら、さすがに性能が違う。容器の下に水
のたまるのが早い。これは有難いと思ったが、交換も早くなることになる。 
 室内の湿気を少なくするのが目的なので、すぐ使えなくなるのは本来喜ば
しいことだが、長持ちしないというのは、なんだか燃費の悪い自動車に乗っ
ているような、損をしているような気がしてくる。
 パラドックスのようだが、むろん、ただ貧乏臭いだけである。


2008年8月27日 (水) ♪ひまわり、夕立、せみの声

 カレンダーと締切に縛られた生活をしているわけではないから、べつだん、
8月が終わろうが9月になろうが、自分にとって、たいした違いはないはず
である。にもかかわらず、8月の終わりになるとなにか焦りを感じてしまう
のは、夏のうちにしかできないこと、しておかなければならないこと、があ
るような気が、漠然とするからである。
 暑いのはつらいが、夏は好きなのである。


2008年8月忘日 8月の巻頭言特集

のけもの姫[姫井議員民主党離脱撤回]
牛海綿状農相
スモッグと闇の都から霧の都へ
若の鵬、キメ技さえる
荒の字を見るとバカボンパパを思い出す



 
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

◆2008年9月

2008年9月8日 (月) アンタ吸ってんのネ だから言ったじゃないの

 やくみつる氏、再発検討委員会を欠席。
「名前が、ヤク充つるだからなあ……。」

♪尿に出た出た 大麻出た
 露鵬と白露山の尿に出た
 あんまり数値が高いので
 さぞや部屋の中 けむたかろ
 ヤク スイスイ


2008年9月16日 (火) ♪とうさん、とうさん、歴史が長いのね

 一夜明けるまでは名門証券会社、リーマンブラザーズの社員、今日からは、
ブラリーマンに。


2008年9月19日 (金) 太田農水省辞意表明

「総辞職も決まっているのに、いまさら辞意を表明して意味があるんですか?」
「自慰でございます。」

「大臣、最後にもう一言!……失言を。」


2008年9月22日 (月) 自民党総裁に麻生太郎氏

「どうせ総裁選って言ったって、出来レースなんでしょ?」
「いえいえ、麻生太郎ですから、セメントマッチです。」


2008年9月28日 (日)
 ざぶとん亭風流企画PRESENTS寒空はだかカラフルロスタイムショーVOL.12


♪ナカヤマナカヤマ失言、失言失言ナカヤマ
 任せて失敗、リフォームだ新内閣
と、できたての替え歌をぶつけてみたが、クスリともしなかった、ガラガラ
の日曜日、東洋館。私目当てのお客もちらほら目に入る。持ち時間も短くなっ
ていた上に笑い少なく、傷心のまま舞台を後にする。
 中山国交相辞任。恰好のいいことを好きなだけ言いたければ、大臣なんか
辞めて舞台芸人になればいい。言いたい放題で月々ウン十万の給金、税金を
もっていかれてたまるか。浅草の演芸場の出演料で、言ってみろというもの
である。
 荷物と気持ちを入れ替えて、六本木・SuperDeluxeへ。
 ざぶとん亭入魂の企画、本日の「はだカラ」のゲストはウクレレえいじ氏
に、「勝手に観光協会」こと、みうらじゅんさんと安斎肇さん。
 オープニング、高遠彩子嬢の歌う「ジンジロゲ」のもれ聞こえる楽屋で深
呼吸。「はだか冠の催しなのに、遠慮し過ぎ」との声もふまえ、期待に応え
るべく針のムシロに上がる。間(ま)だけが勝負の「中トロあてクイズ」を
中心に、安定感を求めない非常にスリリングな舞台を心がけ、きれいに着地。
 続く、えいじさんは、先日のテレビ番組で優勝の「マニアックものまね」
シリーズで、満場の観衆を魔法にかけている。みうらさんと安斎さんが、我
が子を心配するように、楽屋で場内の様子に耳をそばだてるが、どかどかウ
ケていることに安心すると、いつの間にか、控えている男性陣を巻き込んで、
「皮があった方がいいに決まっている」というみうらさんの筆箱理論が渦を
巻く。壁の両側に笑いが溢れる中、大拍手に送られてウクレレマスター帰還。
 休憩後、MICABOX三上敏視さんと高遠嬢の神楽歌に、ぎこちなく参加、
引き続き、勝手に観光協会を呼込む。
 みうらさんと安斎さんが軽妙なかけあいで笑いの花火を上げつつ、時に哀
愁、時に情念、時に馬鹿な歌々で日本の風土を愛でている間、楽屋では、集
まってきたフィナーレ飛入り参加者たちが練習を始める。
 今宵の出演者に、ポカスカジャンの3人と、林家彦いち師匠、春風亭昇太
師匠を加えて華やかなフィナーレ。えいじさんの「なまはげハワイアン」と、
みうらさんの「カリフォルニアの青いバカ」で盛り上がる。
 最後に、スター達を送り出し、舞台を一人占めの寒空はだか、「東京タワ
ーの歌」を300人の手拍子に支えられて気持ちよく歌う。万感の思いをこめ
て深々と礼、賞賛の苦手な私は、するすると舞台を後にする。


