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【122】警視庁物語 聞き込み(1960東映東京)監督;飯塚増一
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 →【89】警視庁物語 ウラ付け捜査(1963)
 →【103】警視庁物語 深夜便130列車(1960)
 →【114】警視庁物語 顔のない女(1959)
 →【120】警視庁物語 遺留品なし(1959)
 →【121】警視庁物語 血液型の秘密(1960)
 →【123】警視庁物語 全国縦断捜査(1963)

 東映東京撮影所の人気シリーズ、長谷川公之原作「警視庁物語」第14作。
 緑濃い初夏の候、桜田門は警視庁に、老婆・五月藤江がやってくる。
 どこへ行けばよいかわからぬ五月、たまたま声をかけたのが、捜査一課6号室主
任の神田隆であった。
 五月の弟の靴屋が消息不明、刑事部屋に呼び入れて事情をきくうち、どうやら殺
人事件の疑いがでてきた。失踪しただけでなく、存在しない、靴屋の息子が、土地
を勝手に売買してしまったという。
 靴屋の特徴で、変死体を鑑識に手配すると、多摩川河川敷で発見されていた溺死
体が、五月の弟であった。
 息子を名乗った謎の人物が事件の鍵、と、おなじみ刑事達の捜査が始まる。
 前々作「深夜便130列車」以来のメンバー、警視庁捜査一課の主任警部・神田隆
以下、堀雄二、花沢徳衛、須藤健、山本麟一、佐原広二、中山昭二。
 今回は、捜査一課長と、片山滉の法医医師の出演は、なし。
 捜査本部は置かず、極秘捜査。「パーカーフェイスで」。狭いデカ部屋6号室、
神田の大きな頭が、画面で強調されて、より窮屈そうである。
 沼袋、新井薬師といった、中野市の北部、西武新宿線沿線が、主な舞台。
 地面師、誇大広告が踊る郊外の建売住宅などという世相をからめ、不動産業界が
モチーフになる。
 六本木・鳥居坂の「トラ箱」・泥酔者保護所は、本作公開の1960年に開設、
2007年12月に閉鎖。
 クライマックスは、銀座並木通り、ロケ敢行。
 捜査が進むうち、前作「血液型の秘密」にリンク。今井俊二(健二)、山東昭子、
それに民謡酒場のミチコ(前作では設定のみ)、加えて、ゲストのこまどり姉妹が、
引き続き登場。
 五月が来庁した、翌々日の解決。
 「血液型の秘密」とセットのショートプログラム、52分。

神田隆…………警視庁捜査一課(6号室)、捜査主任。狭いデカ部屋に窮屈な大頭。
堀雄二…………同、部長刑事ナガタ。ポーカーフェイス。
花沢徳衛………同、ベテラン刑事ハヤシ。「パーカーフェイス」
須藤健…………同、刑事ワタナベ。ハンチング愛用。「パーカーじゃなかろかね」
山本麟一………同、刑事(カネコ)。おなじみソフト帽。名前は呼ばれない。
佐原廣二………同、刑事タカツ。
中山昭二………同、刑事ヤマガタ。


五月藤江………依頼主の老婆、被害者の姉
沖野一夫………被害者、靴屋店主・石川平作  数え56歳、独身、土地持ち
大村文武………不動産ブローカー・オノアキラ  沖野の土地の売買を実行した男
今井俊二(健二)…吉本ノブヒコ  元・東郊不動産社員、前作の重要参考人
山村聰…………近隣の不動産業界のボス、マルヤマ  沖野の表通りの土地を購入
八代万智子……今井俊二の情婦・ミチコ  元・民謡酒場おけさ店員
柳谷寛…………泉不動産・イズミ  オノの持ちかけた沖野の土地を山村に斡旋
山東昭子…………民謡酒場おけさ店員・ミツコ  山村聰の情婦[新井薬師]