2008年9月忘日 9月の巻頭言特集

新内閣、いきなりリフォームのナカヤマ君
彼岸の総裁就任
出来レースじゃないの?/セメントマッチです。
アメ イカ ビーフ 豚テキ チキン 豆乳[アメリカ政府公的資金投入]
会社が倒産してブラリーマンに
♪吸っているのに知らんぷり
次の方どうぞ〜。[総理辞任]



 
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◆2008年10月

2008年10月8日 (水) 「裏番組にまけるもんか」

 大学浪人の頃、か細い電波を無理矢理聴いていた、名古屋・東海ラジオの
深夜放送「ミッドナイト東海」。木曜深夜は笑福亭鶴瓶師匠、金曜日はハガ
キも読んでもらった、ゆき姐こと、兵藤ゆきさんがパーソナリティ。受験シ
ーズンに、よく「メーダイを受ける」ということが大層に扱われていて、当
時埼玉県民の私は、「明治大学なら、そこまで大袈裟に語らなくても」と思っ
たものだが、じきに分かった。
 中京地区においてメーダイといえば、難関・名古屋大学の略なのであった。
 ノーベル賞、2日続けて日本人が受賞。関係者が3人もいて突然クローズ
アップされた、その名古屋大学。しかし、大学についていえば、関東人の私
が驚かされたのは、別のことであった。
「京都産業大学って、芸人を養成する大学じゃなかったんだ。」
 名大出身で、現在、鶴瓶師匠とあのねのねさんの母校・京産大の益川教授、
インタビューで思わず涙、眼鏡の上から涙を拭こうとした。さすがである。
 それはともかく、学者の妻に「夫としてはどうですか。」という愚問をし
ている記者、気持ちはわかるが、意地が悪い。


2008年10月9日 (木) 貞操を盗まれそうになった男

 久しぶりに訪れるその映画館へは、汚れてもいい服装で臨んだ、そのぐら
いの心構えはあったのである。
 ところどころ黄ばんだスクリーンには、フランキー堺主演の「こわしや甚六
に続いて、沢田研二v.s.菅原文太の「太陽を盗んだ男」が映し出されている。
後者は不覚にも初見なのだが、滅法面白い。が、客席側でも、遜色のないス
ペクタクルが起こっている。
 邦画3本立1000円ポッキリ。「浅草新劇場」。
 汚いのは覚悟の上だったが、一つ忘れていた不安要素を、映画館の前で思
い出す。が、さすがにモギリのおばちゃんに、正面きっては確かめにくい。
 ままよと入館すれば、3分しかない休憩時間にアナウンスが流れる。
「最近、スリ、置引、恐喝などの被害が発生しております。」
 今日は見かけなかったが、煙草を吸う客が珍しくない今どき稀有な劇場だ。
もちろん禁煙である。空いているとはいえ前の席に足を投げ出す客、肘掛を
うまくかいくぐって横になって眠っている客、うろうろ歩き回る客。ビンの
転がる音に続いて割れる音、カップヌードルをすする音、大きなくしゃみ、
極めつけは、音を立てて走りまわる大ネズミ、しかも2匹。
 しかし、そんなことはたいしたことではないのだ。ここは「ハッテンバ」、
ゲイの溜り場で有名な場所だったのである。2階席があって、運良く私は訪
れなかったが、そこは禁断のスペースだったと後に知る。客席内に入る前、
トイレで異様な視線を浴びて事態を確認した私は、前から3列目、中央通路
のすぐ脇に陣取っていた。丁度、他の客が近くにいなかったし、隣に腰掛け
られにくい。館内でもっとも目立ち死角にならず、万が一にも逃げやすい。
 結果、貞操の危機を乗り越えて、2本の名作を堪能したのであった。
 ちなみに、絵になるシーン満載の「太陽を……」だが、ベストカットは、
それまでたいした役割を演じてこなかった佐藤慶が、運命の決断を勝手にやっ
てしまった時の顔。テレビドラマ「少年探偵団」、BD7の「マジョ」役の
女の子が生徒役で出ていて懐かしくも可愛らしかった。
 非常に魅力的なプログラムだが、とても女性が行く所ではないし、「その
気」があってもなくても男性にはなお、お薦めできないのが残念である。


2008年10月12日 (日) ♪もうすぐ私きっと

「おたおたするはだかさんを見るのは……、」と打上の席上、演芸仕掛人の
木村万里さんが、私の様子を慈悲深く振り返る。「第16回石和ざぶとん亭」、
立川生志師匠の真打昇進を祝う会。高田文夫先生の肝煎り、甲州の古刹で行
われる、ざぶとん亭風流企画の原点である会に出演。
 秋の清冽な空気が流れ込む本堂、春風亭昇太師匠、林家彦いち師匠という
ファイター達の中に放り込まれて寒空はだか、団体演技・フリートークでの
キャッチボールの不器用さを露呈。受けたパスをあさっての方向に打ち返す。
頭を抱える高田監督。普段の高慢な態度のメッキがはがれ、文字どおり「は
だか」であるが、あわあわしながらも、なんとか個人種目で巻き返し、自分
の持ち場の最終ラインは、無事守って得点。やれやれ。
 紆余曲折を経た新真打、生志師匠は実に懐が深い。謙虚なようで不敵に全
てをからめとる。トリを務めて最後に頭を下げた時、観衆の心からの「おめ
でとう」の拍手で、鵜飼山遠妙寺は幸せに包まれた。ここの鵜匠は、演者を
うまく泳がせ、しかも獲物をとりあげない。主催のざぶとん亭々主、感無量。
 それにしても、高田先生という方は、背中にも目があるような方である。
シャイな江戸っ子の権化たらん先生は、正面から手をさしのべないが、無防
備に向けた背中が語っている、かかって来いと待っている。


2008年10月21日 (火) 「人生って痛いもんなんですね。」

 国会の解散は伸びる伸びる、まるでゴムひものように。
 ……ゆーとぴあさん達のほうが先に解散してしまったのだ。


10月の巻頭言特集

KEIO大麻センター[慶大生大麻売買]
ジャングルハウス毒ガス
国会の解散はゴムのように(ゆーとぴあ先に解散)
百万ドルのヤケド
秋の暴落シーズン
♪星は何度も買っている



 
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◆2008年11月

2008年11月5日 (水) 色つきの男でいてくれよ

[オバマ氏次期大統領に当確]
 日本人にとってはプレジデントといえば、元々、黒色なのである。
 歴史的瞬間に立会う、というのは、海を挟んでテレビの前とはいえ、どき
どきするものだ。第三色人にとっても。


2008年11月9日 (日) ざぶとん亭の上の小宇宙

 ざぶとん亭風流企画プレゼンツ寒空はだかカラフルロスタイムショー。今
年は、特別版を含めて7回目。2008年の締めくくりは、ロールプレイング
落語家の三遊亭白鳥師匠と、おとぎの国・ユーテンジェルグからやって来た
歌と演奏の3人組、ショピン。ユーテンジェルグ、たぶん隣はナカメグロル
クだ。
 私の衣裳は、本日デビューの、青と白の縦縞模様のジャケット。ごく細い
緑と橙色の線も入っている。映画「崖の上のポニョ」でフジモトの着ていた
ようなスーツを探していたら、似たような柄を竹下通りの原宿ゼンモールで
見つけた。ブルーを基調としたものをあまり着ないのでなかなか新鮮である。
夕べ眠れなくて朦朧としていたが、新しい衣裳を着ると目がさめる。
「昨夜と今日の昼の大仕事のおかげでほどよく油の抜けた」という白鳥師の
落語、私は出番の直後の疲れできちんと聴けずに残念。MICABOXと高遠彩子
さんの演奏も出番前で、いつもなかなか聴く余裕がないのだ。
 休憩をはさんで、助っ人にパーカッションの氏家厚文さんを加えて、中世
ヨーロッパの人形劇のような世界を紡ぎ出すショピン。はたおり機のぱたぱ
た続く音にうっとりするような心地よさが会場を包む。
 フィナーレ、大島妙子さんの絵本を、朗読と演奏で楽しんだ後、出演者が
そろって「あめふりくまのこ」を歌う。主催のざぶとん亭氏らしい選曲だが、
私もとても好きな歌で、聴くだけでも涙が出そうになる、優しい歌だ。