こまどり姉妹…民謡酒場で歌う店員  歌っているのは「花笠音頭」
藤山竜一………クリーニング屋主人  被害者の隣人、被害者の土地を購入
菅井きん………クリーニング屋の妻
奈良あけみ……ダンサー・本田幸子  靴屋に修理依頼した靴を勝手に売られた
石島房太郎……古道具屋  奈良の靴が売られた店
岡本四郎(プレスシート参考)…奈良あけみの隣の部屋のスケベ学生
梅津栄…………山村聰の若い部下・サブロウ  丸メガネ、お調子者風
成瀬昌彦……山の手不動産・寺本一平 [新宿]
相馬剛三………警視庁鑑識課 「身元調査」のオベリスク型カウンターサイン
河合弦司………「酔っぱらいセンター」警視庁鳥居坂泥酔者保護所の観護員
不忍郷子………小料理屋「小春」の女将  被害者の目撃情報の聞込み[新井薬師]
杉義一…………「梅寿司」店主  [新井薬師]
並木和子(プレスシート参考)…喫茶「スワン」店員クニコ、今井の新彼女[銀座]




   
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◆◆捜査の行方◆◆

[東映マーク] 荒磯にファンファーレ(前作「血液型の秘密」に同じ)

[プロローグ]
   朝の桜田門、警視庁前。
   腰の曲がった老婆・五月藤江が、正面の階段を登って、玄関ホールへはいる。
   おろおろしながら、デカ部屋銀座に迷い込む。
   「捜査一課6号室」から出て来た、主任・神田隆に声をかける。
   「あのう、どこへ行けばいいんでしょう?」
   「どんな御用でしょう?」
   素頓狂な問いかけにも、神田はソフトに応対する。
   弟を探してほしいという五月、とにかく部屋に案内する神田。
   突然の客に慌てる刑事達。将棋盤を片付ける山麟、グローブをしまう中山。
   ただでさえ狭い部屋の中で、恐縮しながら、五月が事情を話す。
   ・ヒト月ほど前に会ったばかりの弟、「石川平作」を訪ねると行方不明。
   ・弟は沼袋(中野区北部)で靴屋を営む、数え56歳、独身。
   ・存在しない「弟の息子」を名乗る人物に、店と、別に持つ地所が売られていた。
   ・前回会った時に、当分、土地を売る気はないと言っていた。
   堀 「(神田ににじり寄って小声で)どうもコロシくさくないですか?」
   神田は、五月からきいた、平作の特徴、小さい頃から右足がびっこ、という
   情報を加えて、鑑識で変死体リストを調べるよう、須藤に指示。
   鑑識・相馬剛三が、キャビネットの「變死人」リストから、特徴の一致する
   ものを1件ピックアップ。
   相馬「ははあ、右足のびっこは小児麻痺のせいなんだなあ……。」
   ・多摩川に上がった溺死体。(臨場記録封筒表書に「二子多摩川」)
   ・多量のアルコール検出、胃の中には寿司。
   ・水に落ちたショックが死因として処理。
   ・行方不明者に該当なく、身元不明のため、変死体扱い。
   5月10日と日付が書かれた臨場記録を、須藤がデカ部屋に持ち帰る。
   同封の、遺体の写真に、老婆・五月が目を見張る。弟・沖野が、むしろの上
   で、変わり果てた姿になっていた。


[タイトル/スタッフ/キャスト/監督]
   ハードなリズム、エレキギターをフィーチャーしたジャズ調の主題曲。
   多摩川の現状写真
   トップクレジットは3人、堀雄二/中山昭二/今井俊二。前作に同じ。


[1日目]
 ●沼袋の商店街[沼袋]  堀、徳衛、山麟、須藤、佐原、中山
   自動車に分乗して乗りつけた刑事たち。須藤と佐原は近所の聞込みに。


 ●今城クリーニング商会[沼袋]  堀、山麟 ※新井町325番地
   石川靴店の隣、クリーンニング屋の主人・藤山竜一、妻・菅井きん。
   息の合った、気のいい夫婦が、質問に答える。


 ●建築現場  徳衛、中山
   五月の案内で、徳衛と中山がやって来る。
   まだ柱を建てている段階。よく見ると、職人達が酒を飲んでいるので、建前、
   上棟式だ。
   口にゲソをくわえてた大工が。ずかずかはいりこむ老婆をとがめる。
   徳衛「警視庁の者なんですがね。」
   建築主を尋ねると、マルヤマ商事だという。
   ※五月藤江の出演はこのシーンまで。