2008年11月12日 (水) いいかげんにしんさい

 別に知事が何を言おうが、謝罪しなかろうが、再び兵庫県に災厄あらば、
我々江戸っ子気質は優しいから、親身になってあげるのだ。私は埼玉県出身
だけれど。
 ああいう態度をとって、いちばん迷惑するのは、兵庫県民だということが
分からないというのは、お気の毒としか言い様がない。


■井戸兵庫県知事、「関東大震災が起きればチャンス」と発言。


2008年11月16日 (土) はだかのリスクで島田も揺れる

 大井川に沿った崖の中腹をつたう線路、屋根もベンチもない細いホームを
挟んで、両側に2両編成の古めかしい電車がならんで行き違い。間に立って
手を広げると、双方の車両に届きそうだ。雨上がりの午後、降り立つのは私
1人。あたりに全く人の気配はないが、山側の斜面に十数頭、信楽焼のタヌ
キが、首をそろってかしげている。
 駅舎もない山峡の停車場、レールはトンネルの中へ、人道は竹林の中へ消
えてゆく。次の電車まで1時間。付近を歩きながら、今晩の仕事に向けた地
元ネタを練りつつ、構成をさらう。
「私の時間はあってもなくてもいいんです……、静岡空港のような。でも必
要ですよ、ひとたび関東で大地震が起きたときにはチャンスです。」
タヌキは首をかしげている。
 夕刻、島田市内。大正6年に建った映画館「みのる座」で、真打昇進を来
年に控える三遊亭遊喜さんの会、ゲスト出演。古い映画館だというだけでも
楽しみで、うきうきと訪れた。場内、ロビー、舞台裏、醸し出される昭和40
年代=あの頃の雰囲気にめろめろである。時代はついているけれど、きれい
に整備されている。
 某落語家さんに「寒空はだかを呼ぶの?いいけど当りはずれあるよ。」と
言われたことを、遊喜さんは冗談ぽく明かしてくれた。適切な忠告に苦笑す
るも、本日は当り。出演は他に、春風亭昇太師匠と前座の昇々さん。メンバ
ーに加えてくれた、遊喜さんの勇気に無事応える。


11月の巻頭言特集

「地震はもうかりまっか?」いい加減に震災。
あいつは人間は薄いですが音楽はすごい。元妻[泰葉/KEIKO]
黒皮の首長
頼朝社長かと思った[小室哲哉、詐欺で逮捕]



 
6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

◆2008年12月

2008年12月8日 (月) 「勝を呼べ。」

 麻生内閣の支持率が20%そこそこまで落ち込む。大河ドラマ「篤姫」の
視聴率よりも低い。こんなときに天璋院様がいてくれれば。
 クリスマスの小咄をひとつ。髪を切ってしまったのに、プレゼントに鼈甲
の櫛を贈られた雅子妃殿下、「コームはしばらく結構でございます。」