  ●今城クリーニング商会  堀、山麟
   ・息子と名乗る男が、店主が奥さんのところで、脳溢血で死んだからと、
    隣の靴店を売りに来た。35万円で買取る。
   ・靴屋は独身のはず、と不審に思ったが、昔、結婚していたと説明され納得。
   ・30前、丸顔で背の高い男。
   菅井「ちょっといい男でしたよ。」
   藤山「オレほどじゃねえけどな。」
   菅井「なに言ってんのよ。」と藤山にヒジ鉄。
   ・家財道具は古道具屋が引取りに来た。
   ・その古道具屋の住所は不明だが、修理で預けた靴を勝手に売られたと苦情
    を持って来た女が連絡先を置いて行ったので、彼女にきけばわかるかもし
    れない。

 ●丸山商事  徳衛、中山  ※表通りの家の建築主
   「お待たせしました。」
   向いのそば屋から、爪楊枝を使いながら悠然と、マルヤマ・山村聰が戻って
   来る。オールバック、ちょびひげにメガネ、蝶ネクタイにチェックのベスト。
   一癖ありそうな人物。不動産、電話売買や金融等、手広く扱っている。
   ・手続きは、イズミという男にまかせている。
   「刑事さん達も大変ですな。」

 ●「本田幸子」のアパート  堀、山麟  [沼袋]※西武新宿線脇
   クリーニング屋に教えられた住所。戸を叩くが返事がない。
   パチンコ帰りらしい隣の部屋の学生によれば、仕事に行って、遅くまで帰ら
   ないという。彼女はフロアショーの踊子。グラマーな体型を、学生が嬉しそ
   うに手振りで表現する。
   ※翌日のシーンで、一つ手前の駅が新井薬師前とわかるので、ここは、沼袋
    駅が最寄ということになる。
   ※「血液型の秘密」の、ひかり荘の牛乳受、「橋本牛乳店」、使い回し。

 ●泉住宅社  徳衛、中山  ※“駅前の”
   柳谷「あの土地に、なにかご不審な点でも?」
   ヒトの良さそうな店主・柳谷寛。
   あの土地の話を持って来たのは、オノという土地ブローカー。
   山村への仲介をしたが、名義変更はオノに任せ、手数料は折半。
   それほど深い付き合いはない、オノは今、この沿線の奥の分譲地の現地事務
   所にいる。
   中山「(チラシを見ながら徳衛に)駅から10分で坪3000円なら安いですね。」
   柳谷「駅から10分といっても、自転車をすっ飛ばして10分ですから。」
   中山「(笑いながら)ヒドイ話だなあ。」
   徳衛たちが訪ねて行くというと、もう夜も遅いからと、明日の訪問を勧める。

 ●警視庁 6号室  
   徳衛「……というわけで引きあげててきました。」
   堀 「どうもクサイな、そのオノって男。」
   ・須藤&佐原の聞込みによれば、被害者は、7日夕までは、目撃されている。
   ・神田が監察医務院に問い合わせたことろ、毒物反応なし、締めあとなし。
    死亡は8日頃。
   ・神田が課長と相談の結果、犯人が高飛びしないように、捜査本部を置かず
    極秘捜査にする。
   徳衛「こりゃブン屋さんたちにかぎつけられないようにしなきゃいけません
      な。みんな、『パーカーフェイス』でいこう。」
   佐原「なんですか、『パーカーフェイス』って?」
   徳衛「知らんのか、とぼけヅラのことだよ。」
   神田「そりゃ、ポーカーフェイスっていうんだよ!」
   徳衛「(きまりわるそうに)……そうか、……パーカーは万年筆か。」
   少し間があって、
   須藤「パーカーじゃなかろかね。」
   爆笑する刑事たち。
   

[2日目]
 ●伏見台分譲地事務所  徳衛、中山 [東伏見駅前](暗示)
   西武線のとある駅前、分譲地の幟、テントがけの案内所。
   オノは、現地に案内に行っているらしく不在。女性の係が応対する。
   徳衛「待たせてもらっていいかな。」
   どうぞ、と女性が、雑誌を差出す、ボロボロ。思わず顔をしかめる徳衛。

 ●「本田幸子」のアパート  堀、山麟
   まだ寝ていた本田・奈良あけみ、隣の学生に起こされて、面倒くさそうに出
   て来るが、金の靴の件と聞き、刑事たちを招き入れる。
   山麟「手前の駅っていうと……、新井薬師ですね?」
   ・6日夜、終電車内で、酔った被害者に出会い、金色の靴の修理を託す。
   ・8日昼、取りに行ったが、留守。引越した後のようだった。
   ・その靴を、とある古道具屋の店頭で見つけた。
   奈良「取戻してくれるの?」
   堀 「いえ、それはもう少し事情がわかりませんと。」
   奈良「なあんだ……。」

 ●伏見台分譲地事務所  徳衛、中山
   オンボロ自動車で、オノ・大村文武が戻って来る。
   後部座席から降りて来る婦人、考えさせてくれと言っているのを、大村は強
   引に納得させようとしている。話が違うと婦人は言うのだ。
   婦人「上下水道完備って書いてあったのに……。」
   大村「水道なんて、井戸ポンプを付ければすぐ解決しますよ。」
   徳衛たちが、「ちょっと」と会話に割込んできたのを幸い、「いずれまた」
   と婦人は足早に去って行く。
   石川イチロウのことを訪ねられるが、ここに飛込みでやって来た男なので、
   詳しいことはわからないという。
   大村が言うには、イチロウの住所は、“千葉市南町15番地”。
   ボンネットを開けて、オンボロ車の整備をしながら、石川イチロウは、細オ
   モテでメガネをかけていた、と証言する。大村の言葉を信用すれば、クリー
   ニング屋の証言と食い違う。

 ●古道具屋  堀、山麟
   古道具屋・石島房太郎から、金色の靴を売りに来た男の容姿を聞出す。
   ・クリーニング屋の証言と一致。
   ・住所は、千葉市南町15番地。

 ●伏見台分譲地事務所前“あけぼの食堂”  徳衛、中山
   駅前の食堂で、棒付アイスをなめながら、大村の発言をいぶかしむ刑事2人。
   新たな客を乗せて走り去る大村の車のナンバーを、手帳に控える中山。
   店の赤電話から、徳衛はデカ部屋に電話をかける。
   ※ナンバーは、5 も0533

 ●警視庁捜査一課6号室  神田、須藤、佐原
   徳衛からの電話を受けている神田。
   佐原が部屋にはいるなり、千葉市に南町はないと報告、つまりイチロウの住
   所はでたらめだった。
   須藤は、オノアキラで前科者を調べたが、該当者なし。
   

 ●新井薬師駅前の呑み屋街

 ●小料理屋「小春」  堀、山麟  ※まだ明るい
   奈良への聞込みによれば、被害者は新井薬師駅前でよく呑んでいたらしいの
   で、一軒一軒、呑み屋をあたる。
   「小春」は開店の支度中。被害者の写真を見せて、女将・不忍郷子に尋ねる
   が、心当りなし。

 ●泉住宅社  徳衛、中山
   柳谷に大村の住所を尋ねるがわからない。
   オンボロ車は大村の所有と確認。
   たまたま、居合わせた同業者・小金井秀春(プレスシート参考)から、大村
   が、新宿の“山の手不動産”を溜り場にしているとの情報を得る。

 ●新宿通り夜景  伊勢丹、三越など/テアトル新宿
 ●山の手不動産  徳衛、中山
   店主・成瀬昌彦によると、大村は情報屋みたいなもの。
   ・新宿の出物の土地を、成瀬にも紹介したが、結局、大村本人が買った。
   中山「オノさんは、そんなカネ持ってたんですかね?」
   成瀬「そりゃ、倍になるとわかってりゃ、どうやってでも工面しまさあね。」
   

 ●警視庁 6号室  
   陸運局に、ナンバーの照合に行った中山と別れて、徳衛がいったん帰還。
   陸運局の中山から電話、オノアキラは偽名、本名はアキタキヨシ。
   面が割れている徳衛に代わり、須藤と佐原が、大村の家に張込みに出かける。
   徳衛は、アキタの名で、前科者リストをあたりに行く。

 ●薬師横丁  夜
 ●民謡酒場「おけさ」  堀、山麟
   被害者の写真を店員ハルエ・光岡早苗に見せて聞込む。
   光岡「ミチコさんのお客さんじゃない?」
   知っているという光岡、傍らの店員ミツコ・山東昭子に同意を求める。
   ・被害者は、今月7日に、マルヤマ・山村と一緒に来たのが最後。
   ・ミチコがお気に入りで通っていたが、辞めた途端に来なくなった。
   山麟「マルヤマさんって?」
   光岡「丸山商事の。このヒト(山東)のカレシ。」
   マルヤマ・山村は、被害者に土地を売るよう、盛んに説得していたという。