2008年12月17日 (水) ポン酢・ポンザー・ポンゼスト

 ラジオで、みうらじゅんさんが喋っているな、と思って聴いていたら、
及川光博さんであった。


2008年12月19日 (金) ラ・ヴィ・アン・ロストタイム

 誕生日が年末にある、ということは、その先の展望を夢見るより、この1
年の己を省みてしまう、これは仕方のないことではあるまいか。過ぎたこと
を悔いても一文の価値もないのだが、なんとか浮上しなければならなかった
今年をなんとかできなかったふがいなさに、暗たんたる気持ちで迎えた今日
である。
 飄々と、世間の評価などどこ吹く風、というのが売りではある。そこが、
寒空はだかの味である。だが、そんな幻想は、「老い」という将来を、残り
時間という現実を前にすれば、気づかぬふりはできない恐怖に負けるのだ。
成果のないまま、さらに歳を1つ重ねるのだ。路上ライフは洒落にならない。
 この、有名ではないが無名でもない、という居場所を良しとしているわけ
ではない、そうは思われていないけれども。火薬は一気に使わないと、爆破
できない。初舞台から20年、浅草デビュー10年、そして東京タワー50年と
いうキリの良い年。新譜も出した、雲上人との共演も果した、という今年は、
10年に一度の売り時だったのだ。進歩はあったが、距離が短すぎる。
 こんなことを公開日記に書くのは、エンターテイナーとして恥である。
「おめでとう。」と言われることへの違和感を、こう嫌な書き方で吐露する
のは、祝福してくれる人に失礼極まりない。実に身勝手で申し訳ないが、書
けば忘れて楽になる。来年の今日、たとえ同じ境遇でも、もうこんな内容は、
情けなくて二度と発表できるものか。
──さっ、過ぎちゃった日々のことは忘れて、どんどん楽しい話をしてゆき
ましょう。──
 至近距離で、頭脳警察のトシさんが、憑かれたように笑いながらドラムス
を打鳴らしている。私の腰掛けている席はステージ真横なのだ。つい私も膝
ドラムで応えてしまう。斜め左に顔を向ければ、純音楽家のエンケンさんが、
まさに全身を使って観衆に歌を叩きつけている。その向うでエレキベースを
握ったトーベンさんが、愛おしむように曲を縁取る。南青山MANDALA、
遠藤賢司クリスマスディナーショー。
 大いに、圧倒的に楽しむ。いい日ではないか。
 お邪魔した打上の席で、「東京タワーの歌」の話が出ると、「ウチの娘の
部屋にもありました。」とトーベンさん。それは私が無理矢理差上げたのだ。
私の誕生日の話はしていないが、「娘さん、今日、お誕生日ですよね。」と
言う私、ストーカーと呼ばないで。ピアフとクラッツの浜君も同じ日だ。
 帰宅して、着替えようとズボンを脱ぐと、太股が紫に腫れていた。今晩の
宴の痕跡を見て、なんだかんだ言っても能天気に暮らしているではないか、
と呆れる中年男であった。


2008年12月20日 (土) 能天気放送協会

 ラジオの仕事は楽しい。まして、私を立ててくれて好きにさせてくれるの
だからなおさらである。NHKラジオ「渋谷極楽亭」、とびきり気さくで美
しい森口博子さんが隣で笑っている。正面には今宵の当番パーソナリティ、
柳家喬太郎師匠があきれながら相手をしてくれる。混沌とした話の中から、
素直な好青年、三橋大樹アナウンサーが、ゲストである私の良いところをひ
きだそうとしてくれている。
 NHKゆえにできない制約も多いが、民放ではないからできることが、ス
タジオで起きていることが素晴らしい。
 1時間半の生放送はあっと言う間に終わる。「東京タワーの歌」が、北は
北海道から南は沖縄まで、全国津々浦々に流れた。しかもCDと、生歌の2
回。この並外れた構成、私同様、携帯電話を持たないディレクター氏の考え
る番組ならではだ。
 かつて、同じくNHKの「ラジオ深夜便」で「♪たわーたわー」とレコー
ド盤の音が放送された際、終わった途端に「ここで地震の速報です。」とス
タジオが切り替わったことがあるのだが、奇しくもまた今晩、曲をかける前
ではあったが、地震の情報が入ってきた。たいした規模ではなくて良かった
わー。


2008年12月21日 (日) 昇進照明

 浅草東洋館の出番を終えてくつろいでいると、いつものように物静かな
立川志遊さんが楽屋入り。照れくさそうににこにこと、
「実は私、真打昇進が決まりまして。」
噂には聞いていたのだが、本人の口から告げられて、こちらも顔がほころぶ。
年功序列では上がれない立川流、生志師匠に続いて、試練の末に手にした切
符である。
 色物席の東洋館下席。円楽党の三遊亭好太郎師匠と、立川流から左談次師匠、
龍志師匠、談幸師匠、それに志遊さんが、レギュラーで交替出演している。
決して落語向きではない空気、いわばアウェーの戦場で、各師それぞれ、手
練手管で観客の御機嫌を伺う。5人の中ではキャリアの浅い志遊さんだが、
無理に客席に合わそうとせずに淡々と演じながらも、納得させている様子を
袖から見るたび、私はうなっていた。
「こういうやり方しかできないんで……」と卑下していたことがあるが、こ
のやり方で認めさせてやる、という内なる炎を感じた。それが聴く側にも伝
わるのだろう。
「昨年末は病院で迎えたことを思うと夢のようで。」とも言っていた。来年、
5月に披露パーティだそうである。暗いニュースの多い年の暮れ、めでたい
話にほっとする。