 ●丸山商事  堀、山麟
   7日夜、山村は被害者に、「表通りの地所」の土地を売ってくれるよう説得
   したが、承諾してくれなかった。
   10時頃、部下の梅津栄に送らせたが、途中、踏切を渡り、どこかへ消えて
   しまった。
   梅津「踏切の向うに、女の子でもいるんじゃないですかね。」
   山村「ハハハ、まさか。」
   梅津「でもあのジイサン、お色気なさそでありそで、♪黄色いさくらんぼー。」
   堀も笑う。
   被害者の胃の内容物が寿司だったことを思い出し、付近の寿司屋をあたろう、
   と堀が言う。

 ●警視庁 6号室  
   徳衛が、前科者リストから、アキタ・大村の名前を見つけて戻る。
   ・大村には地面師の前科あり。ブローカーになる前は「トウコウ不動産」に
    勤務。
   神田「東郊不動産?」
   そこに、アキタ・大村のアパートに張込む、と須藤組からの電話。

 ●梅寿司  堀、山麟  ※“新井薬師駅踏切のそば”
   被害者の写真を見せる。びっこだったこともあって思い出す店主・杉義一。
   ・一見の客だったが、7日夜、トロ2人前を届けるよう注文される。

 ●「秋田清」のアパート前  須藤、佐原
   陸運局で調べた、オノことアキタキヨシ・大村の家を張込む須藤と佐原。
   そこに警官・萩原正勝がやってくる。大村が、鳥居坂の泥酔者保護所「酔っ
   ぱらいセンター」
   に保護されているという。

 ●「吉本」のアパート前  堀、山麟
   寿司屋の出前持ちの小僧に案内されたところは、なんと、前作「血液型の秘
   密」嬰児殺し事件の重要参考人ヨシモト・今井俊二のアパートだった。

 ●警視庁鳥居坂保護所(六本木)  須藤、佐原
   格子のはめられた個室が並び、泥酔者達が騒いでいる。
   ベッドに扇風機、水洗便所が各部屋に完備、「ウチの下宿よりデラックス」
   と、佐原がぼやく。
   白衣姿の観護員・河合弦司に大村の部屋を案内してもらうが、ぐっすり眠り
   こけて起きようとしない。
   ※1部屋に1人ずつ。他に、関山耕司や、岡部正純など。


 ●警視庁 6号室  神田、徳衛、須藤、中山  
   中山「王手飛車取り!」
   徳衛「なーんとねえ……。」
   堀たちから電話がかかる。「ほォ……」受ける神田のトーンが変わる。
   寿司屋が出前したというミチコのアパートは、ヨシモトの家で、7日夜、自動
   車が止まっていたという証言もあった。
   徳衛「こりゃ、石川イチロウってのは、ヨシモトじゃないですかね?」
   ヨシモト、ミチコとも留守だということについては、逃げたのではないかと
   の可能性も出て来る。
   徳衛「そんなきき方はしなかったつもりなんですがね……。」
   そこに須藤が帰還して、神田に報告する。
   「事情を話して、(アキタ・大村を)出してもらいました。特別調べ室の1号
    に入れてあります。」

 ●警視庁 “1号特別取調室”  佐原
   有孔ボード、穴の開いた防音壁に囲まれた明るい部屋。佐原が起こそうとし
   ても、机に伏して起きない大村。無聊な部屋の、卓上には白いカーネーショ
   ンが一輪。

 ●「吉本」のアパート前  堀、山麟
   タクシーが止まる。水商売っぽい女たちのあいのり。1人降りて来た、八代
   万智子
。背後から堀が声をかける。
   「ミチコさんですね。」
   前方を山麟がふさぐ。神妙に首を縦に振る八代。
   ※タクシー降り際、「こんど、カレシを紹介しなさいよ。」と、女達にから
    かわれ、笑顔で別れた八代。車が出た途端、ふっと暗い顔になる。カレシ
   「吉本」との関係の、かげりをうかがわせる。

 ●警視庁 別の特別取調室  堀、中山
   八代に尋問するが、押し黙ったまま。

 ●「吉本」アパート前  山麟
   山麟が張込んでいると、アパートの前にパトカーが止まる。なにごとかと思っ
   ていると、やってきた別の警官の1人・清見淳が懐中電灯を山麟の顔に当て
   る。
   前回の張込みに続く職務質問、やれやれ、と警察手帳を見せる。
   清見「失礼しました、不審な男が潜んでいると通報があったものですから。」

 ●“特別取調室1号”  神田、徳衛、佐原
   ようやく目を覚ました大村に尋問。
   ・今井は、東郊不動産勤務で使い込み。そのカネを工面すべく、情婦・八代
    の客、被害者石川の土地に目をつけた。
   ・殺害後、大村の車で、多摩川に死体を捨てに行った。
   ・新宿の出物の土地の件は、早く買い手を探すようにせっつかれている。
   ・今井はすでに、東郊不動産を辞めている。
   ・昨日、被害者の土地の件が気になって、今井に会った。今井の居所はわか
    らないが、「スケの家に」とまったのだろうと供述。
   「スケってミチコか?」
   「いえ、クニコって女で。」
   ・銀座並木通りの喫茶店勤めの女が、今井の彼女だという。開店は10時。
   そこに内線電話、八代が自供を始めたという。

 ●別の特別取調室  ※八代の回想シーンは、スローモーション
   ・八代が被害者石川・沖野一夫を誘い出す。
   ・風呂に入れたところを、背後から今井が襲いかかり、湯船で溺死させた。

 ●6号室  神田、堀、徳衛、須藤、佐原、中山
   八代は、今井の心を取戻すべく、犯行に荷担した、と堀が報告する。
   神田「あわれな話だなあ。そうまでして尽くしても、ヨシモトには新しい女
      がいたんだからなあ。」
   堀 「ヨシモトの身元は割れたんですか?」
   神田「それなんだがね……。」
   堀に、土地の買い手を装わせて、今井をおびき出すことにする。
   堀 「ヨシモトに、メン(面)が取られてやしませんかね?」
   神田「大丈夫だろう、変装すれば。さしづめ、桜田商事の社長ってことで。」
   ※前作、「血液型の秘密」では、堀は今井と、終盤のほんの少ししか顔を合
    わせていない。

[3日目] ◆注意!◆結末明記

 ●有楽町駅付近俯瞰
   上りの横須賀線と山手線が並走。交差する道路上には都電が輻輳する。

 ●並木通り 純喫茶「スワン」前
   並木通りと花椿通りの交叉点。喫茶スワンのまわりに張込む刑事たち。
   ※北西角、北隣は「貿易会館」ビル。2019年現在・ナチュラルローソン。

 ●「スワン」店内
   メガネをかけ髪にはポマード、カバンを手に、貫禄をまとった堀が、店には
   いり、大村と腰掛ける。
   今井の新彼女、ウェイトレスのクニコ(プレスシートによれば並木和子)に
   大村がきく。
   大村「ヨシさんはまちがいなく来るだろうね。」
   並木「来るわよ、連絡したら喜んでたもの。」
   堀 「グレープジュースでいいね?グレープジュース2つ。」

 ●警視庁 捜査一課6号室
   神田以外、出払ったデカ部屋に、疲れた顔で山麟が戻って来る。
   山麟「みんなもう出かけたんですか?」
   神田「キミには貧乏くじをひかせってしまったなあ。」
   神田の腕時計は11時を指す。

 ●「スワン」店内
   約束の11時を少しまわってから、今井が姿を現す。
   今井が大村の隣に腰掛ける。
   今井「(大村に)キャッシュだろうな?」
   大村「え?ああ、うん。」
   堀 「どうもここじゃなんですから、わたくしどもの会社に来ていただけま
      すか。表にクルマを待たせてありますから。」
   ※今井が2人の飲み物代を払う。160円。

 ●「スワン」前  堀、徳衛、須藤、佐原、中山
   大村と今井、それに堀の乗った自動車の扉が閉まり走り出す。張込みの刑事
   たちも一斉にクルマに乗って追いかける。中山が、赤電話で、神田にその模
   様を報告する。
   ※周囲に映る、フロリダキッチン、銀座會館、いちこし、「お多幸左入る」
    
 ●車内
   後部座席、今井をはさんで、画面左に大村、右に堀。上機嫌の今井が堀に尋
   ねる。
   「どこかでお目にかかったような気がするんですけど……、どちらの会社で
    すか?」
   「サクラダ商事ですよ、(警察手帳を出しながら)桜田門にある……。」
   「(驚いて大村に)お、おい!」

 ●数寄屋橋交叉点ふかん
   今井たちを乗せた黒い自動車は、高速道路をくぐって、桜田門方向へ走り去
   る。

[エンドマーク]
   「終」



  
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