2008年12月23日 (火) おめで塔

 朝も早くから地味に切手を貼る作業なんぞをしていると、NHKの7時の
TVニュースでは東京タワー開業50周年特集。無論、天皇陛下の誕生日で
もあるが、各局それぞれ、番組でタワーを扱うことだろう。
 私の名刺代わりである「東京タワーの歌」、その主人公の記念日、祝う気
持ちと裏腹に、この絶好のチャンスをモノにできなかった情けなさに、実を
いえば打ちひしがれているのである。直前のNHKラジオ出演での披露と、
ペンギン堂氏のおかげの「散歩の達人」誌掲載、というごほうびを戴いたが、
本来、今日この話題をとりあげる番組ごとに曲がかかるくらいでなければな
らなかったのである。リリー・フランキーさんなどと並んで取り上げられな
ければならないのである。この機に乗ぜずして、いつ浮かび上がる?
 よせばいいのに、午前中、芝郵便局への用足しついでに、のこのこ現地へ
出かけてみれば、混雑する東京タワーの人ごみに、私の居場所はないのであ
る。うっかり歩き回れば、テレビの生中継に遭遇し、それを遠巻きに見守る
ことになるのだ。
 居たたまれなくなって塔を後にする。己の怠惰を棚に上げ、自分を認知し
てくれない世間にねたみを覚えたその時であった。振り返って見上げたタワ
ーに救われたのである。
 彼は、記念の催しなどワレ関せず、超然と、ただただそびえたっていたの
だった。紺碧の空に向かって、たたただ凛々しく胸を張っていたのであった。


2008年12月31日 (水) 掛け持ち萬歳

 快晴の浅草、元はメトロ通りと呼ばれたアーケードに、なじみの老婆が、
ちょこんと坐っている。まだ午後4時前だが、
「もう今日はしまおうかと思ってたのよ。」と景気は悪そうだ。
「昔は大晦日なんて、8時頃までお客さんが切れなかったもんだけどね。」
ぼやき上手の、靴磨きのおかみさんに、足下をぴかぴかにしてもらって、明
日に備える観音様の街を後にする。
 谷中の世界湯で今度は体を浄め、あらためて、今年最後の仕事の支度。ラ
イブハウスと演芸場、カウントダウンイベントのかけもち、という私ならで
はの年越しに、独り得意。間の移動に余裕がないから衣裳のまま動くつもり
だし、渋谷ラママの楽屋が狭い所に出演者が多いことも考えて、本日デビュ
ーの衣裳・銀色のジャケットに直接、コートを羽織って家を出る。
 1本目、今年何度もゲストに呼んでくれた社会派お調子者メタルバンド
「云うだけ番長」の露払い役で「俺は殺し屋デンジャラス」などを熱唱。爆
笑の渦に有頂天。思えばこのテの出演は、10年近く前の渋谷屋根裏のカウン
トダウン以来だ。司会として呼び出した中にはブレイク直前の「ゆず」もい
て、翌年の大晦日は、紅白歌合戦に出演する2人を、銭湯の脱衣場のテレビ
で見上げたものである。メタルアレンジの生演奏にのせて「東京タワーの歌」
を歌い上げてバトンタッチ。東横特急で横浜にぎわい座へ。
 乗換えうらめし桜木町、行路支障なく2本目の楽屋入り。立川流新真打、
生志師匠が差配役のこの会ももう4回目。私の事情をくんでもらって、出番
はトリの前、ひざがわり。
「紅白歌合戦、『おふくろさん』を歌わせるなら泰葉でしょう。」にはラマ
マの若い客に話した時以上に微妙な反応。黒人演歌歌手ジェロを扱ったネタ、
横浜の善男善女はあまり受け付けず。全体に渋谷ほどの手応えはなかったも
のの、「東京タワーの歌」で帳尻合わせ、おまけに「かんきのうた」をつけ
て予定時間終了。寒空はだかの2008年、まあこんなものだろう。
 中の舞にのって立川志の輔師匠、子年の締めに、と甚五郎の「ねずみ」。
満場を惹きつける熱演も歳神様は待ちきれず、噺の途中で牛に変わる。



2008年12月忘日 12月の巻頭言特集

え?ヤザワはリストラされないの……、どゆこと?
20%そこそこじゃ、篤姫の支持率の方が高い
目の付けどころがチープでしょ?
のらりくらり、師は走らない年の暮



 
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